JAPANブランド育成支援等事業とは?令和3年度は「支援パートナー」活用が必須に

2021(令和3)年4月15日に公募が開始された、JAPANブランド育成支援等事業。

令和3年度の事業では前年度からいくつか変更点があるため、申請する方は注意が必要です。

そこでこの記事では、JAPANブランド育成支援等事業の基本知識から、令和3年度事業の変更点、補助事業の内容までご紹介していきます。

海外展開を目指す中小企業の経営者の方は、ぜひご覧ください。

JAPANブランド育成支援等事業とは?基本情報と採択率

まずは、JAPANブランド育成支援等事業の基本情報と採択率をご紹介します。

JAPANブランド育成支援等事業とは?

JAPANブランド育成支援等事業とは、「海外展開を目指す中小企業」を支援する補助金制度です。

2004(平成16)年、中小企業庁により創設されました。

その後、事業名の変更(「ふるさと名物応援事業補助金(JAPANブランド育成支援事業)」など)や、制度のさまざまな変更が行われ、令和2年度には「国内・海外販路開拓強化支援事業」と統合。

平成16年度から令和2年度まで、合計1,613件のプロジェクトを採択しています。
そのなかには「甲州ワイン」や「今治タオル」といった、多くの成功事例も。

2021年4月15日より7月15日まで、令和3年度当初予算事業「JAPANブランド育成支援等事業」の公募が実施されています。

なお、2021年7月前半の締め切りで、事業再構築補助金の第2回申請も受け付けています。
事業再構築補助金は上限1億円(中小企業の上限6000万円)と額が大きく、
対象経費の幅も広いため、感染症の影響を受けた企業にとっては非常に役立つ補助金です。

事業再構築補助金については、下記の記事が多く読まれています。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説

【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます

 

JAPANブランド育成支援等事業の採択率

JAPANブランド育成支援等事業の直近5年分の採択率は、下表の通りです。

実施年度 応募数 採択数 採択率
平成28年度 101件 39件 39%
平成29年度 88件 48件 55%
平成30年度 82件 37件 45%
令和元年度 178件 48件 27%
令和2年度 721件 192件 27%

令和2年度は「国内・海外販路開拓強化支援事業」と統合したため、応募数が急増。
しかし採択率は、前年度と変わらない状況となりました。

令和3年度JAPANブランド育成支援等事業の前年度からの変更点

次に、令和3年度JAPANブランド育成支援等事業の、前年度からの変更点をご紹介します。
今年度の応募を検討している方は、よくご確認ください。

[前年度からの変更点①]「支援パートナー」活用が必須に

令和3年度JAPANブランド育成支援等事業の、前年度からの最大の変更点が、「支援パートナー」活用が必須となった点です。

そのため、昨年度まで設けられていた「支援型」枠がなくなり、「支援型」の該当者は今年度は「支援パートナー」となって応募することになりました。

JAPANブランド育成支援等事業の「支援パートナー」とは?

「支援パートナー」とは、中小企業が海外販路開拓等を行う上で必要となる「活動をサポートする民間の支援事業者」のうち、中小企業庁が選定・公表した事業者です。

「支援パートナー」になるには、2021(令和3)年5月17日までに支援パートナーの公募に応募することが必要。
審査を経て選定された事業者は、中小企業庁がホームページ上で公表します。

(参考)
中小企業庁:支援パートナーの公募を開始します
支援パートナー 公募要領
支援パートナー向けQ&A

「支援パートナー」になることができるのは、「法人格を持つ企業・団体」です。
また選定されるためには、「これまで中小企業支援を継続的に行っており、3件以上成功に導いた実績がある」などの条件を満たすことが必要。

そして「支援パートナー」には、国から補助金は交付されません。
ただし無償というわけではなく、中小企業が「支援パートナー」に支払う経費は補助対象者として計上可能です。

[前年度からの変更点②]申請は電子申請(Jグランツ)でのみ受け付けに

昨年度は郵送と電子申請の両方で受け付けていましたが、今回は「電子申請(Jグランツ)でのみ受け付け」となりました。

「電子申請のみ」は今年実施の補助金制度で多く見られ、「事業再構築補助金」や「ものづくり補助金」でも実施されています。

電子申請(Jグランツ)に必要となる「GビズID」については、こちらの記事でわかりやすくご紹介しています。

GビズIDの「gBizIDプライム」とは?必須の補助金や登録申請方法を紹介

 

[前年度からの変更点③]海外展開を目指すことが必須に

令和2年度までは「全国展開を目指す」中小企業も支援の対象としていましたが、今回は「海外展開を目指す」ことが申請の必須要件となりました。

事業目的には「全国展開のために…」という文言はありますが、「今後3年以内の海外展開を見据え、その前段階として国内販路開拓に取り組む」という条件がつきます。

また、通常の補助率は「2 / 3」ですが、国内販路開拓に係る経費については「1 / 2」となります。

[前年度からの変更点④]総予算額が減少

令和2年度は10億円だった事業の総予算額が、令和3年度は8億円に減少されました。

出典:経済産業省
出典:経済産業省

そのため、支援の上限額が2,000万円と高かった「支援型」が廃止されたのかもしれません。

また令和3年度は「支援パートナー活用が必須」と、昨年度よりも手間が増えているため、応募数が減少する可能性が高いと考えられます。

令和3年度JAPANブランド育成支援等事業の補助事業内容

記事の最後に、令和3年度JAPANブランド育成支援等事業の、補助事業内容をご紹介します。

[令和3年度事業内容①]補助金額と補助率

令和3年度JAPANブランド育成支援等事業の補助金額と補助率は、次の通りです。

  • 補助金額:500万円以内(下限200万円)
  • 補助率: 1,2年目 2 / 3 以内、3年目 1 / 2 以内

補助金額の下限額は申請要件となるため、応募時に補助金額が200万円に達していない場合は、「応募要件を満たしていない」として審査対象になりません。

また、複数者による「連携体」の応募が認められており、この場合は1社ごとに500万円上限額をかさ上げし、最大4社で2,000万円が上限額となります。

そしてJAPANブランド育成支援等事業では、同一の事業内容で最大3年間、補助を受けることができます。
ただしそのためには次年度に再度応募し、採択されることが必要です。

[令和3年度事業内容②]補助対象者

事業の補助対象となるのは、次の2つのどちらにも該当する中小企業者です。

  1. 「中小企業基本法第2条に規定する中小企業者またはその連携体」などに該当すること
  2. 「JAPANブランド育成支援等事業費補助金の交付を受ける者として不適当な者」 に該当しないこと(「法人等が暴力団でない」など)

[令和3年度事業内容③]補助対象経費

補助対象となる経費は、補助事業の対象として明確に区分でき、さらに経費の必要性と金額の妥当性を、証拠書類で確認できる以下の経費です

経費区分 内 容
事業費 ① 謝金
② 旅費
③ 借損料
④ 通訳・翻訳費
⑤ 資料購入費
⑥ 通信運搬費
⑦ 広報費
⑧ 委託費等(WEBプラットフォーム上のサービス利用費を含む)
⑨ マーケティング調査費
⑩ 産業財産権等取得等費
⑪ 展示会等出展費(展示会等出展に伴う会場借料、備品費、商品搬送費、倉庫保管料及び保険料を含む。)
⑫ 雑役務費
⑬ 講座受講料
⑭ 原材料等費
⑮ 機械装置等費
⑯ 設計・デザイン費

ただし対象経費は、交付決定後に発注し、補助事業実施期間内に支払いを完了したものに限られます。

また「支援パートナー」に支払う経費は、補助対象経費に計上可能。
見積書を提出してもらい算出しますが、支援内容によって経費の費目は異なります。

そして応募時には、「補助対象外の経費」を補助事業経費として計上しないよう、十分に注意してください。

「補助対象外の経費」が計上されている事業計画は、「事業内容を十分に理解していない」として、審査が行なわれない可能性があります。

[令和3年度事業内容④]審査項目

事業の審査は、以下の審査項目に基づき、外部有識者により構成される審査委員会によって行われます。

[審査項目①]審査基準

審査を行うために必須となる項目は次の通りで、1つでも満たさない場合、その提案は失格となります。

  1. 補助事業者が公募要領5ページ「2.補助対象者」の要件に合致している
  2. 地域中小企業の商品や技術等をベースとしている
  3. 補助事業者は、補助事業を遂行するために必要な能力を有する
  4. 補助金額の下限額(200 万円)に達している
  5. 支援パートナーを活用している

[審査項目②]評価項目

審査を行う際の観点となる「評価項目」は、以下のようになっています。

(1) 事業の妥当性、実現性
 ① 現状分析
 ② 実施体制
 ③ 実現可能性・目標
 ④ 実効性を高める仕組み

(2) 収益性
 ① 計画・ビジョン
 ② 費用対効果

(3) 独創性
 ① 先進性
 ② モデル性

(4) 波及効果
 ① 地域経済、業界への影響

(5) その他、国の施策に合致し政策的意義のある事業か

[審査項目③]加点項目

応募に必須ではありませんが、該当すれば審査時に加点される「加点項目」は、次の2点です。

  1. ふるさと名物応援宣言・地域未来牽引企業・地域団体商標・J-Startup 選定企業のいずれかに該当する事業内容または代表補助事業者および参画補助事業者である
  2. 原子力被災地域企業の応援のため、代表補助事業者の主たる事業の実施場所が福島県である

[令和3年度事業内容⑤]応募前の流れ

応募前の流れは次のようになり、「支援パートナー」を見つける必要があります。

出典:中小企業庁

自社ですでに、「支援パートナー」となる事業者を見つけている場合は、その事業者に「支援パートナー公募」に応募してもらい、さらに審査に合格してもらうことが必要。

あくまでも中小企業庁が選定した事業者が「支援パートナー」となるため、審査で不合格となった場合には、別の事業者を探さなくてはなりません。

「支援パートナー」となる事業者が見つからない場合は、中小企業庁がそれぞれの得意分野、提供サービスなども含め、ホームページで紹介する事業者のなかから選ぶことになります。

また中小企業庁では、「どうしても支援パートナーが選びきれない…」といったときには、「次の機関に相談してほしい」と案内しています。

中小企業庁 創業・新事業促進課 海外展開担当
管轄する地域の経済産業局

[令和3年度事業内容⑥]応募方法

事業に応募するには、選定した「支援パートナー」と相談したうえで、事業計画を策定します。

その後、下記の書類を作成・準備し、電子申請(jGrants)で応募となります。

  1. (様式1)補助事業計画書(必須)
  2. (様式2)海外展開ロードマップ(必須)
  3. (別紙1)補助事業の参加者(該当する場合必須)
  4. (別紙2-1)経費明細表(必須)
  5. (別紙2-2)経費一覧表(必須)
  6. (別紙3)役員名簿等(該当する場合必須)
  7. (別紙4)事業実施に際しての確認票(必須)
  8. 申請者の決算書(必須)
  9. 経済産業省「ミラサポplus」により作成した「活動レポート(ローカルベンチマーク)」(必須)
  10. 共同実施に関する規約の写し(該当する場合必須)
  11. 直前の財務状況が債務超過である場合、債務超過を解消する具体的な計画等(任意)
  12. 事業概要が確認できるパンフレット、定款等(任意)

ミラサポplus「活動レポート(ローカルベンチマーク)」の事業財務情報の出力方法については、こちらの記事でくわしくご紹介しています。

ミラサポplus「活動レポート(ローカルベンチマーク)」の事業財務情報の出力方法【事業再構築補助金 添付書類】

 

[令和3年度事業内容⑦]補助事業の流れ

補助事業の流れは、下図のようになります。

出典:中小企業庁

ⅳ:応募した事業が採択された場合は、中小企業庁のウェブサイトで公表。
経済産業局とのあいだで交付申請・交付決定を行い、補助事業を開始します。

ⅴ:そして事業計画に基づき、「支援パートナー」の支援を受け、事業を進めます。

ⅵ:「支援パートナー」を含めた発注先に支払いを行って、適切な証憑書類を揃えます。

ⅶ:経済産業局に、補助金交付に必要な書類を提出して、補助金が交付されます。

[令和3年度事業内容⑧]スケジュール

令和3年度事業のスケジュールは、下図の通りです。

出典:中小企業庁

くわしく見ていくと、令和3年度の公募期間は次の通り。

公募期間
 2021(令和3)年4月15日(木)~7月15日(木)

ただし、応募には「支援パートナー」の活用・相談が必要となるため、実際に書類を応募できるのは「支援パートナー」の選定・公表後(2021年5月下旬予定)となります。

また採択後に、補助事業を実施する期間はこのようになっています。

補助事業期間
 交付決定日~2022(令和4)年3月末日

まとめ:変更点を理解して、JAPANブランド育成支援等事業の申請を

この記事では、JAPANブランド育成支援等事業の基本知識から、令和3年度事業の変更点、補助事業の内容までご紹介してきました。

JAPANブランド育成支援等事業の申請を検討されている方は、ぜひ記事を参考に、変更点をよく理解したうえで、応募準備を進めてみてください。

JAPANブランド育成支援等事業を含めた「中小企業向けの補助金・助成金」については、こちらの記事でご紹介しています。

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