社長の引退年齢は上がっている
日本の社長の平均年齢は?
日本の社長の平均年齢って、何歳くらいだと思いますか?
高齢化や事業承継の難しさにより、経営者の年齢が上がっているだろうという予想はつくものの、具体的な年齢というとイメージが湧かないのではないでしょうか。
東京商工リサーチの企業データベースによると、2018年時点で全国の社長の平均年齢は、62歳です。
一般的な企業の定年が60歳であることを考えると、社長の高齢化は相当進んでいるといえますね。
出典:東京商工リサーチ
更に時系列で見てみると、中小企業の社長の年齢のピークは、1995年は47歳でしたが、2015年には66歳と大幅に上がっています。
社長の年齢分布のピークは、20年間で20歳近く高齢化が進んでいることになります!
出典:中小企業白書
2015年に66歳ということは、1949年生まれで、第一次ベビーブーム、いわゆる「団塊の世代」(1947年~1949年生まれ)にあたります。
現在の社長の年齢分布のピークは団塊の世代と重なり、その世代の高齢化とともに移動しているのですね。
このまま後継者への承継が進まなければ、さらに高齢化が進み、経営者年齢のピークが70歳を超える可能性も十分にあります。
団塊の世代の人数が多いためピークが移動するのは仕方ない面もあります。
一方で、先ほどのグラフを見ると、1995年や2000年には45歳~59歳の社長が最多だったのに対して、2015年には65~69歳が最多です。
このことから、後継者への継承、起業があまり進んでいないことが推測できます。
どの産業の社長の年齢が高いのか?
次に、産業別に社長の平均年齢を見ていきましょう。
もっとも社長の年齢が高いのは、不動産業で63歳です。
卸売業、小売業が次いで高くなっています。その他の産業も大半が60歳を超えています。
出典:東京商工リサーチ
逆に、社長の年齢が最も低いのは、どの業界でしょうか?
同じグラフを見てみると、情報通信業の社長の平均が57歳と最も低く、唯一60歳を下回っています。
情報通信業には、いわゆるネットベンチャーと言われる若手起業家が経営する起業が含まれるため、平均年齢を押し下げているものと考えられます。
それでも、正直57歳というのは、かなり高齢という印象を受けました。
情報通信業といえば、新しい業界と捉えられますが、1990年代の後半から盛んになり、既に25年程度経過しているため、この業界においても社長の年齢は高齢化が進むのかもしれません。
さらに細かな業種別で見ていくと、以下の表の通り、社長の平均年齢が最も高いのは、信用金庫等の協同組織金融業で67歳です。
逆に、最も低いのはインターネット付随サービス業で47歳であり、唯一50歳を下回っています。
また、無店舗小売業、いわゆるネットショップ、ECショップの年齢も若く、インターネットに関わる業種の社長は比較的若いことがわかります。
出典:東京商工リサーチ
社長引退年齢の上昇デメリット
先ほど、社長の平均年齢や、年齢分布のピークが高齢化していると記載しましたが、その大きな問題は何でしょうか?
その一つが、社長の高齢化により、廃業等が増えることです。
廃業が増えると、事業自体がなくなるため経済を押し下げることになります。
加えて、廃業によって
- 従業員がいる場合には、その雇用が減る
- その企業にしかない独自の技術やノウハウが継承されない
という問題もあります。
実際、「休廃業や解散をする会社における、社長の年齢別の割合」というデータを見てみると、
- 80代以上が15%
- 70代が36%
- 60代が33%
であり、60歳以上の合計で83%と、60歳以上が社長を務める企業が、休廃業・解散する会社の大半を占めていることになります。
社長が高齢になっても後継者が見つからなった、または事業承継の準備を十分に行わなかった等の理由で、廃業等をしているケースが多いと考えられます。
出典:中小企業白書
廃業の急増で、2025年頃までに約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる?
中小企業庁長官の安藤久佳氏は、2018年の年頭所感で
うち約半数の127万人が後継者未定である。
廃業の急増で、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性がある。
と述べています。
出典:中小企業庁
先ほどのグラフにもあったとおり通り、社長の高齢化は深刻に進んでいます。
多くの企業で後継者不在が続けば、急速に廃業が進んでしまいます。
すぐに廃業しない場合でも、社長が高齢となり後継者が不在の場合には、どうしても設備投資や顧客開拓等、積極的な事業拡大を控えることが多くなることが想像されます。
「自分は高齢なので借入をしてまで積極的に、設備投資や新たな事業を展開をしようとは思わない。」
「自分の代で会社をたたもうと思うと、迷惑がかかる可能性もあるので、新しいお客さんを開拓しようという意欲がわかない。」
という話をききます。
なお、日本は高齢化は下記の通り、海外と比べても急速に進んでいます。
- 日本全体の年齢分布の中央値は49歳と、50歳近い
- 一方で、全世界で見ると年齢分布の中央値は30歳程度
特に新興国では若年層の増加が著しい状態です。
このような国では、若手の起業家、社長が積極的な事業拡大を行う可能性が高いでしょう。
よって中長期的に見ると、日本の企業の社長の高齢化が要因で、日本経済が海外と比べて相対的に弱くなると想像されます。
日本経済を強くするためには、事業承継やM&A等により、社長を後継者に引き継ぎ、若返りを図ることが求められます。
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社長引退の年齢が上がる要因
後継者不在
後継者が決まっていない、いわゆる後継者不在の企業の比率は56%と半数を超えています。
業種別に見ても、「農・林・漁・鉱業」「製造業」を除く大半の産業で、後継者が不在の企業率が50%を超えています。
出典:東京商工リサーチ
さらに、社長の年齢別に後継者の不在率を調べました。
結果、70代でも29%、80歳以上でも24%が後継者不在という状況です。
出典:東京商工リサーチ
後継者に承継をする際には、5年~10年かかるといわれています。
ですから社長が70歳を超えるような企業の場合には、
・継承がされず廃業となる
・廃業とならない場合でも技術や経営のノウハウがうまく継承されない
といった状況になる可能性が十分にあります。
後継者が不在となる理由
後継者が不在となる理由にはいくつか考えられます。
1つ目は、親族、特に、子供が承継したくないというケースが増えているためです。
団塊の世代の引退が近づく中、少子化により受け皿が十分でない状態です。
そのような中で、
等、さまざまな理由で親からの事業承継を受け入れないケースが多く存在しています。
2つ目は、社長(多くの場合、親)側の理由です。
等、後継者への事業承継に積極的に取り組まない社長が多くいます。
また、親族や従業員への事業承継に向けて取り組んでみた社長の中には、
というケースもあります。
3つ目は、事業承継の制度等が不足していたと考えられます。
先ほどの中小企業庁長官の年頭所感にあるように、社長の高齢化が急速に進む中で、国としてもこれまでの対策だけでは円滑な事業承継が十分に進まないと認識しており、制度が急速に整ってきています。
社長引退に向けた事業承継の3パターン
このように後継者不在で事業承継が進まないというのは、その会社にとっても、日本にとっても大きな問題です。
事業承継を行う場合、どのようなパターンがあるのか、そのメリット・デメリットと合わせて纏めました。
①親族内承継
親族内の承継は減少傾向ですが、もともと日本では最も典型的な手法です。
親族なので、条件面で、すり合わせがしやすいというメリットもあります。
後継者側は子供の頃から慣れ親しんだ事業や会社なので比較的スムーズに対応でき、家業ということで責任感を持つこともできます。
社長の側から見ても、親族への承継となると、親身になって最後まで対応するため、うまくいく可能性が高くなります。
少子化に伴い息子がいないケースが増えていますが、女性の社会進出に伴い娘が家業を継ぐという事例が増えているようです。
ただし、親族内承継の場合には、5年~10年かかるという情報もあるので、なるべく早いたタイミングからの取り組みが必要です。
②従業員への承継
従業員への承継もよくあるパターンです。
既に会社のことを知っているので、教育を比較的短期間でできるといったメリットがあります。
一方で、後継者が株の買取の際に多額の資金が必要で、承継できない可能性もあります。
③第三者への承継
第三者への承継と聞くとどのように行えばいいのかわからない方もいらっしゃるかもしれまません。
その場合には、
・事業引継ぎ支援センター
・民間のM&A専門家
・M&Aのマッチングサイト
等、さまざまな相談先があるので、このような機関へ問い合わせてみるのも良いでしょう。
経済産業省、中小企業庁は、2019年12月に「第三者承継支援総合パッケージ」を策定しました。
そして、このパッケージの下で、官民の支援機関が一体となり、年間6万者・10年間で60万者の第三者承継の実現を目指していくと掲げています。
まとめ
- 日本の社長の平均年齢は62歳と高齢化が進んでいます。
- 廃業等をする会社の社長は高齢者の比率が高く、60歳以上が80%以上を占めています
- 後継者不在の企業が半数以上です
- 経営者が高齢化し、事業承継を行わずに廃業すれば、経営者・企業・社会にとって損失となります。
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