M&Aの手数料はいくら?手数料の種類から具体的な金額までを徹底解説!

中小企業の後継者不足を解決するため、M&Aを活用した事業承継が近年活発に行われています。

M&Aの当事者は中小企業同士であることがほとんどですが、その仲介業を行っているのは、専門の仲介業者から弁護士や税理士・公認会計士などの士業をはじめ、一部金融機関までさまざまな事業者が関わっています。

仲介業者を利用する場合には当然手数料を支払うわけですが、その手数料について詳しく理解している企業経営者はまだあまりいません。

いつか事業承継問題でお世話になるかもしれないM&Aですから、事前にその手数料の形態や相場などを知っておくのはスムーズな事業承継を行う上でも大変有意義です。

そこで本日は、M&Aの仲介業者に支払う手数料の内容や金額から、補助金を活用して手数料の負担を下げる方法までをじっくりと解説していきます。

M&Aに必要な手数料とは

仲介業者を利用してM&Aを行う場合、仲介業者に対してその手数料を支払わなければなりません。
この章では、手数料には具体的にどのようなものがあり、その金額は一般的にどのように決められているのかを解説していきます。

そもそもM&Aとは

M&Aとは、企業を丸ごと(もしくは一部分の事業を)他の企業に売却することにより事業承継を完成させる事業承継の方法のひとつです。

いわゆる「売り手」と「買い手」のニーズが一致した場合、売り手側の企業の株主(もしくは企業)には売却代金が支払われ、買い手側の企業はM&Aによるシナジー効果により事業規模を一気に拡大し、通常より遥かに早い成長スピードを手に入れることができます。

売り手と買い手の双方がM&A手数料を支払う

M&Aの手数料は、M&Aの「売り手」だけでなく「買い手」も支払います

通常「売り手」も「買い手」も双方がM&Aの仲介会社と契約を結ぶため、それぞれが、それぞれの契約している会社に対して着手金や成功報酬などを支払います。

もちろん仲介業者などを通さなければこういった手数料は一切必要ありませんが、余程でない限りM&Aにふさわしい相手を探すのは不可能でしょう。

M&Aの手数料の種類

M&Aの手数料は、M&Aの仲介会社によってその料金体系がことなるため、すべての会社を同列に比べることはできません。
手数料の種類は多くても、トータルすると報酬額が抑えてある会社もありますし、成功報酬以外は請求されないもののその成功報酬の割合が高い場合もあります。

なお、M&A仲介会社へ支払う主要な手数料には、以下のようなものがあります。

  • 相談料・・・契約前の相談時に支払うもの(実際は無料の場合がほとんどです)
  • 着手金・・・M&A仲介会社と提携仲介契約を提携した時に支払う報酬です
  • 中間金・・・売り手(もしくは買い手)とM&Aの基本合意契約を締結した時に支払います
  • 成功報酬・・・売り手(もしくは買い手)とM&Aの最終契約を締結した時に支払います

これら以外にも、

  • リテイナーフィー・・・M&Aの契約期間中に支払う月額顧問料のようなものです
  • デューデリジェンスフィー・・・M&A対象企業の財務調査費用
  • 実費・・・出張料など

などがあります。

ただし、これらのすべてが請求されるわけではありません。会社ごとにそれぞれ、これらの手数料のいくつかを組み合わせた料金体制をとっています。

M&Aの手数料算定方法・レーマン方式とは

さきほどお話ししたM&A手数料の中で、もっとも大きな金額を占めているのが成功報酬です。
一部のM&A仲介会社などは、着手金や中間金など一切必要ない代わりに成功報酬のみを請求する会社もあるほどです。

この成功報酬額を計算する場合に用いられているのがレーマン方式です。M&Aの仲介会社のほとんどは、成功報酬を計算する場合にこのレーマン方式を用いています。

レーマン方式とは、ドイツの経済学者レーマン博士の学説を応用して作った成果配分方式のことで、売却金額が増えるほど手数料が減衰していく特徴があり、大型のM&Aの場合などでは成功報酬額を抑える効果があります。

ちなみにレーマン方式による成功報酬の報酬率とは、たとえば以下のようなものをいいます。

 

売却額 手数料割合(例)
5億円以下の部分 5%
5億円を超え10億円以下の部分 4%
10億円を超え50億円以下の部分 3%
50億円を超え100億円以下の部分 2%
100億円を超える部分 1%

レーマン方式による成功報酬の計算例

それでは実際に、レーマン方式による成功報酬額を計算してみましょう。
M&Aによる売却代金が45億円の場合の計算例は、以下のようになります。

  • 5億円以下の部分・・・5億円×5%=2,500万円
  • 5億円を超え10億円以下の部分・・・(10億円-5億円)×4%=2,000万円
  • 10億円を超え50億円以下の部分・・・(45億円-10億円)×3%=10,500万円

    →成功報酬額・・・2,500万円+2,000万円+10,500万円=15,000万円

なお、レーマン方式にはこれ以外にも「移動総資産レーマン」や「企業価値レーマン」・「株価レーマン」などさまざまな方式があり、どのレーマン方式を採用しているのかはM&Aの仲介会社によってことなります。

大手M&A会社の手数料例

それでは、実際に大手M&A仲介会社の手数料体系がどのようになっているのかを確認してみましょう。

M&Aの手数料体系は大きく分けると3つ

大手M&A仲介会社の手数料体系は、大きく分けると以下の3つになります。

  1. 着手金+成功報酬型・・・日本M&Aセンターなど
  2. 完全成功報酬型(中間金あり)・・・M&Aキャピタルパートナーズなど
  3. 完全成功報酬型(中間金なし)・・・クラリスキャピタルなど

大手M&A仲介会社の手数料体系

では、この3種類それぞれの仲介会社の手数料体系を見てみましょう。

日本最大のM&A仲介会社「日本M&Aセンター」の手数料

東証一部に上場している日本M&Aセンターは、M&A仲介会社の中で最大手の企業です。
コンサルタントが多数在籍しており、案件の保有数も多く、M&Aの実績も申し分ありません。

また、シンガポールやマレーシアにも支店があるため、アジアの企業とのM&Aにも対応することができます。

日本M&Aセンターの手数料体系は「着手金+成功報酬型」をとっており、報酬体系は以下のようになっています。

 
  • 着手金・・・100万~500万円(提携仲介契約締結時)
  • 成功報酬・・・レーマン方式(M&A最終契約締結時)

なお、日本M&Aの成功報酬は、下図のレーマン方式により算出されます。

 

譲渡企業の時価総資産額 手数料割合
5億円以下の部分 5%
5億円を超え10億円以下の部分 4%
10億円を超え50億円以下の部分 3%
50億円を超え100億円以下の部分 2%
100億円を超える部分 1%

参照:日本M&Aセンター公式ホームページ

30年以上の実績がある中小企業M&Aのスペシャリスト「M&Aキャピタルパートナーズ」の手数料

東証一部に上場しているM&Aキャピタルパートナーズは、まだM&Aという言葉が一般的でなかった30年以上も前から中小企業のM&Aを積極的に行ってきた老舗のM&A仲介会社です。
各クライアントには専任のコンサルタントがつき、契約締結からクロージングまできめの細かいサービスを受けることができます。

M&Aキャピタルパートナーズの手数料体系は中間金の支払いのある完全成功報酬型をとっており、報酬体系は以下のようになっています。

  • 中間金・・・成功報酬額の10%(M&Aの基本契約締結時)
  • 成功報酬・・・レーマン方式による成功報酬の90%(最終契約締結時)

なお、M&Aキャピタルパートナーズの成功報酬は、下図のレーマン方式により算出されます。

 

株式譲渡対価 手数料割合
5億円以下の部分 5%
5億円を超え10億円以下の部分 4%
10億円を超え50億円以下の部分 3%
50億円を超え100億円以下の部分 2%
100億円を超える部分 1%

参照:M&Aキャピタルパートナーズ公式ホームページ

2014年に設立したばかりながら着実に実績を伸ばしている「クラリスキャピタル」のM&A手数料

他のM&A仲介会社と比べると、クラリスキャピタルはまだかなり新しい会社ではありますが、経験豊富なアドバイザーを多数抱えているため丁寧で迅速な対応ができ、顧客満足度の高さから近年実績を伸ばしています。

中小企業だけでなく、上場企業から個人商店まで、あらゆる企業のM&Aを幅広く手がけているのが特徴です。

クラリスキャピタルの手数料体系は中間金の支払いのない完全成功報酬型をとっており、報酬体系は以下のようになっています。

 
  • 成功報酬・・・レーマン方式(M&A最終契約締結時)

なお、クラリスキャピタルの成功報酬は、下図のレーマン方式により算出されます。

取引価格 手数料割合
2,500万円以下の部分 200万円
2,500万円を超え5,000万円以下の部分 250万円
5,000万円を超え1億円以下の部分 300万円
1億円を超え5億円以下の部分 4%
5億円を超え10億円以下の部分 3%
10億円を超え50億円以下の部分 2%
50億円を超える部分 1%

クラリスキャピタル公式ホームページ: http://clarisc.co.jp/

M&Aマッチングサイトの利用手数料について

M&Aの相手を探す場合、仲介会社を利用する以外にマッチングサイトを使って探すこともできます。

M&Aマッチングサイトとは

M&Aマッチングサイトとは、インターネット上でM&Aのマッチング相手を探すサービスを提供しているサイトのことをいいます。
提供しているサービスは、単にマッチング相手を探すだけのものから、相手先を探すための検討からM&A成約までの全行程サポートをしてくれるサービスまでさまざまです。

利用料に関しては、売り手側は無料のものが多いですが、登録月から月額課金されるものや、完全成功報酬型で成約時に手数料が必要となるものまでさまざまです。

なお、利用者数の多いサイトとしては以下のものなどがあります。

M&A手数料無料!公的支援サービス「後継者人材バンク」

中小企業基盤整備機構が全国で展開している事業引継ぎ支援センタ-において、中小企業のM&Aマッチングサービスとして提供しているのが「後継者人材バンク」です。

買い手は複数回の面接を経て後継者候補として人材バンクに登録され、その情報がノンネームで全国の金融機関などの取引先へ提供されます。
相談や登録、そして成約にも一切費用は必要ありません(ただし弁護士費用などが実費で必要となる場合があります)。

ただし知名度の低さと登録者や利用者の少なさから、当初予定されていたほどの成果を今のところ上げるには至っていません。

手数料の高さはM&A仲介会社の選択基準にはならない

M&Aの仲介会社の手数料体系は、各会社ごとにさまざまです。

「このケースのM&Aだったらこちらの会社に依頼したほうが手数料が安かったのに!!」とM&A終了後に思う経営者もいらっしゃるかもしれませんが、それは正しい評価ではありません。
なぜなら手数料は抑えられても、M&Aの売買価格そのものが低くなってしまうこともありうるからです。

手数料は高くてもM&Aの売買価格が高ければ問題ない

M&Aの売買価格は、企業価値評価ではなく、最終的には譲受企業がどれだけその会社(もしくは事業)を欲しいのかで決まります。
「どうしても欲しい!」と思う企業がマッチング相手であった場合には、多少割高であったとしてもM&Aが成立します。

逆に、財務内容もピカピカで、どこからどう見ても買い手がすぐ見つかりそうな企業であっても、時期や組み合わせが悪ければ、企業価値評価よりも低い価格で成約することもあります。

売り手の売買価格を増やすためには、もっとも売り手企業を高く評価してくれる企業を顧客に抱えているM&A仲介会社に依頼するのがベストです。

もちろんどこの会社が自社に興味を持ってくれるのかは分かりませんが、一般的には買い手の顧客リスト数が多いほうが確率的に高くなることは間違いありません。

顧客リスト数が多いM&A仲介会社は大手の場合がほとんどですから、その分仲介手数料も高くなるかもしれませんが、売却金額がそれ以上に高くなるのであれば何の問題もありません。

また同様に、買い手にとっても、売り手のリスト数が多ければもっとも条件に合った売り手を探すことができるわけですから、手数料が高くても、その分はM&A後のシナジー効果ですぐ取り戻すことができます。

それではどうやって最高の仲介会社を探すのか

では、大手のM&A仲介会社に頼めば間違いないかというと、一概にそうとも言い切れません。

顧客リストの数が多くても、最善の組み合わせを見つけられない場合もありますし、リスト数は少なくとも、優秀なM&Aアドバイザーと出会うことができれば最高の相手が見つかることもあります。

残念ながらこればかりは、ケースバイケースと言わざるを得ません。
ただし、報酬の高低でM&A仲介会社の良し悪しを決めることができないのは本当です。

M&Aの仲介手数料を補助してもらえる「経営資源引継ぎ補助金」について

令和2年4月30日に成立した第1次補正予算において、M&Aの仲介会社などに支払う手数料を補助する「経営資源引継ぎ補助金」が新たに創設されました。

これまで、高額なM&A手数料を前に事業承継を躊躇していた経営者を後押しし、廃業を選ぶ企業を減らし、何とか事業承継させることにより雇用や地域経済を守ることを狙いとしています。

M&Aの売り手と買い手の手数料が補助の対象に

「経営資源引継ぎ補助金」の補助対象事業者は、M&Aの売り手と買い手の両方です。

中小企業でM&Aを考えている企業であれば、売り手・買い手に関係なく補助対象事業者となることができます。

支援内容は2種類

支援内容は以下の2種類です。補助金申請時にどちらかを選びます。

 
  1. 経営資源の引継ぎを促すための支援
  2. 経営資源の引継ぎを実現させるための支援​

ただし、補助金申請時にまだ何もしていない(=M&A仲介会社などと契約を結んでいない)状態であれば、「経営資源の引継ぎを促すための支援」しか選ぶことができません。

補助金申請時にM&Aの引継ぎ形態(「株式譲渡」や「事業譲渡」など)が決まっている(=相手がすでに決まっている)場合にのみ、「経営資源の引継ぎを実現させるための支援」を選ぶことができます

支援内容により補助金額がことなります

経営資源の引継ぎを促すための支援」を申請した場合、期間内にクロージングまでたどり着けても着けなくても、支給される補助金額は以下のようになります。

  • 期間内に支払った費用の2/3と、100万円のどちらか少ないほう

いっぽう「経営資源の引継ぎを実現させるための支援」で申請した場合、期間内にクロージングできた場合とできなかった場合とでは補助金額が変わります。

【売り手】

  • 期間内にクロージングできた場合
    ・・・「期間内に支払った費用の2/3と200万円のどちらか少ないほう」+廃業費用(最大)450万円
  • 期間内にクロージングできなかった場合
    ・・・「期間内に支払った費用の2/3と100万円のどちらか少ないほう」

【買い手】

  • 期間内にクロージングできた場合
    ・・・「期間内に支払った費用の2/3と200万円のどちらか少ないほう」
  • 期間内にクロージングできなかった場合
    ・・・「期間内に支払った費用の2/3と100万円のどちらか少ないほう」

ただし、どちらの支援内容の補助金も、算出した結果補助金額が50万円を下回った場合は支給されることはありません

補助金を上手に活用してM&Aを

M&Aの仲介会社に支払う手数料は決して安くありません。
しかし、「経営資源引継ぎ補助金」を上手に使えば、最大650万円ほどの補助金を受給することができます。

この補助金は今年できたばかりですが、おそらく今後も継続されるはずですから、上手に活用してM&Aの手数料負担を少しでも減らすように心がけてください。

最後に

M&Aの仲介会社に支払う手数料は高額ですが、高額であっても最高のマッチングさえできれば十分にそれ以上のリターンを得ることができます。
仲介会社は千差万別ですが、ご自身に合った仲介会社やアドバイザーに出会うことができれば、きっと最高のクロージングを迎えることができるはずです。

そのためには、まず自社の強みと弱みをしっかりと理解した上で、M&Aのよきパートナーとして本当に信頼できる仲介会社を探してみてください。

手数料に関しては、新たに創設された補助金を上手に活用すればコストを抑えることも十分に可能です。
廃業を選ぶのではなく次世代にバトンを渡せるようにぜひ頑張ってみてください。

M&Aに必要な手数料とは

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