DES(デットエクイティスワップ)とは?活用メリット・デメリットを説明!

デッドエクイティスワップ(DES)とは、デッド(債務)をエクイティ(株式)に交換する方法です。

債務超過となった企業の負債を資本に変えることでB/Sが改善するという効果があります。

DESを利用するメリット・デメリットを債務者・債権者の両方の視点から紹介します。

DES(デットエクイティスワップ)とは?

具体的には、債務超過で財政破綻状態にある企業の債務を、債権者(銀行や企業再生ファンド、オーナー企業の経営者)が債権による現物出資を行い、債権の株式化をします。

このDESはバブル崩壊による不良債権を多く抱えた日本で、企業再生法として債権放棄・リスケジュールと共に活用されるようになりました。

過去には三菱自動車や長谷工コーポレーションがDESを活用して再生を果たしています。

DESは企業再建後に株式を換金するために、上場している大企業で行われることが多い手法です。

一方で、中小企業でも役に立つスキームです。

たとえば、企業(債務者)が持つ2億円の債務を銀行(債権者)が現物出資するとします。

そうすると銀行の債権は株式となり、企業のB/S上では債務2億円が資本となるので、財務状況は健全化されます。

債権者のB/S

債権→株式

債務者のB/S

債務(負債)→資本(資本)

ただし、銀行が債権者となる場合は債務者の発行済株式総数の5%以下しか保有できないというルールがあるので注意しましょう。

DESを実施する理由

DESをすることにより、債務者としては負債を圧縮することができます。

また、銀行などから融資を受けている場合は返済が必要になりますが、株式として銀行が保有する場合は返済する必要はありませんので、資金繰り悪化を防ぎます

ただし、銀行などは株式の売却益に期待してDESを活用することを選ぶので、再建に期待できる企業でない限りこの手法は利用できないという点で注意が必要です。

また、DESは大手企業によく利用される手法ではありますが、中小企業において役立つスキームでもあります。
中小企業の場合、財務状況が悪化すると経営者が貸付金として企業に対して貸付を行うことが多いです。
貸付金が増えれば、債務超過になる可能性でてきてしまいますが、債務超過となれば銀行などの金融機関からの支援を受けるのが難しくなります。

しかし、オーナー企業の場合、経営者と企業は実質同一体であることがほとんどですよね。
そのため、経営者の個人の資産に余裕があるならば、DESが有効です。

DESを行い経営者が債権を株にしてしまえば企業の債務超過が解消されます。

経営者としては株式が増えれば将来的に配当や売却益が増える可能性がありますし、債権として所有して金利を得るよりリターンが大きくなる可能性が高いです。

デッドデッドスワップ(DDS)との違い

デッドデッドスワップ(DDS)とは、債権者(銀行)が、既存の債権(融資)を、劣後ローンなどへ変更することで、中小企業に使われる手法です。

DDSは、DESと同じくバブル後の企業再建の手法として用いられるようになりました。

このDDSで用いられる劣後ローンとは、他の債務より返済の順位が後になるローンです。
万が一、債務者が破産した場合に他の債務の支払いが終わった後に初めて支払いがされるというものです。

そのため、債務者が倒産した場合には回収することがほとんどできないものとして、資本として考えられます。
債務が消滅するのDESとは異なり、債務として残るので返済の義務は残りますが、劣後化することにより財務状況は改善します。

ただし、このような劣後ローンは一定の財務状況をキープできなければ優遇措置が取り外されるような特約(コベナンツ)がついている場合もあるので、コベナンツに抵触して特約が取り外されないように経営改善や収益化に励む必要があるといえるでしょう。

金利も通常の融資に比べると高く設定されるので、金利負担が大きくなるということは覚えておきましょう。

債務者にとってのDESを実施するメリット・デメリット

債務者にとってDESを実施するメリットは、有利子負債を圧縮して、自己資本比率が高めることができることです。

銀行は、企業の財務状況を確認する場合、自己資本比率を重視するので、DESを実行することで銀行からの与信審査が良くなることに期待ができます。

銀行の与信審査で良い内容(格付)となれば、金利が安くなったり、融資枠が広がったりするので、再建のために融資が必要という場合にはメリットが大きいといえます。

また、借入金が債権に変わることによりそれまで支払っていた金利の負担を減らすことができますし、キャッシュフローも改善されます。

デメリットとしては、債権者が株主になることで経営に関して口出しをされるようになり、経営の自由度が減ります。

また、金利負担は減っても配当を支払う可能性があることは理解しておく必要があります。

債権者がDESに応じるメリット・デメリット

債権者にとってのメリットは、株主となることで経営に参画できるようになることと、経営が再建して株価が上がれば株式の売却益や配当を得ることも可能になることです。

再建が上手く行くことにより、場合によっては債権額以上のキャピタルゲインになる可能性もあります。

債権放棄をしてしまうと、後にその企業が経営を再建したとしてもリターンを得ることができません。

DDSについても銀行内部の査定で負債を資本とみなすだけであり、実際に債務超過が改善されるわけではないです。

そのため、良い商品や特許がある事業や、将来性がある事業など、再建に望みがある場合にはDESを選んだ方が良いといえます。

また、DESは債務免除をすることになりますが、債権者としては貸倒引当金を減額できるというメリットもあります。

ただし、企業再建は債務者の本気度によるので、不確実なものです。

たとえ株主となり再建について口出しができるようになったとしても、経営陣だけではなく従業員のやる気がなければ再建することはできません。

再建の可能性がない場合、問題を先延ばしにするだけになるので、DESを利用する企業が再建できるポテンシャルがあるかはきちんと精査されます。

また、DESを行うことにより、発行済株価が増えるので、株価が変動する可能性があります。

さらに、DESを利用すると「債務消滅益」が発生するので課税される点にも注意です。

現物出資型・金銭出資型それぞれの手続きについて

旧商法では、DESを活用するためには、裁判所の選任する検査役の調査が必要とされていました。

ただし、新会社法では検査役の調査が省略できるようになったので手続きは簡易化されています。

このような経緯もあり、大企業だけではなく、中小企業でもDESを活用した財務内容の改善が行うことができるようになったのです。

ただし、間違った手続きをしないためにも税理士には必ず相談したほうが良いといえます。

また、DESには現預金が動かない「現物出資型」と現預金が動く「金銭出資型」の2種類があります。

それぞれの手続き方法について紹介します。

帳簿上で科目を振り替えるだけの現物出資型

現物出資型のDESは、既に融資をしている債権を株式にするので、債務者としては株式の発行が必要となります。

債権者としては既に融資しているものが出資という形に変わるだけなので、帳簿上の操作で手続きは完了します。

この株式の交付は、「第三者割当増資」に該当します。

DESを実施する場合、株式の譲渡制限の無い会社(公開会社)では原則として取締役会の承認、株式の譲渡制限が有る会社(非公開会社)では株主総会の承認が必要です。

また、DESを実施することにより、資本金の額が増えますが、効力発生日から2週間以内に法務局で登記を行う必要があります。

登記で必要な書類は以下の通りです。

  • 株主総会議事録
  • 取締役会議事録

また、株式化する債権額が500万円を超える場合には以下の書類の提出も必要になります。

  • 仕訳伝票
  • 現金出納帳
  • 買掛元帳

※債権者に割当てる株式が、発行済株式総数の10分の1以下の場合には必要ありません。

現預金の移動がある金銭出資型

金銭出資型のDESは、債権者は債務者の増資の求めに対して現金を払い込むので、現物出資型とは異なり現預金の移動があります

債務者は増資額に見合う株式を交付しますが、この増資額である現金を債務者は自由に使うことができないのが特徴であり、増資資金は出資をおこなった債権者への債務支払に充当させる約束になっています。

現物出資型DESは、債権が消滅するので債務者としては「債務消滅益」に対して課税が行われますが、金銭出資型の場合は課税されることを逃れることができる点でメリットがあります。

まとめ

経営がうまくいかず、債務超過になった場合の再建方法の一つとしてDESが活用できることを紹介しました。

現物出資型DESは、既に融資している債権を帳簿上で振り替えるだけなので、手続きとしても簡単です。

DESを活用することにより、債務者としては負債を資本に振り替え、財務状況を改善できるというメリットがあります。

債権者は債権放棄することになりますが、株主になることで再建が成功した場合にはキャピタルゲインを得ることに期待できます。

ただし、債務者としては経営が自由にできなくなりますし、債権者としては債務者の経営が上手くいかなかった場合には出資額(もともと融資額)を回収できないというリスクもあります。

そのため、債務者・債権者それぞれがメリット・デメリットを理解した上で利用することをおすすめします。

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