非正規雇用(契約社員・アルバイト・派遣・業務委託)を利用するメリット・デメリット

非正規雇用アウトソーシング の効率的な活用は、いまや企業を経営するうえで欠かせない手段といえます。

しかし、その仕組みやデメリットまでよく理解したうえで利用しなければ、あとで「こんなはずでは…」と後悔することも。

この記事では、契約社員・アルバイト・派遣・業務委託の仕組みや違い、利用するメリットとデメリットなどを解説します。
非正規雇用・アウトソーシングを有効に活用したい経営者の方は、ぜひご覧ください。

契約社員・アルバイト・派遣・業務委託とは?その違い 

まず、契約社員・アルバイト・派遣・業務委託の定義と、それぞれの違いをご紹介します。 

契約社員とは

契約社員とは、一般的に期間を決めた雇用契約( 有期労働契約 )をして働く社員」を指します。
正社員は雇用期間に定めがなく(無期)、そこが契約社員と異なる点です。

ただし法律などでの明確な定義はないため、 勤務形態は企業によってさまざま
たとえば次のような契約社員がいます。

  • 短期のプロジェクトなどで雇われ、高度なスキルを持つ
  • 在宅ワークを行う
  • 事務部門や工場で働く

そして契約社員として働く人の一番の不安は「契約が更新されない 」 こと 。
つまり「雇止め」です。そこで平成25年(2013年)に改正された労働契約法で、「無期転換ルール」が定められました。

無期転換ルールとは?
有期労働者(契約社員・アルバイト・パート・準社員など)の労働契約が、5年を超えて更新されると無期転換の申込権が発生する。
労働者が申込みした場合は無期労働契約に転換され、使用者は断ることができない

契約社員やアルバイトなど、有期契約労働者を雇用する際は、無期転換ルールをよく理解しておきましょう。

・参考)厚生労働省:有期契約労働者の無期転換ポータルサイト

アルバイト・パートタイマーとは

アルバイトとは、一般的に「学生など本業をもった人が、短時間・短期間で働くこととされています。
ただし法律などで「アルバイト」が定義されているわけではありません。

同じような働き方に「パートタイマー」がありますが、こちらは「主婦層が短時間・短期間で働く」際に呼ばれます。

アルバイトとパートには、法律的な違いはありません。
慣習的に対象によって使い分けられることが多いだけです。

労働時間や期間などの条件を満たせば、アルバイトやパートも雇用保険や社会保険に加入させる義務があります。
雇用保険に加入して一定期間働いた場合は、失業給付の支給を受けることが可能です。

このように、正社員などと同じで、労働法や労働契約法で保護される対象となっています。

派遣とは

派遣とは、次のような形態の働き方をいい、 そのルールは労働者派遣法で定められています。

  • 派遣元と労働契約を結んだ労働者が、
  • 派遣元と「派遣契約」を結んだ派遣先において、
  • 派遣先の指揮命令をうけて働く

出典:厚生労働省

アルバイトや契約社員との大きな違いは、「派遣労働者と派遣先に雇用関係がない」点です。
給与をもらうのも、保険に加入するのも、福利厚生もすべて派遣元になります。

また、派遣には次の2種類があり「高いスキルの人材を、働きぶりなどを見てから採用したい」場合には、紹介予定派遣が適しています。

  1. 一般派遣:派遣労働者が期間を決めて働く、いわゆる通常の派遣
  2. 紹介予定派遣:最長6ヶ月派遣社員として働き、その後労働者・派遣先の両方が合意すれば、派遣先の社員となる

業務委託とは

業務委託とは「外部の企業や労働者に対して、 専門性の高い一定の仕事を委託する形態」を指し、「アウトソーシング(外部委託)」のひとつです。
委託先とは、雇用契約ではなく「業務委託契約」を結びます

「業務委託」も、法律などでの定義はありません。法律では、民法の「請負契約」と「委任契約」があり、一般的にはこの2つをまとめて「業務委託」と呼んでいます。それぞれの特徴は以下のとおり。

  • 請負契約:「仕事の完成」が目的の契約。「箱を100個完成」など
  • 委任契約:「業務の遂行」が目的の契約。「9時~17時まで販売する」など

ただし、「請負(=請負契約)」・「業務委託(=委任契約)」とべつに考えるケースもありますので、注意してください。

契約社員・アルバイト・派遣・業務委託の違い

ここまで見てきたように、契約社員・アルバイト・派遣・業務委託では雇用形態や働き方のルールとなる法律が異なります。
その違いをまとめると次のようになります。

  就業先との契約 おもなルール 社会保険の加入 求めるスキル
契約社員 雇用契約 労働法 雇用先 普通~高い
アルバイト 雇用契約 労働法 雇用先 不問
派遣社員 指揮命令のみ 労働者派遣法 派遣元 普通~高い
業務委託 (業務委託契約) 民法 委託先 高い

契約社員を雇用するメリットとデメリット

ここまで、非正規雇用と業務委託がどのようなものか確認してきました。ここからは、それぞれの形態のメリットとデメリットを解説していきます。

契約社員を雇用するメリット

契約社員を雇用するメリットは、「必要なスキルをもった人材を、必要な期間だけ採用できる」点です。
すでにスキルを持っているため、教育する時間とコストがかかりません。

「半年のプロジェクトのあいだだけ。〇〇の技術を持った人材を雇いたい」といった場合は契約社員が適しています。
高度なスキルをもった人材は給与が高いですが、期間限定と考えれば許容できるコストであることも多いでしょう。

また、高いスキルを持った契約社員の補助として社員をつければ、その社員が成長することも。
職場全体のレベルアップにつながるケースもあるため、うまく利用したいところです。

契約社員を雇用するデメリット

契約社員を雇用するデメリットは、「企業が必要とするスキルをもった人材を探すことが困難」という点。

「ある程度ワードとエクセルが使えれば」というレベルなら問題ありませんが、さらに高度なスキルを求めると、なかなか人材が見つからないということも。
また本人が「できます」とアピールしたため雇用しても、思っていたほどのスキルがないこともあり得ます。

人材採用にはコストがかかりますが、特に高いスキルを持った適切な人材を探すことは困難です。
そこで、必要なスキルをもった人材を受け入れたい場合は、派遣社員を選ぶという選択肢もあります。

アルバイトを雇用するメリットとデメリット

アルバイトを雇用するメリット

アルバイトを雇用するメリットは、「繁閑に応じた人員配置が行える」点です。
「毎年この時期は忙しい」という時期に限定してアルバイトを雇えば、ずっと社員を雇うよりもコストを抑えられます

また特にスキルを持たない学生でも、補助的な業務は行えます。
すると社員は、自分の専門性の高い業務に集中できるため、職場全体の生産性があがることも。
このようにメリハリをつけて利用すれば、アルバイトは大いに職場に貢献します。

アルバイトを雇用するデメリット

アルバイトを雇用するデメリットは、「いつ辞めるかわからない」点です。
急に仕事を休むということもあります。

もちろん真面目に働く人も多くいますが、

  • 勤務する時間が短い
  • 学生アルバイトのように「本業をほかに持つ」人が多い

ために、 職場への帰属意識が低いことが多いです。
もちろんこれは非正規雇用の社員全般にいることですが、アルバイトは特に顕著といえます。

同じ理由で強い責任感をもたせることも難しいため、店内での不適切な行為をSNSにアップして世間から避難されることも。
こういった部分には、「適切な教育を行う」ことで対応する方法があります。

派遣社員を受け入れるメリットとデメリット

派遣社員を受け入れるメリット

派遣社員を受け入れるメリットは、「必要なスキルをもった人材を、高い確率で受け入れることができる」点です。

契約社員と似ていますが、派遣では派遣会社(派遣元)が「適切なスキルを持つ労働者を派遣しますよ」と保証していることが特徴。
そのため、契約社員のように「雇ってみたら、思ったほどのスキルはなかった」ということは少ないです。

あまり知られていませんが、派遣社員のスキル向上のため、 派遣会社ではスキルアップの研修などを行っています( 多くの場合無料で)。

また、派遣社員のスキルが要求したレベルでなかった場合は、交代を派遣会社に求めることも可能

・参考)ランスタッド:派遣労働者の交代を要求できますか?

このように「高いスキルを持った人材」を探す場合は、派遣会社がおすすめです。

派遣社員を受け入れるデメリット

派遣社員を受け入れるデメリットは、「人柄などを見て選ぶ事ができない」点です。

前項で「スキル不足の際は交代要求できる」と書きましたが、人柄で断ることはできません
受け入れ前に、派遣先と派遣社員が面接することも禁止です。
「人柄よりもスキルを優先させる」ことが派遣社員と、割り切ることが良いのかもしれません。

業務委託を契約するメリットとデメリット

業務委託を契約するメリット

業務委託を契約するメリットとして、以下のようなものがあります。

  1. 苦手分野の業務を外注する分、自社の得意分野に注力できる
  2. 「雇用」のリスクなく労働力を確保できる
  3. ITやシステムなど進歩の早い分野で、新しい技術を利用できる

このように、利用する人材やシステムなどを自社で持ち続ける必要がないため、トータルで見るとコスト削減につながります。

アウトソーシングの仕組みは単純ですが、委託先から提供されるサービスは多種多様です。
企業の規模や状況に合わせ、活用する範囲や効果は無限に広がります。

業務委託を契約するデメリット

業務委託を契約するデメリットとしては、次の点があげられます。

  1. 社内にノウハウや経験が蓄積されない
  2. 依頼する業務によっては、社内で行うよりコストがかかることも
  3. 前もって委託先の業務の質を判断しづらい

もちろん、どの企業もノウハウが蓄積されないことをわかったうえで委託しているはずですが、社内にまったくその知識がないことも危険です。
委託先が通常より高い料金を出してきても、「そういうものか…」と受け入れ、よけいな出費がかかることも考えられます。

外部にアウトソーシングすることで集中できる自社の強みと、デメリットとのバランスを比べながら利用することが大切です。

非正規雇用社員受け入れ時の注意点

最後に、非正規雇用社員を受け入れる際の注意点2つをご紹介します。

【注意点1 】 解雇時のルールを認識する

Q&Aサイトなどで「アルバイト先から『明日からもう来なくていい』 と言われた 。どうしようもないの?」といった質問をみることがあります。
また「派遣切り」という言葉もあるとおり、業務量が減ったなどの理由で、派遣社員を期間の途中で解雇することがあります。

「正社員でなければ、すぐに辞めさせてもいい」ような風潮がありますが、これは間違いです。
「アルバイト/パート/契約社員/派遣社員」などの名称や雇用形態に関わらず、労働者な正社員と同じで一方的な解雇はできません
契約期間中の解雇では、いずれかのルールを守る必要があります。

  1. 30日以上前に解雇の予告をする
  2. 解雇予告手当を支払う

また、女性の非正規社員が「妊娠した」ことを理由に解雇することも禁止です(均等法9条)。
のちに大きな問題になり得ますので、解雇時のルールをよく認識しましょう。

【注意点2】「同一労働同一賃金」を遵守する

企業が非正規雇用を受け入れるメリットとして、これまでは正社員よりも時給が安いから」ということがありました。
しかし現在は 「同一労働同一賃金のルールがあるため、そのような考えは通用しません。

「同一労働同一賃金」とは、正社員と非正規雇用労働者の格差」をなくすための施策。
働き方改革関連法により、2020 年4月から施行されました(中小企業では2021 年4 月から適用)。

「契約社員だから通勤手当は出さない」、「派遣社員だから更衣室は使えない」といった格差もなくすことが必要です。

厚生労働省のHPをよく確認し、「不当な扱いを受けた」と労働者から損害賠償請求などされることがないよう、注意しましょう。

・参考)厚生労働省:同一労働同一賃金特集ページ

まとめ:非正規雇用のメリット・デメリットを知って活用を

今回は、契約社員・アルバイト・派遣・業務委託のちがいと、利用するメリット・デメリットをご紹介しました。それぞれの形態の特徴がわかって頂けたでしょうか。

非正規雇用・アウトソーシングの利用は企業に大きく貢献してくれますが、「同一労働同一賃金」など注意すべき点も多くあります。
こういった注意点やメリット・デメリットをよく知ったうえで活用し、あなたの企業の成長にぜひお役立てください。