【最大1億円】東京都の助成金「革新的事業展開設備投資支援事業」を徹底解説

最大1億円が交付される、東京都の大型助成金事業「革新的事業展開設備投資支援事業」。
「最新機械設備の購入経費の一部」が補助されるという、中小企業の経営者の方にとってありがたい制度です。

そこでこの記事では「革新的事業展開設備投資支援事業」の基本知識から概要、申請スケジュール、成果事例まで徹底解説します。

東京都で事業を営んでおり、設備投資を検討されている経営者の方は、是非ご覧ください。

目次

【最大1億円】東京都の助成金事業「革新的事業展開設備投資支援事業」とは

まずは、東京都の助成金事業「革新的事業展開設備投資支援事業」の基本知識と、支援対象事業(採択者)数をご紹介します。

助成金事業「革新的事業展開設備投資支援事業」とは

東京都の助成金事業「革新的事業展開設備投資支援事業」とは、東京都内で事業を行っている中小企業等に対して、最新機械設備を新たに購入するための経費の一部を「最大1億円」まで助成する制度です。
設備投資を支援するということで、「東京都版ものづくり補助金」とも呼ばれます。

この事業は東京都および(公財)東京都中小企業振興公社によって、2017(平成29)年に開始されました。
以来、年に2回の募集を実施しており、2020年には第7・8回の募集が行われています。

「革新的事業展開設備投資支援事業」の概要

次に「助成対象事業」や「申請資格の要件」など、「革新的事業展開設備投資支援事業」の概要を解説します。

「革新的事業展開設備投資支援事業」の助成対象事業

「革新的事業展開設備投資支援事業」の助成対象事業は、次のいずれかに合致することが必要です。

Ⅰ競争力強化

「更なる発展に向けて、競争力強化を目指した事業展開に必要となる最新機械設備を新たに購入する事業」を指します。

「競争力強化」に該当する例として、次のような事業が挙げられます。

  • 製品、技術の品質向上、信頼性確保
  • 特殊素材、難加工、複雑形状への対応
  • 自動化、省力化
  • 一貫加工の実現 など

Ⅱ成長産業分野

「成長産業分野の『支援テーマ』に合致した事業展開に必要となる最新機械設備を、新たに購入する事業」をいいます。

「成長産業分野」とは、以下の分野です。

  1. 医療・健康・福祉分野
  2. 環境・エネルギー分野
  3. 危機管理分野
  4. 航空機・宇宙分野
  5. ロボット分野
  6. 自動車分野

Ⅲ IoT・ロボット活用

「更なる発展に向けて「生産性向上」を目指した事業展開に必要となる最新機械設備を新たに購入する事業」を指します。

「IoT化」と「ロボット導入」で分けられ、各事業は次のように定義されています。

  • IoT化
    機械設備導入と同時にIoT化を進めるために必要となる最新機械設備を新たに購入する事業
  • ロボット導入
    産業用ロボット、サービスロボット等を購入して行う生産性向上に資する事業

Ⅳ 後継者イノベーション

「事業承継を契機とした、後継者によるイノベーションに必要となる最新機械設備を新たに購入する事業」をいいます。

「イノベーション」とは、以下のいずれかの新事業活動に取り組むことを指します。

  1. 新商品の生産
  2. 新役務の提供
  3. 商品の新たな生産、または販売方式の導入
  4. 役務の新たな提供方式の導入、その他の新たな事業活動

なお、2021年に注目される経済産業省の最大1億円の「事業再構築補助金」の制度についてより詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説

【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます

「革新的事業展開設備投資支援事業」の申請資格の要件(助成対象者)

「革新的事業展開設備投資支援事業」の申請資格の要件(助成対象者)は、以下の4点をすべて満たす事業者です。

申請資格の要件①:中小企業者・中小企業団体等である

中小企業者とは、下表に該当する事業者を指し、会社と個人事業者の両方が含まれます。

業種 資本金 常用従業員数
①製造業、建設業、運輸業 3億円以下 300人以下
②卸売業 1億円以下 100人以下
③サービス業 5,000万円以下 100人以下
④小売業 5,000万円以下 50人以下

また中小企業団体等とは、事業協同組合等や協業組合等で、その構成員の半数以上が「都内に主たる事業所を有する中小企業」であるものを指します。

申請資格の要件②:大企業が実質的に経営に参画していない

「大企業」とは、前項の「中小企業者」以外の事業者を指します。

また中小企業でも「大企業が実質的に経営を支配している」など、いわゆる「みなし大企業」も助成対象になりません。

申請資格の要件③:東京都内で実質的に事業を行っている

「実質的に」とは、以下のすべてに該当していることをいいます。

  • 基準日時点で、東京都内に登記簿上の本店または支店がある
  • 基準日時点で、東京都内事業所で継続的に2年以上事業を行っている
  • 助成事業で購入した最新機械設備を、都内で引き続き活用し続ける予定がある

なお「基準日」は募集回ごとに決められており、第8回の基準日は2020年10月1日でした。

申請資格の要件④:その他

前項までの3点のほか、次のすべてに該当することが必要です。

  1. 東京都に法人事業税や法人都民税などを納税しており、税金の滞納がない
  2. 同一テーマ、同一内容等で助成を受けていない
  3. 過去の助成事業で不正などの事故がなく、報告書を期日までに提出している
  4. 事業の継続に問題がない

「革新的事業展開設備投資支援事業」の助成率・助成限度額

「革新的事業展開設備投資支援事業」の助成率と助成限度額は、下表のとおりです。

事業区分 申請者
区分
助成率 助成限度額 助成下限額
Ⅰ 競争力強化:中小企業者 A 1/2以内 1億円 100万円
Ⅰ 競争力強化:小規模企業者 2/3以内 3千万円 100万円
Ⅱ 成長産業分野 2/3以内 1億円 100万円
Ⅲ IoT・ロボット活用 2/3以内 1億円 100万円
Ⅳ 後継者イノベーション E 2/3以内 1億円 100万円

なお小規模企業者とは、前述の「中小企業者」のうち以下に該当する事業者です。

業種 常用従業員数
①製造業、建設業、運輸業 20人以下
②卸売業 5人以下
③サービス業 5人以下
④小売業 5人以下

「革新的事業展開設備投資支援事業」の助成対象経費

「革新的事業展開設備投資支援事業」の助成対象となるのは、「助成事業を遂行するために必要となる、最新機械設備の新たな購入、搬入・据付に要する経費」です。
具体的な対象経費としては、下表のようになります。

事業区分 対象経費
Ⅰ 競争力強化
Ⅱ 成長産業分野
Ⅳ 後継者イノベーション
ア.機械装置
イ.以下の器具備品
・冷凍・冷蔵機能付の陳列棚および陳列ケース
・度量衡器
・試験または測定機器
・理容または美容機器
Ⅲ IoT・ロボット活用:IoT化 上記ア・イのほかに
ウ.IoT関連装置、周辺設備
Ⅲ IoT・ロボット活用:ロボット導入 ア.ロボット本体
イ.機械装置
ウ.以下の器具備品
・冷凍・冷蔵機能付の陳列棚および陳列ケース
・度量衡器
・試験または測定機器
・理容または美容機器
エ.ロボット関連装置、周辺設備

経費に関しては、その他に次のような条件があります。

  1. 事業実施のために必要となる最小限の経費のみ
  2. 助成対象期間内(交付決定日の翌月1日から1年6ヶ月間)に契約、取得、支払いが完了する
  3. 助成対象の確認が可能で、本助成事業に係るものとして明確に区分できる

ただし、以下の経費は対象外となります。

  • 既存機械設備の改良・修繕及び撤去・移設・処分に係る経費
  • 中古品の購入経費
  • 設置場所の整備工事や基礎工事、電気工事等に係る経費
  • 割賦、リース、レンタルに係る経費 など

「革新的事業展開設備投資支援事業」の機械設備設置場所

「革新的事業展開設備投資支援事業」で助成を受ける機械設備は、助成対象期間内に「自社所有物件または賃貸借が結ばれている物件」に設置して、以下の条件を満たすことが必要です。

設置場所 条件
東京都内 ア.基準日時点で東京都内に登記簿上の本店または支店がある
イ.原則、基準日時点で環境条例に定められた工場設置認可・認定を受けている
東京都以外 ア.基準日時点で東京都内に登記簿上の本店がある
イ.設置場所が、神奈川・埼玉・千葉・群馬・栃木・茨城・山梨に所在する工場等である
ウ.原則、設置場所が基準日時点で、県や市区町村または政令指定都市が定める環境保全等に関する条例による「特定施設の各種届出」がなされ「 認可・認定」を受けている

「革新的事業展開設備投資支援事業」の申請書類と提出方法

「革新的事業展開設備投資支援事業」の申請書類は、次の通りです。

  1. 申請前確認書
  2. 申請書
  3. 確定申告書類
  4. 履歴事項全部証明書
  5. 納税証明書
  6. 積算根拠書類
  7. 機械設備設置場所関連書類
  8. 会社関連書類
  9. 労働保険関連書類
  10. 導入前適正化診断関連書類

また「申請書類の提出」は後述するスケジュールの通り、まず「申請予約」を行ったうえで、東京都中小企業振興公社が指定した日時に受付会場に書類一式を持参します。

「革新的事業展開設備投資支援事業」のスケジュールと審査の視点

「革新的事業展開設備投資支援事業」の概要を確認したところで、ここでは申請・審査スケジュールと審査の視点を解説します。

「革新的事業展開設備投資支援事業」の支援対象事業(採択者)数

「革新的事業展開設備投資支援事業」の支援対象事業(採択者)数は、下表の通りです。

募集回(年度) 支援対象事業(採択者)数
第1回(平成29) 90件
第2回(平成29) 75件
第3回(平成30) 81件
第4回(平成30) 91件
第5回(令和元) 96件
第6回(令和元) 89件
第7回(令和2) 72件
合計〈平均〉 594件〈85件〉

毎回72~96件が採択されており、平均すると1回の募集で85件が採択されています。

ちなみに「革新的事業展開設備投資支援事業」で公表されているのは上記の「支援対象事業(採択者)数」だけで、「応募者数」や「採択率」は公表されていません。

「革新的事業展開設備投資支援事業」の申請・審査スケジュール

「革新的事業展開設備投資支援事業」の申請・審査スケジュールは下図のようになります。
記載された日付は、第8回(2020年度)のものです。

出典:東京都中小企業振興公社

そして各実施内容の詳細は、次の通りです。

申請予約

書類の申請を行うには、まずは予約が必須となります。
東京都中小企業振興公社のウェブサイトから申し込みます。

申請受付(申請書類提出)

公社が指定した日時に、受付会場へ申請書類一式を持参します。

審査

「革新的事業展開設備投資支援事業」では次の審査が行われ、最終的には総合審査で助成対象事業者が決定します。

  1. 一次審査(書類)
  2. 二次審査(面接・書類)
  3. 現地調査
  4. 総合審査

なお、二次審査(面接)や現地調査には、経営コンサルタントや社外顧問など「自社以外の者」は出席できません。

事務手続き説明会(交付決定日)

助成対象事業者に対して「交付決定通知書」が交付され、この日が「交付決定日」となります。

助成対象期間

「交付決定日」の翌月1日から1年6ヶ月間が「助成対象期間」となり、第8回募集では2021年4月1日~2022年9月30日です。

この期間に、機械設備の契約・取得・支払いを完了し、条件の場所に設置する必要があります。

完了検査・助成金交付

助成事業完了後、事業者が「完了報告書」を提出します。
その後完了検査が行われ、助成金が確定して交付されます。

完了検査から助成金交付までの期間は、約2か月です。

「革新的事業展開設備投資支援事業」の審査の視点

「革新的事業展開設備投資支援事業」の審査は、「次のような視点を一例とした、複数の観点から行う」とされています。

  1. 目的との適合性
    申請区分と計画内容は合致しているか
  2. 優秀性
    現状分析、課題、解決策が適切であるか
  3. 実現性
    計画規模は妥当であるか
  4. 計画の妥当性
    収支計画に具体性があるか
  5. 成長・発展性
    設備導入後の効果は適切か

「革新的事業展開設備投資支援事業」の成果事例

記事の最後に、「革新的事業展開設備投資支援事業」の成果事例をご紹介します。

二和印刷㈱:助成金を活用して新たな大型印刷機を導入

東京都中央区の二和印刷㈱は、高級化粧品や高級洋菓子のパッケージ印刷を得意とする印刷会社で、平成29年度の第1回事業に申請し採択されました。

更なる飛躍のため、助成金を活用して新たな大型印刷機を導入したことで、大幅に生産性が向上し新規顧客も開拓できました。

当初は「申請書類の多さに圧倒された」とのことですが、助成金申請プロジェクトチームを組んで、先人の歩みや思いを全社で共有。

自社の強みや立脚点が明確になることで、従業員の意識も変わり「絶対に申請を通すぞ」という固い決意が生まれたと言います。

㈲トーヨー:助成金を活用して最新のプレス機を導入

同じく平成29年度の第1回事業に申請し採択されたのが、東京都大田区でさまざまな部品の金属プレス加工を行う㈲トーヨーです。

近年増えている高精度加工などの顧客の要望に対応するため、助成金を活用して最新のプレス機を導入。
顧客のニーズに応えるとともに高単価化に成功し、売上高の増加を果たしました。

初めての助成金申請でしたが、「複合化」・「高精度化」という時代の流れをキーワードにし、「書類上も面接時もポイントを絞ってプレゼンをしたことが成功につながった」と振り返ります。

まとめ:東京都の助成金事業「革新的事業展開設備投資支援事業」の活用を

この記事では「革新的事業展開設備投資支援事業」の基本知識から概要、申請スケジュール、成果事例まで徹底解説してきました。

「新規受注獲得」や「売上高の増加」につながる可能性もありますので、東京都で事業を行われている方は、ぜひチャレンジされてみてはいかがでしょうか。

より多くの様々な中小企業向け補助金・助成金についてまとめた記事もありますので、参考にしてください。

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