2021(令和3年度)版では「低感染リスク型ビジネス枠」が新設された「IT導入補助金」。
多くの業界で必須となるITツールの導入を補助してくれる、中小企業には有意義な補助金事業です。
そこで今回は、IT導入補助金の基本情報から2021(令和3年度)版の制度の概要、申請・手続き方法、事例までもご紹介します。
「ITツールを導入して、業務の効率を上げたい!」とお考えの経営者の方は、ぜひご覧ください。
IT導入補助金とは?
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者が自社の課題・ニーズに合った「ITツール」を導入する際、その経費の一部を補助する補助金制度です。
経済産業省が行う「中小企業生産性革命推進事業」の一事業で、ほかに「ものづくり補助金」や「持続化補助金」が含まれます。
2021(令和3)年度に実施されるのが「IT導入補助金2021」で、正式名称は「令和元年度補正予算・令和2年度第三次補正予算 サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金」です。
「IT導入補助金2021」では、新型コロナの影響で打撃を受けた中小企業を支援するとして、新たに「低感染リスク型ビジネス枠」が設けられました。
IT導入補助金の採択率は不明
IT導入補助金では、応募件数を公表していないため、採択率は不明です。
公表されているのは「採択決定事業者一覧」のみとなります。
・IT導入補助金2021:過去4か年のサービス等生産性向上 IT導入支援事業について
ちなみに、IT導入補助金と同じ「中小企業生産性革命推進事業」のひとつで、生産プロセス改善の設備投資などを支援する「ものづくり補助金」の、2020年度「一般型」の応募者数・採択者数・採択率は下表の通りでした。
締切回 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
---|---|---|---|
1次(3/31締切) | 2,287 | 1,429 | 62% |
2次(5/20締切) | 5,721 | 3,267 | 57% |
3次(8/3締切) | 6,923 | 2,637 | 38% |
4次(12/18締切) | 10,041 | 3,132 | 31% |
合 計 | 24,972 | 10,465 | 42% |
IT導入補助金2021(令和3年度)の制度概要
次に、IT導入補助金2021(令和3年度)の制度概要をご紹介します。
[2021 概要①]通常枠と低感染リスク型ビジネス枠(特別枠)の違い
IT導入補助金2021には2つの申請枠があり、次のような違いがあります。
- 通常枠:中小企業・小規模事業者等が、ITツールを導入する経費の一部を補助する
- 低感染リスク型ビジネス枠(特別枠):ポストコロナの状況に対応したビジネスモデルへの転換に向け、業務形態の非対面化に取り組む中⼩企業・小規模事業者等を支援する
さらに通常枠には「A・B類型」、特別枠には「C・D類型」があり、補助金額や申請要件などが異なります。
「C・D類型」では「非対面化ツールの導入」が必須。
加えて「D類型」については「クラウド対応」されていることも条件です。
[2021 概要②]補助金額と補助率
IT導入補助金2021の補助金額と補助率は、次のようになります。
補助金額 | 補助率 | |
---|---|---|
通常枠 A類型 | 30万円~150万円未満 | 1/2以内 |
通常枠 B類型 | 150万円~450万円以下 | 1/2以内 |
特別枠 C類型 | 30万円~450万円以下 | 2/3以内 |
特別枠 D類型 | 30万円~150万円以下 | 2/3以内 |
[2021概要③]スケジュールと締め切り
A~D類型のスケジュールと締め切りは、次の通りです。
【2021】交付申請期間
- 2021年4月7日(水)受付開始
- 終了時期は後日案内予定
【2021】1次締切分
- 締め切り日:2021年5月14日(金)17:00(予定)
- 交付決定日:2021年6月15日(火)(予定)
- 事業実施期間:交付決定日以降~終了時期は後日案内予定
- 事業実績報告期間:後日案内予定
【2021】2次締切分
- 締め切り日:2021年7月中(予定)
- 交付決定日:2021年8月中(予定)
[2021 概要④]補助を受けることができる対象者
IT導入補助金2021の補助を受けることができる対象者(中小企業・小規模事業者等)は、下表の「中小企業等」と「小規模事業者」です。
ただし上表に該当する場合でも、下記の事業者は対象者から除外されます。
- 「みなし大企業」である事業者
- IT導入補助金2021で「IT導入支援事業者」に登録されている事業者
- 経済産業省から、補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられている事業者
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条に規定する「風俗営業」・「性風俗関連特殊営業」・「接客業務受託営業」を営む事業者
- 過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団等の反社会的勢力に関係する事業者
- 宗教法人
- 法人格のない任意団体(例:同窓会、PTA、サークルなど)
- その他、本事業の目的・趣旨から適切でないと経済産業省及び中小機構並びに事務局が判断する者
[2021概要⑤]IT導入支援事業者とITツール
「IT導入支援事業者」とは、中小企業者等とともに、補助金対象の事業を実施するパートナーとして、ITツールの導入などのサポートや事務局への申請のサポートを行う事業者のことです。
事業者が「IT導入支援事業者」になるには、以下の期間内に登録申請を行い、採択される必要があります。
- 登録申請期間:2021年3月25日~2021年6月30日17:00
そして「ITツール」とは、補助事業者の労働生産性向上に役立つツールのことを指し、下図のように①ソフトウェア、②オプション、③役務の3つに分類されます。
また「ITツール」として制度上登録され、公式サイトで公開されるためには、IT導入支援事業者として採択を受けた後、次の募集期間内にツールの登録申請を行います。
- 募集期間:2021年3月25日~終了時期は後日案内予定
[2021概要⑥]補助対象経費・経費区分
補助対象となる経費は「IT導入支援事業者が提供し、事務局に登録されているITツールの導入費用」です。
中小企業者等はIT導入支援事業者へ相談し、自社の生産性向上に役立つ適切なITツールを選択し、補助金の交付申請を行います。
また補助対象の経費区分は、次の通りです。
- 通常枠 A・B類型:ソフトウェア費、導入関連費
- 特別枠 C・D類型:ソフトウェア費、導入関連費、ハードウェアレンタル費
[2021概要⑦]審査内容(審査項目と加点項目)
IT導入補助金2021の審査は、学識有識者を含む関係分野の専門家で構成された「外部審査委員会」が、以下の審査項目に基づいて行います。
審査項目
審査項目 | 審査事項 |
---|---|
事業面からの審査項目 (1)事業面の具体的な審査 |
・自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか ・自社の状況や課題分析及び将来計画に対し、改善すべきプロセスが、導入する「ITツール」の機能により期待される導入効果とマッチしているか ・内部プロセスの高度化、効率化及びデータ連携による社内横断的なデータ共有・分析等を取り入れ、継続的な生産性向上と事業の成長に取り組んでいるか 等 ・(C・D類型のみ)新型コロナウイルス感染症における事業への影響とその対策について効果的なツールが導入されているか |
事業面からの審査項目 (2)計画目標値の審査 |
・労働生産性の向上率 |
政策面からの審査項目 (3)加点項目に係る取組の審査 |
・生産性の向上及び働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか ・(D類型以外)国が推進する「クラウド導入」に取り組んでいるか ・インボイス制度の導入に取り組んでいるか 等 |
なお、上記項目の審査(確認)は、原則として「提出された書類」により行います。
加点項目と減点措置
「加点項目」とは、審査に必須でないものの、実施することで加点され審査が有利になる項目です。
加点対象となる取組や関連事業は、以下の通り。
- 地域未来投資促進法の「地域経済牽引事業計画」の承認を取得している
- 交付申請時点で「地域未来牽引企業」に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出している
- 導入するITツールとして、クラウド製品を選定している(D類型以外)
- 導入するITツールとして、インボイス制度対応製品を選定している 等
また申請時点で、過去3年間に類似の補助金の交付を受けた事業者は、審
査上の減点措置を受けます。
経営者コネクトでは、事業再構築補助金の申請サポートも行っております。
制度の全体像について知りたい方は、以下の記事もお読みください。
【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説
【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます
【経営者向け】IT導入補助金2021(令和3年度)の申請・手続き方法
次に、IT導入補助金2021(令和3年度)の申請・手続き方法のご紹介です。
流れは下図のようになり、ステップごとに解説します。
[2021 ステップ①]事業を理解する
まずは、以下の公式サイト、公募要領などを読んで、事業の内容や要件について理解しましょう。
・IT導入補助金2021 公式サイト
・IT導入補助金2021 公募要領 通常枠(A・B類型)
・IT導入補助金2021 公募要領 低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D 類型)
・IT導入補助金2021 交付申請の手引き
[2021 ステップ②]IT導入支援事業者・ITツールの選定
次に、自社の業種や事業規模や経営課題に沿って、IT導入支援事業者とITツールの選定を行います。
・IT導入支援事業者一覧
・ITツール登録リスト(エクセル)
・IT導入補助金2021:IT導入支援事業者・ITツール検索
[2021 ステップ③]gBizIDプライムアカウント取得とSECURITY ACTION実施
IT導入補助金2021の申請は電子申請のみで行われ、「gBizIDプライム」アカウントが必要です。
「gBizIDプライム」アカウント取得には、通常時で2~3週間かかります。
さらに記事作成時点では「電子申請の需要増加」に伴い、3週間以上かかるとのことです。
できるだけ早めに取得しておきましょう。
また、申請要件として「SECURITY ACTION」の宣言の実施があります。
「SECURITY ACTION」とは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する制度で、中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを、自己宣言するものです。
「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」の宣言が補助金の要件ですので、IPAサイトで方法を確認のうえ、自己宣言の申込みを行ってください。
・IPA:SECURITY ACTION 自己宣言事業者の申込方法
・SECURITY ACTION 自己宣言者サイト
[2021 ステップ④]交付申請
中小企業等とIT導入支援事業者で、ITツールの選定・導入するITツールの商談を行います。
その後、中小企業等とIT導入支援事業者で交付申請の事業計画を策定。
さらに必要な情報を取り揃え、中小企業等が電子申請によって交付申請を行います。
[2021 ステップ⑤]交付決定
提出された交付申請は、外部審査委員会による審査を経て、採否が決定。
交付決定の連絡は、事務局から『申請マイページ』を通じて申請者(中小企業等)に伝えられます。
[2021 ステップ⑥]補助事業の実施
「交付決定」の通知を受領後、IT導入支援事業者に報告し、ITツールの発注・契約・支払いといった「補助事業」を実施します。
なお、「交付決定」の通知前にITツールの発注・契約・支払い等を行った場合は、補助金の交付を受けられないため、注意が必要です。
その後、中小企業等とIT導入支援事業者で「事業実績報告」を作成・提出。
内容に問題がなければ、補助金が交付されます。
IT導入補助金の導入事例
記事の最後に、IT導入補助金の導入事例をご紹介します。
[導入事例①]北海道はまなす食品(食品製造業)
北海道で食品製造・販売を行う「北海道はまなす食品㈱」。
受発注管理等を複数のExcelで管理しているため、転記ミスが発生していました。
また昨今の働き方改革の流れの中で、残業を少しでも減らしたいという思いも。
そのなかで、自力でツール設定が可能だと感じ、ITツールの導入を決定します。
導入したITツールは、富士ゼロックスのRPAツール「Win Actor」です。
PCで行う固定業務の手順をRPAに登録し、自動入力化を行うツール。
「Win Actor」はすでに多くのユーザーによってフォーラムが作られ、そのやりとりから「自力でRPAツールの設定ができそうだ」と感じ、ツール導入を決定しています。
「できるだけ固定業務を効率化したい」として、まずは販売先の売上管理をRPAツールで自動化させました。
まだ導入から日が浅いものの、売上管理の自動化によって「1日15分の時間削減」につながっています。
また、ITベンダーには導入前からサポートを受けていましたが「導入後も不明点があれば電話や実際に足を運んでもらうことあり、助かっている」とのことです。
公式サイトではほかにも、さまざまな業種の導入事例が紹介されています。
まとめ:IT導入補助金を活用して、ITツールの導入促進を
今回は、IT導入補助金の基本情報から2021(令和3年度)制度の概要、申請・手続き方法、事例までご紹介しました。
ぜひ記事を参考に、IT導入補助金を活用して、ITツールの導入を進めていきましょう。
なお、IT導入補助金をはじめとした、中小企業におすすめの補助金・助成金については、こちらの記事でご紹介しています。
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