サポイン事業とは?補助金額・対象経費・申請方法など制度概要を徹底解説!

3年間での補助金額が最大9,750万円と、大型の補助金事業である「サポイン事業」。
ですが「2者以上で共同体を作成する」など申請条件も複雑なため、「制度がわかりにくい」という声もあるようです。

そこでこの記事では、サポイン事業の基本知識から、補助金額・対象経費・申請方法など制度概要を解説いたします。
「ものづくり基盤技術」の高度化に向けた研究開発を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。

サポイン事業とは?

サポイン事業とは、正式名称が「戦略的基盤技術高度化支援事業」で、「ものづくり基盤技術の高度化」につながる研究開発から販路開拓までの取り組みを、最大3年間支援する経済産業省の事業です。

サポインの意味としては、支援対象が「部品や資材を提供する産業」であり、こうした産業を「Supporting Industry(サポーティング・インダストリー)」と呼ぶため、略して「サポイン事業」という名称が使われます。

開始されたのは2006(平成18)年で、これまで2,000件を超える中小企業・小規模事業者による研究開発プロジェクトが支援されてきました。

この事業の最大の特徴は、「単独では申請できない」点。
中小企業者を中心とし、大学等の研究機関や事業管理機関と「共同体」を構成することが必要です。

サポイン事業の関連団体や流れをまとめると、下図のようになります。

出典:中小企業庁 サポインマッチナビ

サポイン事業の補助期間・補助金・補助率について

次に、サポイン事業の補助期間・補助金・補助率についてご紹介します。

サポイン事業の補助期間

サポイン事業の補助期間は「2年度または3年度」です。

サポイン事業の補助金・補助率

サポイン事業の補助金・補助率は、以下のようになります。

補助金額
(上限)
・単年度で4,500万円以下
・2年間の合計で7,500万円以下
・3年間の合計で9,750万円以下
補助率 ・中小企業・小規模事業者等:2 / 3 以内
・大学・公設試等:定額

サポイン事業で採択されると上記の「補助金交付」のほかに、「サポインで開発した技術を対象とした展示会への出展」など、さまざまな支援メニューが提供されます。

(参考)
第13回オートモーティブワールドサポインワールド2021(出展主体:経済産業省)

なお、様々な中小企業向け補助金・助成金についてまとめた記事もありますので、参考にしてください。

【最新】中小企業が利用できる補助金・助成金13選!目的・金額・条件を徹底解説

サポイン事業の補助対象経費

サポイン事業の補助対象となる経費は、「研究開発に必要」となる次のような経費です。

  • 人件費
  • 旅費
  • 機械装置等の設備備品費
  • 消耗品費
  • 委託費  など

ただし認められる経費は、サポイン事業の対象と明確に区分できるもので、その経費の必要性と金額の妥当性が、証拠書類で明確に確認できるものです。

また、生産を目的とした機械装置備品の導入などの営利活動に関する経費や、ほかの研究開発にかかる経費は補助対象外となります。

サポイン事業の申請要件とサポインマッチナビ

ここではサポイン事業の申請要件と、便利なサイト「サポインマッチナビ」を解説します。

サポイン事業の申請対象者

サポイン事業は1者だけでは申請できず、中小企業者を中心とした「共同体」を構成することが必須条件です。
「共同体」は、以下の両方を含む、2者以上で構成することが必要となります。

  1. 事業管理機関(補助事業者)
    研究開発計画の運営管理や共同体の相互の調整などを主体的に行い、国との総合的な連絡窓口を担う。「都道府県等中小企業支援センター」などが務める場合が多い
  2. 研究等実施機関(間接補助事業者)
    中核的に研究開発等を実施する大企業、中小企業、NPO、大学・公設試等または個人事業者\

サポイン事業の申請対象事業

サポイン事業の申請対象となる事業は、「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に記載された、以下の12分野に関する研究開発等です。

  1. デザイン技術
  2. 情報処理技術
  3. 精密加工技術
  4. 製造環境技術
  5. 接合・実装技術
  6. 立体造形技術
  7. 表面処理技術
  8. 機械制御技術
  9. 複合・新機能材料技術
  10. 材料製造プロセス技術
  11. バイオ技術
  12. 測定計測技術

サポインマッチナビで提携先を探す

サポインマッチナビ」は、中小企業庁が運営するサイトで、サポイン事業に関する様々な情報を提供しています。
サイト内の「サポイン申請を考えている方」向けコンテンツでは、全国の機関から「提携先を探す」ことも可能です。

(参考)

サポイン事業の申請方法と申請期間

次に、サポイン事業の申請方法と申請期間についてご紹介します。

サポイン事業の申請方法

サポイン事業の申請方法は、大まかにみると次の5段階となります。

【STEP1】研究開発計画の作成

まずは「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に沿った研究開発計画の作成します。

作成する計画は、指針に合致しているとともに、市場や川下製造業者(最終製品を製造する業者)などからの「ニーズに応える内容」であることが必要です。

【STEP2】実施体制の構築

次に実施体制の構築ですが、サポイン事業は単独では申請できないため、共同体を構成します。

前述の通り、共同体は「事業管理機関」と「研究等実施機関」を含む2者以上で構成する必要があります。
下図は、申請する共同体の構成イメージです。
(事業管理機関が大学・公設試等で、初年度のイメージ例)

出典:中小企業庁 サポインマッチナビ

【STEP3】電子申請「e-Rad」利用登録

サポイン事業の申請書類の提出は、「e-Rad(府省共通研究開発管理システム)」でのみ受け付けています。

「e-Rad」での申請にはアカウント登録が必要となるため、この時点で利用登録を行います。
なお登録手続きには2週間ほど要する場合もあるため、提出前までに余裕をもった登録手続きを行うことが必要です。

【STEP4】申請書類の作成(記入例・注意点を確認)

公募要領に記載された申請書類を作成します。

令和2年度公募では、次の書類が必要でした。

  1. 提案様式等
  2. 最近1年間の決算報告書(賃借対照表、損益計算書など)

各年度の公募要領には、申請書類の記入例や注意点が載っているため、作成時にはよく確認してください。

【STEP5】電子申請にて書類提出

上記STEP3でアカウント登録した「e-Rad」を利用して、事業管理機関が書類申請を実施します。

 

サポイン事業の申請期間

サポイン事業の令和3年度の公募は、現時点ではまだ開始されておらず、申請期間も不明です。

ちなみに、令和2年度サポイン事業は令和2年1月31日に公表され、申請期間は次の通りでした。

  • 令和2年1月31日(金)~ 令和2年4月24日(金)

サポイン事業の実績・事例

最後に、サポイン事業の実績と事例を解説します。

サポイン事業の実績

サポイン事業の実績として、「①採択状況」と「②事業化状況」をご紹介します。

①サポイン事業の採択状況

まずは、サポイン事業の年度別採択状況です。

年度 申請件数 採択件数 採択率
平成31年度 298 137 46%
平成30年度 329 126 38%
平成29年度 297 108 36%

少しずつですが、採択率が上がっていることがわかります。

次に、技術分野別の採択状況です。
(上の表と同様、平成29年~令和元(平成31)年度の3年分の実績をまとめたもの)

技術分野 申請件数 採択件数 採択率
デザイン 30 10 33%
情報処理 105 24 23%
精密加工 113 61 54%
製造環境 35 14 40%
接合・実装 68 28 41%
立体造形 48 27 56%
表面処理 68 35 51%
機械制御 44 20 45%
複合・新機能材料 107 47 44%
材料製造プロセス 73 24 33%
バイオ 111 37 33%
測定計測 122 44 36%

「立体造形」・「精密加工」・「表面処理」の分野の採択率が高くなっています。

②サポイン事業の事業化状況

サポイン事業終了後の、事業化率と直近売上は下表のとおりです。

出典:中小企業庁 サポインマッチナビ
出典:中小企業庁 サポインマッチナビ

事業化率・売上ともに、終了後から右肩上がりとなっていることがわかります。

また、技術分野ごとの事業化率と直近売上は、下表のようになっています。

出典:中小企業庁 サポインマッチナビ
出典:中小企業庁 サポインマッチナビ

特に「精密加工」・「表面処理」・「機械制御」の3技術分野の平均直近売上額が高くなっています。

最後に「回帰分断デザインに基づく効果測定のイメージ」です(「調査事業報告書」より)。
サポイン事業に採択された企業は、「6~8年後に売上高が約20億円、付加価値額が約3億円増加する」ことを、統計的に確認できたとのことです。

サポイン事業の事例

記事の最後に、サポイン事業の事例をご紹介します。
なおご紹介する企業のほかにも、以下のサイトで「サポイン事業の好事例」を探すことができます。

中小企業庁 サポインマッチナビ:サポイン好事例を探す

(株)岐阜多田精機

  • スマート金型により最適成型条件を確立
  • 主たる研究実施場所:岐阜県

部品の軽量化に向けて金属部品の樹脂化などが進むなか、圧力・温度といった射出成形の条件設定は「技能者の勘」で行われるため、「品質のバラつき」などの問題がありました。

そこで岐阜多田精機では、圧力・温度・振動などのデータを測定し、それに基づく最適な成形条件の確立などを可能とする、IoTを活用したスマート金型の開発を進めます。
これによって、技術者や射出成型機など製造環境が異なる場合でも、安定した品質の確保やコストの低減などの実現を目指しました。

採択された研究開発体制は下図の通りです。

出典:中小企業庁 サポイン事業

谷田合金(株)

  • 世界で唯一の製造技術を用いた少量多品種生産
  • 主たる研究実施場所:石川県

中空複雑形状をもつ航空機部品は、加工工具が届かず機械加工ができないため、高品質な鋳物の製造技術が必要でした。

そこで谷田合金では、「差圧鋳造法によるアルミ合金の製造技術」を開発します。
強度を増すことに成功し、従来よりも疲労強度が20~30%向上。
同社のコア技術として確立したことで、航空機業界にも参入し、ジェットエンジンの部品加工の受注に成功しました。
レーシングカー用のエンジン部品、半導体装置など幅広い分野に展開し、売上は1.9倍に増加しています。

採択された研究開発体制は下図の通りです。

出典:中小企業庁 サポイン事業

まとめ:研究開発を行うサポイン事業の検討を

この記事ではサポイン事業の基本知識から、補助金額・補助率・対象経費・実績など、事業の概要を解説しました。

新型コロナによる不況を乗り切るために、研究開発や販路開拓などを考えている経営者の方は、ぜひサポイン事業の利用をご検討ください。

また、2021年度に開始する最大1億円の大型補助金「事業再構築補助金」についても情報をまとめていますので、ぜひご利用ください。

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