バンクミーティングとは、ある企業に融資をする銀行が一同に集まって、話し合いをすることです。
借り入れをする企業は、取引銀行それぞれと、個別に話し合いをするのが一般的です。
しかし、例えば以下のようなシーンでは、バンクミーティングが開催されることも多いです。
- 業績が悪化した企業に対して融資をしている銀行が集まり、情報開示をして今後の再生計画や融資の条件変更(リスケジュール)などについて合意を得る
- 大きな融資を行う際に、他の銀行と一緒に融資を形成するような場合(シンジケートローンなど)
また最近では、ここまで、上記ほど大事でなくとも、企業側と取引銀行の双方にメリットのある状況であれば、以前よりも積極的に開催されることも増えてきました。
この記事では、以下のような疑問に答えていきます。
- バンクミーティングを利用するとどんなメリットやデメリットがあるのか
- バンクミーティングの開催方法や必要資料についても紹介します。
バンクミーティングを実施するメリット・デメリット
バンクミーティングを行う主なメリット・デメリットは以下です。
バンクミーティングを実施するメリット
取引銀行を一挙に揃えて話し合いができるバンクミーティングには、次のようなメリットがあります。
- 銀行同士での情報共有・議論を行うことが可能
- 企業がそれぞれの銀行を回って交渉する時間を短縮することが可能
この2つについて、具体的に説明していきます。
バンクミーティングは、「複数の銀行から借り入れがある場合」や「取引銀行ごとに方針が大きく異なる場合」に、銀行間で他行の方針・考えを理解した上で銀行取引の方針を決めるために行います。
企業の経営状況が悪くなり資金繰りが悪化すると、資金繰りに余裕を持たせるため、銀行にリスケジュールを依頼することがあります。
リスケジュールとは、返済を一時的に止めたり、毎月の返済金額を減らしたりなどすることです。
(リスケジュールについて詳しく知りたい方は以下の記事もお読みください)
銀行へ「リスケジュール」を申請する方法は?メリット・デメリットと交渉に成功するコツを紹介!
銀行としては予定通りに融資を回収できなくなるので喜ばしいことではありません。
しかし、企業が倒産して融資額が返済できなくなってしまうより、再建して融資した額をきちんと返済してもらう方が良いとの判断で、銀行側もリスケジュールを選ぶこともあります。
もちろん、すべての企業がリスケジュールを利用できるわけではなく、再建できる力があると判断された企業ではなければ認められません。
複数の銀行から融資を受けている場合に、リスケジュールの判断が必要になると、一般的にはすべての銀行が足並みを揃えようとします。
たとえば、4行から融資を受けている場合、「融資金額が少ないA行には全額返済して、B行は返済額を減らして、CとDには返済の猶予をもらう」という形だと不公平だからです。
どの銀行も貸し倒れは避けたいと思っているので各銀行に対して同様の対応を求めるのは当然のことです。
また多くの取引銀行と交渉のアポを取り、何回も同じ説明をするのは、企業にとっても非効率的です。
各銀行ごとの交渉が長引けば、その期間も融資の返済は進み、資金繰りはますます厳しくなります。
話し合いで早くリスケジュールの方針が決まれば、企業としても経営再建に向けて早く動き出すことができるでしょう。
バンクミーティングを実施するデメリット
メリットの一方で、バンクミーティングには以下のようなデメリットもあります。
- 企業の経営改善案やメインバンクの対応が甘いと、話し合いがまとまらず、集まりに要した企業・各銀行の時間が無駄になることも。
- 債権回収の必要性を強調する銀行がいると、企業の再建より債権回収の方向で、銀行側が団結してしまう恐れがある。
デメリットについても、より具体的に説明していきます。
バンクミーティングを開催しても、各銀行の要求が異なり、内容がまとまらないケースもあります。
一般的にはメインバンクの方針に従うことが多いですが、経営改善計画の内容が甘いと判断されたり、メインバンクの担当者が頼りない対応をした場合などは、他の銀行がリスケジュールの内容に難色を示すこともあるでしょう。
このようにまとまらない場合、複数の銀行の担当者が予定を合わせたバンクミーティングが無駄になってしまいます。
こうならないよう、経営改善計画はすべての銀行に納得してもらえるような内容を準備し、メインバンクとは綿密に打ち合わせをしておくことも重要です。
また、バンクミーティングを開催すると、それまでは接点がなかった各銀行が情報共有することになります。
融資の条件変更を話し合うためのバンクミーティングであっても、債権を取り立てようとする銀行が混ざっていると、他の銀行も姿勢を変える危険性があります。
再建が難しいと判断されれば、「どうすればすべての銀行がなるべくたくさん債権を回収できるか」という視点で銀行同士が団結することもあるかもしれません。
そうなると企業としては、リスケジュールや再建どころではなくなってしまいます。
このように、バンクミーティングが一概に良いとは言い切れないので、メリット・デメリットを見極め、メリットを最大化できるよう準備を十分に行うことが大切になります。
バンクミーティングを実施するメリット・デメリット
ここからは、バンクミーティングをどのようなステップを踏んで開催すれば良いのかを紹介していきます。
メインバンクへ相談
バンクミーティングを開催する場合、まず融資額が一番大きいメインバンクへ相談します。
メインバンクにお伺いを立てる前に開催を決定してしまうと、メインバンクが「うちに相談もせずに…」とネガティブな感情を持つかもしれません。
メインバンクが支援に消極的な姿勢となれば、他の銀行も追随する可能性が高いです。
そのため、必ずメインバンクに確認してからバンクミーティングの開催を決めて、他の取引行に対して参加の依頼をするという順序を守るようにしてください。
また、バンクミーティングの進行は通常メインバンクが行います。
進行の依頼や進行手順の確認などもきちんと行いましょう。
バンクミーティングの会場を選ぶ
バンクミーティングを開催するための会場を選びます。
守秘性が守ることができる、セキュリティが高い場所にしましょう。
もし、バンクミーティングをしていることが取引先や世間に知られるようなことがあれば、「あの企業は倒産するのかもしれない」と悪い噂が立つかもしれません。
そうなれば、取引が減ってさらに経営が悪化する可能性があるので、セキュリティには気を付けましょう。
各取引銀行へバンクミーティングの詳細を連絡する
会場の日時や場所が決まったら各銀行へ詳細の連絡をします。
バンクミーティングでは、銀行に対して不利になるお願いをすることになるので、訪問して参加の依頼を直接した方が良いでしょう。
担当者の都合もあるのでバンクミーティングが開催される1ヶ月前には連絡することをおすすめします。
また、出席者が担当者だけではなく担当者の上司や本部の融資部など複数になる場合もあるので「誰が参加する予定か」も確認しましょう。
信用保証協会にも連絡をする
取引銀行だけではなく、信用保証協会の保証をつけた融資がある場合は信用保証協会もバンクミーティングに参加してもらう必要があります。
(信用保証協会について知りたい方は、以下の記事も合わせてお読みください)
融資を受けやすくなる信用保証協会の保証とは?仕組みや保証の種類を紹介!
バンクミーティングのアジェンダ例と準備する資料
バンクミーティングは、以下のようなアジェンダ(議題)になることが多いです。
- バンクミーティングの趣旨説明
- 事業再生計画書について
- 金融支援案について
- モニタリングについて
- 今後のスケジュール(回答期限、次回バンクミーティングの予定日等)
経営者は再建に対する熱意を語り、銀行へ返済条件を変えてもらうように説得する必要があります。
もし、銀行が納得できないとなれば即座に融資は引き上げられて、事業を精算しなければいけない可能性があるからです。
銀行に納得してもらうためには事業再生計画書をなるべく具体的に作成して、実効性があると感じてもらう必要があります。
事業再生計画書は、目先のことだけではなく、5年、10年単位で作成することが求められます。
そもそもバンクミーティングは、融資の返済が約束通りできなくなるため行われるのです。
銀行としては、経営を再建して利益を生み出し返済原資を捻出して欲しいと思っています。
具体的には、損益計算書(PL)を正常化して、営業活動によるキャッシュフローを安定的に生み出す方法を知りたいと思っています。
そのため、現状を大きく変えられるようなコストカットや大胆なリストラ案などを盛り込む必要があるでしょう。
また、銀行は事業再生計画書通りに再生が進んでいるかモニタリングすることになります。
モニタリングはどのペースでどのように行うかもバンクミーティングの場で話し合う必要があります。
金融支援案については、事業再生計画によりどれくらいの期間で債務超過が解消されるか・黒字化するなどを考慮して、どれだけの期間リスケジュールをして欲しいかを伝えます。
銀行としてはなるべく早く再建して、返済をして欲しいと思っているので、企業の決意を見せるためにも、代表取締役社長自らの口で説明して、銀行に誠意を持ってリスケジュールを依頼することが大切です。
バンクミーティングに対する回答期限
バンクミーティングで各銀行に対して融資支援を依頼することになりますが、その場で決めることはできないでしょう。
担当者は銀行にその内容を持ち帰り、銀行内の決裁を取る必要があるからです。
そのため、回答期限は1ヶ月程度後に設定した方が良いといえます。
まとめ
経営が悪化して銀行融資の返済ができなくなった場合、1つの銀行からの融資を受けていればその銀行とだけ調整すれば良いのですが、複数の銀行から融資を受けている場合にはそれぞれの了承を得るのに手間や時間がかかります。
しかも、リスケジュールの内容は不公平な内容にならないために基本的にはすべての銀行で足並みをそろえる必要があるので、銀行によって意見が異なればなかなか方針が決まらないこともあるでしょう。
このような場合に取引銀行を一気に集めてバンクミーティングを行うのは、リスケジュールの方針を早期にまとめることができ、企業再建へのアクションに早く移せる点で大変メリットがあります。
事業再生計画がしっかりした内容で、メインバンクの対応が信頼できるものであれば、その他の取引銀行も協力してくれる可能性が高くなります。
そのため、バンクミーティングのために事業再生計画は実現性のある内容で作りこむ必要がありますし、メインバンクとの打ち合わせもきちんと行う必要があります。
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