M&Aを行う場合、これまではFA(ファイナンシャルアドバイザー)か仲介業者のどちらかを利用するのが一般的でしたが、最近その流れに大きな変化が現れています。
オンライン上だけで簡単に登録することができ、FAや仲介と比べると料金体系もかなり低めに設定してある「M&Aマッチングサイト」を利用する人が年々増えており、料金体系だけでなくサービスそのものも、各事業者ともにかなりきめ細かく行えるようになってきました。
そこで本日は、M&Aのマッチングサイトについて、基本的な利用方法やメリット・デメリット、そしておすすめのマッチングサイトなどをご紹介していこうと思います。
M&Aマッチングサイトとは
M&Aマッチングサイトとは、その名の通りM&Aのマッチング相手を探すためのインターネットサイト登録型のサービスのことをいいます。
M&Aの売り手・買い手ともにマッチングサイトに登録することにより、日本中のM&A希望企業の情報を閲覧することができるようになります。
また、サイトによっては単にマッチング支援だけでなく、M&Aの相談や検討、そして成約までの全工程において細かくサポートをしてくれるものもあります。
料金体系はさまざまで、登録料が無料のものから月額課金のものまで幅広く、また成約した場合の報酬体系もマッチング会社ごとにそれぞれことなります。
中小企業のM&Aを成功させるためにはマッチングを担うサービスが必須
中小企業は、上場しているような大企業とはことなり、収集できる情報力に限りがあります。
ですから、中小企業向けのM&Aマッチングサービスが今ほど普及していなかった時代は、M&Aといえば大企業が経営戦略の一環として行うものであり、中小企業には縁遠いものでした。
しかし、FAや仲介業者の登場が、この状況を大きく変えることになります。
これまで大企業にしかなかったM&Aの情報に中小企業も触れることができるようになり、売却を希望している企業や譲り受けを希望している企業と交渉する手段を手に入れることができるようになったのです。
その結果、中小企業のM&Aの件数は飛躍的に伸び、今では大企業によるM&Aの数を圧倒的に超えるほどになりました。
小規模事業者のニーズをくみ上げるM&Aマッチングサイトが誕生
中小企業のM&Aが活発に行われるにつれて、以前は行われなかった小規模企業間のM&Aの件数も次第に増えていきました。
しかしその一方で、費用などの関係でM&Aの波に取り残されている小規模事業者もいました。そこで、そういった人たちのニーズを汲み上げるために登場したのが、M&Aのマッチングサイトです。
M&Aマッチングサイトの登場により、事業の規模に関係なく、M&Aに興味がある人であれば誰でも簡単に情報にアクセスすることができるようになりました。
また、費用に関しても、売り手側は原則不要のサービスなども登場し、ますます利用者を増やしていくことになりました。
M&Aマッチングサイトのメリット・デメリット
それではここで、M&Aマッチングサイトのメリットとデメリットについて簡単にまとめてみます。
M&Aマッチングサイトのメリット
M&Aマッチングサイトのメリットは、何といってもそのコストの安さです。
インターネットサイトによる情報提供をサービスの中心としているため、通常の仲介業者などと比べると費用はかなり安く抑えられています。
登録だけならば無料のマッチングサイトも多いため、「とりあえずどのような売り手(もしくは買い手)がいるのか見てみたい」という方や、「やれることは自分でやるので、M&Aを最小限の出費で抑えたい」と考えている方にとってピッタリの選択肢と言えます。
また、アドバイザーが自力で買い手を探す通常のM&Aではどうしても限界があるため、通常のM&Aでは売り手や買い手とコンタクトする数にはどうしても限りがあります。
これに対してマッチングサイトの場合は一瞬で相手にコンタクトすることが可能なため、仲介などを利用したM&Aとはまったく違う数の企業と交渉することが可能になります。
M&Aマッチングサイトのデメリット
M&Aマッチングサイトの最大のデメリットは、自社の情報がネット上で無秩序に拡散してしまう恐れがある点です。
M&Aを行う場合、成立するまでの間は、極力情報が拡散することを防ぎます。
なぜなら成立前に情報が取引先や従業員に漏れてしまっては、その間に業績が悪化してしまう恐れがあり、またM&Aそのものも成り立たなくなる場合があるからです。
しかしマッチングサイトの場合、会社のノンネームシートが完全にオープンになったり、会員登録さえすればほとんど誰でも閲覧できる状態になってしまいます。
また、マッチングサイトを使ったM&Aの場合、売り手と買い手が揃ってからアドバイザーが介入するため、出たとこ勝負のM&Aになってしまう可能性があります。
M&Aマッチングサイトを選ぶためのチェックポイント
では次に、数あるM&Aマッチングサイトの中からどのサイトを選ぶべきなのか、その選択基準となるチェックポイントをいくつかご紹介します。
M&Aマッチングサイト選びのポイント① マッチングしやすそうかどうか
M&Aマッチングサイトの最大の特徴は、掲載されている情報の豊富さとアクセスの容易さです。
ただし、数が多いからといって必ずしもM&Aが成立するわけではありません。
したがって、マッチングしやすそうかどうかを判断する場合は、以下の3点から総合的に判断します。
- 利用者数が多いかどうか
- 案件数と実績が多いかどうか
- 自社の業界のM&Aとの親和性が高いサイトかどうか
M&Aマッチングサイト選びのポイント② サポート体制はどうか
マッチングサイトを利用してM&Aを行う場合、仲介などとは違い、アドバイザーが手取り足取りフォローしてくれるわけではありません。したがって自分でやらなければならない行程が増えることになります。
しかしながら、ある程度のサポートがなければ、M&Aを成立させることはまず無理でしょう。ですから、サポート体制がどれくらい充実しているのかは、マッチングサイトを選ぶ重要なポイントとなります。
なお、サポート体制が充実しているかどうかを判断するポイントは、おもに以下の2点です。
- 弁護士・公認会計士・税理士などの専門家のアドバイスを受けることはできるのか
- 契約書の作成やリーガルチェックを受けることはできるのか
M&Aマッチングサイト選びのポイント③ 手数料体系はどうか
マッチングサイトの手数料体系は、サイトごとにバラバラです。登録料無料のサイトもあれば、情報を公開するために月額課金されるサイトもあります。もちろん成約した場合の成功報酬の体系も、サイトごとにかなりことなります。
したがって、自社がM&Aを行う場合のモデルケースを複数作成し、その場合どれくらいの手数料が必要になるのかを複数社で見積もり、比較してみましょう。
おすすめのM&Aマッチングサイトの一覧
それでは、数あるM&Aマッチングサイトの中から、取引数が多く実績も豊富なサイトをいくつか厳選してご紹介します。
①Batonz(バトンズ)
日本最大のM&A仲介会社である日本M&Aセンターのグループ会社であるBatonz(バトンズ)は、累計マッチング数が4万を超えるM&Aマッチングサイト業界の最大手のひとつです。
日本M&Aセンターで積み上げたノウハウがそのまま投入されているため、M&Aのサポート体制も万全で、1,600人を超える専門家のバックアップ体制を備えながら、従来のM&Aの約10分の1の手数料に抑えています。
Batonz公式ページ:https://batonz.jp/
②TRANBI(トランビ)
2011年からサービスを開始した比較的新しい会社でありながら、売り手は無料、買い手も成約金額の3%という低価格路線がヒットし、今ではユーザー数や案件数、成約数まで日本最大級のM&Aマッチングサイトに成長しました。
飲食や小売業、介護やサイト売買など、比較的小規模なM&Aの案件が豊富で、300社を超える金融機関やM&A専門家とも提携しています。
TRANBI公式ページ:https://www.tranbi.com/
③ビズリーチ・サクシード
転職サイト「ビズリーチ」で有名な株式会社ビズリーチが提供しているM&Aマッチングサイトです。
登録時はもちろん、成約時にも売り手側の手数料は無料(買い手は成約金額の1.5%(ただし最低金額は100万円))のため、掲載されている案件数は非常に多いのが特徴です。
また、売り手側の情報の秘匿性に力を入れているため、安心して情報を掲載することができます。
ビズリーチ・サクシード公式ページ:https://br-succeed.jp/
④SPEED M&A
売り手と買い手が直接接触する仕組みを取ることにより、M&A成立までのスピードアップとコストダウンを実現しているのがSPEED M&Aです。掲載されている案件の規模は1円~50億円と幅広く、また取り扱っている業種も大変豊富です。
売り手側は基本的に無料で、手数料を支払うのは買い手側のみ(成約金額の1.5%~5%)であり、最低報酬金額は20万円という超低価格を実現しています。
また、豊富なチャット機能により売り手と買い手の直接交渉をサポートしています。M&Aの手数料をできるだけ低価格に抑えたい人にはお勧めのマッチングサイトです。
SPEED M&A公式ページ:https://speed-ma.com/
⑤事業承継総合センター
リクルートが運営しているM&Aマッチングサイトです。M&Aの仲介業者にはそれぞれ得意・不得意な業界や分野があるため、売り手や買い手と仲介業者との間に立ち、第三者の立場でM&A仲介業者を比較・紹介するサービスを行っています。
他のマッチングサイトとは全くことなる考え方で成り立っているためとても斬新で、かつ仲介業者同士を比較するというありそうでなかったサービスを展開しています。
より良い相手を見つける手段としてはとても優れていますが、相手企業との間に仲介業者とさらに事業承継総合センターが立つことになるため、手数料の低さを第一に考えた場合には難しいケースもあります。
事業承継総合センター公式ページ:https://rbsp.jp/
⑥FUNDBOOK(ファンドブック)
仲介業者の手厚いサポートと、サイトのプラットフォームのみを提供して安価な手数料を実現するM&Aマッチングサイトの良いところを掛け合わせたハイブリッド型のマッチングサイトです。
M&Aを実現させるための要所要所でM&Aアドバイザーがサポートすることにより、はじめてのM&Aでも戸惑うことなく成約まで進むことができます。最短52日での成約実績もあるため、スピーディーなM&Aにも対応することが出来ます。
登録料や着手金は無料ですが、成約時には売り手・買い手ともに成約金額の1~5%前後が手数料として必要になります。
FUNDBOOK公式ページ:https://fundbook.co.jp/
⑦M&Aナビ
中小企業やベンチャーのM&Aに特化したマッチングサイトです。M&Aマッチングサイトの中ではめずらしく、検討段階からアドバイザーによるサポートを受けることができます。
「はじめてのM&Aサポートプログラム」という月額有料制サポートプランに登録すると、相手企業の選定方法や交渉中のアドバイスが受けられるのはもちろんのこと、メールやLINEなどでその都度相談をすることもできます。
その分他と比べると報酬はやや高めで、成約時には売り手・買い手ともに成約金額の5~9%の手数料が必要となります。
M&Aナビ公式ページ:https://ma-navigator.com/
M&Aマッチングサイトを利用する上での注意点について
最後に、M&Aのマッチングサイトを利用する場合の注意点についてご紹介します。
マッチングサイトはどちらかと言うとプロ向き
M&Aのマッチングサイトの多くは、登録無料なのはもちろんのこと、M&Aが成立した場合でも支払う手数料が極めて低く抑えられています。これは、サイトでの情報提供をサービスの中心に置くことによってコストダウンを実現させているためですが、その分M&Aアドバイザーや専門家からのフォローアップは通常の仲介業者と比べると劣ります。
逆に、マッチングサイトを利用しながら逐次アドバイザーのフォローを追加依頼していくと、最終的には通常の仲介業者に依頼する場合とそれほど変わらない手数料となってしまいます。
つまり、M&Aマッチングサイトを使いこなすためには、M&Aの行程をある程度以上理解しており、「どの部分のサービスは省略しても問題がないか」や「この部分はM&Aアドバイザーや専門家のフォローが必ず必要」ということが分かっている人でなければ、本当の意味で使いこなすのは難しいと言えます。
「とりあえずどのような案件があるのか見てみたい」という人や、「成約するのが目的なので条件はあまり問わない」という人であれば問題ありませんが、「一生に一度のM&Aだから、後悔のないようにしたい」と思われる人であれば、やはり通常の仲介業者を利用した方が良いでしょう。
まとめ
M&AのマッチングサイトはFAや仲介業者と比べると手数料がかなり抑えられているため、これまで費用の問題でM&Aに踏み出せなかった経営者や小規模事業者を中心に、近年利用者数を伸ばし続けています。
取り扱っている案件数も非常に多く、必要であればオプションサービスを追加していくこともできるため、カスタマイズが可能なM&Aマッチングサービスとしても非常に優れています。
ただし、「そもそも何が分からないのかすらよく分からない」というようなM&Aに不慣れな人がマッチングサイトを利用する場合には、ゴールまでたどり着くのが難しい可能性があります。その場合は躊躇せず、各サイトが提供しているM&Aアドバイザーによるサポートを受けるのが良いでしょう。
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