【ものづくり補助金】「回復型賃上げ・雇用拡大枠」を解説!【10次公募からの新枠①】

補助金制度のなかでも人気の高い「ものづくり補助金」において、2022年2月16日に開始された10次締切分から「3つの新枠」が創設されました。

この記事では、新枠のひとつ「回復型賃上げ・雇用拡大枠」をくわしく解説していきます。

「ものづくり補助金への申請を検討している」という経営者の方は、ぜひご覧ください。

なお「ものづくり補助金の全般」は、こちらの記事でくわしくご紹介しています。

【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】

【ものづくり補助金】「回復型賃上げ・雇用拡大枠」とは?【基本情報】

まずは、ものづくり補助金の「回復型賃上げ・雇用拡大枠」についての基本情報をご紹介します。

「回復型賃上げ・雇用拡大枠」とは、業況が厳しいなか賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者を支援する類型

「回復型賃上げ・雇用拡大枠」とは、業況が厳しいなか賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者を支援する、ものづくり補助金の申請類型です。

応募前年度の課税所得がゼロで、常時使用する従業員がいる事業者が行う、革新的な製品・サービス開発、または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資などに、補助金が支給されます。

「新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けつつも、生産性向上に取り組む事業者向けの特別枠」として、「デジタル枠」・「グリーン枠」とともに10次公募から新設されました。

「通常枠では1/2の補助率が2/3まで引き上げ」、「不採択でも通常枠での再審査あり」などのメリットはあるものの、「目標未達の場合は補助金の全額返還」といったデメリットも。
制度概要をよく理解したうえで、申請をご検討ください。

 

不採択でも通常枠での再審査あり

「回復型賃上げ・雇用拡大枠」に申請して不採択となった場合でも、通常枠として再審査が行われます
1度の申請で2回の審査が行われるため、採択される可能性も向上。

ただし再審査で採択された場合は、補助率などの条件が「回復型賃上げ・雇用拡大枠」ではなく「通常枠」として適用されますので、ご注意ください。

目標未達の場合は補助金の全額返還が必要に

「回復型賃上げ・雇用拡大枠」では、補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点で、次のどちらか一つでも達成できていない場合、交付された補助金全額を返還しなくてはなりません。

  1. 給与支給総額の増加目標
  2. 事業場内最低賃金の増加目標

かなり厳しいルールですが、 公募要領 では「従業員に対する賃上げ等を前提とした優遇制度である」ためと説明されています(13ページより)。
中小企業庁の資料には、「賃上げ・雇用拡大の実効性を確保する」ためと記載。

ちなみに通常枠などでは「全額返還」ではなく、以下のとおり「一部返還」と規定されています。

  • 事業場内最低賃金の増加目標が達成できなかった場合、補助金額を事業計画年数で除した額を返還しなくてはならない

ものづくり補助金の10次公募からの変更点

「回復型賃上げ・雇用拡大枠」は、2022年2月16日に公募開始された10次公募から設けられた新枠です。

ものづくり補助金の10次公募では、新枠創設のほかに以下のような点も変更されました。

  • 新特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)が廃止に
  • 一般型で従業員規模に応じた補助上限額の設定
  • 補助対象事業者の見直し・拡充
  • 加点項目・減点項目が追加

なお、10次公募からの変更点については、記事「【ものづくり補助金】10次締切の変更点を解説!3つの新枠が創設されました」でくわしく紹介しています。

【ものづくり補助金】「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の制度概要

次に、ものづくり補助金の「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の制度概要をご紹介します。

〈概要①〉申請要件

ものづくり補助金の「回復型賃上げ・雇用拡大枠」 の申請要件は、後述する基本要件のほか、次の3点をすべて満たすことです。

  1. 前年度の事業年度の課税所得がゼロである
  2. 常時使用する従業員がいる
  3. 補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額、事業場内最低賃金の増加目標を達成する

〈概要②〉補助金額と補助率

「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の補助金額と補助率は以下のとおりで、補助金の上限は従業員数によって変わります。

従業員数 補助金額 補助率
5人以下 100万円~750万円 2 / 3
6人~20人 100万円~1,000万円 2 / 3
21人以上 100万円~1,250万円 2 / 3

〈概要③〉補助対象経費

「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の補助対象となる経費は、 事業の対象として明確に区分でき、経費の必要性・金額の妥当性を証拠書類で確認できる、以下の経費です。

  • 機械装置・システム構築費:専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費 など
  • 技術導入費:本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費
  • 専門家経費:本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
  • 運搬費:運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
  • クラウドサービス利用費:クラウドサービスの利用に関する経費
  • 原材料費:試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費
  • 外注費:新製品・サービスの開発に必要な加工や設計・検査等の一部を外注する場合の経費
  • 知的財産権等関連経費:新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費
  • 海外旅費(グローバル展開型のみ):海外事業の拡大・強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航及び宿泊等に要する経費

また、対象となる経費は、交付決定日以降に発注を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものに限られます。

〈概要④〉申請・提出書類

「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の申請・提出書類は次のとおりです。

  1. 事業計画書
  2. 賃金引上げ計画の誓約書【様式1】
  3. 決算書等
  4. 従業員数の確認資料
  5. 労働者名簿
  6. 課税所得の状況を示す確定申告書類
  7. その他加点に必要な資料(任意)

〈概要⑤〉減点項目

「回復型賃上げ・雇用拡大枠」では、「繰越欠損金によって課税所得が控除されることで 申請要件を満たしている場合」が減点項目として明記されています (公募要領27ページ) 。

なお「繰越欠損金」とは、「事業で欠損金が生じたときに、一定の条件において、以後の事業年度で生ずる所得から欠損金額を控除できる制度」です。
(参考)
中小企業庁:「欠損金の繰越制度」って、何ですか?

ものづくり補助金とは?制度概要を紹介

記事の最後に、ものづくり補助金の制度概要をご紹介します。

ものづくり補助金とは?

ものづくり補助金とは、中小企業などが取り組む「革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資」を支援する制度です。

次の補助金制度とともに、中小企業庁が行う「中小企業生産性革命推進事業」の一つに位置づけられています。

  • IT導入補助金:中小企業などが行うバックオフィス業務の効率化や、新たな顧客獲得といった付加価値向上に値するITツールの導入を支援する
  • 持続化補助金一般型低感染リスク型ビジネス枠):小規模事業者が、経営計画を作成して取り組む販路開拓などを支援する

ものづくり補助金の全般を知りたい方は、記事「 【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】 」もご覧ください。

ものづくり補助金の申請要件(基本要件)

ものづくり補助金の申請要件は、まずは以下の補助事業実施期間内に、発注・納入・検収・支払などすべての事業の手続きが完了する事業である点です。

  • 一般型(通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠):交付決定日から10ヶ月以内(ただし、採択発表日から12ヶ月後の日まで)
  • グローバル展開型:交付決定日から12ヶ月以内(ただし、採択発表日から14ヶ月後の日まで)

上記のほか「基本要件」として、以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定することが必要となります。

  1. 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加する
  2. 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
  3. 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加。

 

ものづくり補助金の申請類型と補助上限額・補助率

ものづくり補助金の申請類型と補助上限額・補助率は、以下のとおりです。

申請類型 補助上限額 補助率
一般型(通常枠) 750~1,250万円 ※ 1 / 2
(小規模企業者・小規模事業者、再生事業者:2 / 3)
一般型(回復型賃上げ・雇用拡大枠 ) 750~1,250万円 ※ 2 / 3
一般型(デジタル枠 ) 750~1,250万円 ※ 2 / 3
一般型(グリーン枠 ) 1,000~2,000万円 ※ 2 / 3
グローバル展開型 3,000万円 1 / 2
(小規模企業者・小規模事業者:2 / 3)

※:従業員規模により異なります

ものづくり補助金の採択者数と採択率

ものづくり補助金の採択者数と採択率は、下表のとおりです。

締切回 採択発表日 応募者数 採択者数 採択率
1次締切 令和2年4月28日 2,287者 1,429者 62.5%
2次締切 令和2年6月30日 5,721者 3,267者 57.1%
3次締切 令和2年9月25日 6,923者 2,637者 38.1%
4次締切
〔一般型〕
令和3年2月18日 10,041者 3,132者 31.2%
4次締切
〔グローバル展開型〕
令和3年2月18日 271者 46者 17.0%
5次締切
〔一般型〕
令和3年3月31日 5,139者 2,291者 44.6%
5次締切
〔グローバル展開型〕
令和3年3月31日 160者 46者 28.3%
6次締切
〔一般型〕
令和3年6月29日 4,875者 2,326者 47.7%
6次締切
〔グローバル展開型〕
令和3年6月29日 105者 36者 34.3%
7次締切
〔一般型〕
令和3年9月27日 5,414者 2,729者 50.4%
7次締切
〔グローバル展開型〕
令和3年9月27日 93者 39者 41.9%
8次締切
〔一般型〕
令和4年1月12日 4,584者 2,753者 60.1%
8次締切
〔グローバル展開型〕
令和4年1月12日 69者 27者 39.1%
合計 45,682者 20,719者 45.4%

1~5次締切までのものづくり補助金の採択結果については、記事「【2020年度1-5次採択情報追加】「ものづくり補助金」採択実績から採択されるポイントを読み解く!」でくわしく分析しています。

10次締め切りのスケジュールと申請方法

ものづくり補助金10次締め切りのスケジュールは次のとおりです。

  • 公募開始:令和4年(2022年)2月16日(水)17時~
  • 申請受付:令和4年(2022年)3月15日(火)17時~
  • 応募締切:令和4年(2022年)5月11日(水) 17時
  • 採択発表:令和4年(2022年)7月中旬の予定
出典:ものづくり補助金 公式サイト

補助事業の類型「一般型」と「グローバル展開型」では、スケジュールは同じです。

10次締め切り後も申請受付は継続され、令和4年度(2022年度)内に複数回の締切を設け、それまでに申請のあった分の審査と採択発表が随時行われます。

また10次締め切りの申請方法は、「電子申請システムでのみ受け付け」となっています。
申請書類を準備し、こちらの電子申請システムから申請を行ってください。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金:電子申請システム

締切日の前日~当日は申請が集中し、申請手続きが滞る可能性があります。
十分余裕を持って申請を行いましょう。

なお、電子申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要ですので、早めに利用登録を行ってください。
「GビズIDプライムアカウント」の登録申請方法は、記事「 GビズIDの「gBizIDプライム」とは?必須の補助金や登録申請方法を紹介 」でご紹介しています。

 

まとめ:特徴をよく理解して「回復型賃上げ・雇用拡大枠」申請の検討を

この記事では、ものづくり補助金の新枠のひとつ「回復型賃上げ・雇用拡大枠」をくわしく解説してきました。

「目標未達の場合は補助金の全額返還」といったデメリットもあります。
ぜひ記事を参考に、特徴をよく理解したうえで「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の申請をご検討ください。

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