事業承継の準備を始める時期は早い方が良い
経営者が事業承継の準備を始める年齢は、早い方が良いと言えます。
実際に事業承継を行うのに最適な時期は、企業や業界の状況によって異なります。
しかし、事業承継は行おうと思ったときにすぐに行えるというものでもありません。
したがって、事業承継を行いたいと考えたときに、できるだけスムーズに実行できるよう、早めに準備を開始することが重要です。
実際、現在の日本では中小企業を中心に事業承継問題が増えています。
「まだまだ自分は事業承継を考える年齢ではない」と思っていたものの、経営者の病気や事故など急な事業承継が必要になったときに困ったという事例も多くあります。
今回は、事業承継問題と経営者の年齢の関係や、事業承継を行いたいと思ったときに行うべき良いことを紹介していきます。
経営者の高年齢化が進み事業承継問題が増加
日本では経営者の高齢化が進んでおり、事業承継に関する問題が増えています。
実際には、どのくらい高齢化が進んでいるのでしょうか。
中小企業庁が出しているデータからは、以下のグラフのように、経営者の年齢が1995年から2015年の20年の間に、経営者年齢のピークは47歳から66歳に変化したことがわかります。
<年齢別に見た中小企業の経営者年齢の分布>
20年間で20歳近くということで、経営者の高齢化が深刻であることがよくわかると思います。
経営者が高年齢化していること、それ自体は、必ずしも悪いことではありません。
しかし次に述べるように、企業の休廃業や解散が、経営者の年齢が高いことに強く影響を受けている状況があります。
休廃業や解散の一因は、経営者の高齢化
日本では、企業が休業・廃業や解散を選ぶときの経営者の要因の1つに、高年齢化があると考えられます。
休廃業や解散のときの経営者の年齢は、下記のグラフのように遷移しています。
経営者年齢が70代・80代以上の割合が高く、また近年ほどその割合が高まっていることがわかります。
<休廃業・解散企業の経営者年齢構成比の変化>
休廃業や解散する企業の経営者年齢が高い背景には、経営者年齢自体の高まりもありますが、後継者が見つからないまま経営を続けた結果、経営者の高年齢化が進んだことで企業の存続が難しくなった事例も少なくないことが予想されます。
中小企業の経営者が休廃業や解散を避け企業を継続するには、常に自分の年齢と事業承継についてを考えておくことが重要になってきます。
実際、以下のグラフのように、60歳以上の経営者では5割程度が後継者不在であるであることが、帝国データバンクの調査でも示されています。
<社長年齢別に見た、後継者決定状況>
ですので「まだ自分は経営から退くには若い」と考えていても、早めに事業承継を意識した取り組みを始めていきましょう。
事業承継の準備には時間がかかりやすいため、高年齢化してから慌てて取り組んでも間に合わないこともあり、注意が必要です。
事業承継の準備にはどのくらい時間がかかるか?
事業承継の準備にはどのようなものがある?
事業承継に必要な期間を考える前に、具体的にどのような準備が必要かを検討しましょう。
必要な準備をリストアップし、各準備にかかる期間を考えてスケジュールを組めば、無理なく確実に事業承継を進めていくことができます。
事業承継の準備には、少なくとも以下のようなものが挙げられます。
- 後継者選び
- 後継者教育
- 後継者への経営権の渡し方の決定
- 節税対策
- 事業承継に最適な社内環境の整備
このように、事業承継は事前に行うべきことが多く、経営者の高年齢化までまだ余裕のあるうちに、できる限りの準備を行っておく方が安心です。
もしもすでに経営者年齢が高い状況なら、早めの事業承継についてのアクションを検討されることをお勧めします。
事業承継の検討は、5年前の開始が目安
このように事業承継には、色々な準備が必要となるため、経営者が事業承継をしたいと思ったタイミングで準備を始めても間に合わないことも多いと考えられます。
したがって、企業の業態等にもよりますが、5年程度は余裕を持って事業承継の準備を始めることをお勧めします。
実際に、事業承継では後継者が決まってからどのくらいで事業承継が行われているのか、データを見ていきましょう。
以下のグラフの通り、親族内継承、役員・従業員承継では5割前後、社外への承継では7割近くが「後継者が決まってから1年未満で引き継いだ」と回答しています。
ここで注意したいのは、このデータが「後継者が決まってから」、引き継ぐまでの期間であることです。
社外への承継であれば、事業知見が十分にある承継先を、しっかりと時間をかけて選定していることが多いと考えられます。
このため、引き継ぎ自体には時間がかかりませんが、後継者の選定には一定の時間がかけられていると考えられます。
一方、親族内承継や役員・従業員承継においては、すでに社内で経験を積んだ後継者が、その能力を認められて「後継者」に選定されていることが少なくありません。
このため、社内に経験を積み、経営を任せられそうな「後継者候補」がいない場合には、後継者を「選定」「育成」する時間を十分に見込んでおくことが重要となります。
<事業承継の形態別、後継者決定後、実際に引き継ぐまでの期間>
出典:中小企業白書2019
このように、「後継者を決定」した後にも一定の時間がかかっている企業が多くあることから、事業承継の準備は、余裕を持って始めることが大切です。
目安として、業種にもよりますが、経営者が事業承継をしたいと考える年齢の5年前くらいには、検討を始めるべきでしょう。
では、事業承継の準備を行う際には、何から始めれば良いのでしょうか。
ここからは事業承継を行う準備を始めると際に、まず取り組むべきことを確認していきます。
事業承継において準備の難しいポイントはどこか?
事業承継に当たっては、様々な準備が必要であることをお伝えしました。
- 後継者選び
- 後継者教育
- 後継者への経営権の渡し方の決定
- 節税対策・資金調達方法
- 事業承継に最適な社内環境の整備
このうち、実際に経営者が頭を悩ませるのはどのような準備なのでしょうか。
以下のグラフでは、経営者が事業承継について興味を持っている事柄を知ることができます。
<経営者が特に関心のある事業承継の知識>
出典:事業承継の準備 – 中小企業庁
(※小規模事業者・・・製造業20名以下、サービス業10名以下、等)
事業承継においては、後継者選び・後継者教育や、税・資金調達での不安を抱いている経営者が多いことがわかります。
この中でも特に、後継者については、事業承継を考える多くの中小企業にとって大きな悩みの種となります。
税・資金調達は、専門家のアドバイスを受け、事業承継方法を決め、節税対策等を実行することで最適な方法を選びやすい内容です。
一方で、後継者選びや後継者教育は、現経営者の意思決定や教育への取り組みが企業の存続に不可欠であるため、経営者を特に悩ませることが多いと言われています。
次に、事業承継がにおける後継者選びのポイントについても見ていきましょう。
後継者選びで重視すべきこと
経営者の年齢が高くなっても事業承継が行われていない場合、後継者選びが難航している場合が多いものです。
後継者選びおいて重視することは、経営者によって様々です。
単に経営能力だけを重視して後継者を選べば良いという単純なものではないので、悩む経営者が多いと思われます。
以下の図は、後継者の決定に際して重視することをまとめたものです。
小規模事業者では「親族であること」や「事業・業界知見」を特に重視する一方で、中規模企業になると「リーダーシップ」「経営に対する意欲」「決断力・実行力」といった『経営力』的な能力が強く求められることがわかります。
<規模別の後継者を決定する際に重視すること>
出典:事業承継の準備 – 中小企業庁
(※小規模事業者・・・製造業20名以下、サービス業10名以下、等)
このように、事業承継の際に後継者に求めるものは、企業規模によっても異なってきます。
データはありませんが、事業領域等でも異なってくるものと思われます。
自社の現状や、将来的なビジョンを見極めた上での後継者選びは、企業の存続・飛躍には非常に重要です。
そのためににも、実際に事業承継を行うまでに時間的な余裕を持って、企業の将来や後継者についての検討を重ね、また後継者を育成していく必要があるといえます。
ここでさらに、若い年齢で事業承継を行うメリットについて見ておきましょう。
若い年齢で事業承継の準備を始めるメリット
経営者が若い年齢で事業承継を行うメリットには、例えば以下のようなものがあります。
- 後継者の選定に十分な時間をかけられるため、最適な後継者に事業承継できる可能性が高まる
- 現経営者が、社員の理解の情勢など、社内環境を整えてから事業承継できる
- 後継者に社内外で多くの実務・マネジメント経験を積ませ、育成する時間が得られる
- 後継者の育成状況や社内環境を見て、現経営者がベストだと思うタイミングで事業承継できる
このように、後継者にとっても現経営者にとっても事業承継の準備は早い方がメリットが多いことがわかります。
特に後継者教育については、以下のグラフのように業務が忙しくて時間をかけられないことが障害となり、思うように進まないことも多くあります。
<後継者の養成における障害>
したがって、後継者の選定・育成は「予定通りに進まない」ことも考慮したスケジュールを十分に検討することが重要となります。
事業承継の準備を始める時期を考えたとき、まず検討すべきこと
事業承継の準備を始める年齢を考えたときに、今すぐ検討すべきことは以下です。
- 後継者候補を検討する
ー社内に後継者候補はいるか?
ー社内に後継者候補がいない場合、どのように社外から探すか?選定にどの程度時間を要しそうか? - 後継者教育のスケジュールを立てる
ー社内に後継者候補がいる場合、その後継者候補に経営を任せるには、どのくらい育成が必要が?
ー社外の後継者候補が自社の経営を習得するには、どの程度期間が必要か? - 事業承継の資金面で頼れる専門家を見つける
このように、後継者候補が社内にいるかどうかによっても、事業承継の準備に必要な期間は大きく異なってきます。
後継者はすでに目星をつけているという場合でも、改めて本人と話し合って教育方法を検討していきましょう。
後継者教育には、実務経験はもちろんのこと、リーダーシップや経営的な知見の習得など、従業員とは異なる「経営者になるため」の教育も必要になってきます。
現経営者が十分に時間をとって育成することが難しい場合には、さらに余裕を持った育成期間を設けた方が良いでしょう。
そして、事業承継は経営権や経営ノウハウを後継者に譲るだけではありません。
事業資産や経営者個人の資産を後継者に渡す際の資産管理や税金面の対策も必要となります。
早い段階で税理士などの専門家に相談して、安心して事業承継ができるよう、資金面でのスケジュールも検討する必要があります。
身近に話しやすい専門家がいなければ、『経営者コネクト』にもご相談いただければと思います。
事業承継の準備でお悩みならご相談ください!
事業承継を希望のタイミングで行うためには、早めの準備開始が大切です。
『経営者コネクト』にご相談いただければ、事業承継についての知識や経験が豊富な中小企業診断士や元外資系戦略コンサルタントといった専門家が親身にお話を伺います。
事業承継の準備に必要な、将来的な事業計画や経営戦略の策定、マーケット調査、新規事業の検討のお手伝いもさせていただくことが可能です。
さらに、親族や役員・従業員で後継者が見つけられそうにない場合や、できるだけ時間をかけずに事業承継を完了させたい場合には、社外への引き継ぎ(M&A)も視野に入れていくことがポイントとなります。
『経営者コネクト』では、M&Aに関する専門家も対応可能ですので、お急ぎの事業承継についても、ぜひご相談ください。
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ぜひ、相談できる専門家を早めに見つけて、事業承継に必要な準備を十分に行っていきましょう。