【2020年度1-5次採択情報追加】「ものづくり補助金」採択実績から採択されるポイントを読み解く!



ものづくり補助金は、成長に向けた設備投資を行う中小企業が、最大1000万円の補助を得られる制度です。
金額も大きく、融資とは異なり返済の必要もないため、非常にメリットの大きい仕組みといえます。

一方で、審査があり全ての企業が得られるわけではないため、
これまでに採択された企業や活動の傾向を見て、対策を講じることをおすすめします。

そこでこちらの記事では、ものづくり補助金の2020年度1〜5次締切分採択実績を分析し、説明していきます。

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ものづくり補助金の2020年度の申請のコツについてより詳細な解説を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください!

【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】

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また2021年春には、最大1億円が補助される「事業再構築補助金」の応募も始まりました。
感染症拡大による経済社会の変化に対応するため、新分野展開や業態・事業・業種転換等を検討される企業様は、ぜひ次の記事もお読みください。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説

2020年度ものづくり補助金・1次〜5次の合計採択率は平均42%!

2020年度の採択率は、それぞれ以下のとおりです。
例年と同じく、平均採択率は42%でした。

締切 応募件数 採択件数 採択率
1次
(3月締切)
2,287 1,429 62%!
2次
(5月締切)
5,721 3,267 57%!
3次
(8月締切)
6,923 2,637 38%
4次【一般型】
(12月締切)
10,041 3,132 31%
5次【一般型】
(2021年2月締切)
5,139 2,291 45%
合計 30,111 12,756 42%

ものづくり補助金採択率・2020年と過去5年分との比較

以下の表とグラフように、過去の採択率の推移を見ると概ね30~50%で推移ししています。
2020年度の1次・2次は例年に比べかなり高めでしたが、3次以降は例年並みに戻っていると言えそうです。

年度 予算額 補助上限 公募 申請数 採択数 採択率
2015 1,020億 1,000万 1次 17,128 7,253 42%
2次 13,350 5,881 44%
2016 1020.5億 3,000万 1次 24,011 7,729 32%
2次 2,618 219 8.4%
2017 763.4億 3,000万 1次 15,547 6,157 40%
2018 1,000億 1,000万 1次 17,275 9,518 55%
2次 6,355 2,471 39%
2019 800億円 1,000万 1次 1,111 332 30%
1次 14,927 7,468 50%
2次 5,876 2,063 35%
合計       118,198 49,091 42%

 

出典:ものづくり補助金 公募要領 概要版

2020年ものづくり補助金の採択率が1次・2次で高かった要因

今回の1次公募採択率は62%と非常に高い数値で過去最高です。
また2次募集も、57%と過去2番めに高くなっています。

この背景には、1次・2次募集ともに、例年よりも応募件数が少ないという状況があります。
応募者数が減少した要因として考えられるのは、以下です。

  • 新型コロナウイルス感染症拡大により、積極的な設備投資企業を控えている企業が増えているため
  • 2020年から通年募集の形式になったため、3次募集以降に応募しようと考え応募控えをしている企業がある
  • 賃上げ要件が厳しくなった
    (必ず1.5%以上の給与総額の増加が必要になった)

一方で、3次以降では応募件数がぐっと増えています。
この要因としては、1次公募・2次公募の時と比べて感染症拡大の企業活動への影響が小さくなっている可能性があります。
また、1次・2次で不採択となった活動が再度応募をしていることが、応募件数を増やしている可能性もあります。

2020年2次公募が始まったものづくり補助金・特別枠の採択率

なお、2次公募よりコロナウィルス感染症の特別枠が設けられました。
この特別枠で応募すると、採択に有利なのでしょうか?

2次公募の特別枠・通常枠それぞれの応募数・採択数は以下の通りです。

 
応募数:5,721者(特別枠:3,321者 通常枠:2,400者)→約58%が特別枠での申請
採択数:3,267者(特別枠:1,773者 特別枠申請から通常枠:488者 通常枠:1,006者)

つまり、採択率で見ると、以下のことがわかります。

  • 特別枠で応募して特別枠で採択されている割合・・・53%
  • 特別枠で応募して、特別枠・通常枠いずれかで採択されている割合・・・68%!
  • 通常枠で応募して、通常枠で採択されている割合・・・42%

つまり、特別枠で応募したうち、なんらかの形で採択されている割合は7割近くと非常に高い割合です。
その分なのか、通常枠の応募だけでみると、採択率は4割程度と例年と比べても低めです。

では、3次募集はどうでしょうか。

応募数:6,923者(特別枠:4,560者 通常枠:2,363者)→約66%が特別枠での申請
採択数:2,637者(特別枠:1,076者 特別枠申請から通常枠:1,072者 通常枠:489者)

採択率で見ると、以下のとおりです。

  • 特別枠で応募して特別枠で採択されている割合・・・24%
  • 特別枠で応募して、特別枠・通常枠いずれかで採択されている割合・・・47%!
  • 通常枠で応募して、通常枠で採択されている割合・・・21%

やはり、特別枠の応募による採択率は47%と、通常枠の応募による採択率の21%と比べて非常に大きくなっています。

特別枠の要件に合う企業は、できる限り特別枠での応募をすることをおすすめします。

 

2020年ものづくり補助金のデータでみる「採択されやすい申請」とは

「ものづくり補助金総合サイト」にはデータポータルというページがあります。

ここからは採択されやすい申請のヒントが得られますので、詳しく見ていきましょう。

2020年1〜5次は製造業、学術研究・専門技術サービス業の採択率が高い

ものづくり補助金という名前から製造業が対象の補助金のように見えますが、実際には、製造業以外にも、建設業や情報通信業、卸売業・小売業や医療・福祉、サービス業等、多くの業種が申請しています

申請に占める割合としては、製造業が最も高く52.5%、医療・福祉が9.3%、卸売業、小売業が6.4%となっています。

採択率について見ていくと、

  • 1位:製造業・・・45.6%
  • 2位:学術研究・専門技術サービス業・・・43.1%
  • 3位:建設業・・40.7%

となっています。

出典:ものづくり補助金総合サイト

支援機関が関与しているほうが採択率が高い

また、ものづくり補助金申請の際に、支援機関に援助してもらった事業者の方が採択率が高いというデータもあります。

支援を受けていない事業者の採択率は36.2%です。

それに対して、支援を受けた事業者の採択率は、以下の通り高くなっています。

さらに、補助金額に対する報酬が高い方が採択率が高いことも読み取れます。

  • 報酬10〜15%:採択率58.2%
  • 報酬5〜10%:採択率49.8%
  • 報酬0〜5%:採択率43.2%

以上の結果からものづくり補助金申請の際は、専門性の高い支援機関からの助言を受けたほうが採択の確率は高いと言えます。

出典:ものづくり補助金総合サイト

加点項目は多いほうが採択率が高い

加点項目について、満たした項目数が多い事業者ほど採択率が高いという結果も出ています。

加点項目を一つも満たしていない場合の採択率は15.6%とかなり厳しい状況であることが分かります。

加点項目を5つ満たしている場合の採択率は71.0%、4つ満たしている場合は63.0%です。

加点項目を多く満たしているほど採択される確率が高いことは明らかなので、加点項目はできるだけ満たすようにしましょう。

出典:ものづくり補助金総合サイト

参考までに、加点項目は以下のとおりです。一つでも多く満たすためには、経営革新計画と事業継続力強化計画を取得すべきでしょう。

  1. 成長性加点有効な期間の「経営革新計画」の認証承認を取得した事業者(申請中も可)

  2. 政策加点
    ・小規模事業者
    ・創業・第二創業後、間もない事業者(5年以内)

  3. 災害時加点
    ・新型コロナウイルスの影響を乗り越えるために設備投資等に取り組む事業者(特別枠の申請者) 
    ・有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者(申請中も可)

  4. 賃上げ加点
    ・「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」又は「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」

    「被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合」

経営革新計画について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。

「経営革新計画」とは?申請方法は?融資や補助金等でのメリットも徹底解説!

従業員規模が小さいほど採択率は高い

従業員数別でみると、従業員が少なめの企業のほうが採択率は高くなっています。

従業員数が6〜20人の事業所の採択率が1番高く、44.8%です。

100人を超える規模の事業所の採択率は38.4%と低いことが分かります。

小規模事業者が、政策加点として加点項目に含まれていることが影響している可能性があります。


出典:ものづくり補助金総合サイト

ものづくり補助金・都道府県による採択率の違い(2020年2次)

また都道府県別の採択率についても考えてみました。
ここでは、2次締切の採択結果を対象にしています。

参考:推定方法
採択結果のPDFを見ると、受付番号の末尾は、各都道府県での申請番号になっています。
この申請番号は、採択可否に関係なく申請順に割り振られていると考えられるため、各都道府県の最終の番号を見ることで何件程度応募があったかがわかります。
この推定申請数と採択数をもとに、各都道府県の推定採択率を計算してみました。
全都道府県別の申請数・採択数・推定採択率
  申請数 採択数 推定採択率
北海道 145 61 42%
青森県 22 12 54%
岩手県 44 22 50%
宮城県 58 30 51%
秋田県 26 14 53%
山形県 59 23 39%
福島県 51 25 49%
茨城県 113 56 49%
栃木県 84 52 61%
群馬県 98 55 56%
埼玉県 205 139 67%
千葉県 173 120 69%
東京都 715 488 68%
神奈川県 243 152 62%
新潟県 113 66 58%
富山県 78 31 39%
石川県 48 20 41%
福井県 48 16 33%
山梨県 28 22 78%
長野県 136 62 45%
岐阜県 139 79 56%
静岡県 215 132 61%
愛知県 387 256 66%
三重県 113 52 46%
滋賀県 67 32 47%
京都府 124 69 55%
大阪府 526 299 56%
兵庫県 268 145 54%
奈良県 82 43 52%
和歌山県 40 23 57%
鳥取県 13 46%
島根県 22 10 45
岡山県 136 80 58%
広島県 126 78 61%
山口県 67 44 65%
徳島県 42 26 61%
香川県 71 39 54%
愛媛県 78 49 62%
高知県 47 30 63%
福岡県 217 119 54%
佐賀県 50 25 50%
長崎県 51 22 43%
熊本県 64 33 51%
大分県 60 27 45%
宮崎県 54 30 55%
鹿児島県 54 23 42%
沖縄県 53 30 56%

この結果を見ると採択率は、都道府県ごとにバラツキが、大きいことがわかります。

2020年2次募集の採択率の高い順に並べると

  • 1位:山梨県・・・78%
  • 2位:千葉県・・・69%
  • 3位:東京都・・・68%

逆に、採択率の低い順に並べると

  • 1位:福井県・・・33%
  • 2位:山形県 ・・・39%
  • 3位:富山県 ・・・39%

となります。

1都3県をはすべて60%を超えています

関東を中心とした大都市圏のほうが比較的、採択率が高くなっています。

ものづくり会社の審査は、各都道府県別に行っているものと考えられるため、その地域ごとの採点の仕方が異なり、甘い地域と厳しい地域が出ている可能性があります。

一方で、1都3県においては、支援事業者を含めて補助金の申請についてのノウハウが十分浸透しており公募要領に沿った申請書での応募が多かったり、最新鋭の設備の導入や事業の革新性が高いことで、採択率が高くなっている可能性もあります。

2020年度ものづくり補助金・採択実績まとめ

ここまで見てきた通り、ものづくり補助金の採択率データを読み解くことで、以下のことが分かりました。

  • 2020年度の採択率は1次62%、2次57%と高かったが、3次以降は例年通りとなった。
  • 2020年2次から始まった特別枠では通常枠よりも採択率が高い
  • 業種別では製造業、学術研究・専門技術サービス業の順で採択率が高い
  • 支援機関の関与が関与している申請のほうが採択率が高い
  • 加点項目は満たしている数が多いほど採択率が高い
  • 従業員数が少ないほど採択率が高い
  • 都道府県別に採択率にバラツキがある

最大1000万円が補助されるものづくり補助金は、設備投資を行いたい製造業にとって大きなメリットのある制度です。

加点要素を満たすことや、事業計画書を公募要領に沿って書く等、しっかり準備ができれば、採択される可能性が高まります。
ご自身で作成する自信や時間がない場合は、専門家に依頼することも有効でしょう。

補助金を活用した設備投資等で、他社との差別化を図ったり、生産性を向上させたりすることで、競争優位性を築いていきましょう。

 

 

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