ひとつの締め切り回で4,000者を超える応募数がある、人気の高い「ものづくり補助金」。
2022年2月16日には10次締切分の公募が開始されましたが、「3つの新枠」が創設されるなど、前回締切分から大きな制度変更が行われました。
そこで今回は、ものづくり補助金10次締切の変更点をわかりやすく解説していきます。
「ものづくり補助金への申請を検討している」という経営者の方は、ぜひご覧ください。
なお「ものづくり補助金の全般」については、こちらの記事でくわしくご紹介しています。
【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】
【ものづくり補助金】10次締切の変更点を解説
まずは、ものづくり補助金10次締切における、前回締切分からの変更点を解説します。
変更点①:3つの新枠を創設
ものづくり補助金10次締切の変更点1つめとして、次の3つの新枠が創設されました。
補助の対象 | 補助上限 | 補助率 | |
---|---|---|---|
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 業況が厳しい中での投資 | 750~1,250万円 | 2 / 3 |
デジタル枠 | DX、デジタル化に資する投資 | 750~1,250万円 | 2 / 3 |
グリーン枠 | 温室効果ガスの排出削減、炭素 生産性向上に資する投資 | 1,000~2,000万円 | 2 / 3 |
新枠は「新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けつつも、生産性向上に取り組む事業者向け」の特別枠として創設。
上記3枠は「通常枠」とともに、事業類型「一般型」に含まれます。
なお、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」および「デジタル枠」に申請し不採択となった場合は「通常枠」で再審査へ。
ただし、再審査により「通常枠」で採択されたときは、「通常枠」の補助上限・補助率などの条件が適用されます。
新枠それぞれの詳細は、以下のとおりです。
〈新枠①〉回復型賃上げ・雇用拡大枠
「回復型賃上げ・雇用拡大枠」では、業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者が行う、革新的な製品・サービス開発または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資などを支援します。
なお「回復型賃上げ・雇用拡大枠」で申請するには、「基本要件(要件を満たす3~5年の事業計画を策定する)」に加え、以下の全ての要件を満たすことが必要です。
- 前年度の事業年度の課税所得がゼロである
- 常時使用する従業員がいる
- 補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額、事業場内最低賃金の増加目標を達成する
〈新枠②〉デジタル枠
「デジタル枠」では、DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発またはデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資などを支援します。
なお「デジタル枠」で申請するには、「基本要件」に加え、以下の全ての要件に該当することが必要です。
- (1)次の①または②に該当する事業である
①DXに資する革新的な製品・サービスの開発
②デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善 - (2)経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有するなどの自己診断を実施するとともに、自己診断結果を応募締切日までに独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出している
- (3)独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行っている
〈新枠③〉グリーン枠
「グリーン枠」では、温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発または炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資などを支援します。
なお「グリーン枠」で申請するには、「基本要件」に加え、以下の全ての要件に該当することが必要です。
- (1)次の①または②に該当する事業である
①温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発
②炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の方法の改善 - (2)3~5年の事業計画期間内に、事業場単位または会社全体での炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業である
- (3)これまでに自社で実施してきた温室効果ガス排出削減の取組の有無を示す
また申請時には、「様式2 炭素生産性向上の取組及び温室効果ガス排出削減等の取組状況」を用いて、次の項目を具体的かつ詳細に記載することも必要となります。
- 事業場単位での炭素生産性を年率平均1%以上増加させる、具体的な計画内容
- これまでに自社で実施した、温室効果ガス排出削減の取組内容の有無やその効果など
変更点②:新特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)が廃止に
ものづくり補助金10次締切の変更点2つめとして、「新特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)」が廃止となりました。
「新特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)」は2021年度から開始され、「物理的な対人接触を減らす革新的な製品・サービスの開発」などを支援。
通常枠よりも補助率を引き上げた優先採択が実施されました。
当該枠で不採択でも「通常枠」で再審査されるという好条件で、8次締め切りでは294者が「低感染リスク型ビジネス枠申請から通常枠になり採択」となっています。
なお「広告宣伝・販売促進費」は、「低感染リスク型ビジネス枠」でのみ補助対象経費でしたので、10次締切からは対象外です。
変更点③:一般型で従業員規模に応じた補助上限額の設定
ものづくり補助金10次締切の変更点3つめとして、一般型で従業員規模に応じた補助上限額が設定されました。
9次締切までは一律上限1,000万円でしたが、今回からは従業員の規模に応じて下表のように上限が変わります。
補助上限金額 (第9回締切まで) |
補助上限金額 (第10回締切以降) |
|
---|---|---|
5人以下 | 1,000万円以内 | 750万円以内 〈1,000万円以内〉 |
6人~20人 | 1,000万円以内 | 1,000万円以内 〈1,500万円以内〉 |
21人以上 | 1,000万円以内 | 1,250万円以内 〈2,000万円以内〉 |
※:表中の〈 〉内は「グリーン枠」の上限
変更点④:補助対象事業者の見直し・拡充
ものづくり補助金10次締切の変更点4つめとして、次のように補助対象事業者の見直し・拡充が行われました。
- 補助対象事業者に「特定事業者」を追加
- 「再生事業者」を対象とした加点を行うとともに、補助率を2/3に引き上げて支援
「特定事業者」とは、2021年8月に一部が施行された「産業競争力強化法等の一部を改正する法律」にて、「中堅企業への成長促進」を目的に創設された支援対象類型。
下表の資本金・従業員数の両方を満たす事業者が、「特定事業者」となります。
業種 | 資本金(中小企業者) | 従業員数(中小企業者) | 資本金(特定事業者) | 従業員数(特定事業者) |
---|---|---|---|---|
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 | 10億円未満 | 500人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 | 10億円未満 | 400人 |
サービス業又は小売業 (ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) |
5,000万円 | サービス業:100人 小売業:50人 |
10億円未満 | 300人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 | 10億円未満 | 500人 |
また「再生事業者」とは、中小企業再生支援協議会等から支援を受け、応募申請時において以下のいずれかに該当している事業者を指します(詳細は別紙4参照)。
- 再生計画等を「策定中」の者
- 再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から遡って3年以内に再生計画等が成立等した者
なお「再生事業者」については、本来は補助金を返還しなければならない「目標達成できず」の場合でも、返還が免除されます。
変更点⑤:加点項目・減点項目が追加
ものづくり補助金10次締切の変更点5つめとして、以下の加点項目・減点項目が追加となりました(公募要領27ページより)。
- 加点項目
②-3:再生事業者
②-4:「デジタル技術の活用及びDX推進の取組状況」(デジタル枠のみ) - 減点項目
② 回復型賃上げ・雇用拡大枠において、繰越欠損金によって課税所得が控除されることで申請要件を満たしている場合
なお上記を加点項目とするには、申請時に「「再生事業者」に係る確認書」・「様式3 デジタル技術の活用及びDX推進の取組状況等の確認書」をそれぞれ提出する必要があります。
【ものづくり補助金】10次締め切りのスケジュールを確認
次に、ものづくり補助金の10次締め切りのスケジュールを確認していきます。
【ものづくり補助金】10次締め切りのスケジュール
ものづくり補助金10次締め切りのスケジュールは次のとおりです。
- 公募開始:令和4年(2022年)2月16日(水)17時~
- 申請受付:令和4年(2022年)3月15日(火)17時~
- 応募締切:令和4年(2022年)5月11日(水) 17時
- 採択発表:令和4年(2022年)7月中旬の予定
補助事業の類型「一般型」と「グローバル展開型」では、スケジュールは同じです。
10次締め切り後も申請受付は継続され、令和4年度(2022年度)内に複数回の締切を設け、それまでに申請のあった分の審査と採択発表が随時行われます。
なお、補助事業の類型にはもうひとつ「ビジネスモデル構築型」がありますが、2次公募が2021年3月19日に締め切られ、現在は公募は行われていません。
【ものづくり補助金】10次締め切りの申請方法
ものづくり補助金の10次締め切りの申請方法は、「電子申請システムでのみ受け付け」となっています。
申請書類を準備し、こちらの電子申請システムから申請を行ってください。
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金:電子申請システム
締切日の前日~当日は申請が集中し、申請手続きが滞る可能性があります。
十分余裕を持って申請を行いましょう。
なお、電子申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要ですので、早めに利用登録を行ってください。
「GビズIDプライムアカウント」の登録申請方法は、こちらの記事でご紹介します。
GビズIDの「gBizIDプライム」とは?必須の補助金や登録申請方法を紹介
ものづくり補助金とは?制度概要を紹介
記事の最後に、ものづくり補助金の制度概要をご紹介します。
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金とは、中小企業などが取り組む「革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資」を支援する制度です。
次の補助金制度とともに、中小企業庁が行う「中小企業生産性革命推進事業」の一つに位置づけられています。
- IT導入補助金:中小企業などが行うバックオフィス業務の効率化や、新たな顧客獲得といった付加価値向上に値するITツールの導入を支援する
- 持続化補助金(一般型、低感染リスク型ビジネス枠):小規模事業者が、経営計画を作成して取り組む販路開拓などを支援する
ものづくり補助金の類型と補助金額・補助率
ものづくり補助金の類型と補助金額・補助率は以下のとおりです。
一般型 | グローバル展開型 | |
---|---|---|
概要 | 中小企業者などが行う「革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資などを支援する | 中小企業者などが海外事業の拡大・強化を目的とした「革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資などを支援する |
補助金額 | 100万円~2,000万円 | 1,000万円~3,000万円 |
補助率 | 通常枠:1 / 2、小規模企業者・小規模事業者 2 / 3 その他の枠:2 / 3 |
1 / 2、小規模企業者・小規模事業者 2 / 3 |
ものづくり補助金の補助対象経費
ものづくり補助金の補助対象となる経費は、 事業の対象として明確に区分でき、経費の必要性・金額の妥当性を証拠書類で確認できる、以下の経費です。
- 機械装置・システム構築費:専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費 など
- 技術導入費:本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費
- 専門家経費:本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
- 運搬費:運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
- クラウドサービス利用費:クラウドサービスの利用に関する経費
- 原材料費:試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費
- 外注費:新製品・サービスの開発に必要な加工や設計・検査等の一部を外注する場合の経費
- 知的財産権等関連経費:新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費
- 海外旅費(グローバル展開型のみ):海外事業の拡大・強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航及び宿泊等に要する経費
また、対象となる経費は、交付決定日以降に発注を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものに限られます。
ものづくり補助金の採択者数と採択率
ものづくり補助金の採択者数と採択率は下表のとおりです。
締切回 | 採択発表日 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
---|---|---|---|---|
1次締切 | 令和2年4月28日 | 2,287者 | 1,429者 | 62.5% |
2次締切 | 令和2年6月30日 | 5,721者 | 3,267者 | 57.1% |
3次締切 | 令和2年9月25日 | 6,923者 | 2,637者 | 38.1% |
4次締切 〔一般型〕 |
令和3年2月18日 | 10,041者 | 3,132者 | 31.2% |
4次締切 〔グローバル展開型〕 |
令和3年2月18日 | 271者 | 46者 | 17.0% |
5次締切 〔一般型〕 |
令和3年3月31日 | 5,139者 | 2,291者 | 44.6% |
5次締切 〔グローバル展開型〕 |
令和3年3月31日 | 160者 | 46者 | 28.3% |
6次締切 〔一般型〕 |
令和3年6月29日 | 4,875者 | 2,326者 | 47.7% |
6次締切 〔グローバル展開型〕 |
令和3年6月29日 | 105者 | 36者 | 34.3% |
7次締切 〔一般型〕 |
令和3年9月27日 | 5,414者 | 2,729者 | 50.4% |
7次締切 〔グローバル展開型〕 |
令和3年9月27日 | 93者 | 39者 | 41.9% |
8次締切 〔一般型〕 |
令和4年1月12日 | 4,584者 | 2,753者 | 60.1% |
8次締切 〔グローバル展開型〕 |
令和4年1月12日 | 69者 | 27者 | 39.1% |
合計 | − | 45,682者 | 20,719者 | 45.4% |
1~5次締切までのものづくり補助金の採択結果については、記事「【2020年度1-5次採択情報追加】「ものづくり補助金」採択実績から採択されるポイントを読み解く!」でくわしく分析しています。
まとめ:ものづくり補助金10次締切の変更内容を把握し、申請準備を
今回は、ものづくり補助金10次締切の変更点をわかりやすく解説してきました。
新枠が創設されるなど、申請要件が大きく変わっています。
ぜひ記事を参考に、ものづくり補助金10次締切の変更点をよく把握し、申請の準備を行ってください。
なお、当サイト「経営者コネクト」では、ものづくり補助金に応募したい経営者・担当者の方を応援したいと考え、無料相談を受け付けています。
実際に2021年に採択されたものづくり補助金の事業計画をもとにアドバイスいたします。
ご希望の方は、フォームからお申し込みをお願いいたします。
(「企業名」「ご連絡先」と「ものづくり補助金・無料相談希望」の旨を明記ください)