2021年1月18日、「令和3年度予算案」と「令和2年度第3次補正予算案」が国会に提出されました。
予算案にはさまざまな補助金事業が盛り込まれており、特に新型コロナ対策となる補助金が多い内容です。
そこでこの記事では、2021年に実施予定で、経営者コネクトが検討をお勧めする7つの「中小企業向けの補助金」について一覧と概要をまとめました。
補助金を利用して「新たな取り組み」を始めたい経営者の方は、ぜひご覧ください。
【2021年最新版】中小企業向けの補助金一覧
まずは補助金の定義と、2021年に実施予定の「中小企業向けの補助金一覧」をご紹介します。
補助金とは
補助金とは、「国や自治体の政策目標に合わせて、事業者の取り組みをサポートするために資金の一部を給付する」制度です。
融資とは違い、お金を返済する必要はありません。
ただし審査があるため「申請すれば必ず補助される」わけではなく、補助の有無や金額は「事前の審査」と「事後の検査」によって決まります。
またすべての経費が補助されるわけではなく、各補助金によって補助される経費や金額、補助率は異なります。
交付のおおまかな手順は下図のとおりですが、詳細な申請方法は各補助金の公募要領などでご確認ください。
【2021年最新版】中小企業向けの補助金一覧
2021年に実施予定の代表的な「中小企業向けの補助金」は、下表のとおりです。
名称 | 対象者 | 補助金額の上限 | 対象経費の例 |
---|---|---|---|
①事業再構築補助金 | 事業再構築に意欲のある中小企業等 | ・中小企業 通常枠:6,000万円 ・中小企業 卒業枠:1億円 ・中堅企業 中堅企業:8,000万円 ・中堅企業 グローバルV字回復枠:1億円 |
・建物費 ・建物改修費 ・設備費 ・システム購入費 ・広告宣伝費 |
②ものづくり補助⾦ | 革新的サービスの開発や試作品開発などを行う中小企業・小規模事業者等 | ・通常枠:1,000万円 ・低感染リスク型ビジネス枠:1,000万円 |
・機械装置等費 |
③持続化補助⾦ | 販路開拓や生産性向上に取り組む小規模事業者 | ・通常枠:50万円 ・低感染リスク型ビジネス枠:100万円 |
・広報費 |
④IT導⼊補助⾦ | 生産性の向上につながるITツールを導入する中小企業・小規模事業者等 | ・通常枠:450万円 ・低感染リスク型ビジネス枠:450万円 |
・ソフトウエア費 ・導入関連費 |
⑤サポイン事業 | 大学や公設試験研究機関などと共同でものづくり基盤技術の高度化に向けた研究開発を行う中小企業・小規模事業者等 | 4,500万円 (3年の総額で9,750万円) |
・人件費 ・消耗品費 ・委託費 |
⑥JAPANブランド育成⽀援等事業 | 全国展開や海外展開を図る中⼩企業者等 | ・事業型:500万円 ・⽀援型:2,000万円 |
・事業費 ・試作品等開発・評価費 |
⑦事業承継・引継ぎ補助⾦ | 事業承継・引継ぎを行う中⼩企業・⼩規模事業者・組合等 | ・創業⽀援型:400万円 ・経営者交代型:400万円 ・M&A型:800万円 ・専⾨家活⽤型:800万円 |
事業承継や引継ぎを契機とする新たな取り組みや廃業に係る費⽤ |
中小企業の「事業再構築」を支援する補助金
ここからは、2021年に実施予定の代表的な「中小企業向けの補助金制度」の概要をご説明します。
まずご紹介するのは、新たに創設された「事業再構築補助金」です。
①事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)
事業再構築補助金(正式には「中小企業等事業再構築促進事業」)とは、新型コロナ感染症の影響による事業環境の変化に対応して、次のような「事業再構築」に挑戦する中堅企業・中小企業などを支援するために、経済産業省・中小企業庁が実施する補助金制度です。
- 規模拡大
- 新分野展開
- 業態転換・事業転換
そして事業再構築補助金は事実上、2021年2月15日で受付終了する「持続化給付金」の後継制度といわれています。
また予算額が1.14兆円と巨額で、一件あたりの補助最高額も1億円と高いため、「経済政策の目玉」と呼ばれています。
経済産業省によれば、申請開始は「2021年3月を予定している」とのこと(よくあるお問合せより)。
公募要領なども、公募開始前に公表される予定です。
事業再構築補助金の制度について、より詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説
【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます
(参考)
ご関心のある方は下記サイトもご覧ください。
中小企業の「生産性向上による成長促進」を支援する補助金【その1】(中小企業生産性革命推進事業)
次に、「中小企業の生産性向上による成長促進を支援する補助金」をご紹介します。
まずは「中小企業生産性革命推進事業」の3つの補助金です。
ちなみに2021年度分には、3つの補助金で共通して「低感染リスク型ビジネス枠」が設けられました。
②ものづくり補助⾦(ものづくり・商業・サービス⽣産性向上促進事業)
ものづくり補助⾦(正式には「ものづくり・商業・サービス⽣産性向上促進事業」)とは、中小企業・小規模事業者等が「革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善のために行う設備投資」を支援する補助金制度です。
補助金の最高額は1千万円です。
2021年度の「低感染リスク型ビジネス枠」では、「対⼈接触機会の減少に資する、製品開発、サービス開発、⽣産プロセスの改善に必要な設備投資、システム構築等を⽀援する」と公表しています。
また2020年度には、次の3つの事業類型がありました。
- 一般型:中小企業者等が行う「革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・ サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資などを支援する
- グローバル展開型:中小企業者等が海外事業の拡大・強化等を目的とした「革新的な製品・サー ビス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・ システム投資などを支援する
- ビジネスモデル構築型:中小企業が 「①革新性・②拡張性・③持続性」を有するビジネスモデルを構築できるよう、30者以上の中小企業を支援するプログラムの開発・提供を補助する
そして2020年度の一般型の採択率は、以下のようになっています。
締切回 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
---|---|---|---|
1次(3/31締切) | 2,287 | 1,429 | 63% |
2次(5/20締切) | 5,721 | 3,267 | 57% |
2次(8/3締切) | 6,923 | 2,637 | 38% |
(参考)
【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】
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③持続化補助⾦(⼩規模事業者持続的発展⽀援事業)
持続化補助⾦(正式には「⼩規模事業者持続的発展⽀援事業」)とは、小規模事業者が行う「販路開拓」や「生産性向上」に取り組む費用の一部を支援する補助金制度です。
地域の商工会・商工会議所の助言を受けて「経営計画」を作成することが必要となります。
2021年度の「低感染リスク型ビジネス枠」では、「⼩規模事業者等が経営計画を作成して取り組む、ポストコロナを踏まえた 新たなビジネスやサービス、⽣産プロセスの導⼊等の取組を⽀援し、その取組に資する感染防⽌対策への投資についても⼀部⽀援する」と公表しています。
また2020年度には、次の3つの事業類型がありました。
- 一般型:経営計画に沿った地道な販路開拓等に取り組む費用を支援する
- 事業再開枠:事業者が事業再開に向け、業種別ガイドライン等に照らして事業を継続する上で必要最小限の感染防止対策を行う取組について補助する
- コロナ特別対応型:新型コロナの影響を乗り越えるために行う販路開拓等の取組を支援する
そして2020年度の「一般型」の採択率は、以下のようになっています。
締切回 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
---|---|---|---|
1次(3/31締切) | 8,044 | 7,308 | 91% |
2次(6/5締切) | 19,154 | 12,478 | 65% |
3次(10/2締切) | 13,642 | 7,040 | 52% |
(参考)
④IT導⼊補助⾦(サービス等⽣産性向上IT導⼊⽀援事業)
IT導⼊補助⾦(正式には「サービス等⽣産性向上IT導⼊⽀援事業」)とは、中小企業・小規模事業者等が「生産性の向上につながるITツールを導入するための設備投資」を支援する補助金制度です。
2021年の「低感染リスク型ビジネス枠」では、「複数の業務⼯程を広範囲に⾮対⾯化する業務形態の転換が可能なIT ツールの導⼊を⽀援し、テレワーク対応類型を設け、テレワーク⽤のクラウド対応したITツールを導⼊する取組を⽀援する」と公表しています。
また2020年度には、次の3つの事業類型がありました。
- 通常枠A型:ITツールを導入する経費の一部を支援する(補助金額が30万~150万円未満)
- 通常枠B型:ITツールを導入する経費の一部を支援する(補助金額が150万~450万円)
- 特別枠C型:新型コロナの影響を乗り越えるために、テレワーク環境の環境の整備などの取り組みを支援する
なおIT導⼊補助⾦では、応募者数や採択者数などは公表していません。
(参考)
中小企業の「生産性向上による成長促進」を支援する補助金【その2】
ここでは、「中小企業生産性革命推進事業」以外の「中小企業の生産性向上による成長促進を支援する補助金」をご紹介していきます。
⑤サポイン事業(戦略的基盤技術⾼度化⽀援事業)
サポイン事業(正式には「戦略的基盤技術⾼度化⽀援事業」)とは、大学などの研究機関等と連携して製品化につながる可能性の高い研究開発などを行う中小企業・小規模事業者を支援する補助金制度です。
支援対象が「部品や資材を提供する産業」で、こうした産業を「Supporting Industry(サポーティング・インダストリー)」と呼ぶため、略して「サポイン事業」と呼ばれます。
また制度としては、「単独では申請できない」という点が特徴。
大学などの研究機関や事業管理機関と「共同体」を構成することが必要で、これまでとは異なるネットワークを構築することにつながります。
補助金の上限額は4,500万円(3年の総額で9,750万円)と高額です。
そして過去3年間の採択率は、以下のようになっています。
年度 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
---|---|---|---|
平成29年度 | 297 | 108 | 36% |
平成30年度 | 329 | 126 | 38% |
平成31年度 | 298 | 137 | 46% |
(参考)
⑥JAPANブランド育成⽀援等事業
JAPANブランド育成⽀援等事業とは、全国展開や海外展開など、新たな観光需要の獲得のために新商品・サービス開発などに取り組む中小企業者等を支援する補助金制度です。
補助金額の上限は下記のとおりです。
- 事業型:500万円
- ⽀援型:2,000万円
2020年度の採択率は、以下のようになりました。
締切回 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
---|---|---|---|
3/25締切 | 721 | 192 | 27% |
そして2021年度は、次の2つの類型が実施される予定となっています。
①事業型
事業型とは「中⼩企業者⾃らが、海外展開や全国展開、新たな観光需要の獲得のための新商品・サービスの開発による販路開拓やブランディング等の取組を⾏う場合、その経費の⼀部を補助する」類型です。
2021年度は「ECやクラウドファンディングを活⽤した海外展開の取組や、コロナ危機による社会変化を捉えた新事業の取組を重点的に⽀援する」と公表されています。
②⽀援型
⽀援型とは「⺠間⽀援事業者・商⼯会・商⼯会議所等が、複数の中⼩企業者に対して、海外展開や全国展開、新たな観光需要の獲得に関する⽀援を⾏う場合、その経費の⼀部を補助する」類型です。
2021年度は「ECやクラウドファンディングを活⽤した海外展 開の取組等を重点的に⽀援する」と公表されています。
(参考)
中小企業の「事業承継」を支援する補助金
記事の最後に、「中小企業の事業承継を支援する補助金」をご紹介します。
⑦事業承継・引継ぎ補助⾦
事業承継・引継ぎ補助⾦とは、事業承継・引継ぎを契機とする新たな取り組みや廃業に係る費⽤、事業引継ぎ時の⼠業専⾨家の活⽤費⽤の⼀部を支援する補助金制度です。
別々の制度であった「事業承継補助金」と「経営資源引継ぎ補助金」がひとつになり、2021年度に新設されます。
2021年度には、次の4つの類型が実施される予定です。
- 創業⽀援型:他の事業者が保有している経営資源を引き継いで創業した事業者を⽀援する
- 経営者交代型:親族内承継等により経営資源を引き継いだ事業者を⽀援する
- M&A型:M&A(株式譲渡、事業譲渡等)により経営資源を引き継いだ事業者を⽀援する
- 専⾨家活⽤型:事業引継ぎ時の⼠業専⾨家の活⽤費⽤を補助する
なお、この事業承継・引継ぎ補助⾦は、「令和2年度第3次補正予算のPR資料」と「令和3年度経済産業省予算案のPR資料」では、補助上限額・補助率ともに値が異なっています。
そのため、今後公表される公募要領などで、数値をよく確認することが必要です。
まとめ:ぜひ中小企業向け補助金の利用を
この記事では、2021年に実施予定の代表的な「中小企業向けの補助金」の一覧と概要をまとめてご紹介しました。
なかには、事業再構築補助金のように「補助金額が1億円」という大型の制度もありましたね。
ぜひ、今回ご紹介した中小企業向け補助金を利用して、あなたの経営する企業でも「新たな取り組み」を進めてみてはいかがでしょうか。
より多くの補助金・助成金について知りたい方は下記の記事も参考にしてください。
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