東京都の創業助成事業(創業助成金)を解説!採択率や採択事例も紹介します

令和4(2022)年度の 第1回募集要項が公表された、東京都の「創業助成事業(創業助成金)」
創業初期に必要な経費の一部が助成される有意義な制度ですが、要項が多くあるなど、わかりづらい制度内容となっています。

そこでこの記事では、募集要項などをもとに、東京都の創業助成事業(創業助成金)の制度概要を解説し、採択率や採択事例までご紹介します。

「東京都での起業を検討している」という方は、ぜひご覧ください。

なお、「創業融資」についてくわしく知りたいときは、こちらの記事もぜひご覧ください。

創業融資で人気の「政策金融公庫」と「制度融資」のメリット・デメリットを纏め!融資以外の資金調達方法も紹介

 

東京都の創業助成事業(創業助成金)とは?【基本情報】

まずは、東京都の創業助成事業(創業助成金)の基本情報をご紹介します。

東京都の創業助成事業(創業助成金)とは?

東京都の「創業助成事業」とは、創業のモデルケースとして創業の機運醸成につながる東京都内での創業予定者などに対して、賃借料・広告費・従業員人件費といった「創業初期に必要な経費」の一部を支援する助成金制度です。

2020年度は約6.0%である東京都内の開業率を、2030年度に12%まで向上させる政策目標の達成に向け、また新たな雇用を生み出すなど、東京の産業活力の向上が目的。

平成27(2015)年度に開始され、春と秋の年2回、募集が行われます。
正式な名称は「創業助成事業」ですが、通称として「創業助成金」と呼ばれることも。

制度の運営者は東京都中小企業振興公社で、助成金の公式サイトはこちらです。
TOKYO創業ステーション:「令和4年度第1回 創業助成事業」申請

申請要件として、指定された創業支援事業の利用などが必要。
要件を満たすには2ヶ月以上かかるものがほとんどのため、申請に向けて計画的に事業を利用することが重要です。

創業助成事業(創業助成金)の採択率

創業助成事業(創業助成金)の採択率は下表のとおりで、平成29~令和3年度までの採択率は16.4%です。

年度 申請者数 採択者数 採択率
平成29年度 863 115 13.3%
平成30年度 600 151 25.2%
令和元年度 808 152 18.8%
令和2年度 1,037 156 15.0%
令和3年度 1,140 157 13.8%
合 計 4,448 731 16.4%

ちなみに、中小企業で人気の高い補助金制度の採択率は、次のようになっています。

ものづくり補助金43.7%(くわしくは記事「【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】」)
事業再構築補助金41.6%(くわしくは記事「【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説」)

東京都の創業助成事業(創業助成金)制度概要

次に、東京都の創業助成事業(創業助成金)の制度概要をご紹介します。

〈概要①〉助成対象となる事業者

東京都の創業助成事業(創業助成金)の助成対象となる事業者は、都内で創業を予定している者、または創業後5年未満の中小企業者などのうち、次項の「申請要件」を満たす者です。

〈概要②〉申請要件

創業助成事業(創業助成金)に申請するためには、下記4つの要件をすべて満たす必要があります。

【申請要件1】「創業者等」のいずれかに該当する

申請時点で、下記①~③の「創業者等」のいずれかに該当する必要があります。

  1. 都内での創業を具体的に計画している個人
  2. 中小企業者に該当する法人・個人のうち、下記のいずれかを満たす者
     ○法人登録を行ってから5年未満の法人の代表者
     ○税務署へ開業の届け出を行ってから5年未満の個人事業主
  3. 特定非営利活動法人のうち、下記2点を満たす者
     ○法人登記を行ってから5年未満の特定非営利活動法人の代表者
     ○下記のいずれか1点を満たす者
      ・中小企業者の振興に資する事業を行うものであって、中小企業者と連携して事業を行うもの
      ・中小企業者の支援を行うために中小企業者が主体となって設立するもの

「申請要件1」に該当するかどうかは、次のチャートでご確認ください。

 

【申請要件2】創業支援事業を利用している

以下の①~⑲の創業支援事業を利用し、いずれか一つを満たし、申請要件確認資料を提出することが必要です。

① 事業計画作成 公益財団法人東京都中小企業振興公社が実施する、TOKYO創業ステーション「プランコンサルティング」による事業計画書策定支援を終了し、過去3か年の期間内にその証明を受けた
TOKYO創業ステーション
TOKYO創業ステーションTAMA
② 事業計画作成 公社が実施する、「多摩ものづくり創業プログラム」を受講後、「プランコンサルティング」による事業計画書策定支援を終了し、過去3か年の期間内にその証明を受けた(現在は募集を行っていません)
③ 事業評価 公社が実施する「事業可能性評価事業」で、当年度、またはその前年度以前の過去3か年度の期間内に「事業の可能性あり」と評価され、継続的支援を受けている
公社 経営戦略課
④ 事業計画作成 公社が実施する「進め! 若手商人育成事業」で、「商店街開業プログラム(商店街起業促進サポート)」を当年度、または前年度以前の過去3か年度の期間内に受講修了した
公社 経営戦略課
⑤ 施設入居 東京都・公社が設置した創業支援施設に入居している、または以前に入居していた。該当施設は下記のとおり
◇ 東京都が設置した施設
東京コンテンツインキュベーションセンター
青山スタートアップアクセラレーションセンター
・東京ライフサイエンスインキュベーションセンター ※
◇ 公社が設置した施設
インキュベーションオフィスTAMA、白鬚西R&Dセンター
・ソーシャルインキュベーションオフィスSUMIDA ※
・ベンチャーKANDA、タイム24 ※
※:現在は募集していません
⑥ 施設入居 東京都インキュベーション施設運営計画認定事業の認定を受けた認定インキュベーション施設に、認定後6か月以上継続して入居し、申請する事業内容に関する個別具体的支援を、インキュベーションマネージャーから入居期間中に継続して受けている、または以前に受けていた
東京都インキュベーション施設運営計画認定事業において認定を受けた施設
⑦ 施設入居 独立行政法人中小企業基盤整備機構、都内区市町村、地方銀行、信用金庫、信用組合、国公立大学、私立大学が設置した都内所在の創業支援施設と、1年間以上の賃貸借契約を締結して入居している、または過去3か年の期間内に入居していた
⑧ その他 青山スタートアップアクセラレーションセンターにおいてアクセラレーションプログラムを受講している、または以前に受講していた
青山スタートアップアクセラレーションセンター
⑨ その他 創薬・医療系ベンチャー育成支援プログラムの選抜プログラムを受講修了した
東京都:創薬・医療系ベンチャー育成支援プログラム
⑩ 事業評価 東京都が実施する「TOKYO STARTUP GATEWAY」において、前年度以前の過去3か年度の期間内にセミファイナリストまで進んだ
東京都:TOKYO STARTUP GATEWAY
⑪ その他 都が実施する「女性ベンチャー成長促進事業(APT Women)」において、国内プログラム(アクセラレーションプログラム)を受講している、または以前に受講していた
東京都:アクセラレーションプログラム
⑫ 資金調達 東京都が実施する「女性・若者・シニア創業サポート事業」において、取扱金融機関から当該事業に係る融資を受け、その証明を受けた
取扱金融機関
⑬ 資金調達 東京都中小企業制度融資(創業融資)を利用している
保証制度一覧
⑭ 資金調達 都内区市町村が実施する中小企業制度融資のうち、創業者を対象とした東京信用保証協会の保証付き制度融資を利用している
保証制度一覧
⑮ 資金調達 東京都が出資するベンチャー企業向けファンドからの出資等を受けている方
東京都:東京都ベンチャー企業成長支援ファンド
⑯ 資金調達 政策金融機関の資本性劣後ローン(創業)を利用している(割賦返済ではなく返済期限到来時の一括返済であることなどの特徴あり)
⑰ その他 産業競争力強化法に規定する認定特定創業支援事業により支援を受け、過去3か年の期間内に都内区市町村長の証明を受けた
東京都:都内区市町村 
⑱ その他 下記の機関より認定特定創業支援事業に準ずる支援を受け、過去3か年の期間内にその証明を受けた
東京商工会議所
東京信用保証協会
東京都商工会連合会
中小企業大学校東京校BusiNest
⑲その他 東京都が実施する「高校生起業家養成プログラム」において、過去3か年度の期間内に「養成講座」を修了した方
東京都:起業スタートダッシュ

【申請要件3】申請する事業について

申請書の申請時から助成対象期間終了までの期間に、申請を行う事業等が募集要項記載の申請要件3の①~⑫すべてに該当することが必要。

項目についてくわしくは、募集要項の14ページをご覧ください。

【申請要件4】その他「納税地が都内」など

申請書の申請時から助成対象期間終了までの期間に、募集要項記載の申請要件4の①~④すべてに該当することが必要。

項目についてくわしくは、募集要項の15~17ページをご覧ください。

〈概要③〉助成対象経費

創業助成事業(創業助成金)の助成対象となるのは、以下のすべてを満たす経費です。

  • 申請を行った事業を実施するために必要な経費
  • 賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費にあてはまる経費
  • 助成対象期間中に契約、履行(取得・実施など)、支払い(分割払いについては全ての支払い)が完了した経費
  • 助成対象物の使途・単価・規模などが確認できる経費
  • 申請事業の実施に関わるものとして、ほかの事業と明確に区分できる経費
  • 財産の取得に関する経費の場合、所有権が助成事業者のものとなる経費

〈概要④〉助成額と助成率

創業助成事業(創業助成金)の助成額は次のとおり。

  • 100万円~300万円

また助成率は、助成対象と認められる経費の2 / 3以内です。
助成対象経費に助成率を乗じて、助成金額を算出します。

たとえば、助成対象経費が450万円であった場合は、300万円が助成金として支給されます。

〈概要⑤〉審査方法と審査の視点

創業助成事業(創業助成金)では、提出した申請書に基づいて書類審査が行われます。

書類審査を通過した者のみ、次に面接審査を実施。
総合的な審査を行って、助成事業者が決定されます。

また、審査におけるおもな視点は以下のとおりです。

  1. 書類審査(形式審査)
     ○申請者と申請内容が、申請要件に適しているか
  2. 書類審査(内容審査)、面接審査
     ○製品・商品・サービス内容の完成度
     ○問題意識・潜在力の明確さ
     ○対象市場に対する理解度・適応性
     ○事業の実現性
     ○助成金の活用方法の有効性
     ○スケジュール・経営見通しの妥当性
     ○資金調達の妥当性
     ○申請経費の妥当性
  3. 総合審査
     ○書類審査と面接審査の結果から判断して、助成事業者として適しているか

〈概要⑥〉申請書(申請に必要な書類)

創業助成事業(創業助成金)の申請に必要な書類は、次のようになります。

  1. 創業助成事業申請前確認書:ZIPファイル
  2. 創業助成事業申請書 :ZIPファイル
  3. 直近2期分の確定申告書等
  4. 法人:登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
     個人事業主:個人事業の開業・廃業等届出書
  5. 申請要件確認書類

記入例は、募集要項の31~53ページをご覧ください。

〈概要⑦〉申請方法(WEB登録を忘れずに)

創業助成事業(創業助成金)の申請には、郵送による申請書の提出と、WEB登録の両方が必要です。
募集要項でも「WEB登録を忘れる方が見受けられます」と注意喚起していますので、忘れないようにしてください。

申請書の提出は、次のいずれかの方法で、次項でご紹介する期間内に郵送を行います。

  • 簡易書留
  • 一般書留
  • レターパックプラス(赤色)

封筒に赤字で「創業助成事業申請所在中」と記入し、こちらの宛先に郵送してください。

〒100-0005
東京都千代田区丸の内2-1-1 明治安田生命ビル低層棟2階
公益財団法人 東京都中小企業振興公社
事業戦略部 創業支援課 創業助成担当
TEL:03-5220-1142

またWEB登録は、申請受付期間中のみ登録可能となります。

「事前予約」は不要に

創業助成事業(創業助成金)の申請には、以前は「事前予約」が必要でした。
まずは「事前予約期間」の期間内に「事前予約」を行い、指定された日時に代表者が振興公社に申請書類を持参するというもの。

ですが現在では「事前予約」は不要となっています。

〈概要⑧〉令和4年度第1回募集の流れとスケジュール

令和4年度第1回募集における、申請から助成金交付までの流れは以下のようになります。

また、スケジュールは下表のとおりです。

申請書の受付期間はこちら。

  • 【申請書】令和4(2022)年4月11日~4月20日
  • 【WEB登録】令和4(2022)年4月11日~4月20日

また、助成金の交付決定日(予定)は、令和4(2022)年9月1日とされています。

東京都の創業助成事業(創業助成金)採択事例

記事の最後に、東京都の創業助成事業(創業助成金)の採択事例をご紹介します。

なお公式サイトでは、ここで紹介する2社以外にも、創業助成金の活用事例が多く紹介されています。
TOKYO創業ステーション:わたしの創業ものがたり

〈採択事例①〉事業可能性評価事業に認定され事業に申請(KKテクノロジーズ)

2014年1月に創業し、ゼロ・エミッション型電球による「超長寿命電球事業」を進める東京都小金井市の「KK テクノロジーズ㈱」。
創業助成金申請に先立ち、公社の「事業可能性評価事業」に認定されました。

認定により、客観的な評価で対外的な信用度が向上。
事業内容のアドバイスや助成事業への推薦もあり、創業時の心強いサポートになっています。

助成金の用途は、事務所の新設にともなう「備品費」と「広告宣伝費」。

事務所の有無は企業の信用問題に関わり、LEDの特性を広く認知してもらうには、雑誌や新聞とのタイアップ記事が効果的です。
手持ちの資金は研究開発に費やされるため、公社の支援はありがたかったと言います。

〈採択事例②〉助成金で新技術開発にはずみ(アイ- コンポロジー)

2016年4月に創業した、東京都品川区の素材ベンチャー「アイ- コンポロジー㈱」。

2018年に新たに、プラスチック素材の代替などに使える、セルロースナノファイバーと樹脂を複合した素材を発表しました。
「新素材の開発に力を注げたのも、助成金などがあったからこそ」とのこと。

創業助成金のおもな使いみちは、「人件費」と展示会出展費用などの「広告費」です。
日本は環境への意識がまだ低いため、有益性や優越性について積極的にアピールし啓発していく必要があり、展示会にも創業以来多数出展して反響を得てきました。

まとめ:計画的に創業支援事業を利用し、東京都の創業助成事業への申請を

この記事では、募集要項などをもとに、東京都の創業助成事業(創業助成金)の制度概要を解説し、採択率や採択事例までご紹介しました。

申請要件の「指定された創業支援事業の利用」には、2ヶ月以上かかるものがほとんど。
ぜひ記事を参考に、計画的に創業支援事業を利用して、東京都の創業助成事業への申請を行ってください。

なお経営者コネクトでは、人気の高い補助金事業である「事業再構築補助金」・「ものづくり補助金」の申請サポートを行っています。
ご関心のある方は、ぜひ下記サイトもご覧ください。