新型コロナの影響で売上が減少した、中小企業や個人事業主の助けになる「月次支援金」。
ですが制度が全体的に複雑で、「要件や申請方法などがよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、月次支援金の基本情報や一時支援金との違い、制度概要、申請方法まで解説します。
「新型コロナの影響で売上が減少して困っている」という経営者の方は、ぜひご覧ください。
月次支援金とは?一時支援金との違い
まずは、月次支援金の基本情報と一時支援金との違いをご紹介します。
月次支援金とは?
月次支援金とは、2021年の4月以降の「緊急事態措置」または「まん延防止等重点措置」による「飲食店の休業・時短営業」や「外出自粛等」の影響で、売上が50%以上減少した中小法人・個人事業者等に支給される支援金です。
2021年6月16日に、事前確認と申請受付が開始されました。
経済産業省によれば、一時支援金・月次支援金を合わせた「給付の推移」は下グラフのとおりで、2021年8月2日時点で申請件数が約120万件、給付件数が約72万件となっています。
また、同データでの「給付までにかかった日数の割合」は下グラフのようになっており、8割の申請が4週間以内に給付されています。
月次支援金と一時支援金の違い
「一時支援金」とは、2021年1月に発令された「緊急事態宣言」の影響緩和のために支給される支援金です(5月31日で申請終了)。
このように「月次支援金」と「一時支援金」はよく似ていますが、次のような違いがあります。
月次支援金 | 一時支援金 | |
---|---|---|
対象となる措置 | 2021年4月以降の「緊急事態措置」または「まん延防止等重点措置」 | 2021年1月の「緊急事態宣言」 |
支給方法 | 2021年4月以降のひと月ごとに要件にあっていれば適用 | 2021年1~3月のいずれかの売上が2019年または2020年の同月とくらべ半減すれば、3ヶ月分をまとめて適用 |
月次支援金の制度概要
次に、月次支援金の制度概要をご紹介します。
[制度概要①]給付の対象者
月次支援金の給付の対象者は、次の①と②の両方を満たした中小法人・個人事業者等です。
- 要件1:「緊急事態措置」または「まん延防止等重点措置」による飲食店の休業・時短営業または外出自粛等の影響を受けている
- 要件2:2021年の月間売上が、2019年または2020年の同月比で50%以上減少した
要件を満たせば、業種や地域を問わずに給付対象となり、たとえば下図のような事業者が対象と考えられます。
「自分が給付対象かどうかわからない」というときは、下図を参照にご確認ください。
中小法人・個人事業者等とは?
月次支援金において、中小法人・個人事業者等とは次のように定義されています。
また、それぞれで申請要領が異なるため、申請方法についてくわしくは各要領をご覧ください。
中小法人等とは
2021年4月1日時点において、次の①または②のうちいずれかを満たす法人。
ただし、組合・連合会・一般社団法人については、その直接または間接の構成員たる事業者の2 / 3以上が個人または次の①または②のうちいずれかを満たすこと。
- 資本金の額または出資の総額が10億円未満であること
- 資本金の額または出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員の数が2,000人以下であること
個人事業者等とは
月次支援金では「個人事業者等」を以下の2つに分けて定義しており、それぞれで申請要領が設けられています。
その①:フリーランスを含む個人事業者
2019年以前から事業を行っており、国内に住所を有する者であって、基準年および対象月において、個人事業収入(売上)を得ており、今後も事業の継続および立て直しのための取り組みを実施する意思があること。
その②:個人事業者(主たる収入が雑・給与所得)
2019年以前から事業を行っており国内に住所を有する者であって、基準年および対象月において、雇用契約によらない業務委託契約などに基づく事業活動からの収入で、税務上、雑所得又は給与所得の収入として扱われるものを主たる収入として得ており、今後も事業の継続及び立て直しのための取組を実施する意思があること。
・経済産業省:申請要領(主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者向け)
[制度概要②]給付額
月次支援金の給付額は、次の式で決まります。
- 給付額 = (2019年または2020年の基準月の売上) − (2021年の対象月の売上)
ただし給付額の上限は下記のとおり。
- 中小法人等:20万円/月
- 個人事業者等:10万円/月
なお、「基準月」と「対象月」の定義は次のようになっています。
- 対象月:「緊急事態措置」または「まん延防止等重点措置」が実施された月のうち、その影響で2019年または2020年の同月比で、売上が50%以上減少した2021年の月のこと
- 基準月:2019年または2020年における対象月と同じ月のこと
[制度概要③]登録確認機関による「事前確認」
月次支援金でも、一時支援金と同様に「事前確認」が必要です。
「事前確認」とは、不正受給や誤って受給することへの対応として、登録確認機関によって次のような点を申請前に確認を行う制度。
- 申請希望者が事業を実施しているか
- 給付対象等を正しく理解しているか など
具体的には、登録確認機関がTV会議・対面などで、質疑応答による形式的な確認を実施します。
「事前確認」が完了すれば、申請希望者は事務局への申請が可能に。
ただし登録確認機関では、「給付対象かどうか」の判断までは行いません。
ですので事前確認が完了したからといって、「給付対象」となるわけではないことも、理解しておきましょう。
なお、すでに一時支援金を受給している場合や、月次支援金で2回目以降の申請を行う場合には、改めて事前確認を行う必要はありません。
また「登録確認機関」とは、事務局が募集・登録した次のような機関・者です。
- 認定経営革新等支援機関
- 同機関に準ずる個別法に基づき設置された機関
- その他個別法に基づく士業関連機関・者など
[制度概要④]申請の締め切りと事前確認の期限
申請はひと月単位で行い、それぞれの締め切りは次のとおりです。
- 4・5月分:2021年6月16日~8月15日
- 6月分:2021年7月1日~8月31日
- 7月分:2021年8月1日~9月30日
- 8月分:2021年9月1日~10月31日
ただし、申請に必要な「登録確認機関による事前確認」が受けられる期限は、以下のように申請締め切りより前になります。
- 4・5月分:2021年8月10日
- 6月分:2021年8月26日
- 7月分:2021年9月27日
- 8月分:2021年10月26日
はじめて申請を行う際には「登録確認機関による事前確認」が必須ですので、期限を過ぎないよう気をつけてください。
[制度概要⑤]事前確認と申請の必要書類
事前確認の必要書類は以下のようになります。
- ・本人確認書類(個人事業者・法人)
・履歴事項全部証明書(法人のみ)
・委任状(法人で、法人代表者から委任された者(受任者)が事前確認を受ける場合のみ) - 収受日付印のついた2019年対象月同月および2020年対象月同月をその期間に含む全ての「確定申告書類」の控え
- 2019年1月から2021年対象月までの各月の帳簿書類(売上台帳、請求書、領収書など)
- 2019年1月以降の事業の取引を記録している通帳
- 代表者または個人事業者等本人が自署した宣誓・同意書
ただし、登録確認機関の会員や事業性の与信取引先、顧問先などの場合は、上記①~④は省略が可能です。
その場合は、上記⑤のみを準備してください。
次に、申請の必要書類は中小法人などの申請パターンで異なり、次のとおりです。
中小法人等の必要書類
② 2021年の対象月の売上台帳等
③ 履歴事項全部証明書
④ 通帳の写し
⑤ 宣誓・同意書
フリーランスを含む個人事業者の必要書類
①-1 青色申告:確定申告書第一表の控え及び所得税青色申告決算書の控え
①-2 白色申告:確定申告書第一表の控え
② 2021年の対象月の売上台帳等
③ 通帳の写し
④ 本人確認書類の写し
⑤ 宣誓・同意書
上記①は、確定申告の実施状況によって、該当する書類が必要となります。
個人事業者(主たる収入が雑・給与所得)の必要書類
• 2019年分の確定申告書第一表の控え
• 2020年分の確定申告書第一表の控え
② 2021年の対象月の売上台帳等
③ 国民健康保険証の写し
④ 通帳の写し
⑤ 本人確認書類の写し
⑥ 宣誓・同意書
⑦ 業務委託契約等収入があることを示す書類
[制度概要⑥]保存書類
月次支援金では、前項の必要書類のほかに保存書類も決められています。
こちらは申請時の提出は不要ですが、申請者が給付要件を満たさないおそれがある場合に、保存書類の提出を求めるなどの調査を行われます。
必要な保存書類は区分により異なるため、下図にてX-1~Z-2のどの区分か確認をしてください。
保存書類の種類は次のようになり、上記の区分に応じた書類を7年間保存する必要があります。
- 自らの販売・提供先との反復継続した取引、または消費者との継続した取引を示す帳簿書類および通帳
- 以下のうちいずれか1つ
・自らの販売・提供先が対象措置実施都道府県の卸売市場または流通事業者であることを示す書類
・所在地域から対象措置実施都道府県の卸売市場または流通事業者へ反復継続した取引を示す書類・統計データ - 対象措置実施都道府県の消費者向けの事業を行っていることを示す商品・サービスの一覧表、店舗写真、および賃貸借契約書・登記簿
- 旅行客の5割以上が対象措置実施都道府県から来訪していることを示す統計データ
- 対象措置実施都道府県の消費者との継続した取引を示す顧客データまたは自ら実施した顧客調査結果
- 自らの販売・提供先が対象措置実施都道府県の消費者と継続した取引を行っている事業者であることを示す書類
- 自らの販売・提供先が対象措置実施都道府県の消費者と継続した取引を行っている事業者と反復継続した取引を行っていることを示す書類・統計データ
[制度概要⑦]証拠書類・給付額の算定に関する特例
通常申請のほかに、証拠書類・給付額の算定に関する以下のような特例が設けられています。
特例を実施する申請パターンはそれぞれ異なりますので、申請時にはご注意ください。
中小法人等 | フリーランスを含む個人事業者 | 個人事業者(主たる収入が雑・給与所得) | |
---|---|---|---|
証拠書類等に関する特例 | ○ | ○ | ○ |
2019年・2020年新規開業特例 | ○ | ○ | ○ |
合併特例 | ○ | − | − |
連結納税特例 | ○ | − | − |
罹災特例 | ○ | ○ | ○ |
法人成り特例 | ○ | − | − |
NPO法人・公益法人等特例 | ○ | − | − |
2021年新規開業特例 | ○ | ○ | − |
また、特例の内容についてくわしくは、それぞれの申請要領をご確認願います。
月次支援金の申請方法
記事の最後に、月次支援金の申請方法をご紹介します。
[申請方法①]月次支援金制度の内容を理解する
まずは、月次支援金制度の内容を理解しましょう。
せっかく手間をかけて申請しても、給付対象外であれば支援金が給付されず、なんの意味もありません。
こちらのリーフレットや申請要領などを参考に、要件や必要書類などをよくご確認ください。
(参考)
・月次支援金リーフレット
・月次支援金の給付対象・保存書類早わかりガイド
・緊急事態措置又はまん延防止等重点措置の影響緩和に係る月次支援金の詳細について
・申請要領(中小法人等向け)
・申請要領(個人事業者等向け)
・申請要領(主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者向け)
・月次支援金 よくある質問
[申請方法②]仮登録して申請IDを入手する
次にこちらから仮登録して、「申請ID」を入手します。
後述する「登録確認機関による事前確認」を行うには、「申請ID」が必要となります。
そのため、必ず事前に仮登録を行い「申請ID」を入手してください。
なお、月次支援金の申請はすべて電子申請となりますが、GビズIDの取得は必要ありません。
GビズIDとは別システムにて申請を行います。
[申請方法③]必要書類を揃える
次に必要書類を揃えます。
月次支援金の必要書類は大きくわけて次の3種類ですので、それぞれを準備しましょう。
- 事前確認の必要書類
- 申請の必要書類
- 保存書類
くわしくは前述(必要書類・保存書類)していますので、そちらをご覧ください。
[申請方法④]登録確認機関の検索と事前予約
登録確認機関の検索と事前予約を行います。
ただし、すでに一時支援金を受給している場合や、月次支援金で2回目以降の申請を行う場合には、改めて事前確認を行う必要はありません。
検索はこちらのウェブページから行います。
依頼する登録確認機関を選んだら、メールまたは電話で「事前確認」を依頼します。
同機関から了承された場合には、「事前確認」を実施する日程や方法などについて「事前予約」を行いましょう。
また事前確認の料金は、登録確認機関に一任されています。
各ホームページに「無料、もしくは金額」を明記するよう、中小企業庁が依頼していますので、ホームページを確認してください。
ちなみに登録確認機関に対しては、事前確認1件につき1,000円の事務手数料が、中小企業庁から支払われます。
[申請方法⑤]事前確認を実施する
次に、登録確認機関のTV会議や対面、電話による事前確認を実施します。
資料によれば、具体的には登録確認機関は下記を質問するとのこと。
あらかじめ確認して、問題なく回答できるようにしておきましょう。
事前確認が完了すると、「事前確認通知番号」が発行されます。
[申請方法⑥]電子申請を行う
事前確認が完了し「事前確認通知番号」が発行されたら、こちらから電子申請を行います。
申請内容に不備があると、不備修正のために審査に時間がかかることに。
そのため申請内容が適切かどうかを、申請方法①の資料などで改めて確認しましょう。
また、こちらも参考にご覧ください。
(参考)
・月次支援金:申請における注意事項
・月次支援金:オンライン申請手順書
なお月次支援金は原則電子申請ですが、自身で行うことが困難な方のために、申請サポート会場が用意されています。
利用には予約が必要ですので、希望する方はこちらのサイトで利用方法などをご確認ください。
まとめ:制度概要を理解して月次支援金を利用しましょう
この記事では、月次支援金の基本情報や一時支援金との違い、制度概要、申請方法まで解説しました。
ぜひ記事を参考に、制度概要をよく理解して、月次支援金を利用しましょう。
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