2021年3月26日に、いよいよ第1回の公募が開始された「事業再構築補助金」。
補助金申請には「事業再構築に取り組む」ことが要件になっているので、「事業再構築の類型」をよく理解する必要があります。
そこでこの記事では、「事業再構築の類型」のひとつである「新分野展開」の定義をわかりやすく解説していきます。
後半では、事例と要件を満たす考え方もご紹介しますので、補助金申請を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。
事業再構築補助金の「事業再構築の類型」とは?その重要性
事業再構築補助金の主要申請要件は次の3点で、この全てを満たすことが必要です(事業再構築補助金の概要より)。
- 売上が減っている
- 事業再構築に取り組む
- 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
そして上記2の「事業再構築」とは、次の5つの類型を指します。
- 新分野展開:新たな製品等で新たな市場に進出する
- 事業転換:主な「事業」を転換する
- 業種転換:主な「業種」を転換する
- 業態転換:製造方法等を転換する
- 事業再編:事業再編を通じて新分野展開、事業転換、 業種転換または業態転換のいずれかを行う
つまり、事業再構築補助金に申請するためには、上記①~⑤のうちいずれかの類型に該当する事業計画を、認定支援機関と策定することが必要です。
もし類型に該当しなければ、申請要件を満たしませんので、いくら良い事業計画を立案しても、補助金に採択されることがありません。
そのため、自社が目指す類型の要件などを、漏れなく理解しておくことが重要です。
この記事では、次項から「①新分野展開」について詳しく解説していきます。
また、「事業再構築補助金」と「事業再構築」の詳細は、以下のサイトで確認できます。
・事業再構築補助金 公式ウェブサイト
・中小企業庁:事業再構築指針
・中小企業庁:事業再構築指針の手引き
なお、事業再構築の制度の全体像について知りたい方は、以下の記事もお読みください。
【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説
【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます
事業再構築の類型「新分野展開」の定義と該当要件
次に、事業再構築の類型「新分野展開」の定義と該当要件をご紹介します。
事業再構築の類型「新分野展開」の定義
事業再構築の類型のひとつである「新分野展開」の定義は次の通りです。
- 中小企業等が「主たる業種または主たる事業」を変更することなく、「新たな製品等」を製造等することにより、「新たな市場」に進出すること
ここで、「業種」と「事業」の定義は以下のようになっています。
- 業種:直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく大分類の産業
- 事業:直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく中分類、小分類または細分類の産業
事業再構築の類型「新分野展開」の該当要件
事業再構築の類型「新分野展開」に該当するためには、次の3要件を全て満たすことが必要です。
- 1.製品等の新規性要件
- 2.市場の新規性要件
- 3.売上高10%要件
また、「主たる業種または事業」を変更することになった場合は、「新分野展開」ではなく「業種転換」または「事業転換」といった類型に該当しますので、注意してください。
上記1~3の各要件については、以下で詳しくご紹介します。
要件1.製品等の新規性要件
「製品等の新規性要件」を満たすためには、次の4点を全て満たす必要があります。
- 過去に製造等した実績がないこと
- 製造等に用いる主要な設備を変更すること
- 競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと
- 定量的に性能または効能が異なること(計測できる場合に限る)
また、ここでいう「新規性」とは、「事業再構築に取り組む事業者にとっての新規性」であり、「日本初」や「世界初」といった「世の中における新規性」ではありません。
要件2.市場の新規性要件
「市場の新規性要件」を満たすためには、「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」が必要です。
また、任意要件の「既存製品等と新製品等の顧客層が異なること」を事業計画で示すことで、審査で高い評価を受けることができる場合があります。
要件3.売上高10%要件
「売上高10%要件」を満たすためには、「3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品の売上高が総売上高の10%以上となる計画」を策定することが必要です。
また「10%以上」とは、補助金申請を行うための最低条件。
この値が大きくなるほど、審査でより高い評価を受けることができる場合があります。
事業再構築の類型「新分野展開」の事例と要件を満たす考え方
記事の最後に、ここでは事業再構築の類型「新分野展開」の事例と、要件を満たす考え方をご紹介します。
事業再構築の類型「新分野展開」の事例紹介
事業再構築の類型「新分野展開」の要件を満たす事例の「製造業の場合」として、次のものが挙げられています。
航空機用部品を製造していた製造業者が、業界全体が業績不振で厳しい環境下の中、新たに医療機器部品の製造に着手し、5年間の事業計画期間終了時点で、医療機器部品の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定している場合
出典:事業再構築指針の手引き
要件1.「製品等の新規性要件」を満たす考え方
ここからは、前項の事例をもとに、要件1~3を満たす考え方をご紹介します。
要件1−① 過去に製造等した実績がないこと
「新たに製造する医療機器部品」が、過去に製造した実績のない部品であれ
ば、要件を満たします。
これが例えば、「航空機用部品の製造量をただ増大させただけ」・「以前も医療機器部品を製造していた」といった場合は要件を満たさないため、「新分野展開」に該当しません。
また「製造等」と定義されているため、「以前製造したけれども、販売までには至らなかった」ケースでも、本要件は満たさないと考えられます。
1−② 製造等に用いる主要な設備を変更すること
航空機専用の生産設備とは別に、「医療機器部品を製造する専用の生産設備が新規で必要になり、導入する」場合は要件を満たします。
もし医療機器部品を作るとしても、「既存の設備を利用して生産する」場合には、要件を満たしません。
1−③ 競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと
航空機用部品を製造している「競合他社の多くが、同種の医療機器部品を製造していない」場合は、要件を満たします。
これが例えば、「競合他社の多くが医療機器部品を製造している」場合には要件を満たさないため、「新分野展開」に該当しません。
1−④ 定量的に性能又は効能が異なること
新規製造する医療機器部品と、これまで製造していた航空機用部品が異なる部品であれば、「定量的に性能または効能を比較することが難しい」と提示すれば要件を満たします。
ただし、両部品が類似しており、強度や軽さなどの「性能」を比較できる場合には、「その差異を定量的に説明する」ことで要件を満たします。
もし両部品が類似している場合で、「その性能が有意に異なるとは認められない」ケースでは、要件を満たしません。
要件2.「市場の新規性要件」を満たす考え方
2−① 既存製品等と新製品等の代替性が低いこと
「医療機器部品と航空機用部品では用途が異なり、医療機器部品を新規製造・販売しても、航空機用部品の売上減少は見込まれない」と説明することで、要件を満たします。
これが例えば、「新規部品が既存部品と構造的に類似しているため、販売することで航空機用部品の売上が減少してしまう」場合には要件を満たさないため、「新分野展開」に該当しません。
2−② 既存製品等と新製品等の顧客層が異なること(任意要件)
「医療機器部品と航空機用部品ではサプライチェーンが異なるため、新たな販売先が顧客となる」と提示すれば要件を満たします。
なお、この要件は「任意要件」のため申請に必須ではありませんが、審査においてより高い評価を受けることができる場合があるため、できれば満たしたい項目です。
要件3.「売上高10%要件」を満たす考え方
「5年間の事業計画期間終了後、医療機器部品の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定」することで、要件を満たします。
これが例えば、「どう計算しても、総売上高の5%までしかいかない」といった場合には要件を満たさないため、「新分野展開」に該当しません。
まとめ:事業再構築の類型「新分野展開」を理解して申請準備を
この記事では、「事業再構築の類型」のひとつである「新分野展開」の定義や事例、要件を満たす考え方をご紹介しました。
「せっかく事業計画を立てたのに、類型に該当しなかった…」といったことがないよう、事業再構築の類型を深く理解して、申請準備を進めましょう。
また、事業再構築補助金では、認定支援機関によるサポートを受けて応募する必要があります。
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