運転資金の計算方法は?資金繰りを楽にする6つのコツや融資制度も紹介!

事業の継続に欠かすことができないのが「運転資金」です。
なんとなくのどんぶり勘定で資金繰り管理をしていると運転資金不足により、売上があるのに黒字倒産という事態にもなりかねません。

万一、運転資金の計算方法を知らない場合には、資金ショートを未然に防ぐためにも必ず理解したほうが良いでしょう。
運転資金の金額を適切に理解できれば事前に融資の計画が立てられますし、借入しすぎて必要以上に手数料を払うことも避けられます。

この記事では、運転資金の計算方法や資金繰りを楽にするための方法を紹介していきます。

事業活動に欠かせない運転資金とは?

ほとんどの商取引では、商品を仕入れてから一旦在庫となり、商品が売れるまでに数か月の時差が発生します。
そのため、先に仕入分の支払が発生し、後から販売代金を回収となり立替え期間ができるため、資金繰りは苦しくなるのです。


BtoBの商取引では、ほとんどの場合は都度決済ではなく掛けで支払うことになります。
たとえば、1か月分の取引について、月末などに全てまとめて計算して請求書を作成し、翌月末に支払ってもらうという流れです。

また、最近では手形取引は減ってきましたが、手形で決済する場合は実際の入金までさらに時間がかかります。
手形決済の場合は、請求書の支払日に手形を振り出し、実際に現金化するまでに数か月を要します。

たとえば、大手企業に手形取引やでんさい(手形と同じような役割の電子債権)の利用をお願いされれば、資金繰りは厳しくなるとしても飲み込むしかない場合もあるでしょう。

このように掛け商売で商売をすると、売上はあるものの実際の入金までに時間がかかり資金繰りが苦しくなります。

このような、事業の運営のために必要な資金のことを「運転資金」といい、運転資金が不足する場合には資金調達が必要です。

また、

  • 通常の商取引で必要となる運転資金を「経常運転資金」、
  • 事業拡大に伴い増える運転資金を「増加運転資金」、
  • 季節毎に必要になる運転資金を「季節性運転資金

といいます。

事業を拡大する場合には、先に仕入れに要する金額の持ち出しが増え、実際に売上回収までの負担が重くなります。
そのため、事業拡大後安定するまでは資金繰りが苦しくなるので、通常の運転資金にプラスする形で運転資金(増加運転資金)が必要になります。


また季節性資金は、季節限定で毎年増える運転資金のことです。
たとえば、スノボ板を販売する会社の場合は秋口から冬にかけて販売数が増えて、夏の間は売上は落ち着きます。
このように季節により変動する商品を扱う場合に季節性運転資金が発生するのです。

貸借対照表で確認する運転資金の計算方法



運転資金の計算方法は以下の通りです。

運転資金=売上債権(売掛金+受取手形+棚卸資産)-買入債務(買掛金+支払手形)

たとえば、売掛金が200万円、在庫が100万円、買掛金が150万円なら運転資金は150万円です。

この運転資金が大きくなるほど資金繰りは厳しくなります。


金融機関に運転資金の融資を依頼する場合、基本的にはこの範囲内でしか融資してもらうことはできません。

もちろん月毎に売掛金が異なる場合にはそれを証明する資料を用意して説明すれば融資を受けられる可能性もあります。
しかし、基本的に銀行融資というものは「何のために・いくら必要なのか」という根拠が説明できないと融資の審査が下りないのです。

そのため、運転資金以上の資金が必要な場合には、他の資金使途で必要な旨を伝える必要があります。

運転資金に関する日本政策金融公庫や保証協会の融資制度

運転資金に関する融資は、民間の金融機関、日本政策金融公庫、信用金庫・信用組合などで利用できます。

ただし、金融機関から借入実績がない中小企業がいきなりプロパーで融資を受けるのは難しく、現実的には日本政策金融公庫の融資制度を利用したり、保証協会の保証を利用することが多いです。

日本政策金融公庫の融資や保証協会付融資を利用・返済の実績を積むことにより、民間の金融機関からのプロパー融資を借りられるようになります。

一般貸付は4,800万円借りられる日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫は政府系の金融機関で、民間の銀行には難しい創業間もない会社への融資や業績が低迷している企業に対する融資も対応してくれる場合もあります。

日本政策金融公庫の融資にはさまざまな種類がありますが、条件無く借入ができる一般貸付では、運転資金として4,800万円の融資を受けられます。

返済期間は5年以内(特に必要と判断される場合は7年以内)で、据置期間は1年以内です。

参考:日本政策金融公庫

 

無担保で8千万円、有担保で2億円が借りられる保証協会付保証付き融資

保証協会の保証は、一般枠を利用する場合無担保で8千万円、有担保で2億円の計2億8千万円の借入ができます。

一般枠の場合の融資期間は7年年以内、据置期間は6か月です。

保証協会保証はさまざまな種類があり、条件をクリアすることで別枠で融資枠ができたり、保証料が減免されたりします。

参考:東京信用保証協会

保証協会付保証融資については、別記事「融資を受けやすくなる信用保証協会の保証とは?仕組みや保証の種類を紹介!」で詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。

返済の実績を積んだら民間の金融機関のプロパー融資

民間の金融機関も収益を上げるためにも融資をしたいという気持ちはあります。
それぞれの支店にノルマが割り振られており、少しでも成績伸ばすために融資をしたいのです。

しかし、融資した先が貸し倒れてしまった場合は、利息から得られる収益の何倍もの損失を被ることになります。
そのため、融資には慎重な姿勢になるのです。

ただし、日本政策金融公庫や保証協会保証付の融資で借入・返済の実績ができているのを確認したら、金融機関も融資に前向きな姿勢に変わるでしょう。

プロパー融資が利用できるようになると、信用保証協会へ支払う保証料を支払う必要なくなり、負担を減らすことができます。

資金繰り改善のヒント6選

損益計算書ベースでは売上があるのに、資金繰りが悪いため支払に充てる資金の捻出に苦戦している中小企業の方も多いでしょう。

特に中小企業が事業を継続するために投資は欠かせないので、なかなか現預金を潤沢に確保するのが難しいです。

では、どうすれば資金繰りを改善することができるのでしょうか。
資金繰り改善のヒントを6つ紹介していきます。

①売掛金を回収する期間を早める交渉をする

売掛金の回収のタイミングを少し変えるだけで資金繰りが劇的に改善する場合もあります。

たとえば、毎月25日に給料の支払があり、月末に売掛金を回収する流れだとしたら、この月末数日間の資金繰りが厳しくなります。
現預金の備えが少ない場合、ギリギリ資金繰りを回せても、急な出費が発生することにより一気に資金ショートしてしまう可能性もあるでしょう。

もし売掛先に交渉できるならば、給料の支払日前に売掛金を支払ってもらうようにお願いしてみるのも一つです。

②仕入先に支払サイトを延ばしてもらう

支払サイトを延ばしてもらうのも資金繰りが楽にできる方法です。

たとえば、売掛金の大口先の入金があった後に支払ができるように支払サイトを変更してもらいましょう。

売掛金の回収を待たずに支払するより、精神的に気が楽になります。

③注文されてから発注するなど手持ちの在庫を減らす

在庫を持ちすぎると立替期間が長くなりますし、不良在庫を抱えるリスクもあります。

発注先との力関係などで、発注されたらすぐ発注先に発送するために常に在庫を用意しておかないといけない企業も多いようですが、理想は発注されてから在庫を用意することです。

現実的に難しいという場合もあるでしょうが、数か月前に発注を確約してもらうなどして、在庫が余る状態を作らないようにしたいものです。

④毎月の固定費を減らす

固定費とは毎月や毎年決まって支払うべき費用のことです。
たとえば家賃やインターネット代、広告宣伝費、保険料など見直すべき固定費はたくさんあります。

売上が変わらない状態で、費用を減らせば手元資金を多く残すことができるので、現在固定費として支払っている費用が当たり前だと思わず一度見直してみてください。


⑤売掛債権を担保にできるABLを活用

売掛債権を担保に融資を受けられる「売掛債権担保融資(ABL)」という融資の手法があります。

中小企業の場合、民間の銀行で融資を受ける場合には不動産などの担保を差し入れることが一般的です。
しかし、所有する不動産があまりない場合、融資枠がすぐに埋まってしまうでしょう。

不動産を所有していなくても売掛債権を担保に融資を受けることができる仕組みがABLです。

特に売掛金や在庫を多く有する場合に有効な資金調達方法なので、是非ご利用の金融機関などに相談してみてください。

⑥売掛債権を譲渡するファクタリング利用

売掛債権を期日前に現金化するファクタリングという方法があります。
ファクタリング会社に手数料を支払い、売掛債権を買い取ってもらうことで現預金を確保することができます。

融資に比べると審査も早く不動産担保など必要ないため、気軽に利用できるというメリットがあります。

ただし、ファクタリングは融資ではないので、貸金業の規制が適用されません
貸金業の利息上限は15%〜20%ですが、ファクタリングには規制がないのでそれを超えることもあるのです。
また、ファクタリングと謳い実質貸付をする悪徳業者もいます。

そのため、悪徳業者を避けるためにもインターネットのどで口コミを確認したり、大手ファクタリング会社を利用したりすると良いでしょう。

まとめ

運転資金をきちんと計算して資金繰り対策をしておかないと、損益計算書ベースでは黒字でも資金ショートを起こす可能性があります。

現預金を確保できない場合には日本政策金融公庫や保証協会保証付融資などを利用すると良いでしょう。

また、融資以外にも資金繰り対策としてさまざまな方法があります。
ぜひ今回紹介した資金繰り対策を試して、運転資金の健全化を目指していきましょう。

事業活動に欠かせない運転資金とは?

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