企業にとって、新しい工場を建てたり、機械を購入したりすることは大きな出費となります。
しかし、このような設備投資を拒んでいるばかりでは、いずれ競合に負けたり時代に遅れたりということになりかねません。
そのため、企業を成長・継続させたいと思うのであれば設備投資は不可欠です。
しかし、中小企業には、手元資金で設備投資をする余力がないという場合も多いでしょう。
この記事では、そんな時に活用できる、国の補助金や融資の制度内容について紹介していきます。
設備投資に使われる設備資金とは
設備資金とは本社や工場などの土地・建物、機械、車両運搬具、ソフトウェアなどの購入に充てる資金のことです。
たとえば、メーカーで新しい製品を作るための機械が必要になった場合の、機械購入費などです。
設備投資をすることで、新しい製品の製造ができるようになったり、量産したりできるようになれば、販路や売上を増やすことができます。
身の丈に合わない設備投資をするのは投資額を回収できない危険性がありますが、企業規模や成長スピードに合わせた設備投資ならば、利益をもたらし企業の業績に貢献できるでしょう。
設備投資は先に大きな持ち出しが必要!
設備投資は、多くの場合一括で購入(投資)する必要があるため、先に現金が必要になります。
企業内の資産として現金が潤沢にあり、それを支払っても問題なく資金繰りが回るのであれば、それを使うのももちろん良いでしょう。
しかし多くの中小企業が、手元資金に余裕がなく、金融機関の融資等に頼ることになります。
また融資以外にも、国や地方自治体等の補助金を使うという方法もあります。
その設備投資は現実的か?事業計画書・資金繰り表を作って検証
設備投資をする場合、設備投資をする価値があるかを見極めるためにまず事業計画書を作成しましょう。
設備投資をすることにより
- どれくらい利益を増やすことができて、
- どれくらいの期間で回収できるか
が分かれば、設備投資の判断がしやすくなります。
もし企業の規模に対して大きすぎる投資の場合は、他の事業で利益が出せるようになるのを待ってからの投資の方がよいケースもあります。
無理やり設備投資をしてもその事業や製品がうまくいかなければ、他の事業の足を引っ張ることになりかねません。
また、資金繰り表を作り実際のお金の流れを把握しておくことも大切です。
たとえば、手元資金のほとんどを設備投資に充ててしまい現金が不足すれば、資金繰りがギリギリになる場合もあります。
「黒字倒産」という言葉があるように、損益計算書ベースでは黒字なのに、支払いに充てる現金がないという場合には倒産を引き起こす可能性もあるのです。
無借金経営が安心と思っている方もいらっしゃるかと思いますが、手元キャッシュが極端に減ると経営そのものをを脅かすことになります。
そんなことにならないためにも、資金繰り表を作成して、資金繰りが悪くなりそうならば、補助金や融資を活用することを考えても良いでしょう。
より資金繰り表について知りたい方は、資金繰り表の作り方を説明した記事「資金繰り表は中小企業にも必要!作り方は簡単、資金繰りの改善方法も紹介!」をご参照ください。
返済の必要なし!設備投資に活用しやすい補助金2種
補助金とは、政府や自治体などが、要件を満たし採択された団体・個人にお金を給付することです。
融資とは異なり、返済する必要がない点が、最大の魅力といえます。
ただし、その分希望する企業も多く、事業内容や申請書類が厳しく審査されることが多いため、
自社の設備投資が補助金の対象となるか見極め、十分な準備をして申請にのぞむ必要があります。
ここでは中小企業が設備投資に使うことができる補助金について紹介します。
最大1,000万円!業種をとわず設備投資全般に使える「ものづくり補助金」
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者などが取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資などを支援することが目的の補助金です。
通称「ものづくり補助金」と呼ばれることも多いため製造業向けの補助金と思われがちですが、正式には「ものづくり・商業・サービス生産性工場促進補助金」という名称で、業種を問わずに利用できます。
実際に、医療機関やサービス業など、様々な業種の事業者が設備投資に「ものづくり補助金」を活用しています。
【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】
感染症拡大による経済社会の変化に対応するため、新分野展開や業態・事業・業種転換等を検討される企業様は、ぜひ次の記事もお読みください。
【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説
補助金の金額は100万円〜1,000万円になります。
以下の4つのうちいずれかの経営革新を目的とした設備投資を伴う事業が対象となります。
- 新商品(試作品)の開発
- 新たな生産方式の導入
- 新役務(サービス)開発
- 新たな提供方式の導入
設備投資は単価50万円以上が必要となり、
補助率(補助対象経費に対し何分の1の金額まで申請できるか)は
- 中小企業は費用総額の½
- 小規模企業者・小規模事業者 は⅔
です。
補助対象となるのは下記の経費となります。
- 機械装置・システム構築費
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
補助要件として、以下を満たす3〜5年の事業計画を策定し、実行することが求められます。
- 付加価値額※+3%以上/年
(※付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したもの) - 給与支給総額+1.5%以上/年
- 事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円
設備投資をすることによりどのようにこれらの要件を達成するか、事業計画とともに申請書に記載します。
またこの内容に経営に責任を持ちきちんと遂行することを期待されます。
現在、令和2年度3次の公募がされており、締め切りは令和2年8月3日ですが、令和2年度にはまだ10月・翌2月が締め切りの回も残っています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越えるための投資をする事業者を対象とした、特別枠と事業再開枠(50万円分)も設けられました。
特別枠は、補助対象経費のうち補助金の上限が何分の1になるかという「補助率」が通常枠より高い、優先して採択がされやすい等のメリットがあります。
なお特別枠は以下の3型があり、いずれかに合う設備投資をする企業が対象となります。
-
- B型「非対面型ビジネスモデルへの転換」
- C型「テレワーク環境への設備」
ものづくり補助金の申請書類として準備すべき書類は以下のものになります。
【必須の申請書類】
- 決算書
- 事業計画書
- 賃上げ表明書
【加点項目を満たす場合の申請書類(条件により一部)】
- 経営革新計画承認書
- 開業届・履歴事項全部証明書
- 事業継続力強化計画認定
- 特定適用事業所該当通知
事業計画書は、事業の具体的な内容と会社全体の事業計画の算出根拠を計10ペ ージ以内で用意することになり、作成に手間がかかりますが、審査の肝となるため丁寧に分かりやすく作るようにしてください。
ものづくり補助金について、より詳しく解説した記事「今からでも間に合う!【2020年最新】ものづくり補助金(最大1000万円)を徹底解説」もぜひご覧ください。
またものづくり補助金の公式サイトも確認してください。
テレワーク導入などに使える「IT導入補助金」
IT導入補助金は中小企業・小規模事業者に対して企業の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することを目的としています。
ソフトウエア費、導入関連費などが補助対象となり、
- 通常枠のA型は30万円〜150万円未満、
- B型は150万円〜450万円
の範囲で補助されます。
A型とB型いずれも、補助率は全体にかかった費用の½以下です。
また、テレワーク導入などをする企業に対して機材の購入・レンタルに充てる特別枠のC型が設定されました。
特別枠の補助枠は30万円〜450万円で、補助対象経費の 1/6 以上が以下の要件のいずれかに合致する投資の場合は補助率が一般枠より良くなります。
- 「サプライチェーンの毀損」の対応を導入→補助率⅔
- 「非対面型ビジネスモデルへの転換」・「テレワーク環境の整備」を導入→補助率¾
新型コロナウイルス感染症の影響により急なテレワーク導入が余儀なくされたなど、申請前に購入したものについても対象になる場合もあるようです。
「遡及申請可能期間」も4月7日~5月10日に設定されているので、要件に当てはまる場合は申請してみてはいかがでしょうか。
詳細を、知りたい方は、IT導入補助金の公式サイトをご確認ください。
参考: IT導入補助金2020
設備資金の融資制度についても紹介!
補助金の要件を満たさなかったり、補助金と自己資金だけでは必要な設備投資が行えないときには、やはり融資を検討することになります。
ここでは、中小企業が利用しやすい融資方法を紹介します。
中小企業が相談しやすい日本政策金融公庫の設備資金
日本政策金融公庫の融資には様々な種類があり、要件に合わせた設備資金の借入ができます。
小規模企業向けの一般貸付では、4,800万円が設備資金の融資上限で返済期間は10年以内、据置2年以内です。
また、これから創業するか創業5年以内の企業が利用できる新創業融資を利用することにより、創業時に必要となる設備投資をすることもできます。
詳しくは新創業融資について説明した記事「創業融資で人気の「政策金融公庫」と「制度融資」のメリット・デメリットを纏め!融資以外の資金調達方法も紹介」も参考にしてください。
また、設備投資を目的に融資を受けたい際には「設備投資計画書」の提出も必要になりますので準備をしておきましょう。
設備投資計画書には、以下の項目があります。
- 設備投資を計画した理由・・・目的、内容、効果等
- 資金計画と調達方法・・・資金内訳、金額、資金の調達方法等
- 事業の見通し(月平均)
- 自由記入欄(アピールポイント等)
参考:日本政策金融公庫
制度融資の設備投資は保証料が補助されるものもあり
地方自治体・信用保証協会・指定金融機関の三者協調で中小企業に融資を行う制度融資があります。
金融機関としてプロパーでは融資しにくい場合でも、保証協会の保証が付いたり地方自治体の預託金を金融機関に提供したりすることにより融資がしやすくなるのです。
また、保証料や金利の一部を負担してくれる制度もあります。
制度融資にもさまざまな種類があり、要件をクリアすると通常よりも期間や保証料など好条件で借り入れができる場合があります。
幅広い用途で使える一般枠の融資限度枠は担保なしで8千万円、担保有りで2億円です。
こちらの設備資金の返済期限は10年以内、据置期間は6か月以内になります。
また、設備投資として事業の実施に必要な機械・装置、工具・器具、備品など設備導入、増強、改良、補修、または建物の改修、建替等(耐震化、バリアフリー化も含まれる)を行う企業に対する設備投資・企業立地促進を目的とした融資制度もあります。
こちらのの融資限度枠は担保なしで8千万円、担保有りで2億円です。
返済期限は15年以内、据置期間は2年以内で、こちらの制度では保証料の⅔の補助があります。
なお、制度融資についてご興味のある方は、さまざまな種類の制度融資を紹介をした記事「中小企業が利用しやすい「制度融資」とは?種類や申込方法を紹介」がありますので参考にしてみてください。
まとめ
設備投資は企業の成長に不可欠です。
設備投資の妥当性を検証するためにも、事業計画を作り投資の回収がきちんとできるか(利益を出せるか)を考えましょう。
設備資金をご自身で準備できない場合は、返済の必要のない補助金や、融資を利用することもできます。
補助金なら設備投資を伴う事業で申請しやすい「ものづくり補助金」やテレワーク導入にも使える「IT補助金」、
また融資でも中小企業の設備投資で使いやすい制度が用意されています。
ぜひご自身の会社に合う制度を有効に使って、企業の成長・存続に向けた設備投資を行っていきましょう。
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