銀行へ「リスケジュール」を申請する方法は?メリット・デメリットと交渉に成功するコツを紹介!

資金繰りが苦しくなると銀行からの追加融資を考える経営者の方も多いのではないでしょうか。

しかし、追加融資を行うことにより、金利の支払い負担が増えて、さらに経営が厳しく事態を招くかもしれません。

このような場合に、既に融資を受けている返済額を減額したり、返済を一時的に待ってもらう「リスケジュール」という方法も検討してみましょう。

今回の記事ではリスケジュールの内容やメリット・デメリット、銀行への依頼方法などについて紹介します。

リスケジュールとは

リスケジュールとは資金繰り悪化の影響を受けて融資の返済が難しくなった場合に、既に銀行から借入を行っている融資の返済額を減額したり、利息分の支払だけして元本の支払を一時的に止めたり(据置)することです。

リスケジュールは、追加融資を受けるような効果を持ちながら、新たに融資を受けるよりも負担が少ないといわれています。

銀行からのリスケジュールの了承を得るためには、事業改善計画書や資金繰り表を作り、事業が再生できる旨をアピールすることが必要です。

また、銀行では融資のために格付を行います。

格付は大きく分けて「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に分かれます。

リスケジュールは業績が堅調な「正常先」しか受け付けていません

営業利益ベースでが2期連続赤字などの場合は既に「要注意先」となっており、リスケジュールが受け付けられない可能性があります。

リスケジュールを行うと「正常先」から「要注意先」以下に格付けランクは下がるので、銀行との付き合い方も変わることは覚えておきましょう。

貸付条件の変更等の状況の推移

平成21年12月~平成22年3月における中小企業に対する融資の貸付条件の変更は、76.7%の実行率でした。

しかし、翌年度平成22年4月~平成23年3月は、申込94.8%の実行率に増えてそれ以降は90%以上の実行率を推移しています。

申込件数自体は、平成22年4月~平成23年3月の1,352,771件、実行数1,281,954件がピークで年々申込件数は減っています。

平成30年4月から平成31年3月の申込件数は740,452件、実行件数は721,814件、実行率は97.5%でした。

ただし、令和元年4月以降の発表はまだ出ていませんが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてリスケジュールを余儀なくされた中小企業者の数は増えていると予想します。

参考:金融庁

https://www.fsa.go.jp/policy/chusho/enkatu03.html

リスケジュールが増えた背景

平成21年12月4日に中小企業に対する金融の円滑化を図るために「中小企業金融円滑化法」が施行されました。

2008年にアメリカで起きたリーマンショックの影響を受けて低迷していた日本経済がさらに不景気に陥り、多くの企業が経営難となったからです。

融資の返済ができないことにより倒産する企業が増えれば、さらに経済にダメージを与えてしてしまいます。

それを避けるために「中小企業金融円滑化法」が生まれ、資金繰りが悪化し、融資の返済が困難になった中小企業に対して、金融機関は返済の猶予を与えたり、貸出要件を緩和するなど柔軟に対応することが求められるようになったのです。

金融円滑化法は2011年3月末までの期限付きのものでしたが、東日本大震災の影響を受けて延長し、2013年3月末に終了しました。

ただし、金融機関に対しては引き続き中小企業の融資に対して柔軟な対応をすることが求められているため、リスケジュールの実行率は金融円滑化終了後も高水準を維持しています。

リスケジュールのメリット/デメリット

リスケジュールを利用することによるメリットとデメリットを紹介します。

一時的な経営悪化に耐えられる

一時的要因で経営が悪化して倒産を選ぶのは非常にもったいないことです。

恒常的な経営難で赤字が続く場合は、負担も重くなりますが、一時的要因で回復が見込めるのであれば、リスケジュールを利用して返済を待ってもらえば資金繰りも楽になります。

この期間に経営改善に向けて取組み、業績が改善して利益が生み出せるようになれば倒産を回避できます。

ただしリスケジュールの期間は最長でも1年程度なので、この期間に経営の立て直しが必要です。

リスケジュールの再延長は基準が厳しい

リスケジュールは1年ごとの更新がほとんどですが、再生計画の80%以上をクリアしている場合でないと再延長は認められません

もし、再延長が認められなければサービサー(債権回収会社)に債権を売却してしまう可能性があります。

サービサーは債権回収に対して法的手段も利用するので、銀行よりも厳しい対応をされるでしょう。

単にモラトリアムを与えるだけになる可能性も

リスケジュールは、その期間に経営改善を図ってもらうことが目的です。

しかし、リスケジュール中に経営改善の努力をしない場合は、単に倒産までのモラトリウムを与えるだけになってしまうのです。

将来性がない事業の場合、早期に撤退したり、リストラをしたりする方がその企業の為になることもあります。

このような決断を先延ばしにしてしまうのはリスケジュールのデメリットといえるでしょう。

リスケジュール期間中は新たな融資を受けられない

リスケジュールの期間中は、その銀行から新たな融資を受けることはできません。

そのため、現在借入を行っている融資分を含めた手元資金でやりくりを行う必要があります。

従業員や取引先からの信用不安

経営難によりリスケジュールをしていることが従業員に知られてしまうと、倒産を恐れて辞めてしまう可能性もあります。

経営難の状況下で、従業員が減ればさらに状況は苦しくなるでしょう。

また、取引先に知られれば、売掛金の支払がきちんと行われるかなどの不安から取引を躊躇される可能性もあります。

経営難の局面が人材流出・取引減でさらに窮地に陥ることがないように「具体的な経営改善案があり、経営を立て直す自信がある」ということをきちんと伝えることも大切です。

リスケジュールの申請方法

リスケジュールを希望する場合には金融機関の担当者にまず相談しましょう。

なぜリスケジュールが必要になったかという経緯を話し、申請に必要な書類や手続きを確認します。

リスケジュールに必要な書類は各銀行により異なりますが、「経営改善計画書」「資金繰り表」「試算表」「銀行借入明細書」を求められることが多いです。

実際に銀行にリスケジュールを申請するまでにはすべて準備しておきましょう。

この中で一番大切なのは「経営改善計画書」です。

この資料では「なぜ赤字になったのか」という原因、「どのように事業を再生するのか」という根拠、「具体的なアクションプラン」をできるだけ細かく根拠を持って説明できるようにしてください。

リスケジュールを成功させるために

リスケジュールの交渉に成功するためのコツを紹介します。

取り返しがつかなくなる前になるべく早く決断する

リスケジュールはなるべく早く決断したほうがよいといえます。

経営が上手くいっていない状況でリスケジュールの決断が遅くなれば、その期間も返済が進み、資金繰りがさらに悪化してしまうからです。

その結果、返済を止めても手元資金が少なく上手く業績を立て直せなくなってしまうということもあるでしょう。

経営や資金繰りに不安があり、数か月で立て直せるわけではないと気が付いたら、なるべく早く銀行に相談しましょう。

返済ができないことに対して誠意を持って説明する

銀行では、新規融資を行うことが業績に繋がるため、新規が融資ができずに順調に返済してもらえなくなるリスケジュールの利用は喜ばしいことではありません。

しかし、融資した資金が返済してもらえないのも債務不履行となり銀行に対して損失を作ることになります。

リスケジュールは、新しい実績は作れないけど損失にはならないという位置づけです。

上述の通り、リスケジュールは金融機関に対して政府より求められていることですが、リスケジュールを断ったり、銀行の判断で融資を引き上げたりすることはできてしまいます。

リスケジュールを依頼するときには、順調に返済できなくなってしまったことをまずお詫びするようにしてください。

心象が悪くなれば対応を断られる可能性もあるので、きちんと誠意を見せながら説明や依頼をする姿勢が大切です。

リスケジュールをするメリットを伝える

リスケジュールをすることにより、銀行にとってメリットがあることをアピールすることもポイントです。

「経費削減で利益確保の見通しは立っている。少しの間リスケジュールができれば確実に返済が可能」という状態であれば、銀行としても倒産による債務不履行を回避できるメリットになります。

また、改善計画通りに進んで業績が戻ったら将来どんな事業展開をする予定なのかなどを話してみるのも良いでしょう。

それによりさらに銀行との取引が増えるのであればメリットを感じてくれる可能性が高いです。

リスケジュールとは

さらに、取引銀行がたくさんある場合、メインバンクからリスケジュールの依頼をした方が良いといえます。

なぜなら、各銀行は他の銀行の動向を見て融資方針を決めるので、「メインバンクがリスケジュールを許可したのならうちも許可しよう」となる可能性が高いです。

また、取引銀行すべてで同じ対応をする必要があります。

なぜなら、銀行としては返済を一刻もしてほしい中で、他の銀行だけ返済が進めば不平等感が出てしまうからです。

まとめ

リスケジュールを利用することにより、資金繰りが悪化しても急な倒産を回避して、事業を立て直すチャンスが与えられます。

ただし、説得力のある経営改善計画でなければ、銀行もリスケジュールに応じてくれないので、きちんと作り込み、計画に沿って実行することが大切です。

リスケジュールを銀行に通すコツとしては以下のことが考えられます。

  • 立て直し可能な段階で相談する
  • 銀行には誠実な状況説明を行う
  • 銀行にリスケジュールをするメリットを伝える
  • メインバンクから依頼し、すべての取引銀行と同じ条件にする

リスケジュールの期間は1年ほどで、改善が見込まれなければサービサーに売却されてしまいます。

リスケジュールをしてもらったからと言って安心せずに、経営を立て直すために必死に取り組むことが大切です。

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