中小企業は債権管理をどう行うべき?目的や方法を分かりやすく説明します

あなたの会社では、債権管理をどのくらい行っていますか?

企業を存続させていく上で、売上や利益を着実にあげることはもちろん重要です。

しかし、利益がきちんとあっても資金繰りがうまくいかず、「黒字倒産」に至ってしまう企業もあります。
このような事態を招かないためにも「債権管理」はとても重要です。

この記事では、債権管理を行う目的から具体的な方法、便利な関連サービスまでご紹介していきます。

債権管理の目的とは?

現金に余裕がなくても資金繰りを維持する手段

多くのBtoB企業では、取引先との信頼関係のもと、売上として回収する現金を頼りに、仕入商品や人件費などの支払に充てています。

そのため、売上代金を回収できなくなると、支払ができなくなり、資金繰りが一気に悪くなるリスクがあります
また債権管理が甘いと、売り上げ代金が回収できているのに、回収額より支払額がオーバーしてしまうこともあります。

このような事態に備えて、現預金を十分に備えることができると安心です。
しかし、特に中小企業は事業維持や拡大のための投資に資金を注入する必要があり、潤沢な現預金を確保することは難しい傾向にあるようです。

そのため、普段から売掛債権の管理をすることが非常に大切になります。

取引先の資金繰り悪化にも備えることが大切

BtoBの商取引上では、商品やサービスなどを提供した際に、その場で現金回収するのではなく、1か月の商い分をまとめたものを後日請求することが多くあります。
たとえば、4月中に数回に渡り発生した商いの料金を4月末でまとめて請求書を発行し、翌月の5月末に支払ってもらうというやり方です。

このように商品やサービスの提供から現金の回収までに時間がかかる場合に、「売掛債権」が発生します。

多くの取引先とのビジネスは、売掛先(債務者)を信用して、売掛債権は回収できるものとして成り立っています。
しかし、売掛先の資金繰り悪化して期日までに支払ができないということもあるでしょう。

そうなると債権の回収見込みで支払しようとしていたものができなくなり、連鎖倒産にもなりかねません。

このような事態を防ぐためにも債権管理は必要不可欠なのです。

 

債権管理の具体的な方法

債権管理の重要性について、ご理解いただけたかと思います。

ここからは、債権管理はどのようにすれば良いのか、具体的な方法を以下の3つのポイントから確認していきます。

  1. 取引先の与信管理を行うことで異変に気づく
  2. 売掛帳で債権を細かく管理する

  3. 時効にならないように遅延したら催促する

①取引先の与信管理を行うことで異変に気づく

売掛先が、業績不振や資金繰り悪化により支払いができなくなることを、未然に気づくために与信管理は大切です。

決算書類などを見せてもらい取引先の財務情報を確認できると良いですが、上場をしておらず決算を公開する義務のない中小企業にとっては決算開示の交渉がしにくい場合もあるでしょう。


そのような場合には、帝国データバンク東京商工リサーチなどを利用して取引先の企業情報を調べる方法がおすすめです。

帝国データバンクや東京商工リサーチのデータでは、企業にまつわる情報とスコアリングをチェックすることができます。

スコアリングとは、業歴・資本構成・事業規模・経営者・将来性などで決まる信頼性確認の仕組です。

データの取得には料金がかかります。

参考に、帝国データバンクのデータ取得の料金を載せておきます。
(件数の有効期間は申し込みから1年間)
データを取得する件数(社数)が多いほど、1件あたりの金額は安くなります。

調査件数 料金 1件あたり金額
5件 12万円 24,000円
9件 20万円 22,222円
15件 30万円 20,000円
27件 50万円 18,519円
63件 100万円 15,873円
99件 150万円 15,152円
150件 225万円 15,000円

(参照:帝国データバンク利用案内

特に大きな取引を行う前に、信頼性を確認してから取引を始められる安心料と考えれば、それほど高くはないのではないでしょうか。

調査内容を確認して、「信用力に問題がありそうだ」と感じる場合には取引を止めたり、少額の取引に留めたりすることで、債権を回収できなくなるリスクを減らすことができます。



また、売掛先への定期的なコンタクトも怠らないようにしましょう。
定期的に売掛先へ実際に足を運び、変わった様子がないかを確認することも大切です。

経営者から直接業績の話を聞くのはもちろんですが、従業員が減っていないか、社内がきちんと手入れされているかなどの様子から取引先の異変に気づくこともあるからです。

契約を結んだから終わりではなく、定期的にフォローすることで取引先の異変を察知して、先に手を打てるようにしましょう。

②売掛帳で債権を細かく管理する

売掛帳とは、仕訳帳や総勘定元帳とは別に設ける補助簿のことです。

売掛先が増えることにより、いつ・いくらの入金があるかが管理しにくくなるので、売掛先毎に売掛金の残高を記帳していきます。

この売掛帳で管理していれば、売掛金の回収見込みの日に入金がない場合でも「どの取引先の売掛金か」を把握できます。


件数が増えたら、入金消込作業を必ず実施

特に、取引件数が増えると、どの売掛金が入金されていて、どの売掛金が入金されていないかがわかりにくくなります。

そのような際には、入金消込の作業を必ず、実施しましょう。

月次、週次、日次等、タイミングを決めて、定期的に実施することで、入金漏れを素早く把握することができます。


入金消込の手作業が大変な場合は自動化を検討

件数が膨大になると、手作業での入金消込は、非常に手間がかかります。

また、銀行振込の際には、以下のような問題が発生することがよくあります。

  • 振り込み名義がカナで読みづらい
  • 振込手数料を差し引かれて振り込まれることが多く、請求書と数字が合わない
  • 顧客番号等、指定した文字列が含まれておらず判別できない

このように作業が煩雑で、消込作業が困難な状況になった場合には、以下のような対応も検討してみましょう。

  • 顧客ごとに振込専用の口座番号を割り振る仮想口座(バーチャル口座)
  • 入金消込の自動化ツールの導入


売掛帳で顧客別の状況を適切に把握

また、一つの取引先に取引が集中すると、その取引先が支払不能や取引終了となった場合のインパクトが大きくなります。

大手企業で業績が安定している先ではない限り、取引先は分散させておいた方がリスクは少なくなります。

そのため、売掛帳を定期的にチェックし、売掛先が一定の取引先に依存しすぎていないかというチェックもしていきましょう。

③時効にならないように遅延したら催促する

売掛帳で売掛先の入金が遅延したことに気づいた場合には、きちんと催促することが大切です。

ただ支払を忘れていただけですぐに対応してもらえる場合には良いですが、それが何度も続く場合や、すぐの対応がない場合には注意が必要です。

商品に対する売掛債権の時効は2年間(宿泊費や飲食費は1年間、コンサルティング費は5年間などサービス内容によって異なります)となっており、それを過ぎると売掛先は支払をする必要がなくなります

最悪の場合、売掛債権を踏み倒そうと考える取引先もあるかもしれません。

そのため、必ず期間内に支払に応じてもらえるように交渉していきましょう。


もし売掛先が支払に応じてくれる様子がない場合は、弁護士に依頼して法的手段を取ってください。

弁護士費用はかかってしまいますが、法的手段に出た方が売掛先も支払に応じる可能性が高くなります。

資金繰りをサポートするサービス3選

売掛債権をきちんと管理していた場合でも、社会情勢や景気が突然変化して急に売掛先が支払できなくなるリスクはあります。

このような事態に備える方法として、企業の資金繰りを支えるサービスを3つ紹介します。

 

連鎖倒産に備える「経営セーフティ共済」

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは、売掛金がある取引先が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。

万が一、取引先が倒産した場合には無担保・無保証で納付した掛金の最大10倍(上限8,000万円)までの借入ができます

平成30年3月末の時点で約46万の企業や事業者などが経営セーフティ共済に加入しており、共済金の貸付け実績は、累計で約27万件、約1兆9,000億円となっているそうです。

借入ができる倒産内容は以下の通りです。

  • 共済金の借入れが受けられる取引先の倒産
  • 法的整理
  • 取引停止処分
  • でんさいネットの取引停止処分
  • 私的整理
  • 災害による不渡り
  • 災害によるでんさいの支払不能
  • 特定非常災害による支払不能

ただし、売掛先が夜逃げをした場合には利用できないので注意しておきましょう。


掛金は毎月5,000円〜20万円まで選ぶことができ、途中で増額・減額もできます。

また、確定申告時には掛金を損金扱いできるので節税にもなるのもメリットです。

売掛先の倒産が確認したらすぐに借入ができるので、連鎖倒産を防ぐことができます。


共済契約を自己都合で解約する場合でも、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば、掛金全額が戻るのも嬉しいポイントです。
(12か月未満は掛け捨てとなります)

参考:中小機構

売掛先の信用力に不安があるなら「ファクタリング」

ファクタリングとは、売掛債権の期日前にファクタリング業者に手数料を支払うことにより売掛債権を買い取ってもらうスキームです。
期日より前に現金化でき、銀行融資に比べると手軽に利用できるので、緊急で資金調達が必要な場合に使われます。

ファクタリングは、手形文化が浸透している日本ではまだあまり馴染みがありませんが、欧州では中小企業の資金調達方法として利用されることも多いようです。

ファクタリングは、基本的には売掛先が債務不履行となり売掛金の支払いができなくなっても、契約者に補填する義務はありません


一方、ファクタリングとよく比較される受取手形を銀行に買いとってもらう「手形割引」の場合は売掛先(手形発行した人)が債務不履行となった場合に、裏書人(銀行に手形を持ち込んだ人)が支払いする必要が出てきてしまいます。

そのため、「売掛先の信用力が低く、期日に支払ってもらえるか不安」という場合にはファクタリングで買い取ってもらった方が安心な場合もあるのです。


特に情報が少ない取引先と取引を始める場合には、最初の数ヶ月はファクタリングでやりとりをしてみるというのもリスクヘッジになるのではないでしょうか。


また、ファクタリングには、2社間ファクタリングと3者間ファクタリングがあります。

契約者(売掛債権を売る人)とファクタリング業社の2社間で契約をする場合には、債権譲渡登記をする必要はありますが、取引先にファクタリングの事実を伝える必要がなく気軽です。

ただし、信用力が低い取引先の売掛債権を買い取ってもらう場合にも手数料が高く設定されます。

また、ファクタリング業者はさまざまなので、常識を超えた手数料を請求してくる事例もあります。

必要以上に高い手数料を支払わないためにも、複数のファクタリング業者で見積もりを取ったり、手数料範囲が明記されているクラウドファクタリング業者を使ったりすることをおすすめします。

売掛債権が回収できない場合に備えた「保証サービス」を利用する

売掛債権を保証するサービスを提供する会社もあります。

保証料を支払うことにより、万が一売掛先が倒産したり入金が遅れたりした場合に当該の売掛債権分を補償してくれる仕組です。

保証があることにより、債権管理に時間をかける必要がなくなり営業活動に注力できるメリットがあります。

最近ではオンラインで手続きが完了するサービスもあるので、手間なく簡単に利用することができます。

まとめ

債権管理では、売掛先の与信管理を普段からすることが大切です。
売掛先の変調に早めに気がつくことで、突然売掛金回収ができなくなる事態を防ぐことができます。

また、売掛帳で債権管理することにより、どの売掛先にいくら売掛金があるか把握しやすくなるでしょう。
取引の件数が増えてきた場合には、入金消込を定期的に実施するようにしましょう。

万が一、売掛金が回収ができない場合は、早急に振り込み依頼を行い、支払に応じてくれない場合には法的手段についても考えてください。

さらに、債権管理が不安な場合には、以下の手段、経営セーフティ共済、ファクタリング等を検討するのも手段です。

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