経理業務改善コンサルタント・池田よう子さん「経理の手間を大幅に減らしながら経営改善を可能にする伴走支援を」

経理業務改善コンサルタント
池田よう子さん インタビュー

 

業界最大手IT企業での子会社のバックオフィス改革や、USCPAの試験合格の経験を活かし、2022年12月に中小企業の経理業務改善・クラウド会計サービス導入支援を行う「株式会社ボヤージュ・コンサルティング」を設立された池田よう子さん。SEとしてITシステムの提案導入、経理システム更改PJ、バックオフィス業務効率化・品質向上のための活動など豊富なご経験を持つ池田さんが、中小企業の経理DX支援にかける思いや、経理を経営に活かすポイントについてお伺いしました。

 

 

池田よう子さん 経歴

業界最大手IT企業で約20年にわたり勤務し、管理職としての経験も積む。SEとして顧客へのITシステムの提案・導入や、財務部において経理の現場や経理システム更改PJを経験。
また、数百社の国内外子会社の管理業務にあたり、バックオフィス業務効率化・品質向上のための活動を実施してきた。
相手の悩みに寄り添うコミュニケーション力を強みとし、現在は中小企業の経理DX支援にも力を注いでいる。

経理の手作業は、「ちょっとした工夫」でゼロに近づけられることも

まずは池田さんが提供されている企業向けのサービスについて簡単に教えていただけますか?

株式会社ボヤージュ・コンサルティングでは、クラウド会計ソフトを利用して、経理の効率化、作業の自動化にフォーカスしたコンサルティングを中小企業向けに提供しています。 特にスモールビジネスは、経営者の方ご自身が経理をされている場合が多いと思うのですが、簿記の知識や経理の経験がある方は逆に少ないのではないでしょうか。ちょっとした設定とツールの導入で、経理作業はすごくラクになるんです。そのことをご提案し、一緒に一つずつやっていく、という伴走サービスを提供しています。  

 

「経理がラクになる」とは具体的には、どのように便利になるのですか?

今ある作業をITツールに代わりにやってもらって自分の手作業はなしにする、というのを目標にしています。

例えば、今現金払いしているものをコーポレートカード一本に集約すると、カード引き落とし記録を自動で経理入力する設定ができるので、今ある細かい手作業をなくしていくことができます。ツールが自動で代わりに経理作業をやってくれる状態にできれば、日々の作業時間はゼロに近づけることができます。

そうしたツール自体は、ネットで誰でも安価に申し込むことができます。ですが、専門知識が無い中で自己流で入れてしまうと、使いこなすのが難しかったり、設定がぐちゃぐちゃになりやすいもの。当社のサービスでは、事業規模によりますが2ヶ月から4ヶ月の期間伴走させていただき、画面共有しながら一緒に導入や設定を進めていき、業務フローを効率的に整えていきます。

 

経理の仕事がとにかく好き。会社全体の流れを見る仕事がしたい

どうして経理自動化支援のサービスを始められたのですか?

は10年以上、大手IT企業で財務関係の仕事をしてきました。その前はSEや営業をしていたこともあります。色々な仕事をしている中で、「経理の現場の仕事」が一番好きなんです。管理職や企画といった「花形の仕事」の経験もあるけれど、私は経理の現場の仕事が面白く感じました。経理作業というより、数字が好きで、数字を通してビジネスのお話ができるのが好きなんですよね。

経理の仕事に就く前、SEや法人営業の仕事をしていた時、何か自分の専門分野を持ちたい、財務系に興味があるのでそちらに異動するために、資格があると良いかと思ってUSCPAの試験を受けました。資格の勉強も大変というより、面白かったですね。

その後、子会社管理も長く担当しました。私が携わっていたのは主にバックオフィスの業務改善のアドバイスで、例えば社内ベンチャーを立ち上げた際は、規程類一式どういうの用意したら良いかというところから、経理のシステムは何を入れるかとか、そういうことの相談に乗って一緒に組み立てていく。そのプロセスはすごくやりがいを感じました。そういう、子会社の経理財務を含めたバックオフィス改善推進を10年ほど行っていました。

 

大企業で活躍されてきたプロフェッショナルとして、なぜ起業して中小企業向けにサービスを提供しようと考えられたのですか?

大企業で仕事をするとどうしても、様々な分野があるうちの本当に細かい部分を担いますよね。「財務」と言っても幅広く、その中の税務の、その中の海外の、その中のある部門を担当するという具合です。すごく狭い分野のプロフェッショナルになっていく。

一方で、中小企業を対象にすることで、一人で経理だけでなく総務も全部見ることができます。そういう全体感、バックオフィス全体を見てできる仕事はとても魅力的で、面白いんですよね。

それに、自分でビジネスをしている友人から経理や税金の相談を受けることが多くなったこともきっかけとしてあります。

皆さん、そのビジネスに関してはプロで、すごく詳しいのですが、経理となると本当に初歩の初歩のことで躓いていらして…。経費にできることを経費にしていなかったり、ITツールでボタンひとつでできることを、領収書を見ながら一件一件電卓を叩いて入力していたり…。とてももったいないケースを目にすることが多かったんです。

私自身は、IT業界に長くいて、財務経験が長く、周りもそういう人が多い状況でしたので、それが特別と思ったことがなかったんですよね。でも、自分にとっては当たり前の知識や経験をシェアすることで、自己流で経理をやっている周りの経営者さんたちを劇的にラクにできることに喜びを感じました。  

 

細かな専門性の追求より、初歩的なことから親切に伴走することが求められている

実際にサービスを提供してみてお客様の反応はいかがですか?

それまで、専門家としてもっと詳しくならなければ、細かな知識も身につけなければ…と思っていたけれど、現場でビジネスをしている方が現実に必要としているのは、もっと初歩のところをわかりやすく教えてもらうことだったり、一緒にやってくれる人なんだとわかりました。これは自分の想像していたのと違って、意外でしたね。

財務や経理の人は、私も含めて細かいことにこだわりがちですが(笑)、求められているのは違うところなのだと思いました。  

 

確かに、経理に苦手意識を持っている方も多いと思います。「初歩をわかりやすく」するために心がけていること、工夫されていることはありますか?

そうですね。最初にもお話した通り、簿記の知識や経理の経験がない方がほとんどで、むしろ経理や会計にアレルギーがある方も多いです。

最初にお客様のお話を伺うと、場合によっては混乱されていたりするんですよね(笑)。例えば、銀行口座がいくつもあり、使い分けがご自身の頭でもよく把握できていない、とか。頭もできるだけ経理のことを考えたくない、なるべく話したくない、という抵抗感をお持ちの方は多いです。

ただ皆さん、「今こういう仕事をしていて、ビジネスを今後こうしていきたい」とか、「こういうお客さんがいて」というお話はすごく楽しそうにされるんですよね。

経理は、そのビジネスのお金の流れを数字化したものです。

なので、「御社はどういうビジネスされているんですか?」「お客さんにどういう人がいるんですか?」といった、経営者さんにとっては楽しいお話から入って、日常の経営や業務の流れを伺いながら、じゃあ「ちなみにその売上は銀行振込ですか?」とか。出費の話が出たら、「それって支払いどういうふうにされていますか?」とか。そうしてお金の流れをセットで伺っていくようにしています。

そんなふうに、最初はしっかりと時間をかけてお話しながら解きほぐしていって、こうすればラクにできそう、という落とし所を見つけていくんです。最初は混乱されていても、お話しているうちにお客様自身の頭が整理されていって、以前は考えたこともなかった経理の視点で考え始める、という方も多いです。

 

  経理の知識や会計の用語を教える、ということもされるんですか?

いえ、必ずしも知識をつけていただく必要はありません。例えば「喫茶店で仕事中に飲むコーヒー代」という出費があったら、勘定科目名になおすと会議費か交際費か、と、システムに自動ルールとして設定します。

その設定は私が伴走しますので、お客様自身が、借り方・貸し方がわからなくても大丈夫ですし、簿記の知識がなくても、会計を自動化し経営に役立てられるようサポートしています。

また、会計の知識とは別に、IT系も得意不得意が分かれるところですね。ただ最近はスマホでできることが多いなど、皆さんが想定されるよりずっと手軽です。企業の経理をスマホでやるなんて、一昔前は絶対に考えられなかったことだと思います。 企業の規模が大きくなるとセキュリティの問題も出てきますが、その辺をフレキシブルにできるのがスモールビジネスのメリットでもありますよね。

実際、ほとんどの処理を自動化して、それ以外の最後に残ったちょっとした手作業もスマホでできるようにする、ということが可能なケースもあります。そういう時代になっているんですよね。  

 

ブラックボックス化した経理を見える化し、経営改善にも貢献

サービス導入のメリットは省力化の他にどのようなことがあるのでしょうか?

節税や経営改善にもつながるというところで喜んでいただいています。

節税という意味では、「仕事をしながら飲むコーヒー代」や「ちょっとした交通費」。経費にできる費用でも、ルールを作っておかなければ、少額ですし、レシートを取っておかなかったり、現金とカードで支払いが分散していたりして…。いざ申告期前に経費にしようと思っても、情報収集できない状態になってしまっている。

経費精算の仕組みが体系化されている大企業の経理だとそんなことは起こらないのですが、小規模なビジネスだとそういうことが起こりがちですよね。

でも1つ1つ、これは経費にしましょう、決済手段はこれにしましょう、それを自動で会計ソフトに持ってこれるようにしましょう…と整理して、例えばコーヒーを買う時はこのカードと決めておき自動で入力されていくようにすると、そうした費用もとりこぼしなく経費にすることができます。1回1回は少額でも、年間を通して見ると「塵も積もれば…」なんですよね。

もう一つ喜ばれるのが、経営改善につながるということです

スモールビジネスの経営者はご自身で営業もしてサービス提供もして…と、経理のことばかりを考える時間はありませんよね。 そのためか税理士さんに丸投げ状態でご自身の経営の中身を把握していない方も多いです。 決算が終わって税理士さんから報告を受けて、初めて利益がどのくらい減っていて…と知るのでは、ご自身の経営状況がブラックボックスになっています。 でも、弊社の伴走サービスを導入いただくと、スマホでいつでも、その時点でのざっくりとした収支状況がリアルタイムでわかるようになります。

そうすると、例えば、売上目標に対して何か施策を打つとか、税金がこれくらいかかるとわかれば今年のうちに投資しようとか、タイムリーに計画を立てることができますよね。

もちろん、それまで税理士さんに全部お任せしていた場合、全部戻して全部自分でやる…とすると、適正な税務申告をするためにはすごく大変になってしまいます。そこまでする必要はなくて、税理士さんには最後の確定申告や決算などはお任せしつつ、自分で無理なくできる範囲は自分で行える仕組みを作る。そうすれば、手間を増やさず、むしろ減らして、経営状況も見られるようになり、ご自身の方針に沿って節税や経営改善を考えていけます。両方の「良いとこ取り」ができるんです。

 

経営改善につながるのは大事なポイントですね。こうしたサポートはどのようなタイミングで導入するのが良いのでしょうか?

とにかく早ければ早い方が良いです。

これからビジネスを始められるというタイミングの方は、その予定されているビジネスの内容に沿って、一番最初に「売上はこの口座に、支払いはこのカードで、それを会計ソフトに設定して」としておくと、その後はその場で何も考える必要がなく、確定申告まで行けるのですごくラクです。

企業の場合も同じですが、今ですと「IT導入補助金」を使って安く導入できるんですね。最大4分の3の補助なので、実質4分の1のコストで導入できるんです。効率的に、費用面もおさえて導入できるので、設立2年目以降の企業の方にはご検討いただきたいと思っています。

(※IT導入補助金の活用については、こちらのサービス紹介ページでもご確認いただけます:https://lp.voyage-consulting.biz/lp202303  

 

池田さん自身は今後どのような方をサポートしていきたいとお考えですか?

私自身にとっては、いろいろなビジネスの流れを見られること、経営者さんから事業のお話を伺えることが本当に楽しいので、様々な業界のご支援を経験したいです。 また経理の専担スタッフがいない規模の会社で効率的に経理を回せる仕組みづくりのサポートは特に得意です。ちょっとした工夫で大きく変わるし、楽になったことが実感できるので、非常に喜んでもらえます。

事業を自分で興して、意欲的に活動されている方と一緒にお仕事をして、私自身も刺激をいただけるのが、とても嬉しいです。