自社は「申請を検討できる企業」なのかを整理する
大規模成長投資補助金を調べ始めたとき、多くの企業が最初に感じるのは、
「これは一部の大企業や超優良企業だけの制度ではないか」という不安です。
投資額は20億円以上、賃上げ要件も明確に設定されており、
一見するとハードルが非常に高い制度に見えます。
一方で、制度の設計や公募要領を丁寧に読み解くと、
この補助金は必ずしも
「すでに完成された大企業だけ」を対象にしているわけではありません。
まずは、この補助金が
どのような企業を想定して設計されている制度なのか
という点から整理していきます。
この補助金は、どのような企業を想定して設計されているのか
大規模成長投資補助金は、
中堅・中小企業、スタートアップを含む
常時使用する従業員数2,000人以下の企業を対象としています
(みなし大企業は対象外)。
制度の目的として掲げられているのは、
単なる設備更新ではなく、
- 省力化やデジタル化による生産性の抜本的な向上
- 事業規模や供給力の拡大
- その成果を賃上げにつなげること
といった 中長期的な成長投資 です。
そのため、
現時点での規模や完成度よりも、
投資によって事業構造をどう変えようとしているか
が重視される制度だと整理できます。
売上や利益規模が大きくなくても対象になり得るのか
大規模成長投資補助金では、
売上高や営業利益の下限が
制度上、明示的に定められているわけではありません。
そのため、
「今の売上規模がそこまで大きくない」という理由だけで、
形式的に対象外になるわけではありません。
一方で実務上は、
一定以上の事業規模や供給力を前提とした投資計画が
求められるケースが多く、
結果として売上規模が小さい企業ほど
計画づくりの難易度が高くなる傾向があります。
重要なのは、
売上規模そのものではなく、
この投資によって事業規模や付加価値をどの程度拡大できるのかを、
無理のない前提で説明できるかどうか です。
業種による対象・対象外はどこで分かれるのか
本制度では、
特定の業種が一律に除外されているわけではありません。
製造業に限らず、
非製造業やサービス業であっても、
要件を満たす投資内容であれば対象になり得ます。
実際に、過去の公募では、
非製造業やサービス業に分類される企業が
採択されている事例も確認されています。
一方で、
業種にかかわらず、
制度の趣旨と合わない投資については
評価されにくい傾向があります。
業種そのものよりも、
投資内容と成長ストーリーが制度の考え方と整合しているかどうか
が問われていると整理できます。

投資額20億円以上(100億宣言企業は15億円以上)とは、どこまで含めて考えるのか
大規模成長投資補助金では、
原則として 補助対象経費ベースで20億円以上 の投資が求められます
(100億宣言企業については15億円以上の特例があります)。
補助対象経費として整理されている主な項目は、次のとおりです。
- 建物費
(補助事業のために使用される事務所・生産施設・加工施設等の建設、増築、改修等) - 機械装置費
(補助事業のために使用される機械装置・工具・器具等の購入、製作、借用等) - ソフトウェア費
(専用ソフトウェアや情報システムの購入、構築、クラウドサービス利用等) - 外注費
(補助事業遂行のために必要な設計・加工・検査等の一部外注) - 専門家経費
(補助事業遂行に必要な専門家への委託・助言等)
ここで注意したいのは、
「総投資額」と「補助対象経費」は必ずしも一致しないという点です。
単純に
「20億円の現金投資が必要」
と捉えるのではなく、
投資内容全体を整理したうえで、
補助対象経費としてどこまで積み上がるのかを
確認する必要があります。
賃上げ要件は「必ず達成する前提」なのか
本制度では、
補助事業完了後3年間において、
対象事業に関わる従業員等1人当たり給与支給総額について、
年平均5.0%以上の上昇が求められています
(100億宣言企業の場合は年平均4.5%以上)。
賃上げは、本制度において
非常に重要な評価要素の一つです。
ただし、
事業成長や生産性向上、付加価値拡大と
十分に結びついていない賃上げ計画については、
実現可能性の観点から
評価されにくくなるケースがあります。
また、制度上は、
賃上げ要件が未達となった場合に、
補助金の返還を求められる可能性があることも
あらかじめ示されています。
重要なのは、
なぜこの投資によって賃上げが可能になるのか、
その因果関係を
無理なく説明できているかどうかです。
ここまで読んで「今は対象外」と判断すべきケース
ここまでの整理を踏まえると、
次のような場合には、
現時点では本制度の活用が難しい可能性があります。
- 制度趣旨に合う成長投資の構想がない
- 投資後の事業変化や成長の姿を説明できない
- 賃上げを含めた中長期の計画が描けない
- 要件を満たすこと自体が目的となり、投資後の事業変化が整理されていない
一方で、
「すぐに申請すべきかどうか」と
「この補助金を検討してよい企業かどうか」は別です。
実際には、
申請までに構想整理や準備期間を設けることを前提に、
制度の考え方や要件を理解したうえで
検討を進めている企業も多くあります。
制度要件チェック(最初の一次確認)
以下は、大規模成長投資補助金を
「検討してよい企業かどうか」を判断するための、
最初の整理項目です。
- 常時使用する従業員数が2,000人以下である
- みなし大企業に該当しない(資本関係・役員構成を含む)
- 補助対象経費ベースで20億円以上の投資を想定できる
(100億宣言企業の場合は15億円以上) - 賃上げを中期的な事業成長と整合させて説明できる
これらの前提を満たさない場合、
申請以前に制度適合性の再整理が必要になります。
