経営改善計画策定支援事業(405事業)とは?制度概要や支払決定までの流れ、事例も紹介

企業が資金繰りを安定させるには「経営改善計画」を策定し、自社の現状を把握して、今後の取り組みを明確にすることが重要です。

 

ですが借入金の返済負担などを抱える企業では、自社で「経営改善計画」を策定すること、専門家に依頼することが時間的・金銭的に難しい状況に。

 

そんなときに手助けとなる制度が「経営改善計画策定支援事業」です。

 

この記事では、「経営改善計画策定支援事業(405事業)」の基本情報や制度概要、支払決定までの流れ、事例などをご紹介します。

 

「売上を増加させ、黒字体質の企業に転換したい」という経営者の方は、ぜひご覧ください。

 

「経営改善計画策定支援事業(405事業)」とは?

 

まずは「経営改善計画策定支援事業(405事業)」がどのようなものか、基本情報を確認しましょう。

 

「経営改善計画策定支援事業(405事業)」とは?

 

「経営改善計画策定支援事業」とは、通称「405事業」とよばれ、金融支援を伴う経営改善が必要な中小企業・小規模事業者を対象に、経営革新等支援機関(認定支援機関)が行う経営改善計画の策定支援に必要な費用を支援する補助金制度です。

 

最終的には、金融支援を得ることで中小企業・小規模事業者の経営改善が図られることが目的。

 

平成25年(2013年)3月末の中小企業金融円滑化法の終了を契機に設けられ、中小企業庁が主管となって運用しています。

 

ちなみに「405事業」の由来は、事業開始時(2013年3月)についた予算が405億円だったためとされています。

 

経営革新等支援機関(認定支援機関)とは?

 

「経営革新等支援機関」とは、「認定支援機関」ともよばれ、専門的知識と一定の実務経験を持つ法人または個人で、国に審査・認定された機関です。

 

商工会や商工会議所など中小企業支援者のほか、弁護士、税理士、公認会計士、監査法人、中小企業診断士、金融機関など、36,201(本店・支店を含めて)の機関が認定されています(2021年6月25日時点)。

事業再構築補助金でも必須の「認定支援機関(認定経営革新等支援機関)」とは?利用メリットや検索システムも解説!

 

 

 

 

 

経営改善計画を策定する目的は?

 

経営改善計画を策定する目的は、自社の現状を把握して今後の取り組みを明確にすることで、「金融支援を取り付ける」とともに、「業務改善の可能性と自社の取り組み」を対外的に示すことです。

 

金融機関への返済条件等を変更し、資金繰りを安定させながら、経営の改善につながります。

 

405事業における金融支援とは?

 

405事業における「金融支援」とは、条件変更等と融資行為(借換融資、新規融資)を指し、具体的には次のようなものです。

 

金融支援の内容 具体的な手法等の例
条件変更等 金利の減免、利息の支払猶予、元金の支払猶予、DDS、債権放棄
融資行為
(借換融資)
同額借換(事実上の借入期間の延長を含む)、債務の一本化
融資行為
(新規融資)
新規での貸付実行

 

「経営改善計画策定支援事業(405事業)」と「早期経営改善計画策定支援事業」の違いは?

 

「早期経営改善計画策定支援事業」とは、資金繰りの管理・経営状況の把握などの経営改善に取り組む中小企業者等が、専門家の支援を受けて経営改善計画を策定する場合に、費用の2 / 3(上限20万円)を補助し早期の経営改善を促す補助金制度です。

 

以前の通称は「プレ405事業」でしたが、ポストコロナ時代において資金繰りを把握することの重要性から、通称が「ポストコロナ持続的発展計画事業」に変更されました。

 

そして「経営改善計画策定支援事業」と「早期経営改善計画策定支援事業」はどちらも、中小企業者の経営改善計画の策定を後押しするため、中小企業庁が用意した補助金制度です。

 

また「経営改善計画策定支援事業」と「早期経営改善計画策定支援事業」の違いは、「早期経営…」では金融支援を目的とせず、早期に資金実績・計画表などの基本的な内容を整理し、金融機関との関係づくりに役立てるとしている点。

 

具体的には、次のような違いがあります。

 

  経営改善計画策定支援事業
(405事業)
早期経営改善計画策定支援事業
(ポストコロナ持続的発展計画事業)
金融支援 必須 必須ではない
対象事業者 財務上の問題を抱える事業者 これまで経営改善計画書を策定したことのない事業者
計画書の内容 ビジネスモデル俯瞰図
会社概要表
資金実績・計画表
計画財務3表(PL、BS、CF)
アクションプラン
計画期間は5年程度
ビジネスモデル俯瞰図
資金実績・計画表又は資金予定表
計画損益計算書(PL)
アクションプラン
計画期間は1~5年(任意)
計画書の金融機関への説明 原則全ての金融機関 メイン又は準メインのみ
補助費用 費用総額の2/3(上限200万円) 費用総額の2/3(上限20万円)
モニタリング 1~12カ月ごとに3年間 1年後に1回のみ

 

「経営改善計画策定支援事業(405事業)」の制度概要

 

次に、「経営改善計画策定支援事業(405事業)」の制度概要をご紹介します。

 

[制度概要①]対象となる事業者

 

「経営改善計画策定支援事業(405事業)」の対象となる事業者は、次の要件をすべて満たす中小企業・小規模事業者です。

  1. 借入金の返済負担など財務上の問題を抱えている
  2. 自ら経営改善計画等を策定することが難しい
  3. 経営改善計画の策定支援を受けることで、金融機関からの支援が見込める

 

 

また、個人事業主や医療法人は対象ですが、以下の団体は支援の対象外です。

 

  • 以前、経営改善計画策定支援を利用した事業者(新型コロナの影響で業況が悪化した事業者 (※1) は、過去に経営改善計画策定支援を利用していても対象 ※2)
  • 大企業である親会社からの出資割合が100%の事業者
  • 創業後間もない(一事業年度で12か月の決算を経ていない)中小企業・小規模事業者
  • 社会福祉法人
  • 特定非営利活動法人
  • 一般社団財団法人
  • 公益社団・財団法人
  • 農事組合法人
  • 農業協同組合
  • 生活協同組合
  • LLP(有限責任事業組合)
  • 学校法人

 

※1:次のどちらかを満たしていれば対象
①新型コロナ特例リスケジュールを利用している
②新型コロナの影響を受け、最近1ヶ月の売上が前年又は前々年の同月と比較して5%以上減少している

 

※2:複数回の利用でも、一事業者の費用負担上限額(補助金上限額)は合計で
200万円

 

 

 

[制度概要②]補助額

 

補助額は、200万円を上限として、経営改善計画策定支援に係る費用(モニタリング費用を含む)の2 / 3までとなります。

 

 

 

[制度概要③]対象となる費用

 

補助の対象となるのは、認定支援機関の経営改善計画策定支援に係る費用で、次のようなものです。

  • 計画の策定費用
  • 事業DD費用
  • 財務DD費用
  • モニタリング費用
  • 金融調整サポート費用

 

 

 

[制度概要④]利用申請の必要書類

 

利用申請の必要書類には「記入書類」と「添付書類」の2種類があり、それぞれ次のとおりです。

記入書類
①経営改善支援センター事業利用申請書(別紙1
②申請者の概要(別紙1−1
③自己記入チェックリスト(別紙1−2
④業務別見積明細(別紙1−3

 

添付書類
⑤履歴事項全部証明書(登記簿謄本)(原本)
 ・個人事業主の場合は開業届または確定申告書の写し
⑥認定支援機関であることを証する認定通知書(写し)
⑦認定支援機関ごとの見積書及び単価表(自由書式)
⑧申請者の直近3年分の申告書(写し)
⑨計画策定支援に係る工程表(ガントチャート)(自由書式)
⑩主要金融機関の確認書面(自由書式、原本)

 

 

 

[制度概要⑤]申請期限

 

かつて、405事業の申請期限は平成26年(2014年)度末までとされていましたが、期限が撤廃され平成27年(2015)年度以降も利用できるようになりました。

 

ただし個別の利用申請については、申請が受理された日から2年で失効となりますので、利用申請の期限には注意してください。

 

 

 

[制度概要⑥]申請書の提出先

 

405事業の申請書の提出先は、経営改善支援センターです。

 

経営改善支援センターとは、経営改善計画策定支援事業の利用申請のために設けられ、申請受付や問い合わせ対応などを行っています。

 

独立行政法人中小企業基盤整備機構によりすべての都道府県に1ヶ所ずつ設置される機関で、商工会議所内などにあります。

 

中小企業庁:経営改善支援センター

 

[制度概要⑦]経営改善計画の内容と水準

 

経営改善計画の内容は原則として、次の項目を含むものとされます。

  1. ビジネスモデル俯瞰図
  2. 会社概要表(株主、役員構成、役員等との資金貸借、沿革等)
  3. 資金繰実績表
  4. 経営改善計画に関する具体的施策及び実施時期
  5. 実施計画(アクションプラン)及びモニタリング計画(原則3年程度)
  6. 資産保全表
  7. 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等の計数計画(金融支援含む)
  8. 金融支援(条件変更、融資行為等)の依頼内容
  9. その他必要とする書類

 

 

上記内容を満たさないと、金融機関の同意後でも計画書の訂正が必要になりますのでご注意ください。

 

また経営改善計画の水準としては「その計画で金融機関から条件変更などの”金融支援”を得られる内容」であることが必要。
そのほかに要件はなく、必ずしも金融検査マニュアルにおける実抜計画や、合実計画に該当する内容である必要はありません。

 

 

「経営改善計画策定支援事業(405事業)」の申請から支払決定までの流れ

 

次に「経営改善計画策定支援事業(405事業)」の申請方法をご紹介します。

 

[流れ①]最寄りの認定支援機関を探し依頼する

 

まずは、最寄りの認定支援機関を探します。
次のような方法がありますので、お好きな方法を選んでください。

 

 

なお、借入先等の関係する金融機関が認定支援機関となって支援する場合は、この補助事業は利用できませんので、別の支援機関を選びましょう。

 

「支援機関を選ぶ基準がわからない」というときは、検索システムの「検索条件」にある「支援実績」で「経営改善計画策定支援事業」にチェックを入れて検索します。

 

出典:中小企業庁

 

すると「経営改善計画策定支援事業」の支援実績がある機関が表示されますので、実績数が多い機関を選べば、経験豊富で申請にも慣れているはずです。

 

出典:中小企業庁

 

自社の業種にも合った認定支援機関を選び、経営改善計画策定支援を依頼しましょう。

 

[流れ②]利用申請を行う

 

次に、経営改善計画策定支援を実施する認定支援機関と連名で「経営改善支援センター事業利用申請書」などの必要書類を、経営改善支援センターに提出します。

 

なお、認定支援機関に主要金融機関(メイン行又は準メイン行)が含まれない場合には、「経営改善計画策定支援について協力することの確認書面」も添付してください。

 

経営改善支援センターにおいて審査を行い、費用の補助が適切と判断されると、その旨が代表認定支援機関に通知されます。流れ③]計画の策定支援と合意形成

 

費用補助決定の通知が代表認定支援機関に届いたところで、支援機関の支援を受けて経営改善計画の策定に入ります。

 

認定支援機関は次のような支援を行いながら、前述した内容を含めた計画を策定します。

 

  • 資産査定
  • 改善計画策定
  • 金融支援協議サポート

 

なお、認定支援機関への自己負担額(1/3)の支払いは、計画策定支援の業務委嘱に承諾した日以降に行ってください。

 

また、策定した経営改善計画について、金融機関から同意を得ることが支払要件の一つです。

 

複数の金融機関との合意形成では、「直接持ち回りで同意を得る」以外の方法として以下の3パターンを想定しており、主要金融機関と相談のうえ適切な方法で行ってください。

 

合意形成の場 事務局・主催 参加者
①バンクミーティング 事業者
(認定支援機関が支援)
事業者
認定支援機関
金融機関を中心とする債権者 など
②経営サポート会議
(各県に設置)
信用保証協会 など 事業者
認定支援機関
金融機関を中心とする債権者
信用保証協会 など
③中小企業再生支援協議会
(各県に設置)
中小企業再生支援協議会 事業者
認定支援機関
金融機関を中心とする債権者
中小企業再生支援協議会 など

 

[流れ④]支払申請・支払決定

 

経営改善計画について金融機関との合意成立後、認定支援機関と連名で「経営改善支援センター事業費用支払申請書」や経営改善計画などの書類を、経営改善支援センターに提出します。

 

今回は「支払申請」であり、流れ②の「利用申請」とは別書類となりますので、気をつけてください。

 

中小企業庁:申請様式

 

経営改善支援センターにて書類内容の審査を行い、費用の補助が適切と判断されると、支払決定・支払決定金額・支払日が代表認定支援機関に文書で通知され、費用の2 / 3の支払いが行われます。

 

[流れ⑤]モニタリングの実施と申請書提出

 

次に中小企業・小規模事業者は、経営改善計画に基づき経営改善を進めます。

 

同時に認定支援機関は、策定した経営改善計画が計画どおりに進み経営改善が図られているかどうかを、計画に定められた期限ごとに確認し、事業者が金融機関に報告する事前準備を行います。

 

これが「モニタリング」業務で、計画策定後3年間取り組む必要があります。
またモニタリングを実施するたびに、その実施状況を「モニタリング費用支払申請書 」などの書類にまとめ、経営改善支援センターに申請します。

 

中小企業庁:申請様式

 

経営改善支援センターでは書類内容を確認し、モニタリング費用の補助が適切と判断されると、支払決定などを代表認定支援機関に文書で通知し、モニタリング費用の2 / 3の支払いが行われます。

 

ただし費用補助は総額で200万円が上限のため、経営改善計画策定の時点で200万円に達したときは、モニタリング費用についての補助はありません。
もちろん補助がない場合でも、モニタリングは適切に行う必要があります。

 

「経営改善計画策定支援事業(405事業)」の事例紹介

 

記事の最後に、「経営改善計画策定支援事業(405事業)」の事例をご紹介します。

[事例①]即席めん類製造業

即席めん類を製造するこのメーカーでは、計画を策定する前は保有する機械が「小ロット向き」なため、大量生産の受注があると作業効率が落ちる状況でした。
そして追加の設備投資をしたくても、手元資金に余裕がなく、調達のメドも立たない状況に。

そこで認定支援機関の支援を受け、次のような経営改善計画を策定します。

  • 経営戦略の見直し
  • アクションプランの策定
  • 営業活動内容の社内共有の方策
  • 計数・借入金返済計画

その結果、「小ロット生産が可能である」という自社の強みを再認識。
「オリジナル商品」や「販促品の製作」といった、少量生産を希望する取引先の開拓に活路を見出し、新規取引先を10社獲得します。

売上・利益とも増加し、設備稼働率も向上。
自社の強み、やるべきことが明確になり、社員とビジョンを共有することで意欲向上につながっています。

また銀行には金融支援として「債務の一本化」に応じてもらい、返済負担の軽減につながりました。

 

まとめ:「経営改善計画策定支援事業(405事業)」の適切な利用を

 

この記事では、「経営改善計画策定支援事業(405事業)」の基本情報や制度概要、支払決定までの流れ、事例などをご紹介しました。

 

ぜひ記事を参考に、「経営改善計画策定支援事業(405事業)」を適切に利用して、自社の売上を増加させましょう。

 

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