経済産業省・中小企業庁の「事業再構築補助金」概要を解説!予算総額や他補助金との比較も

経済産業省・中小企業庁が実施する「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)」。
予算総額が1兆円以上と非常に大きいことから、2020年(令和2年)度第3次補正予算案の「政策の目玉」とも言われます。

この記事では、事業再構築補助金の概要や予算総額、他補助金との比較などを解説していきますので、「事業の規模拡大」や「新規事業」を検討されている経営者の方はご覧ください。

 

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経済産業省・中小企業庁が実施する「事業再構築補助金」とは

事業再構築補助金とは、新型コロナ感染症の影響による事業環境の変化に対応して、次のような「事業再構築」に挑戦する中堅・ 中小企業を支援するために経済産業省・中小企業庁が実施する補助金制度です。

  • 規模拡大
  • 新分野展開
  • 業態転換・事業転換

正式名称は「中小企業等事業再構築促進事業」。
そして事業再構築補助金は事実上、2021年1月15日で受付終了する「持続化給付金」の後継制度といわれています。

また「補助対象となるための要件」は以下の通り。

  1. 申請前の直近半年間のうち任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月と比較して10%以上減少している
  2. 事業計画を認定支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む
  3. 補助事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、または社員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成

そして補助金額と補助率は、次のようになります。

  補助金額 補助率
中小企業(通常枠) 100万円以上6,000万円以下 2 / 3
中小企業(卒業枠) 6,000万円超~1億円以下 2 / 3
中堅企業(通常枠) 100万円以上8,000万円以下 1 / 2(4,000万円超は1/3)
中堅企業(グローバルV字回復枠) 8,000万円超~1億円以下 1 / 2

制度の中身については、こちらの記事でより詳しく紹介しています。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説

第3次補正予算案から見た事業再構築補助金

ここでは「第3次補正予算案から見た事業再構築補助金」として、その目的や総額などを確認します。

第3次補正予補正予算では経済対策に19兆円

2020年12月15日、政府は「新型コロナウイルスの感染防止」や「ポストコロナ時代の経済構造の転換」などの経済対策を実行するため、臨時閣議において2020年(令和2年)度の第3次補正予算案を決定しました。
この追加歳出は19兆1761億円となり、内容は次の通りです(財務省)。

  1. 新型コロナウイルス感染症の拡大防止策:約4.3兆円
  2. ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現:約11.7兆円
  3. 防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保:約3.1兆円

この予算案は2021年1月の通常国会に提出され、同月中の成立を目指します。

ちなみに、2020年度は3度の補正予算を組んだことで、一般会計の予算総額は約175兆円まで増加。
政府はその財源を「赤字国債」で補うように考えており、国債の新規発行額は約112兆円で、初めて100兆円を超えます。

事業再構築補助金は「経済構造の転換等による生産性向上」のために実施

事業再構築補助金は第3次補正予算案のなかで、前項の「②ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現:約11.7兆円」に含まれます。

この目的を達成するため、大きく次の3つの対策が挙げられており、事業再構築補助金は「②経済構造の転換・イノベーション等による⽣産性向上」のために実施されます。

①デジタル改⾰・グリーン社会の実現(2.8兆円)

  • 地⽅団体のデジタル基盤改⾰⽀援(1,788億円)
  • マイナンバーカードの普及促進(1,336億円)
  • ポスト5G・Beyond5G(6G)研究開発⽀援(1,400億円)
  • カーボンニュートラルに向けた⾰新的な技術開発⽀援のための基⾦の創設(20,000億円)
  • グリーン住宅ポイント制度の創設(1,094億円)

②経済構造の転換・イノベーション等による⽣産性向上(2.8兆円)

  • 中堅・中⼩企業の経営転換⽀援(事業再構築補助⾦)(11,485億円)
  • ⼤学ファンド(5,000億円)
  • 持続化補助⾦等(2,300億円)
  • 国内外のサプライチェーン強靱化⽀援(2,225億円)
  • 地域公共交通の維持・活性化への重点的⽀援(150億円)

③地域・社会・雇⽤における⺠需主導の好循環の実現(2.8兆円)

  • 中⼩・⼩規模事業者等への資⾦繰り⽀援(32,049億円)
  • Go To トラベル(10,311億円)
  • Go To イート(515億円)
  • 雇⽤調整助成⾦の特例措置(5,430億円)など

経済産業省関係予算案4.7兆円中 1.14兆円と目玉の政策

出典:経済産業省

2020年(令和2年)度第3次補正予算案のなかで、経済産業省関係の予算総額は4.7兆円です(経済産業省)。
そして事業再構築補助金は補正予算案額が1.14兆円と非常に大きいことから、「経済対策の目玉」と言われています。

経済産業省関係令和2年度第3次補正予算案の事業内容

経済産業省関係令和2年度第3次補正予算案の事業として、大きく次の3つが挙げられています。

  • Ⅰ.「新たな⽇常」の先取りによる成⻑戦略
  • Ⅱ.国内政策と⼀体となった対外経済政策
  • Ⅲ.最重要課題︓廃炉の安全かつ着実な実施/福島の復興を着実に進める

このなかで最も実施項目が多いのが「Ⅰ.『新たな日常』の先取りによる成長戦略」で、以下のような事業があります。

  1. デジタル改⾰:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(900億円)など
  2. グリーン社会の実現:カーボンニュートラルに向けた⾰新的な技術開発に対する継続的な⽀援を⾏う基⾦事業(2兆円)など
  3. 中⼩企業・地域:資⾦繰り⽀援(8,391億円)など
  4. レジリエンス:サプライチェーン強靱化・多元化 (2,225億円)

事業再構築補助金や「ものづくり補助金」は、上記「③中⼩企業・地域」に含まれます。

事業再構築補助金と経済産業省・中小企業庁の他補助金との比較

次に、事業再構築補助金と経済産業省・中小企業庁の他の補助金とを比較して、その規模や内容を確認します。

経済産業省・中小企業庁の「ものづくり補助金」との比較:3倍近い予算規模

出典:中小企業庁

事業再構築補助金と同じ、経済産業省・中小企業庁が実施する補助金事業の「ものづくり補助金」。
令和元年度補正予算案をみると、「ものづくり補助金」・「IT導⼊補助⾦」・「⼩規模事業者持続化補助⾦」を合わせて「中⼩企業⽣産性⾰命推進事業(中⼩機構運営費交付⾦)」とよばれ、その総額は3,600億円でした。

それに対して事業再構築補助金の予算総額は、前述の通り1.14兆円
「ものづくり補助金」と比べると、事業再構築補助金の予算総額がいかに大きいかがわかります。

「持続化給付金」との比較:予算規模は小さく対象事業者も絞られる

事業再構築補助金の前身制度とされる「持続化給付金」は、「新型コロナウイルス感染症の影響により、ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している中小企業・個人事業主」に対して給付を行う制度です。

2020年1月4日までに約400万件の中小企業・個人事業主に対して、総額5.2兆円が給付されました。

出典:経済産業省

しかし「困っている事業者にできるだけ早く支給する」ために、書類などを減らし申請を簡素化した結果、学生やサラリーマンといった「受給資格のない」人による不正受給が相次いでいます。
2020年12月時点で、不正が疑われる申請が約6000件、不正受給された疑いのある事例が約30億円といわれており、逮捕者も出ました。

事業再構築補助金が「給付金」ではなく「補助金」になった理由には、「こうした不正が繰り返されないように」との狙いもあると考えられます。
「補助金」であれば申請も審査も厳格になるためが、「給付金・助成金」よりも給付対象は減少します。

このように、「持続化給付金」と比べて事業再構築補助金は、予算規模が小さく対象事業者も絞られます。

事業再構築補助金の対象事業者数・採択率は?

事業再構築補助金の対象となる事業者数や採択率は、現時点では不明です。

そこで同じく中小企業向けの補助金である「ものづくり補助金」を見ると、対象となる事業は限定されていません。
経営革新や生産性向上に取り組む、「すべての事業」が補助金交付の対象となります。

また「ものづくり補助金」の令和2年度の1次~3次締切を確認すると、採択率は次の通り。

  • 1次(3/31締切):62%
  • 2次(5/20締切):57%
  • 3次(8/3締切):38%

補助金額は最大3,000万円(グローバル展開型 )ですが、それに対して事業再構築補助金の補助金額は最大1億円と高額です。
そのため、事業再構築補助金では「ものづくり補助金」よりも厳正な審査が行われると予想されます。

事業再構築補助金は2021年春頃開始の見込み:今から準備を

事業再構築補助金は、予算案が2021年1月の通常国会に提出、同月中の成立を目指しており、2021年春頃には公募が開始される見込みです。

その申請は「jGrants(電子申請システム)」で行われる予定。
「jGrants(Jグランツ)」とは、経済産業省が開発した「補助金申請システム」で、利用には1つのID・パスワードで様々な行政サービスにログインできる「GビズID(法人共通認証基盤)」が必要です。

GビズIDの取得には、2~3週間ほどがかかるため、まだお持ちでない方は、今のうちにGビズID取得を進めておきましょう。

ほかにも、今のうちから次のことを準備しておくと、公募開始後にスムーズに申請が行なえます。

  • 新事業の構想・計画をする
  • 資金繰り計画を立てる(補助金は後払いのため)
  • 申請依頼する代行業者(コンサルタント)を探す

まとめ:事業再構築補助金の概要をつかんで申請の検討を

この記事では、事業再構築補助金の概要や予算総額、他補助金との比較などを解説しました。

新型コロナの影響で経済の先行きが見えない今、「業態転換・事業転換」を図ることも生き残る方法の一つです。
その場合は事業再構築補助金が助けになりますので、ぜひこの記事で概要をつかんで、申請の検討をされてはいかがでしょうか。

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