キャッシュフロー計算書を理解すれば黒字倒産は防げる!分析・作成方法を紹介!

「キャッシュフロー計算書」とは「貸借対照表」「損益計算書」と並ぶ「財務三表」として重要な役割を果たす決算書類のことです。

しかし、貸借対照表や損益計算書の見方は分かっていても、キャッシュフロー計算書について実はよくわからないという経営者の方もいます。

キャッシュフロー計算書が読めなければ、黒字倒産すらも引き起こす可能性があり、非常に大切な書類です。

今回の記事ではキャッシュフロー計算書の重要性や読み方・作成方法について紹介します。

キャッシュフロー計算書が必要な理由

損益計算書(PL)とキャッシュフロー計算書がずれる例

通常、損益計算書とキャッシュフロー計算書の利益の残高にはずれが生じます。

なぜなら、損益計算書は売上や費用が発生した都度計上する「発生主義」であるのに対し、キャッシュフロー計算書は実際に現金の動いたときに計上するからです。

たとえば、4月に売上300万円、仕入100万円、人件費150万円が発生したとします。

この売上と仕入は4月締めで5月末支払いのため4月の時点で決済する必要はありませんが、人件費については4月中に従業員に対して支払う必要があります。

このケースの場合、損益計算書ベースでは発生主義に基づき4月の段階ですべて計上します。

売上300万円-仕入100万円-人件費150万円=50万円

このように損益計算書ベースでは50万円の黒字になります。

しかし、キャッシュフロー計算書の場合は、まだ決済されない売上や仕入は計上せずに人件費だけ計上するので4月の段階では150万円の赤字です。

実際の経営においても売上金が回収されるまでは赤字で資金繰りが悪くなるので、キャッシュフロー計算書の方が実態に即しているといえます。

このように損益計算書ベースでは黒字でも実態はキャッシュ不足となり、資金繰り対策をしていないと、支払ができなかったり不渡りを起こすなどで黒字倒産を引き起こす可能性があるので注意しなくてはいけません。

キャッシュフロー計算書と資金繰り表の違い

中小企業では、資金繰りの予測をするために資金繰り表を作成しているケースがほとんどです。

では、キャッシュフロー計算書と資金繰り表の違いはどんなところにあるのでしょうか。

キャッシュフロー計算書は対象となる期間のキャッシュの状況を示す資料ですが、資金繰り表は未来のキャッシュの状況を予測できる資料です。

そのため、キャッシュフロー計算書で算出されたキャッシュの状況を分析し、資金繰りが苦しいと感じるのであればどのような対策が効果的であるかを考えると良いでしょう。

そして、資金繰り表は実際に1か月後、2か月後、3か月後のキャッシュの不足を予想し、将来資金繰り悪化に困ることがないように、作成と同時に資金繰り対策をしていきます。

キャッシュフロー計算書の計算方法と各区分の見方

それでは実際にキャッシュフロー計算書がどのように成り立っているのか、どのように計算しているのかを紹介します。

キャッシュフロー計算書の計算方法

また、キャッシュフロー計算書は「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3つの区分から成り立ちます。

これらを足し合わせたのが「期中のキャッシュ増減額」となり、「期首のキャッシュ残高」の和が期末のキャッシュ残高です。

 
期末のキャッシュ残高
=期首のキャッシュ残高+期中のキャッシュ増額分-期中のキャッシュ減少分

本業の状況がわかる営業活動によるキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフローは、売上や仕入、経費の支払いなど会社の基本的な営業活動に必要な項目を示すものです。

事業がきちんと回っている場合、この値はプラスになります。

設備投資などの状況がわかる投資活動によるキャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローは、設備投資などの投資活動による現金の流れを示すものです。

その期間の投資活動によるキャッシュフローがマイナスになっている場合は設備投資で固定資産などを購入したということが読み解けます。

逆に、プラスになっているならば保有していた固定資産などを売却したことにより資金が増えたということが分かるのです。

製造業など頻繁な設備投資が必要な会社では、投資活動によるキャッシュフローがマイナスになりやすいです。

融資などの資金調達状況がわかる財務活動によるキャッシュフロー

財務活動によるキャッシュフローは銀行などから融資や出資を受けた場合にはプラスになります。

きちんと返済できていればマイナスとなるので、マイナスの状態の方が無理のない経営ができていると評価されます。

自由に使える資金がわかるフリーキャッシュフローについて

フリーキャッシュフローは「営業活動によるキャッシュフロー」と「投資活動によるキャッシュフロー」を足し合わせたものです。

フリーキャッシュフローはプラスの方が望ましく、フリーキャッシュフローが多いと手元資金が潤沢であることを示します。

たとえば、営業活動によるキャッシュフローが+500万円、投資活動によるキャッシュフローが▲300万円だとしたら、フリーキャッシュフローは200万円となります。

企業としてはこのフリーキャッシュフローの範囲であれば自由に資金を使うことができるという訳です。

キャッシュフローの分析でチェックすべきこと

では、実際にキャッシュフローを見てどのように分析すれば良いかを紹介します。

投資活動によるキャッシュフローがプラスの時

たとえば、営業活動によるキャッシュフローが▲200万円で、投資活動によるキャッシュフローが+300万円とします。

この場合フリーキャッシュフローは100万円のプラスとなりますが、企業の経営実績を示す営業活動によるキャッシュフローが▲になっていることから、それを補うために資産を売却したとも取れます

経営でどうしても苦しくなる局面はあるので、必ずしもこのような状況が悪いわけではありませんが、本来は営業活動によるキャッシュフローでプラスにしなければいけません。

融資をする金融機関としても、このような状況が何期も続くと「経営状況が不安」と融資の継続ができなくなる可能性もあるので、根本的にキャッシュフローを改善する必要が出てきます。

投資活動によるキャッシュフローが大きくマイナスの時

営業活動によるキャッシュフローが200万円で、投資活動によるキャッシュフローが▲500万の場合、フリーキャッシュフローは▲300万円です。

財務活動によるキャッシュフローが400万円があり、キャッシュフロー計算書ベースでは100万円のプラスになっていますが、どのような点に注意して見れば良いでしょうか。

この場合、本業で得られる収益より大きな投資活動をしており、そのための資金調達を外部から行っていることが分かります。

企業にとって事業の成長・継続の為に投資は不可欠ですが、身の丈に合っていない投資を行っている場合は資金調達の返済が苦しくなる可能性もあるでしょう。

キャッシュフロー計算書の作成方法(間接法・直接法)

キャッシュフロー計算書は、直接法間接法の2種類の作成方法があります。

最終的な金額は一致しますが、営業活動によるキャッシュフローの作成プロセスが目的により異なるのです。

それぞれの作成方法を紹介しますので、ご自身の会社の状況に合わせて選んでください。

キャッシュ増減の原因がわかりやすい直接法

直接法は、営業活動によるキャッシュフローを取引別に示すことを目的にしています。

  • 商品販売による資金増加額(+)
  • 仕入れによる資金流出(-)
  • 人件費支出による資金支出(-)
  • その他経費などの営業支出(-)

このように取引別の項目で計上することにより、キャッシュ増減の具体的な要因がわかりやすくなる効果があるのです。

ここまでで小計を出し、法人税などの支払いによる支出をさらに引きます。

ただし、次に紹介する間接法に比べると作成に手間がかかります。

損益計算書との差がわかりやすい間接法

間接法は、営業活動によるキャッシュフローの金額と損益計算書の利益がなぜ異なるのか、原因を示すことが目的です。

計算にあたり必要になる項目は以下の通りです。

  • 税引前当期純利益(+)
  • 減価償却費(+)
  • 有価証券売却損(+)
  • 売上債権の増減額(±)
  • 棚卸資産の増減額(±)
  • 仕入債務の増減額(±)

直接法と同じくここまでを小計した後に法人税分を引きます。

間接法は直接法に比べると作成は楽ですが、具体的になにが原因でキャッシュの増減があったかはわかりにくいのがデメリットです。

営業活動によるキャッシュフロー以外の作成方法は同じ

営業活動によるキャッシュフローが計算できたら、次に投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローを計算しますが、これらの計算方法は直接法・間接法ともに同じです。

投資活動によるキャッシュフローでは、固定資産、有価証券、固定資産売却益・損、有価証券売却益・損などを計算します。
財務活動によるキャッシュフローでは、短期・長期借入金、自社株式、配当金などを計算します。

全体としては、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローをすべて足すことにより、当期の現預金の増減額を計算することができます。

さらに、当期の現預金の増減額に期首の現預金の残高を足すことで、期末の現預金の残高が算出できます。

まとめ

ここまで、期末のキャッシュの状況がわかる「キャッシュフロー計算書」について、役割や分析・作成方法を紹介してきました。

キャッシュフロー計算書は、「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3つの区分で成り立っています。

また、「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」の和が「フリーキャッシュフロー」で企業が自由に使える資金です。

キャッシュフロー計算書は、営業活動によるキャッシュフローの計算を「直接法」「間接法」の2つから作り方が選べます。
どちらも最終的な金額に差は出ませんが、何を知りたいかで作り方が変わります。
項目別に詳しく計算する直接法はキャッシュの増減要因が分かりやすく、間接法は損益計算書との差が分かりやすいです。

損益計算書は発生主義で計上するので、実際にキャッシュが動くまでに時差ができます。

黒字倒産を避けるためにもキャッシュの状況を理解するのは不可欠なので、ぜひキャッシュフロー計算書を活用してください。

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