現在、令和元年度補正5次締切分の公募が行われている「ものづくり補助金」。
最大1,000万円(一般型の場合)の補助を受けられる制度ですが、公募要領が複雑なため、
「ウチの会社は応募できるの?」
「どんな経費が補助の対象になるの?」
という疑問をお持ちの方も、多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、「ものづくり補助金」の対象となる事業者・経費・業種などについて、分かりやすく解説していきます。
「ものづくり補助金」への申請を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。
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ものづくり補助金とは
ものづくり補助金とは、中小企業などが取り組む「革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資」を支援する補助金制度です。
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。
そして応募コースには、次の三つがあります
- 一般型
- グローバル展開型
- ビジネスモデル構築型
特徴として「申請したすべての事業者に、補助金が交付されるわけではない」点があります。
審査で採択された事業者のみに補助金が交付され、一般型の令和2年度3次締め切り分については、応募者数が6,923で採択者数は2,637、採択率は38%でした。
また採択された場合、一般型なら最大1,000万円、グローバル展開型なら最大3,000万円の補助を受けることができます。
ものづくり補助金の対象となる事業者
ものづくり補助金(一般型・グローバル展開型)の対象となる事業者は、次の条件を満たす中小企業者(中小企業・個人事業主・組合)と特定非営利活動法人です。
- 日本国内に本社と補助事業(補助金の交付を受けて行う事業)の実施場所を持つ(グローバル展開型の場合は実施場所が海外でも可)
- 申請締切日前の10か月以内に「ものづくり補助金」の交付決定を受けていない
- 企業・個人事業主については、資本金または常勤社員数が「表1」の数字以下である。また、実質的に大企業が支配する企業(みなし大企業)ではない
- 組合については、「表2」に記載されている組合
- 特定非営利活動法人については、広く中小企業一般の振興・発展に直結し得る活動を行い、従業員数が300人以下である
(表1)
業種 | 資本金 | 常勤社員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
上記以外の業種 | 3億円 | 300人 |
(表2)
組織形態 |
---|
企業組合 |
協業組合 |
事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会 |
商工組合、商工組合連合会 |
商店街振興組合、商店街振興組合連合会 |
水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会 |
生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会 |
酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会 |
内航海運組合、内航海運組合連合会 |
技術研究組合(直接または間接の構成員の2 / 3以上が中小企業者であるもの) |
対象事業者の従業員規模と採択率の関係
ものづくり補助金公式ウェブサイトで公表されているデータ「申請者の規模(従業員数)」(下グラフ)によれば、従業員規模別の採択率が最も高いのは「従業員数6-20人」の53%でした。
「従業員101人以上」と比較的規模が大きい事業主は、43%と採択率が最も低くなっています。
ものづくり補助金の対象となる経費
ものづくり補助金(一般型・グローバル展開型)の対象となるのは、次の3点をすべて満たした、「表3」の経費です。
- 補助金の交付を受けて行う事業の対象として、明確に区分できる
- 経費の必要性と金額の妥当性を、証拠書類で明確に確認できる
- 交付決定を受けた日以降に発注し、補助事業実施期間内に支払いを完了する
(表3)
補助対象経費 | 対象経費の内容 |
---|---|
機械装置・システム構築費 | ①機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費 ②専用ソフトウェア・情報システムの購入・構 築、借用に要する経費 ③改良・修繕または据付けに要する経費 |
技術導入費 ※ | 知的財産権などの導入に要する経費 |
専門家経費 ※ | 事業を遂行するために依頼した専門家に支払われる経費 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料などに要する経費 (購入する機械装置の運搬料は、機械装置費に含める) |
クラウドサービス利用費 | 補助金の交付を受けて行う事業のために利用する、クラウドサービスに要する経費 (他事業と共有する場合は、補助対象とならない) |
原材料費 | 試作品の開発に必要な原材料および副資材の購入に要する経費 |
外注費 ※ | 新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の 一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 |
知的財産権等関連経費 ※ | 特許権等の知的財産権などの取得に要する弁理士の手続代行費用など |
海外旅費(グローバル展開型のみ) ※ | 海外事業の拡大・強化等を目的とした、事業に必要不可欠な海外渡航および宿泊などに要する経費 |
対象経費における注意点4つ
ものづくり補助金の対象となる経費については、次の点に注意してください。
対象経費の注意点1. 設備投資が必要
補助金の交付には、設備投資が必要です。
必ず1つ以上、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を取得し、適切に管理を行わなければなりません。
対象経費の注意点2. 各経費の補助上限額あり
「機械装置・システム構築費」以外の経費は、次の補助上限額があります
- 一般型:総額で500万円(税抜き)まで
- グローバル展開型:総額で1,000万円(税抜き)まで
また、上記の「表3」で※マークがついている次の項目については、経費ごとに上限額が決められています。
- 技術導入費、知的財産権等関連経費:補助対象経費総額(税抜)の1 / 3
- 専門家経費、外注費:補助対象経費総額(税抜)の1 / 2
- 海外旅費:補助対象経費総額(税抜)の1 / 5
注意点3. 実施期間内に補助事業のために支払ったことが確認可能
対象経費は、補助事業(補助金の交付を受けて行う事業)実施期間内に、「補助事業のために支払った」ことを確認できる必要があります。
また、支払いは銀行振込の実績で確認するため、手形払いなど実績を確認できない支払い方法は対象外となってしまいます。
注意点4. 発注先選定の妥当性を証明する
採択が決まり、発注先を選定するにあたっては、入手価格の妥当性を証明できるよう「見積書を取得する」ことが必要。
また、単価50万円(税抜き)以上の物件等については、原則として「2社以上から見積をとる」必要があります。
そのため、申請時に複数社から見積書をあらかじめ取得していると、採択後スムーズに事業を開始できます。
ものづくり補助金の対象となる業種
ものづくり補助金の対象となる業種に、制約はありません。
どの業種でも、条件を満たす中小企業者・特定非営利活動法人であれば、自由に申請が行えます。
ちなみにものづくり補助金公式ウェブサイトのデータ「申請者の業種」(下グラフ)を見ると、申請者の業種としては「製造業」が飛び抜けて多いことがわかります。
また「製造業」の52%から「卸売業、小売業」の39%まで、業種によって採択率にバラツキも見られました。
ものづくり補助金の対象となる事業の要件
ものづくり補助金の対象となる事業の要件は、次の通りです。
【要件1】実施期間
それぞれ以下の補助事業実施期間内に、発注・納入・検収・支払などすべての事業の手続きが完了することが必要です。
また原則として、補助事業実施期間の延長はありません。
- 一般型:交付決定日から10ヶ月以内(ただし採択発表日から12ヶ月後まで)
- グローバル展開型:交付決定日から12ヶ月以内(ただし採択発表日から14ヶ月後まで)
【要件2】事業計画の策定
次の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定し、社員に表明している必要があります。
- 事業計画期間に、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる
- 事業計画期間に、最低賃金を「地域別最低賃金+30円」以上にする
- 事業計画期間に、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させる
【要件3】実施場所を有する
申請時点で、工場や店舗といった「補助事業の実施場所」を有している必要があります。
建設中の場合や、土地のみを確保して建設予定である場合は対象外です。
また、実施場所が自社の所有地でない場合は、賃借契約書といった書類で使用権を明確にすることが必要となります。
【要件4】社員への表明と未達の場合の補助金返還に同意する
申請時に、賃金引上げ計画を社員に表明していなければなりません。
交付後に表明していないことが分かった場合は、補助金額の返還を求められます。
また「給与支給総額の増加目標」と「最低賃金の増加目標」が未達の場合にも、返還を求められます。
こういった返還の条件に同意した上で、事業計画を策定・実行することが必要です。
【要件5】その他
「グローバル展開型」では、類型の各条件を満たす必要があります。
たとえば「①類型:海外直接投資」なら、「グローバルな製品・サービスの開発・提供体制を構築することで、国内拠点の生産性を高めるための事業」であること。
また「一般型・グローバル展開型」の両方で、次に該当しない事業である必要があります。
- 公募要領にそぐわない事業
- 事業の課題の解決そのものを、他社に外注・委託する事業
- 製造・開発の全てを他社に委託し、企画だけを行う事業
- 公序良俗に反する事業
- 公的な資金の使途として社会通念上、不適切であると判断される事業
- 「補助対象経費」の各区分等に設定されている上限を超える補助金を計上する事業
- 「同一事業者が今回の公募で複数申請を行っている」などの重複案件
- 申請時に虚偽の内容を提出した事業者
- 平成25~29年度の「ものづくり・商業・サービス補助事業」の採択事業者で、「事業化状況・知的財産権等報告書」を未提出の事業者
- その他、申請要件を満たさない事業
採択されやすい申請書とは?
記事の最後に、ものづくり補助金の審査項目と採択されやすい申請書についてご紹介します。
ものづくり補助金の審査項目
ものづくり補助金の採択審査委員会による審査には、「面接」はありません。
口頭で説明する機会はなく「書類のみ」で行われます。
そして審査項目として、次の3点が挙げられています(公募要領 概要版)。
技術面 | ①取組内容の革新性 ②課題や目標の明確さ ③課題の解決方法の優位性 ④技術的能力 |
事業化面 | ①事業実施体制 ②市場ニーズの有無 ③事業化までのスケジュールの妥当性 ④補助事業としての費用対効果 |
政策面 | ①地域経済への波及効果 ②ニッチトップとなる潜在性 ③環境配慮性 |
これらの項目を「事業計画書」に記載して、申請します。
「事業計画書」には決まった書式はありませんが、「具体的取組内容、将来の展望、数値目標などを記載し、A4サイズで10ページ程度にまとめる」必要があります。
採択されやすい申請書とは?
ものづくり補助金において「採択されやすい申請書」とは、次のような申請書です。
1.技術面と事業化面の審査項目(計8つ)を網羅している
公募要領 概要版では「審査員が、事業計画を技術面及び事業化面を中心に評価し、採択案件を決定します。」と記載されています。
そのため、申請書で技術面と事業化面の審査項目(計8つ)を網羅するほど、採択の可能性が高くなるといえます。
そして採択されやすい事業内容としては、「製造業の最先端の設備」が挙げられます。
これはつまり「生産性が向上するもの」に該当するため。
例えば、自動で切削加工がされるマシニングセンタ、AIの画像認識を使った品質検査などがあります。
また審査項目では特に、技術面での「取組内容の革新性」が重要と言われます。
「どういった点が革新的なのか」を、申請書でわかりやすく説明しましょう。
2.加点項目もできるだけクリアしている
ものづくり補助金の審査には、審査項目のほかに以下の加点項目があります。
加点項目もできるだけクリアすることで、採択に近づきます。
3.読みやすい
申請書は「何が書いてあるか」も重要ですが、書類審査だけのものづくり補助金においては「どれだけ読みやすいか」も同じくらい重要です。
いくら画期的な事業内容であっても、専門用語ばかりで審査員が読み進めることができなければ、採択されることはありません。
例えば、次のような「読みやすい」申請書の作成を心がけてください。
- 読みやすい文字サイズ(10.5ポイント以上)を使う
- 1文の文字数を多くし過ぎない(40文字以内に)
- 図や表を多く使って説明する
- 専門用語やカタカナ語を避けて、平易な日本語で、かつ具体的に書く
まとめ:注意点をよく確認して申請を
この記事では、ものづくり補助金の対象となる事業者・経費・業種などについて、分かりやすく解説しました。
特に対象経費については、「設備投資が必要」など注意すべき点が多くありましたね。
こういった注意点をよく確認して、申請を行いましょう。
ただ、注意点を踏まえた上で審査のポイントを抑えた申請書を作成するのは、とりわけ初めての申請の場合には難しいもの。
せっかく時間をかけて書類を作成しても、採択されなければその時間がムダになってしまいます。
ぜひ専門家への依頼も検討しながら、申請手続きを進めてみてください。
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その他の補助金・助成金についても纏めて知りたい方へ
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