【補助上限100億円!】サプライチェーン補助金とは?採択結果から2021年(2次)公募概要まで解説

補助上限額が100億円と、大型補助金として注目される「サプライチェーン補助金」(2020年公募では上限額が150億円でしたが、2021年公募で100億円に変更)。
2021年(2次)公募も実施される予定ですが、2020年(1次)公募とは内容が一部変更されるようです。

そこでこの記事では、サプライチェーン補助金の基本知識から、2020年(1次)公募の採択結果、2021年(2次)公募の概要まで解説します。

サプライチェーン補助金の申請を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。

サプライチェーン補助金とは

まずは、サプライチェーン補助金の基本知識を解説します。

サプライチェーン補助金とは

サプライチェーン補助金とは、新型コロナ感染症の発生によって「サプライチェーンの脆弱性」が表面化した事実を受けて「国内の生産拠点等の確保」を進めるため、国内での生産拠点を整備する事業者の設備導入等を支援する補助金制度です。

正式名称は「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」で、経済産業省が主管となって行います。

ちなみに「サプライチェーン」という言葉の意味は次の通り。

サプライチェーン(supply chain)とは、商品が消費者に届くまでの「原料調達」に始まり「製造」「在庫管理」「物流」「販売」等を通じて消費者の手元に届くまでの一連の流れのこと。
供給(supply)を鎖(chain)に見立て、ひと続きの連続した流れとして捉える考え方。
「供給連鎖」ともいう。

weblio辞書より

サプライチェーン補助金が初めて実施されたのは、令和2年度第一次補正予算による2020年(1次)公募。
このときは、7年ぶりの「全国どこでも事業が可能な立地補助金」であり、大規模投資が可能な補助上限額150億円として注目されました。

2021年(2次)公募については、3月中旬以降に開始される予定で、現在は事務局公募期間が終了して選定中となっています。

サプライチェーン補助金の制度概要

サプライチェーン補助金は、下図のように「基金設置法人(一般社団法人環境パートナーシップ会議(EPC))」に委託された「事務局」が運営します。
「事務局」は2020年(1次)公募では「みずほ情報総研」が選定され、2021年(2次)公募では現在選定中です。

出典:経済産業省

補助金交付の流れ(公募のスケジュール)

サプライチェーン補助金の、補助金交付までの流れは次の通りです。
なお()内の日付は、1次公募におけるスケジュールとなります。

  1. 公募開始(2020年5月22日)
  2. 公募締切(7月22日)
  3. 採択先決定(11月20日)
  4. 交付申請(2021年3月末まで)
  5. 補助事業開始
  6. 事業実施期間(2023年3月末まで)
  7. 実績報告書の提出(事業完了後30日以内)
  8. 補助金額の確定
  9. 補助金の交付

環境省の「太陽光発電設備への補助金」とは別事業

余談ですが、同じ「サプライチェーン」という名称を使っている、環境省の「サプライチェーン改革・生産拠点の国内投資も踏まえた脱炭素社会への転換支援事業」と「サプライチェーン補助金」は全く別の事業です。

環境省の事業は、太陽光発電設備整備などを支援するもので、「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」と呼ばれますので、「サプライチェーン補助金」とは分けて考えてください。

環境省:地方公共団体・事業者向け支援事業

なお、最高補助金額1億円で注目の集まる2021年開始の「事業再構築補助金」の制度についてより詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説

【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます

サプライチェーン補助金 2020年公募(1次公募)の採択結果

サプライチェーン補助金 2020年(1次)公募の採択結果は、下表のようになりました。

応募回 応募者数 採択者数 採択率
6月5日先行審査分 90件 57件 63%
7月22日応募締切分 1,670件 146件 8.7%
合計 1,760件 203件 11%

「先行審査」とは、事業を早期に実施したい事業者のために、2020年6月5日までに応募書類を提出した分について、先に審査を行ったものです。

先行審査分は件数も少なく、採択率は63%と高めですが、7月22日応募締切分では千件を超える多数の応募があったため、採択率も低めとなりました。

また7月22日応募締切分の採択者146件を見ると、次のような製品・部素材を取り扱う事業者が多く採択されています。

  1. 海外における生産拠点の集中度が高く、かつ、サプライチェーンの途絶によるリスクが大きい重要な製品・部素材(56件):半導体関連、航空機関連、車載用電池関連、レアメタル関連、ディスプレイ など
  2. 国による緊急調達等の対象物資や医療提供体制の確保のために必要となる物資(90件):消毒用アルコール、マスク(サージカルマスク)関連(部材含む)、医療用ガウン関連、手袋(医療従事者用) など

なお、採択事業者名はこちらから確認できます。
経済産業省:採択事業者一覧(先行審査分除く)
経済産業省:採択事業者一覧(先行審査分)

サプライチェーン補助金 2021年公募(2次公募)の概要

記事の最後に、サプライチェーン補助金 2021年(2次)公募の概要についてご紹介します。

正式名称は令和2年度第3次補正予算「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業」

サプライチェーン補助金 2021年(2次)公募は、正式名称が令和2年度第3次補正予算「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業」として実施されます。

公募開始時期と公募期間

経済産業省によれば、2021年(2次)公募の公募開始時期は「2021年3月中旬以降」とされています。

公募期間については「現在検討中」として、具体的な期間はあげられていません。
ただ参考として「これまでの立地補助事業の公募においては平均して1ヶ月半~2ヶ月程度の公募期間でした」と説明しています。

ちなみに、2020年(1次)公募の公募期間は次のとおりでした。

  • 2020年5月22日(金)~2020年7月22日(水)

「事前着手」と「先行採択」は検討中

2020年(1次)公募では、「事前着手」と「先行採択」が認められていましたが、2021年(2次)公募でも実施するかどうかは「現在検討中」とのことです。

  • 事前着手:本来、対象経費の発注・契約などは交付決定通知後から可能となるが、補助金制度の必要性・緊急性に照らし合わせて、交付決定前に発生した分も補助対象経費として認める制度
  • 先行採択:事業を早期に実施したい事業者のために、先行審査を行い、通常よりも早く採択を決定する制度

サプライチェーン補助金2021年公募(2次公募)の概要と補助要件・対象経費・補助率

サプライチェーン補助金 2021年公募(2次公募)の概要は、次の通りです。

  • 予算額
    2,108億円
  • 補助対象
    建物・設備・システムの導入等
  • 補助上限
    100億円(中小企業特例は5億円)
  • 事業期間
    2024年3月31日まで(原則)
  • 成果目標
    国内における生産拠点等の整備を進め、製品等の円滑な確保を図ることでサプライチェーンの分断リスクを低減し、我が国製造業等の滞りない稼働、強靱な経済構造の構築を目指す

補助要件

2021年(2次)公募の補助要件は、後述するとおり1次公募から見直される予定。
具体的な内容は、3月中旬以降に公開予定の「公募要領で明確化する」と説明しています(経済産業省)。
現在公表されている補助要件は次の点です。

A類型:生産拠点の集中度が高い製品・部素材の供給途絶リスク解消のための生産拠点整備

(例)半導体関連、電動車関連等、サプライチェーンの途絶によるリスクが大きい重要な製品の生産拠点を日本国内に確保

出典:経済産業省

B類型:一時的な需要増によって需給がひっ迫するおそれのある製品・部素材のうち、国民が健康な生活を営む上で重要なものの生産拠点等整備

(例)感染症への対応等のために必要不可欠な物資・原材料等に係る国内における生産拠点整備

出典:経済産業省

対象経費と補助率

2021年(2次)公募の対象経費と補助率は、下表の通りです。

補助対象経費の区分 内容 補助率 上限額
(1)建物取得費 補助事業を実施するために必要な建物の購入等に必要な経費 ①大企業
1 / 2以内~1 / 4以内
②中小企業等
2 / 3以内~1 / 4以内
100億円
(2)設備費 補助事業を実施するために必要な設備機械装置の購入及び据付け等に必要な経費 同上 100億円
(3)システム購入費 補助事業を実施するために必要なソフトウェアの購入等に必要な経費 同上 100億円

なお補助率については、後述する通り「補助対象経費の額に応じて段階的な引き下げを実施する」とされています。

2020年公募(1次公募)からの変更点

2021年(2次)公募では、2020年(1次)公募から次のような点が変更されていますので、ご注意ください。

補助率・補助上限額

2次公募では、「B類型の補助率」と「共通の補助上限額」が、次のように変更されています。

変更点 1次公募 2次公募
B類型の補助率 大企業:2/3以内
中小企業:3/4以内
大企業:1/2以内
中小企業:2/3以内
補助上限額 150億円 100億円

また補助対象経費の額に応じて、以下のように「補助率の段階的な引き下げ」を行います。

まず、大企業の補助率については次のとおり。

補助対象経費 補助率(大企業)
〜30億円 1/2以内
30億円〜100億円 1/3以内
100億円以上 1/4以内

例えば、補助対象経費200億円の場合…

  • 補助対象経費30億円以下:補助額15億円
  • 補助対象経費30億円〜100億円部分:補助額約23.3億円
  • 補助対象経費100億円〜200億円部分:補助額25億円
  • → 補助額合計約63.3億円、補助率19/60

補助対象経費が約347億円以上の場合に、上限100億円となります。

補助率の引き下げについて(大企業) 出典:経済産業省

同じように中小企業の補助率については、次のようになります。

補助対象経費 補助率(中小企業)
〜30億円 2/3以内
30億円〜100億円 1/2以内
100億円以上 1/4以内

例えば、補助対象経費200億円の場合…

  • 補助対象経費30億円以下:補助額20億円
  • 補助対象経費30億円〜100億円部分:補助額35億円
  • 補助対象経費100億円〜200億円部分:補助額25億円
  • → 補助額合計80億円、補助率2/5

補助対象経費が280億円以上の場合に、上限100億円となります。

補助率の引き下げについて(中小企業) 出典:経済産業省

 

申請要件の見直し

2021年(2次)公募の支援事業の類型は2020年(1次)公募と同様ですが、「要件を見直し、対象の絞り込みを行う」とされています。

令和2年12月8日に閣議決定された「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」では、次のように説明。

  • 具体的には、サプライチェーンの途絶によるリスクの大きい重要な製品・部素材や国民の健康な生活にとって重要な物資について、国内増産等に寄与する設備投資や、海外生産拠点の多元化に資する設備投資に対して支援を実施する

なお、申請要件の見直す理由としては「1次公募の募集条件が甘かったため」とも言われます(日経新聞より)。
募集条件が甘かったため、応募額が募集額の10倍以上となってしまい、「応募の多さ」を理由に予備費から860億円を積み増しする事態となりました。

そのため2次公募では、「補助金本来の目的に、より合致した要件」を打ち出してくるものと考えられます。

新たに「中小企業特例」を設定

2次公募では、新たに「中小企業特例」が設定され、「A類型の対象製品・部素材の生産に必要不可欠な製品・部素材の生産を行う中小企業」を支援します。

  • 補助上限額:5億円
  • 補助率:2 / 3以内

ただし「取引先事業者等による証明が必要」といった、一定の要件が設けられる予定です。

応募はJグランツによる電子申請

1次公募では、申請書類は全て事務局へ郵送していましたが、2次公募では、Jグランツによる電子申請を予定しています。

Jグランツでの補助金の申請にはgBizIDが必要で、IDの取得には2~3週間を要する場合があります。
申請を検討されている方は、今のうちに登録を進めておきましょう。

1次公募との予算の比較

サプライチェーン補助金 1次公募の予算と採択状況は、次のようになりました。

  • 1次公募の予算:合計3,060億円(令和2年度第一次補正予算 2,200億円 + 令和2年度予備費860億円 )
  • 1次公募の採択状況:合計203件・約3,052億円(先行審査分57件・約574億円 + 146件・約2,478億円)

それに対して、2次公募の予算(令和2年度第3次補正予算)は2,108億円です。

「申請要件の見直し」まで行うため、1次公募のような追加予算があてられることは考えにくい状況です。
しかし補助上限額が2 / 3に引き下げられていますので、2次公募では1次公募の採択件数203件をやや上回ると考えられます。

まとめ:サプライチェーン補助金申請の準備を

この記事では、サプライチェーン補助金の基本知識から、2020年(1次)公募の採択結果、2021年(2次)公募の概要まで解説しました。

前回よりも補助上限が下げられたとはいえ、最大100億円の大型補助金であることに違いはありません。
申請を希望される経営者の方は、公募要領が公開されるまでgBizIDを取得するなど、申請への準備を進めておきましょう。

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