2020年度「ものづくり補助金」申請書の書き方!審査のポイントや加点項目も解説

設備投資などの対象経費について、最大1,000万円が交付されるものづくり補助金制度。
会社にとって大変有益な制度ですが、制度の仕組みや申請書類などがとてもわかりづらい点がネックです。

そこでこの記事では、ものづくり補助金の申請に必要な書類や審査のポイント、加点項目などについて解説していきます。
ものづくり補助金の申請を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。

申請の前に:ものづくり補助金を理解しよう

まずは、ものづくり補助金の基本知識についてご紹介します。

ものづくり補助金とは?

ものづくり補助金とは、中小企業などの生産性向上に貢献する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する、補助金制度です。

正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。
そして応募コースには、次の三つがあります

  1. 一般型
  2. グローバル展開型
  3. ビジネスモデル構築型

また、申請したすべての事業者に、補助金が交付されるわけではありません。
全国採択審査委員会における審査を受け、採択された事業者のみに交付されます。

例えば、一般型の令和2年度3次締め切り分については、応募者数が6,923で採択者数は2,637、採択率は38%でした。

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ものづくり補助金の2020年の傾向等についてより詳細な解説を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください!

【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】

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また2021年春には、最大1億円が補助される「事業再構築補助金」の応募も始まる見込みです。
感染症拡大による経済社会の変化に対応するため、新分野展開や業態・事業・業種転換等を検討される企業様は、ぜひ次の記事もお読みください。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説



ものづくり補助金の対象経費と補助金額

ものづくり補助金では、補助の対象となる経費について補助金が支給されます。
そして補助金には、補助率と金額での上限があります。

各応募コースにおける、対象経費・補助率・補助金額は次の通り。

一般型

対象経費

  • 機械装置・システム構築費
  • 技術導入費、専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費

補助率

  • 中小企業者 1/2
  • 小規模企業者・小規模事業者 2/3

補助金額
100万円~1,000万円

グローバル展開型

対象経費

  • 機械装置・システム構築費
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 海外旅費

補助率

  • 中小企業者 1/2
  • 小規模企業者・小規模事業者 2/3

補助金額

1,000万円~3,000万円

ビジネスモデル構築型

対象経費

  • 機械装置・システム構築費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 人件費
  • 旅費
  • 謝金
  • 会議費
  • 消耗品費
  • 広報費

補助率

定額(10/10補助)

補助金額

100万円~1億円

ものづくり補助金の申請書に必要な書類

ものづくり補助金の「一般型」・「グローバル展開型」における、申請に必要な書類は次の4点です。
ここでは、下記1~3の書類について詳しく解説します。

  1. 事業計画書
  2. 賃金引上げ計画の表明書
  3. 決算書
  4. その他、加点に必要な資料(任意)

ものづくり補助金申請書類①事業計画書

「事業計画書」には、具体的取組内容や将来の展望、数値⽬標などを記載します。
規定の書式はなく、様式は自由です。

具体的な内容は、次項で解説します。

ものづくり補助金申請書類②賃金引上げ計画の表明書

「賃⾦引上げ計画の表明書」とは、直近の最低賃⾦と給与⽀給総額が記載され、それを引き上げる計画に従業員が合意していることがわかる書⾯です。

提出時は「様式1 賃上げ計画の表明書」を使用します。公式ホームページで記載例が公表されていますので、書類作成時には参考にご覧ください。

ものづくり補助金総合サイト:様式1 記載例

ものづくり補助金申請書類③決算書

直近2年間の貸借対照表、損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表を提出します。

設立から1年以上2年未満の場合には、1期分の決算書を添付。
設立から1年未満で決算書の添付ができない場合は、事業計画書と収支予算書を添付します。

ものづくり補助金申請書「事業計画書」の記載事項と申請事例

ものづくり補助金の「一般型」・「グローバル展開型」での申請書のなかで、審査に最も影響し、作成が困難な書類が「事業計画書」です。

 

経営者コネクト

経営者コネクトでも、無料相談を受け付けています!

当サイト「経営者コネクト」では、ものづくり補助金に応募したい経営者・担当者の方を応援したいと考え、無料相談を受け付けています。

実際に2020年に採択されたものづくり補助金の事業計画をもとに、中小企業診断士がアドバイスいたします。
ご希望の方は、フォームからお申し込みをお願いいたします。
(「企業名」「ご連絡先」と「ものづくり補助金・無料相談希望」の旨を明記ください)

現在、人数限定で、初回30分までテレビ電話(Skype、Zoom等)でご相談承ります。

 

ここでは、「事業計画書」の記載事項と申請事例をご紹介します。

ものづくり補助金申請書「事業計画書」の記載事項

ものづくり補助金申請書の「事業計画書」では、次の”その1~3”について書類を作成します。

また、ものづくり補助金公式ホームページの公募要領 概要版では、「事業計画書」について「A4で10ページ程度」と記載していますので留意してください。

その1:補助事業の具体的取組内容

自社での取組みの経緯や内容、今回の補助事業で機械装置を取得しなければならない必要性などを記載します。たとえば、次のような事項です。

  • 事業の現状:事業の状況やこれまでの自社での取り組み、機械装置などを取得しなければならない必要性などを記載
  • 課題と解決策:課題の項目ごとに、解決策(取組内容)を箇条書きで書く。解決策は明確に具体的に書き、分かりやすくなるよう写真や図表を入れる
  • 実施体制スケジュール:設備などの型番や導入時期、実施体制などを具体的に記載

その2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)

成果が貢献すると考えるユーザーやマーケット、市場規模などについて、その成果の優位性、収益性などを記載します。たとえば、次のような事項です。

  • 市場:事業の市場やユーザーなどについて記載
  • 事業効果:算出根拠を示しながら、具体的な数字で事業効果の見込を記載

その3:会社全体の事業計画

自社の全体的な事業計画を記載します。たとえば、次のような事項です。

  • 5カ年の事業計画:5カ年の事業計画の目標を、具体的な数字で記載
  • 積算根拠:「付加価値額」や「給与支給総額」などの算出根拠を記載。上記”その2”の「事業効果」の算出根拠と整合させる

ものづくり補助金申請書「事業計画書」の申請事例

経済産業省などが運営するサイト「ミラサポPlus」では、実際の提出書類と作成ポイントの事例が記載されています。

事業計画書作成のポイントのほかにも、補助金導入のきっかけや補助事業の効果なども記載されていますので、ぜひ参考にご覧ください

出典: ミラサポPlus

ミラサポPlus:補助金の申請事例・ものづくり補助金① 松下農園

ものづくり補助金申請書の審査のポイント

ものづくり補助金申請書の「一般型」・「グローバル展開型」の審査は、「審査項目」+「加点項目」で行われます。
そして公募要領では、審査項目の配点を次のように解説しています。

Q4 審査項目の配点は?

詳細な配点は非公開とさせていただきますが、審査員が、事業計画を技術面及び事業化面を中心に評価し、採択案件を決定します。

ものづくり補助金 公募要領 概要版より

採択されるためには、審査項目の内容(特に技術面と事業化面)をよく理解し、項目を満たすよう作成することが重要です。ここでは、審査項目の3点について解説します(加点項目は次項で解説)。

ものづくり補助金申請書の審査ポイント①技術面

製品やサービスの革新性、課題解決方法などを審査します。計画書は、次の点を満たすように作成してください。

ものづくり補助金申請書の審査ポイント②事業化面

事業化の方法やスケジュール、製品・サービスの市場性などを審査します。計画書は、次の点を満たすように作成してください。

  • 事業実施体制:体制や財務状況などから、補助事業を適切に遂行できると判断できる。金融機関などからの資金の調達が見込まれる
  • 市場ニーズの有無:補助事業の成果で事業化することによって、貢献するユーザーやマーケット、市場規模が明確である。クラウドファンディングなどで市場ニーズを検証している
  • 事業化までのスケジュールの妥当性:補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有している。事業化までの遂行方法やスケジュールが適切である
  • 補助事業としての費用対効果:補助事業として費用対効果が高い

ものづくり補助金申請書の審査ポイント③政策面

地域経済へ貢献するなど国の政策に合致しているかを審査します。計画書は、次の点を満たすように作成してください。

  • 地域経済への波及効果:地域の事業者に対する経済的波及効果を与え、地域の経済成長を力強く牽引する事業を展開している
  • ニッチトップとなる潜在性:ニッチな分野で、適切なマーケティングや独自性の高い製品・サービス開発などで差別化を行い、グローバル市場でもトップとなれるポテンシャルがある
  • 環境配慮性:バイオマス素材を使った資源循環型プラスチック製品の開発など、環境に配慮した事業計画となっている
  • 【特別枠の場合】新型コロナウイルス対応の有効性:新型コロナウイルスの影響を乗り越えてV字回復するために、有効な投資を行っている

ものづくり補助金申請書における加点項目

ものづくり補助金の「一般型」・「グローバル展開型」における「加点項目」とは、採択を有利にすすめるための条件です。
加点条件を満たせば、採択される可能性が高まります。

公式ホームページで「加点項目の数グラフ」(下図)を見ると、加点項目が多いほど採択率が上がることが分かります。2個で39%、3個で59%、4個で75%、5個なら84%です。

出典:ものづくり補助金総合サイト

採択率を上げるため、加点項目は一つでも多く提出しましょう。

令和2年度・ものづくり補助金申請書の加点項目

令和2年度は、次の4カテゴリー7事項が加点項目に。最大7項目の加点が可能で、添付書類は最大5点となります。

①成長性加点

有効な期間の「経営革新計画」の承認を取得した、または取得予定の事業者が加点されます。

「経営革新計画」とは、中小企業が「新事業活動」に取り組み、「経営の相当程度の向上」を図るために作る、中期的な経営計画書のことです。国や都道府県に提出・承認されることで、様々な支援を受けることができます。

「経営革新計画」について詳しく知りたい方は、こちらのガイドブックをご覧ください。

中小企業庁:経営革新計画 進め方ガイドブック

②政策加点

「小規模企業者・小規模事業者」または「創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)」であれば加点されます。

なお「小規模企業者・小規模事業者」とは、次のような会社または個人事業主のことをいいます。

  • 製造業その他業種・宿泊業・娯楽業:社員数が20人以下
  • 卸売業・小売業・サービス業:社員数が5人以下

③災害等加点

③-1:「特別枠(新型コロナウイルスの影響を乗り越えるために、前向きな投資を行う事業者を対象とした枠)」で申請を行ったが不採択となり、通常枠で再審査される場合に加点されます。

③-2:令和2年5月15日から7月31日までの間の豪雨による災害についての激甚災害の被災事業者が加点されます。

③-3:有効な期間の「事業継続力強化計画」の承認を取得した、または取得予定の事業者が加点されます。

「事業継続力強化計画」とは、中小企業が策定した「防災・減災の事前対策に関する計画」を経済産業大臣が認定する制度です。最寄りの経済産業局に提出・認定されることで、税制措置や金融支援などの支援策を受けられます。

④ 賃上げ加点等

④-1:次のいずれかを実施している事業者は加点されます。

  1. 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を立てて、社員に表明している
  2. 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を立てて、社員に表明している

④-2:「被用者保険の適用拡大」の対象となる中小企業が、制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合に加点されます。

「被用者保険の適用拡大」とは、2020年6月の国民年金法の改正によって、パート労働者の社会保険加入の基準が拡大された制度です。この適用拡大の対象は、2022年10月には「社員数100人超の企業」、2024年には「社員数50人超の企業」と拡大されていきます。

ものづくり補助金申請書の減点項目

令和2年度分申請から、新たに「減点項目」が追加されました。
過去3年間に、「類似の補助金」の交付決定を受けていた場合、交付決定の回数に応じて減点されます。

「類似の補助金」とは、こちらの制度です。

  • 平成28年度補正革新的ものづくり・商業・サービス開発支援事業
  • 平成29年度補正ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業
  • 平成30年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業

まとめ:ものづくり補助金の申請書作成は難解!専門家のアドバイスも

この記事では、ものづくり補助金の申請に必要な書類や審査のポイント、加点項目などについて解説しました。

ご覧いただいた通り、ものづくり補助金の採択は「事業計画書」の出来にかかってるといえます。

しかし申請書作成は大変難解で、初めての申請で完璧な書類を作るのはかなり困難。
申請時に不明な点がある場合は、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

経営者コネクトでも、無料相談を受け付けています!

当サイト「経営者コネクト」では、ものづくり補助金に応募したい経営者・担当者の方を応援したいと考え、無料相談を受け付けています。

実際に2020年に採択されたものづくり補助金の事業計画をもとに、中小企業診断士がアドバイスいたします。
ご希望の方は、フォームからお申し込みをお願いいたします。
(「企業名」「ご連絡先」と「ものづくり補助金・無料相談希望」の旨を明記ください)

現在、人数限定で、初回30分までテレビ電話(Skype、Zoom等)でご相談承ります。

その他の補助金・助成金についても纏めて知りたい方へ

また、ものづくり補助金以外にも中小企業が活用できる補助金はいくつもあります。
以下の記事でお勧めの13種類を纏めていますので、合わせてお読みください。

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