経営者の方を、さまざまな方面から支援してくれる「商工会議所」と「商工会」。
ですが会員以外では「どんな違いがあるの?何をする団体なの?」という疑問をお持ちの方も、多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、商工会議所と商工会がよく理解できるように、両方の違いから、共通する目的・役割、それぞれの特徴、支援制度まで解説していきます。
「商工会議所と商工会のことをよく知りたい」という経営者の方は、ぜひご覧ください。
商工会議所と商工会の違いとは?
商工会議所と商工会の違いとは、わかりやすくまとめると下表のようになります。
商工会議所 | 商工会 | |
---|---|---|
根拠となる法律 | 商工会議所法 | 商工会法 |
管轄する官庁 | 経済産業省 経済産業政策局 |
経済産業省 中小企業庁 |
管轄地域 | 市の区域 (特別区をふくむ) |
町村の区域 |
事業内容 | 地域の総合経済団体として、中小企業支援から国際的な活動を含めた幅広い事業を行う | 中小企業施策、とくに小規模企業施策に重点を置く |
団体数 | 515商工会議所 (2020年4月時点) |
1,649商工会 (2020年4月時点) |
会員数 | 122万事業者 (2021年3月現在) |
78万事業者 (2020年4月時点) |
会員企業の規模 | 約8割が小規模事業者で、商工会とくらべて中堅・大企業の割合が高い | 地区内の小規模事業者が中心で、9割を超える会員が小規模事業者 |
事業者を支援する商工会議所が市部にしか設立されなかったため、それ以外の町村区域に設立されたのが商工会です。
そのため原則として、管轄地域が重なる(商工会議所と商工会の両方がある)ことはありません。
また商工会が「小規模事業者の支援」に重点をおくのに対して、商工会議所は事業者支援のほか国際的な活動も行うなど「事業の幅が広い」といった違いもあります。
商工会議所と商工会の共通する目的と役割
前項では「違い」をご紹介しましたが、商工会議所と商工会には「共通する部分」も多くあります。
まず、団体設立の「目的」は、法律でそれぞれ次のように規定されており、ほぼ同義です。
「原則」も共通しており、次の3点がそれぞれの法律で規定されています。
- 営利を目的としてはならない
- 特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行なつてはならない
- これを特定の政党のために利用してはならない
またどちらの事業内容も「公共性の高いもの」ですが、国や地方公共団体と違ってあくまで民間の法人。
そのため商工会議所と商工会の職員は、公務員ではなく「団体職員」です。
商工会議所と商工会の共通する役割
商工会議所と商工会は、「中小企業や小規模事業者のために、秘密厳守・原則無料で経営相談などを行う」という共通した役割も持っています。
どちらも地域の中小企業・小規模事業者にとっての、経営に関する「かかりつけ医」のような頼りになる存在で、後述するさまざまな支援を行います。
商工会議所とは?
ここからは、それぞれの団体をくわしくご紹介します。
まず商工会議所とは、商工会議所法に基づき設立された特別認可法人です。
「中小企業の活力強化」と「地域経済の活性化」に向け、政府や地方自治体に対する様々な政策提言、小規模企業の経営支援、地域活性化に向けた諸事業や簿記・産業人材の育成など、さまざまな活動に取り組みます。
商工会議所の歴史
その歴史は古く、最初の商工会議所である「商法会議所」は明治11(1878)年に東京、大阪、神戸で設立されました。
東京商法会議所の初代会頭は、NHKの大河ドラマ「青天を衝け」の主役である渋沢栄一。
大阪商法会議所では、五代友厚が初代会頭に就いています。
昭和28(1953)年に現行「商工会議所法」施行。
この法律によって、「社団法人東京商工会議所→東京商工会議所」として特別認可法人に改組されました。
商工会議所の加入条件・方法
商工会議所の加入条件(入会資格)は、次の2点を満たすこと。
- 管轄する地域で営業している
- 事業を営む法人、団体、個人事業主
この2点を満たせば、規模や業種を問わず入会可能です。
また条件を満たさない(管轄地域で営業していない、ビジネスマンである、など)場合は「特別会員」として入会できます。
「特別会員」には「選任に関する資格」はありませんが、事業やサービスは会員と同様に利用可能です。
入会方法は各商工会議所によって異なるため、最寄りの商工会議所にお問い合わせください。
・日本商工会議所:商工会議所検索
特定商工業者制度
商工会議所では、その地域の商工業の実態把握を行い、地域経済の改善発達のための基礎資料とする目的で「特定商工業者制度」を設けています。
該当地域で4月1日において、引き続き6カ月以上、本社をはじめ支店・営業所・事務所・工場・事業場を有する商工業者が対象。
対象事業者は、会員・非会員に関わらず年1回「商工業者法定台帳」の登録・確認や負担金の納入を行います。
商工会議所の入会金・会費
入会金や会費は、商工会議所によって異なります。
たとえば大阪商工会議所の場合は下表のとおりで、組織の形態によって3種類の会員制度があり、年会費1口あたりの金額が異なります。
形態 | 会員の種類 | 加入金 | 年会費 |
---|---|---|---|
株式会社や有限会社など法人格を有する商工業者 | 法人会員 | 3,000円 | 1口:18,000円 資本金額(出資額)に応じた口数を負担 |
協同組合や、医療法人、弁護士法人、税理士法人、学校法人、司法書士法人 など | 団体会員 | 3,000円 | 1口:15,000円 年間予算額に応じた口数を負担 |
個人事業主や会員に加入されている法人・団体の役員など | 個人会員 | 3,000円 | 1口:10,000円 |
商工会議所の組織(日本商工会議所)
商工会議所には、大きくわけると次の組織があります。
各地商工会議所
各地商工会議所では、地域の商工業者の意見を集約し、政策提言、経営支援、地域振興などさまざまな活動を行っています。
日本商工会議所
全国515の商工会議所を会員とし、その活動目的を円滑に遂行できるよう総合調整し、意見を代表するのが「日本商工会議所」です。
商工会とは?
商工会とは、商工会法に基づき設立された特別認可法人です。
地域事業者が会員となり、ビジネスやまちづくりのために活動を行う総合経済団体で、二大事業として以下のことが挙げられます。
- 経営改善普及事業:事業者の経営改善
- 地域振興事業:地域社会の発展
商工会の歴史
昭和20年代の中小企業は経営基盤が脆弱で、融資の道がほとんどない状態。
また、取引関係では仕入決済が厳しく、支払条件は大手企業に決められてしまう「弱者」でした。
こうしたなかで商工業者が団結し、地位獲得を目指したのが「商工会の始まり」で、全国で商工会が設立されました。
国の政策でも「中小企業の育成」が重要視されるようになり、昭和35(1960)年に商工会法が施行。
この法律で現行の体制がつくられ、商工会の職員給与や事業費が補助されるようになりました。
商工会の加入条件・方法
商工会の加入条件(入会資格)は、次の2点を満たすこと。
- 管轄する地域で営業している
- 引き続き6ヶ月以上、事務所・店舗・工場などを有する
この2点を満たせば、規模や業種を問わず入会可能で、こちらは「法定会員」とよばれます。
また条件を満たさない場合でも、次の会員サービスを行っています。
- 定款会員:定款で別段の定めを行うことで、協同組合や相互会社、信用金庫などが対象となるが、総会での議決権はない
- 特別会員(賛助会員):地域外で営業しているが、趣旨に賛同して会員となっている人が対象。総会での議決権はない
入会方法は各商工会によって異なるため、最寄りの商工会にお問い合わせください。
商工会の入会金・会費
入会金・会費基準は、商工会によって異なりますが、中小企業であればおおむね1ヶ月あたり1,000~2,000円程度。
たとえば東京の国立市商工会では、加入金が2,000円です。
会費は事業所の従業員数により、下表のように設定されています。
従業員数 | 2人以下 | 3~4人 | 5~9人 | 10~19人 | 20~29人 | 30~50人 |
---|---|---|---|---|---|---|
金額 | 1,500円 | 2,000円 | 2,500円 | 3,000円 | 3,500円 | 4,500円 |
商工会の組織(商工会連合会)
商工会の組織は、下図のようになっています。
市町村商工会
市町村商工会とは、地域の商工業者が会員となり、お互いの事業の発展や地域の発展のために総合的な活動を行う団体です。
都道府県商工会連合会
都道府県商工会連合会とは、市町村商工会の運営指導をはじめ、商工会の健全な発達と商工業の振興に寄与する、さまざまな事業を行う団体です。
全都道府県に、計47の商工会連合会があります。
全国商工会連合会
全国商工会連合会は、都道府県商工会連合会を会員とする総合経済団体です。
商工会議所・商工会が行う支援制度・運営サイト
商工会議所・商工会ではさまざまな支援策に取り組んでいますが、ここではその代表的な制度や運営サイトをご紹介します。
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経営相談
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資金調達、取引先とのトラブル、売上の伸び悩みなど、経営者がもつ多くの悩みに、地域の事情にくわしい経験豊かな「経営指導員」が応えます。
その範囲は、資金繰りの改善から、販路の開拓、新事業や経営革新、IT事業の推進など多岐にわたります。
相談はすべて無料・秘密厳守で、電話相談や企業を訪問しての相談にも応じてくれます。
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セミナー・研修会の実施
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経営に役立てるために、幅広い層を対象とした実践的なセミナー・講習会を、タイムリーに開催しています。
料金はセミナー内容によって、無料のものから会員割引までさまざま。
2020年からは新型コロナの影響により、オンラインセミナーが多く開催されています。
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専門家派遣制度
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専門家派遣制度とは、「エキスパートバンク制度」ともよばれ、創業や経営革新に取り組む事業者に「経営・技術・情報・生産・税務・労務に関する専門家」を派遣し、経営を支援する制度です。
回数の制限がありますが、無料の制度もあるため、地域の商工会議所・商工会にお問い合わせください。
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経営安定特別相談室
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全国の主要商工会議所、都道府県の商工会連合会では、「経営安定特別相談室」を設置して、経営不振に陥った事業者の相談を受け付けています。
この相談室では、経済や中小企業の実情にくわしい「商工調停士」が、相談者の経営・財務内容の把握と分析を行い、倒産防止の対応策を検討。
相談は無料で、その内容や相談申し込みについても、外部に漏れることはありません。
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マル経融資
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マル経融資(小規模事業者経営改善資金融資制度)とは、小規模事業者の経営改善に役立てる目的で実施される、無担保・無保証人の国の融資制度です。
「商工会議所・商工会の経営指導を、原則6カ月以上受けている」などの要件を満たす事業者が、商工会議所・商工会に申し込み可能。
商工会議所・商工会が国民生活金融公庫へ推薦し、貸付限度額内(550万円+別枠450万円)で融資されます。
マル経融資についてくわしく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
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ザ・ビジネスモール
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全国の商工会議所・商工会が共同運営するビジネスマッチングサイトが「ザ・ビジネスモール」です。
商工会議所・商工会の会員事業者であれば、無料で会員登録が可能。
登録された全国26万社の企業から、仕入先・調達先探しを効率的に行えます。
持続化補助金と商工会議所・商工会
商工会議所・商工会と関連の深い補助金制度が「小規模事業者持続化補助金」です。
これは、小規模事業者等が地域の商工会議所・商工会の助言を受けて「経営計画」を作成し、その計画に沿って地道な販路開拓等に取り組む費用を補助する制度。
商工会議所・商工会の会員でない事業者でも、補助金への応募申請は可能です。
ただし補助金事業の流れは下図のようになっており、補助金申請前に地域の商工会議所・商工会に「申請書類の確認」を行ってもらう必要があります。
事業を営んでいる地区によって公募要領や書類の提出先が異なりますので、どちらの管轄地域かをよくご確認のうえ、申請を行ってください。
・商工会議所の管轄地域で事業を営んでいる場合:日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金
・商工会の管轄地域で事業を営んでいる場合:全国商工会連合会 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金についてくわしく知りたい方には、こちらの記事がおすすめです。
【2020年最新】最大150万円!小規模事業者持続化補助金とは?
まとめ:商工会議所と商工会の有効活用を
この記事では、商工会議所と商工会がよく理解できるように、両方の違いから、共通する目的・役割、それぞれの特徴、支援制度まで解説してきました。
ぜひ記事を参考に、商工会議所と商工会を有効活用し、経営にお役立てください。
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