【事業再構築補助金】「グリーン成長枠」をわかりやすく解説!想定事例も紹介します

2022年3月28日に開始された事業再構築補助金の第6回公募にて、新規の事業類型として登場した「グリーン成長枠」
補助金額の上限が1.5億円と高額なこともあり、「興味がある」という方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、事業再構築補助金の「グリーン成長枠」の基本情報から制度概要、想定事例までわかりやすく解説します。

「グリーン成長枠への申請を検討している」という経営者の方は、ぜひご覧ください。

なお、経営者コネクトでは、事業再構築補助金の応募を考える企業様向けに「無料相談サービス」を行っています。
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【事業再構築補助金】「グリーン成長枠」とは?【基本情報】

まずは、事業再構築補助金の「グリーン成長枠」の基本情報をわかりやすく解説します。

【事業再構築補助金】グリーン成長枠とは?

事業再構築補助金の「グリーン成長枠」とは、グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象に、最大1.5億円を補助する事業類型です。

対象となる事業者は、具体的には次のとおり。

  • ”グリーン成長戦略「実行計画」14分野”に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、2年以上の研究開発・技術開発または従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせて行う事業者

2022年3月28日に開始された第6回公募にて、「回復・再生応援枠」とともに新設されました。
他の事業類型では必要となる「売上高等減少要件」が課されないため、創業間もない事業者でも申請可能です。

また、「コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類、付加価値額が減少したことを示す書類」を申請時に提出すれば、「グリーン成長枠」で不採択となった場合でも「通常枠」で再審査されます。

なお、第6回公募からの制度の変更点についてくわしくは、記事「【事業再構築補助金】第6回公募の変更点やスケジュールを解説!」でご紹介しています。

”グリーン成長戦略「実行計画」14分野”とは?

「グリーン成長枠」の申請要件として取り組む”グリーン成長戦略「実行計画」14分野”とは、2050年カーボンニュートラルを実現するために、国として目標を掲げ具体的な見通しを示した、成長が期待される以下の14の重要分野を指します。

(参考)
経済産業省:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

 

【事業再構築補助金】「グリーン成長枠」の制度概要

次に、事業再構築補助金の「グリーン成長枠」の制度概要をご紹介します。

「グリーン成長枠」の補助金額・補助率・補助対象経費

「グリーン成長枠」の補助金額・補助率・補助対象経費は、下表のとおり。

補助金額 補助率 補助対象経費
中小企業:100万円~1億円
中堅企業:100万円~1.5億円
中小企業 1 / 2
中堅企業 1 / 3
建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費

なお、次の経費はすべての事業類型で「補助対象経費にはならない」とされており、「グリーン成長枠」においても補助対象外です。

  • 再生エネルギーの発電を行うための発電設備及び当該設備と一体不可分の附属設備(太陽光発電を行うためのソーラーパネルなど)

「グリーン成長枠」の申請要件

「グリーン成長枠」に申請するためには、次の6つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 事業再構築要件
    事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業である
  2. 認定支援機関要件
    事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。補助金額が 3,000 万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)と策定している
  3. 付加価値額要件
    補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均 5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定する
  4. グリーン成長要件
    グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組であって、その取組に関連する2年以上の研究開発・技術開発または従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせて行う
  5. 別事業要件
    すでに事業再構築補助金で取り組んでいる、または取り組む予定の補助事業とは異なる事業内容である
  6. 能力評価要件
    既存の事業再構築を行いながら、新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金力がある

「グリーン成長枠」の追加提出書類

「グリーン成長枠」では、「事業類型共通の提出書類」のほかに、次の追加提出書類が必要です。

事業再構築補助金 公式サイトにて提示されている所定の様式を使用して、以下の項目を明確に記載します。

  • 2年以上の研究開発・技術開発、または従業員の一定割合以上に対する人材育成を行うこと

次項でご紹介する「審査項目」の「グリーン成長点」は、上記計画書の内容に基づき評価されます。

また、他の事業類型とは異なり、すでに過去の公募回で採択・交付決定を受けている事業者でも「グリーン成長枠」には申請が可能。

申請時に「別事業要件及び能力評価要件の説明書」 を提出することで次の要件が確認され、一定の減点を行ったうえで審査が行われます。

  • 別事業要件
  • 能力評価要件

ただし、支援を受けることができる回数は2回までです。

「グリーン成長枠」の審査項目・加点項目・減点項目

「グリーン成長枠」のみの審査項目として「グリーン成長点」があり、次の項目の確認が行われます。

  • (研究開発・技術開発、人材育成共通)
    ①事業再構築の内容が、グリーン成長戦略「実行計画」14 分野に掲げられた課題の解決に 資する取組となっているか
  • (研究開発・技術開発計画書を提出した場合)
    ②研究開発・技術開発の内容が、新規性、独創性、革新性を有するものであるか
    ③研究開発・技術開発の目標が、グリーン成長戦略「実行計画」14 分野の課題に基づき適 切に設定されており、目標達成のための課題が明確で、その解決方法が具体的に示されて いるか
    ④ 研究開発・技術開発の成果が、他の技術や産業へ波及的に影響を及ぼすものであるか
  • (人材育成計画書を提出した場合)
    ②グリーン成長戦略「実行計画」14 分野に掲げられた課題の解決に資する事業再構築を行 うために必要性の高い人材育成を行う計画となっているか
    ③目標となる育成像や到達レベルの評価方法などを含め、具体的かつ実現可能性の高い計 画が策定されており、また、人材育成管理者により、その進捗を適切に把握できるものと なっているか
    ④人材育成を通じて、被育成者が高度なスキルを身につけることができるものとなってい るか。また、身に着けたスキルを活用して、企業の成長に貢献できるか

また、「大規模賃金引上枠」・「グリーン成長枠」のみが対象となる加点項目として「パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点」があり、以下の事業者に加点されます。

さらに、 過去の公募回で採択・交付決定を受けている事業者の申請も可能ですが、「減点項目」となり、一定の減点が課されます。

【事業再構築補助金】「グリーン成長枠」の想定事例を紹介

次に、中小企業庁が公表した想定事例集のなかから、事業再構築補助金の「グリーン成長枠」の想定事例をご紹介します。

〈想定事例①〉洋上風力(製造業)

国内の風車サプライチェーンは形成途上。
技術力を有する国内部品メーカーの潜在力を活かしてグローバルな風車メーカーと協働することが求められます。

そこでグリーン成長戦略にて「魅力的な国内市場を創出することにより国内外の投資を呼び込み、競争力があり強靱なサプライチェーンを構築する」と規定。

アジア展開も見据えた次世代技術開発、国際連携に取り組み、国際競争に勝ち抜く次世代産業を創造していく分野です。

想定事例:家電製造事業者

技術力を有する国内部品メーカーの潜在力や、国内のものづくり基盤を十分に活用できていない点が課題です。

さらに電力安定供給や経済波及効果といった観点からは、「競争力があり強靱なサプライチェーンを形成すること」が重要。

そこで、これまで培ってきた難切削加工技術のノウハウを活かした洋上風力設備部品の新規事業へ挑戦します。

発電効率を上げるためには、軽量な部品を製造する必要。
素材開発をテーマとして、地元の国立大学と2年以上の共同研究を行うという方法もあります。

出典:中小企業庁

〈想定事例②〉水素(製造業)

水素は、発電・産業・運輸など幅広く活用される、カーボンニュートラルのキーテクノロジー。
導入拡大を通じて、化石燃料に十分な競争力を有する水準となることを目指す分野です。

想定事例:航空機部品の製造事業者

モビリティでの水素利用は、燃料電池自動車の普及と水素ステーション整備の支援として行われています。

欧州や中国などでも、商用車のFC化(燃料電池化)が進行。
日本企業も企業間連合を組み、乗用車での知見も生かしながら、開発を加速していく必要があります。

そこで、航空機部品の製造事業者が、近年の環境意識の高まりの機会を捉え、これまで培ったノウハウを活かした、水 素ステーション用部品の製造を行い事業再構築を図ります。

水素ステーション用の部品は、加工精度要求が極めて高度。
自社の強みである加工技術をさらに昇華させるために、大手自動車メーカーや燃料輸送事業者との共同研究を行って、技術レベ ルの向上も図ります。

出典:中小企業庁

〈想定事例③〉自動車(製造業、整備・販売業)

自動車産業における電動化を推進し、2050年の自動車のライフサイクル全体でのカーボンニュートラル化を目指しています。

グリーン成長戦略では、「乗用車は、2035年までに新車販売で電動車100%を実現」との電動化目標を設定した分野です。

想定事例:ガソリン車向け部品加工、整備事業者

軽自動車・商用車といったユーザーのコスト意識、車体設計上の制約が厳しい自動車の電動化、中小企業等のサプライヤーの競争力強化などが重要な課題です。

そこで製造業では、脱炭素社会の推進に伴う電動化を踏まえ、電動車向け部品の開発・試作に踏み切ります。
整備・販売業では、EVや燃料電池車への整備へ事業展開することで、事業再構築を実施。

さらに、新事業を成功させるためには、電動車において求められる部品や性能を理解することが不可欠なため、外部の専門家による研修によって人材育成を行います。

出典:中小企業庁

〈想定事例④〉カーボンリサイクル(製造業)

カーボンリサイクルとは「二酸化炭素を資源として有効活用する技術」で、カーボンニュートラル社会の実現に欠かせません。

日本に競争力があり、コスト低減、 社会実装を進め、グローバル展開を目指す分野です。

想定事例:セメントの製造事業者

現状としては、セメントキルン1基から1日当たり数千トン規模の二酸化炭素が排出されています。
セメントの原料として災害廃棄物も利用するため、二酸化炭素の効率的な回収と多様な原料の再生利用に適応した革新的技術の開発が課題。

そこで高炉スラグなど、石灰石の配分が低減される「廃棄物を多量に配合可能なセメント原料」の製造を目指し、必要な製造設備の導入・改修などによる事業再構築を図ります。

新規設備で製造する製品は、品質規格への適合や、新たな設備や技術への理解と徹底的な安全性の確保が重要。
当該技術者向けの品質管理方法の人材育成も行います。

出典:中小企業庁

 

事業再構築補助金とは?制度概要を紹介

記事の最後に、事業再構築補助金の制度概要をご紹介します。

なお、制度全般についてくわしくは、記事「 【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説 」でご紹介しています。

事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金とは、新型コロナ感染症の影響による事業環境の変化に対応して「事業の再構築」に挑戦する事業者を支援する、補助金制度です。

2021(令和3)年度に制度が開始され、第5回まで公募が実施されました。
2022(令和3)年度は、全3回の公募が予定されています。

事業再構築補助金 公式サイト

事業再構築補助金の必須申請要件

事業再構築補助金に申請する事業者が満たすべき要件(必須申請要件)は、以下の3つです。

  1. 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、 コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して 10%以上減少している
  2. 事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築 に取り組む
  3. 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、 従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成

事業再構築補助金の補助金額・補助率・対象経費

事業再構築補助金の類型と補助金額・補助率・対象経費は以下のとおりです。

  補助金額 補助率 対象経費
通常枠 従業員数20人以下:100万円~2,000万円
従業員数21~50人:100万円~4,000万円
従業員数51人~100人:100万円~6,000万円
従業員数101人以上:100万円~8,000万円
中小企業 2 / 3
(6,000万円超は1 / 2)
中堅企業 1 / 2
(4,000万円超は1 / 3)
建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費
大規模賃金引上枠 従業員数101人以上:8,000万円~1億円 中小企業 2 / 3
(6,000万円超は1 / 2)
中堅企業 1 / 2
(4,000万円超は1 / 3)
建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費
回復・再生応援枠 従業員数5人以下 :100万円~500万円
従業員数6~20人 :100万円~1,000万円
従業員数21人以上 :100万円~1,500万円
中小企業 3 / 4
中堅企業 2 / 3
建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費
最低賃金枠 従業員数5人以下 :100万円~500万円
従業員数6~20人 :100万円~1,000万円
従業員数21人以上 :100万円~1,500万円
中小企業 3 / 4
中堅企業 2 / 3
建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費
グリーン成長枠 中小企業:100万円~1億円
中堅企業:100万円~1.5億円
中小企業 1 / 2
中堅企業 1 / 3
建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費

事業再構築補助金の採択率

事業再構築補助金の採択率は、下表のとおりで42.4%です。

  1.応募件数 2.申請件数 3.採択件数 4.採択率
第1回公募 22,231件 19,239件 8,016件 36.1%
第2回公募 20,800件 18,333件 9,336件 44.9%
第3回公募 20,307件 18,519件 9,021件 44.4%
第4回公募 19,673件 (公表されず) 8,810件 44.8%
合計 83,011件 35,183件 42.4%

なお、上記「2.申請件数」とは、「1.応募件数」のうち書類不備等がなく、申請要件を満たした件数のこと。
審査結果についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。

 

 

まとめ:制度内容を把握して、事業再構築補助金「グリーン成長枠」への申請を

この記事では、事業再構築補助金のグリーン成長枠の基本情報から制度概要、想定事例までわかりやすく解説しました。

ぜひ記事を参考に、制度内容をしっかり把握して、事業再構築補助金の「グリーン成長枠」への申請を行ってください。

なお、経営者コネクトでは、事業再構築補助金の応募を考える企業様向けに「無料相談サービス」を行っています。
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また事業再構築補助金以外にも、中小企業が活用できる補助金はいくつもあります。
以下の記事でお勧めの13種類を纏めていますので、合わせてお読みください。

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