新型コロナ関連の融資制度を紹介!無利子で借入可能の場合も!

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、営業自粛を余儀なくされ資金繰りが悪化している企業も少なくないでしょう。
政府は融資や給付金などの救済策を用意しているので、経営が厳しいと感じる企業には積極的な利用をお勧めします。

特に今回の措置は中小企業や小規模企業に対しても手厚い内容という点が特徴です。
今回の記事では、政府が用意している融資による救済策を紹介します。

 

コロナ関連の融資制度は大きく分けて3つ

制度の主体 特徴
日本政策金融公庫 ・政府系金融機関
・要件を満たせば実質無利子
商工中金 ・政府系金融機関
・比較的大きな金額にも対応可能
民間金融機関+保証協会 ・民間の金融機関が利用可能
・要件を満たせば実質無利子

ここからは、この3つの融資制度について、詳しく見ていきましょう。

要件を満たせば実質無利子の日本政策金融公庫

まず、政府系の金融機関であるである日本政策金融公庫の救済策の説明をします。


新型コロナウイルス感染症特別貸付とは?

日本政策金融公庫では「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と呼ばれる融資を、業績悪化している企業向けに提供しています。小規模事業者、個人事業主に小口の融資を行う「国民生活事業」中小企業を向けの融資を行う「中小企業事業」と分けて管理しており、事業規模により貸付の条件が異なります。

小規模事業者・個人事業主向けの「国民生活事業」

「国民生活事業」は、個人事業主や小規模事業者は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、次の1または2のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方が融資を受けることができます。

  1. 最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している方
  2. 業歴3か月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1か月の売上高が次のいずれかと比較して5%以上減少している方

    (1)過去3か月(最近1ヵ月を含みます)の平均売上高
    (2) 令和元年12月の売上高
    (3) 令和元年10月から12月の平均売上高


融資限度額は通常の融資枠と別枠で6,000万円まで無担保で借入でき、
・融資額の上限3,000万円、融資後3年目までまでは「基準金利-0.9%、」
・4年目以降は
基準金利
で借入ができます。

例えば、基準利率が1.36%の場合(令和2年3月 17 日時点、運転資金 1,500 万円を5年返済で借りる場合)、
融資後3年間は「1.36%-0.9%=0.46%」で借入できます。
(※融資限度は8,000万円、利子補給限度額は4,000万円に拡充予定)


融資期間
については中小企業と同じく
運転資金が15年間
設備資金が20年間
が上限であり、いずれも5年間の据置期間があります。

参考:日本政策金融公庫|新型コロナウイルス感染症特別貸付


より大きな中小企業向けの中小企業事業

中小企業向けの融資である「中小企業事業」を受けるためには次のいずれかの要件に該当することが必要です。

  1. 最近1か月の売上高が前年または前々年同期に比し5%以上減少していることまたはこれと同様の状況にあること
    ーただし業歴が3か月以上1年1か月未満の場合は、最近1か月の売上高が、次のいずれかと比較して5%以上減少していること
      (1)過去3か月(最近1ヵ月を含みます)平均過去売上高
           (2)令和元年12月の売上高
           (3)令和元年10月~12月の平均売上高
  2. 中長期的にみて、業況が回復し、かつ発展することが見込まれること


融資の限度額は中小企業の場合は既存の融資額に関わらず別枠で3億円が用意されており、無担保での借入が可能です。
・運転資金が15年間
・設備資金が20年間
が上限となり、いずれも5年間の据置期間があります。


利率は融資額1億円未満の部分については当初3年間が「基準(災害)−0.9%」です。
例えば基準(災害)利率が1.11%の場合(注2)、借入当初3年間は「基準(災害)1.11%−0.9%=0.21%」で借入ができます。
(注2: 令和2年3月 17 日時点、運転資金 1,500 万円を5年返済で借りる場合)


1億円を超える部分や、3年経過後は基準(災害)の利率が適用されます。
(※融資限度額は6億円へ、利子補給限度額は2億円へ拡充予定。)

参考:日本政策金融公庫|新型コロナウイルス感染症特別貸付


商工会議所等の推薦によるマル経融資

マル経融資とは「小規模事業者経営改善資金融資」の通称です。

日本政策金融公庫などが、無担保・無保証人で、
・商工会議所・商工会・都道府県商工会連合会の経営指導員による経営指導を原則6か月以上受けており、
・さらに商工会議所等の長の推薦ある小規模事業者
に対して融資を行う制度です。


小規模事業者とは、常時使用する従業員が20人以下(宿泊業と娯楽業を除く商業・サービス業では5人以下)の法人・個人事業主のことです。
融資を受けるためには事業規模の要件を満たしている必要があります。


マル経融資の融資限度枠は2,000万円ですが、今回の新型コロナウイルス感染症の影響を受けて別枠で1,000万円の借入が可能となりました。
最近1か月の売上高が、前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している小規模事業者の方が利用することができます。


また、この別枠の利率は、日本政策金融公庫が用意する「特別利率F-0.9%」となっています
令和2年6月1日の基準でこの特別利率Fは1.21%となっていますが、当初3年間は通常の貸付金利から0.9%引下げされた「1.21%-0.31%」
で融資を受けられます。
返済不要の据置期間についても運転資金が3年以内、設備資金が4年以内に延長されました。

参考:日本政策金融公庫|マル経融資(小規模事業者経営改善資金)


利子補給制度で実質無利子での借入も

新型コロナウイルス感染症特別貸付及びマル経融資は、政府による利子補給制度の対象となっており、要件をクリアすることで実質無利子での借入ができます。


小規模事業者
の場合、
・個人事業主は売上による要件なしで、
・法人は売上高▲15%
が要件です。

中小企業については、
・個人事業主・法人ともに売上高▲20%が要件
となります。


なお、中小企業で、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の利子補給が適用され、実質無利子で借入ができるのは、融資額の上限額3億円のうち1億円以下の部分です。
利子補給が受けられるのは当初3年間で「基準(災害)−0.9%」の利子分が対象となります。
(※融資限度額は6億円、利子補給限度額は2億円以内に拡充予定)


「国民生活事業」
の対象者となる場合は、新型コロナウイルス感染症特別貸付の上限額6,000万円のうち3,000万円以下の部分が実質無利子で借入ができます。
利子補給が受けられるのは当初3年間で「基準(災害)−0.9%」の利子分が対象となります。
(※融資限度額は8,000万円、利子補給限度額は4,000万円以内に拡充予定)


「マル経融資」
の利子補給については各自治体が取り扱いを決めています。
新型コロナウイルス感染症の影響により開設された1,000万円が利子補給の対象となり、「特別利率F−0.9%」の部分が利子補給され実質無利子で借入ができます。
こちらも利子補給が受けられる期間は当初3年間です。

いずれの融資も一旦利子を日本政策金融公庫へ返済した後に、支払済みの利子額が政府から補給される流れです。

参考:経済産業省|新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ

参考:日本政策金融公庫|「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」の併用による実質的な無利子化融資のご案内


売上高が5%以上減少の要件がないセーフティネット貸付

日本政策金融公庫では、社会的・経済的環境の変化などの外的要因により、売上の減少など業況が悪化していても、中期的にはその業績が回復することが見込める場合セーフティネット貸付を行っています。


今回の新型コロナウイルス感染症の影響を受けて足元の「売上高が5%以上減少」といった数値要件に関わらず、今後の影響が見込まれる事業者も含めて融資対象になりました。


貸出限度額は中小企業の場合は7億2,000万円が限度額、個人事業主などの国民生活事業の対象者は4,800万円となります。
貸出期間は運転資金8年以内、 設備資金15年以内で据置期間はそれぞれ当初3年間の設定です。
基準金利は2020年5月1日時点で貸付期間5年では中小企業が1.11%、国民生活事業が4,800万円ですが貸付期間や担保の有無等により変動します。

 

比較的大きな金額にも対応可能な商工中金

比較的大きな中小企業向けの融資をメインに行う商工中金でも、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業向けの融資を新設しています。

危機対応融資の概要

商工中金では新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業向けに「危機対応融資」を行います。
要件は新型コロナウイルス感染症の影響により直近1か月の売上高が、前年又は前々年の 同期比5%以上減少している方です。


貸出限度は、貸出額の累計が20億円以内、残高3億円以内です。
利率は商工中金所定の利率で、2020年5月29日現在の下限利率は1.11%です。
借入当初の3年間は残高1億円まで-0.9%となり、下限利率1.11%が適応される場合、現状では「1.11%-0.9%=0.21%
の金利で借入ができます。
(※融資限度額6億円、利子補給限度額2億円へ拡充予定)


また、利率が商工中金所定の利率を上回る場合については、借入全期間で残高3億円までの利子補給が行われるため、利率が商工中金所定の下限利率を上回ることはありません。
(※たとえば利率が1.5%の場合、0.39%の利子補給が行われ、3億円の融資額すべてで商工中金の下限レートを超えて利息を支払うことはありません。)


運転資金の貸出期間は15年間、設備資金の貸出期間は20年間が最長となっており、それぞれ5年間の据置期間があります。

参考:経済産業省|新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ


利子補給で実質無利子も

危機対応融資についても要件を満たすことにより利子補給制度が適用されます。
売上減少が中小企業▲20%以上小規模事業者▲15%以上などを満たす場合には、借入当初3年間は、残高1億円以内に限り金利0%となるまでの利子補給を受けることができ、実質無利子で借入が可能です。
(※利子補給限度額は2億円へ拡充予定)


なお、残高を1億円を超える部分や4年目以降は利子補給の対象になりません。

参考:商工中金|商工中金の危機対応業務

 

民間金融機関を利用できる保証協会保証付き融資

保証協会の保証は一般枠の他に、社会情勢に合わせて別枠の融資が受けられる場合があります。
今回の新型コロナウイルス感染症の影響を受けて新設された融資枠や実質無利子で融資を受けられる制度について紹介します。

保証協会保証付き融資とは?

中小企業などが民間の金融機関から融資を受ける場合、保証協会の保証を付けて融資を受けることがほとんどです。
この保証協会の保証は、万が一債務者となる企業が債務不履行となった場合に、保証協会が債務者に変わり金融機関へ弁済をする制度です。
利用するにあたり債務者は保証協会に一定の保証料を支払う必要があります。


通常利用できる限度額は、
法人の場合は
担保ありの場合は2億8千万円まで、
担保なしの場合は8千万円まで
となっています。

保証期間は、
・運転資金は5年間、
・設備資金は7年以内です。

保証料は、各企業の事業規模や業績により異なります。

新型コロナはセーフティネットの対象に

今回の新型コロナウイルス感染症の影響が大きいため、
・通常、突発的災害(自然災害等)に起因している場合に適用されるセーフティネット保証4号
・全国的に業況の悪化している業種に属する中小企業者向けのセーフティネット保証5号
の対象となりました。
これにより、
一般枠とは別枠で借入ができるようになりました。

 

  • 売上20%以上減少が条件のセーフティネット保証4号

新型コロナウイルス感染症が突発的災害(自然災害等)の発生に起因して売上高等が減少している中小企業者を支援するための措置であるセーフティネット保証4号の対象になりました。
一般枠とは別枠で最大2.8 億円の借入ができ、借入債務の100%を保証協会が保証してくれます。
「売上高が前年同月比▲20%以上減少」等が利用できる要件です。

 

  • 売上5%以上減少が条件のセーフティネット保証5号

特に重大な影響が生じている業種が利用できるのがセーフティネット保証5号です。
一般枠とは別枠で最大2.8億 円利用できます。(4号と同枠)
保証協会による保証は借入債務の80%を保証してくれます。
「売上高が前年同月比▲5%以上減少」等の場合が利用できる要件です。

なお、対象地域は日本全国、対象業種は全業種となったので、要件に当てはまるレベルで業績悪化の影響を受けている企業ならばほとんどの日本企業が利用できます。

危機関連保証の概要

資金繰りが逼迫している全国・全業種※の中小企業・小規模事業者を対象に、セーフティネット4号・5号だけでは足りない場合「危機関連保証」が利用できます。
保証協会の保証は100%、売上高が前年同月比▲15%以上減少する中小企業・小規模事業者に対して、更に2.8億円の別枠が用意されるというものです。
(※一部保証対象外の業種があり)

 

売上高が15%以上減少し要件を満たせば実質無利子

セーフティネット保証4号・5号、危機関連保証のいずれかを利用しており、要件を満たす場合には保証料・利子が減免されます。


小・中規模事業者の場合、売上高が▲5%の場合は保証料が1/2へ減免されます。
さらに、売上高が▲15%の場合は保証料ゼロ・金利ゼロと実質無利子で借入ができるのです。


減免または実質無利子・無担保となる融資の上限額は4,000万円です。
補助が受けられる期間は保証料が全期間・利子は当初3年間となります。
また、融資期間は10年以内となり、最大5年間は据え置きで利用できるので返済する必要がないので、資金繰りを安定させる効果があります。


さらに、信用保証付きで既に借入をしている債務についても対象要件を満たせば、制度融資を活用した実質無利子融資への借換が可能となりました。

参考:経済産業省|新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ

 

まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた方に対する融資は、政府系金融機関の日本政策金融公庫や商工中金、民間金融の保証協会保証付き融資で用意されています。
それぞれ新設で融資枠や保証枠が設けられたり、利子補給により実質無利子で借入ができたり、返済をしなくても良い据置期間が用意されたりなど負担が少なく借入ができます。


全国的に緊急事態宣言が解除されましたが、まだまだ油断できない状況が続きそうです。
上手く融資制度を活用して、十分な資金をもってこの難局を乗り切りましょう。