創業融資で人気の「政策金融公庫」と「制度融資」のメリット・デメリットを纏め!融資以外の資金調達方法も紹介

 

創業・起業・独立などで新しく事業を始める場合には、一般的に自己資金で用意した資本金で開業準備に必要となる経費の支払いを行います。

しかし、自己資金が開業に十分なほど用意できない場合には、「創業融資」という形で借入を検討することで選択肢を広げることができます。。

一口に創業融資と言っても、借りられるのは一箇所ではありません。
この記事では、政策金融公庫・信用保証協会の起業時に活用できる融資制度について紹介します。

合わせて創業融資以外の資金調達方法についても紹介しますので、創業時の資金準備を検討されている方はぜひ最後までお読みください。

創業融資とは?

創業融資として、新規開業時に融資という形態で資金調達をする場合、以下のような方法が考えられます。

  • 日本政策金融公庫からの借入
  • 信用保証協会の制度融資
  • 民間金融からのプロパー融資
  • ビジネスローン
  • 親族からの借入

ただし、一般的には日本政策金融公庫からの借入か信用保証協会の制度融資を利用することが多いようです。
この2つについて、詳しく説明していきます。

日本政策金融公庫の新創業融資制度

政府系の銀行である日本政策金融公庫では、新たに事業を始める時に利用できる融資制度として「新創業融資制度」を用意しています。

融資限度額は3,000万円

融資限度額は3,000万円で、その内運転資金として利用できるのは1,500万円までです。

保証人・担保は原則不要!

保証人や担保は原則必要なし、という点が大きなメリットです。

一方で、法人で代表者が連帯保証人になれる場合は、利率が▲0.1%優遇されます。

どちらを選ぶべきかは、企業や人により異なります。
メリット・デメリットを比較して検討していきましょう。

参考:日本政策金融公庫|新創業融資制度

利率は1〜2%台

下記のように、「新創業融資」の中にも多様な利率枠があり、資金の用途や返済期間、担保の有無などによって異なる利率が適用されます。

基準
利率
特別
利率A
特別
利率B
特別
利率C
特別
利率D
特別
利率E
特別
利率J
特別
利率P
特別
利率Q
2.46

2.85
2.06

2.45
1.81

2.20
1.56

1.95
1.81

2.20
1.06

1.45
1.41

1.80
2.26

2.45
2.06

2.45

出典:日本政策金融公庫

詳しくは、お近くの支店にお問い合わせしてご確認ください。

利用に必要な3つの要件

利用できる対象者は次の1〜3のすべてに該当する必要があります。

以下、日本政策金融公庫のホームページから引用しています。

 

  1. 創業の要件
    新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない

  2. 雇用創出等の要件

    以下をはじめとする要件に該当する方(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方)

    「雇用の創出を伴う事業を始める方」
    「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」
    「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」
    「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」

    なお、本制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回のご融資分も含みます。)の方については、本要件を満たすものとします。

  3. 自己資金要件

    新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方

    ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。


いろいろ要件があり、難しく感じるかもしれませんが、新しく事業を始める方で、雇用をしない場合でも1,000万円以下であるならば借り入れができます。

加えて、自己資金については、創業資金全額の10分の1以上用意する必要があります。

しかし、「現在務めている会社と同業で起業する」など既に知識がある分野であれば要件を満たしたことになるそうです。

細かい要件があるので、自身が要件を満たすかどうかは日本政策金融公庫に直接ご確認いただくことをお勧めします。

 

信用保証協会の制度融資

信用保証協会の制度融資を利用して創業資金を調達することもできます。

保証協会の保証を利用した創業融資とは

通常、新しく創業したばかりの企業が民間の金融機関から保証機関なしで融資を受けるのは、非常に難しいことです。
創業したばかりの会社は、信用力が低く、金融機関としては貸し倒れのリスクがあると考えるからです。


そんな時には信用保証協会の「制度融資」を利用することにより、民間の金融機関からの融資が受けやすくなります。

信用保証協会とは、中小企業・小規模事業者の金融円滑化のために設立された公的機関のことです。
民間の金融機関から融資を受ける場合に、信用保証協会へ保証料を支払うことで返済に対する保証を付けてもらうことができます。

具体的には、融資を受けた企業が経営破綻などして返済が不能になった場合に、保証協会があらかじめ決められた保証の中で民間の銀行に対して弁済をします。
たとえば、100万円の融資に80%の信用保証協会の保証の場合は、返済が不能となった場合に残債の80%が金融機関へ弁済されます。

民間の金融機関としては、このような保証があることで、融資先が返済が不能になったとしても全額回収できないというリスクを減らすことができるのです。

そのため、保証機関なしでは民間金融機関の融資が難しくても制度融資を利用すれば融資可能となる可能性があります


保証協会では、「創業融資」のための保証を用意しています。
各保証協会により若干内容が異なる場合もありますが、今回は東京都の例で紹介します。

融資限度額は3,500万円、融資機関は7-10年

融資限度額は3,500万円で、日本政策金融公庫の新創業融資より多いのが特徴です。

ただし、後述するように今後の創業を考えている方でも要件を満たせば制度融資を利用できますが、その場合は、自己資金に2,000万円を足した額が限度となります。


また、融資期間は運転資金の場合7年間、設備資金の場合10年間です。
それぞれ1年間の据置期間を設定することもできます。

担保は原則不要・法人は代表者が連帯保証人に

不動産などの担保の差し入れは原則として不要です。

保証人に関しては、法人は原則として代表者を連帯保証人とする必要があります。

個人事業者の場合は原則として連帯保証人は不要です。

保証料は簡単にシミュレーションできる

保証料は融資期間や責任共有により異なります。

※責任共有とは、従来原則100%保証であった保証付融資について、金融機関が一定のリスクを負担する仕組みをとることです。危機関連融資など一部例外的に除外される制度もありますが、ほとんどの場合は責任共有となり80%が保証協会、20%が金融機関の負担となります。

なお、東京信用保証協会ホームページには、保証料の簡易シミュレーションページがあります。
以下の、わずか5項目を入力するだけで簡単に保証料をシミュレーションできますので、関心のある方はぜひ試してみてください。

・返済方法(均等分割返済 or 満期一括返済)
・借入金額
・保証期間
・据置期間
・保証料率(入力方法についてHPに説明あり)


ちなみに、以下の条件でシミュレーションした場合には、信用保証料は297,000円でした。

・返済方法・・・均等分割返済
・借入金額・・・1000万円
・保証期間・・・36ヶ月
・据置期間・・・12ヶ月
・保証料率・・・1.35%


ただし、このページでの計算結果は簡易シミュレーションによる目安につき、実際の信用保証料とはことなる場合がありますので、詳細は地域ごとの信用保証協会でのご相談をお勧めします。


保証対象者は創業した日から5年未満の方

保証対象者については、以下のいずれかの要件に当てはまる必要があります。

 

(1)現在事業を営んでいない方で、1 か月以内に新たに個人で、 又は 2 か月以内に新たに法人を設立して都内で創業しよう とする具体的な計画をお持ちのお客さま

(2)中小企業者又は組合であり、創業した日から 5 年未満である お客さま
(個人で創業し、同一事業を法人化した方で、個人 で創業した日から 5 年未満の方を含む)

(3)都内で分社化しようとする具体的な計画を有する会社又は分 社化により設立された日から 5 年未満のお客さま

出典:東京信用保証協会

 

2つの創業融資のメリット・デメリットまとめ


これまで、政策金融公庫の創業融資と、保証協会の制度融資について、紹介してきました。
どちらも創業時の資金調達をする上で有難い仕組みであり、企業の状況により合う制度は異なります。

それぞれのメリット・デメリットを纏めておきますので、ご自身により合いそうな制度を選ぶ際の参考にしてください。



  政策金融公庫の創業融資 保証協会の制度融資
借入限度額 3,000万円 3,500万円
保証料 なし あり
自己資金要件 あり
業開始後税務申告を1期終えていない場合は、創業資金総額の10分の1以上)
なし
審査期間 短い
(3週間〜1ヶ月程度)
やや長い
(保証協会と金融機関の両方の審査が必要となるため、1~3ヶ月ほど必要)

 

創業時の融資以外の資金調達方法

創業時の資金調達には、融資以外の方法もありますので、選択肢の1つとして参考にしてください。

補助金/助成金

創業に必要となる資金を国や地方公共団体が補助・助成してくれる制度もあります。

新たな需要や雇用の創出などを促すことを目的として補助・助成されるもので、返済する必要がない点が最大のメリットです。

 

たとえば、東京都及び公益財団法人東京都中小企業振興公社では、賃借料、広告費、従業員人件費等、創業初期に必要な経費の一部を助成する「創業助成事業」を実施しています。

都内での創業を具体的に計画している個人又は創業後5年未満の中小企業者等のうち「TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援終了者」「東京都制度融資(創業)利用者」「都内の公的創業支援施設入居者」などの要件を満たす方が対象者となります。

助成限度額は300万円(下限は100万円)で、助成率は⅔位内です。

ただし、令和元年の申請者数は808名で、そのうち実際に助成を受けられたのは152名でした。
応募したすべての事業が助成を受けられる訳ではないことは理解する必要があります。

参考:TOKYO創業ステーション|創業助成金

 

一方で、地域により「I・Uターンをしての創業者」「女性創業者」「○○歳以下」など、いろいろな条件で採択条件が有利になる補助金・助成金もありますので、各地域の創業関係の補助金・助成金情報をぜひ調べてみましょう


クラウドファンディング

クラウドファンディングとは「クラウド(群衆)」と「ファンディング(資金調達)」を合わせてできた造語です。

インターネット上で多数の人から少しずつ資金調達を行う方法で、「こんな事業を応援したい」「サービスを利用したい」と思う人から資金支援を受けることができます。

一口でクラウドファンディングと言っても、例えば以下のようなさまざまな形態があります。

  • リターンの必要ない「寄付型
  • 商品・サービスを受け取る「購入型
  • 金銭的なリターンがある「融資型」、「ファンド型」、「株式型


国内で人気が高いクラウドファンディングは購入型で、起案者(経営者)を支援することで、支援者は「市場に出回っていない物やサービス、権利」といった金銭以外の特典を得ることができます。

いずれの形態しても多くの人に「事業することに価値がある」と思ってもらえる、いわば「ファンになってもらえる」魅力があることが、大きな金額の資金調達をする上での必須条件になります。

サービスや商品の魅力(独自性・社会的意義など)や、自身の事業をアピールする発信力などに自信がある方は、特に上手く活用できるはずです。

まとめ

創業融資にはさまざまな種類がありますが、この記事では特に検討する方の多い、

  • 日本政策金融公庫の「新創業融資」
  • 信用保証協会による制度融資の「創業融資保証」

について纏めました。


日本政策金融公庫の「新創業融資」の利用メリットは

  • 保証料が必要ない
  • 審査が早いという点でオススメ

という点であり、

信用保証協会による制度融資の「創業融資保証」の利用メリットは

  • 借入できる枠が大きい
  • 自己資金要件がない

という点でした。

どちらの融資を受けるとしても、「融資する価値がある事業内容である」と判断されることが、融資を受ける上でも大切になります。

「きちんと事業を軌道に乗せて融資を予定通り返済できる」ということを証明するために、創業計画書などをきちんと作りこみ、面談で融資担当者を納得させる準備をしていきましょう。

また、助成金やクラウドファンディングなど、融資だけではない資金調達の方法もあります。

ご自身にとってベストな資金調達方法を選び、組み合わせながら、新規事業の資金を準備していきましょう。

 

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資金調達にはどうしても時間がかかります。相談できる専門家を早めに見つけて、必要なタイミングで速やかに融資を受けられるよう準備を十分に行っていきましょう。