中小企業と金融機関とのベストな付き合い方をご紹介!【融資審査をスムーズに進める方法】

中小企業の経営者の方で、「融資をなかなか取り付けられない…」というときは、企業の業績のほかに「金融機関との付き合い方」に問題があるのかもしれません。

金融機関の融資担当者も「人」ですので、業績が今一つで、さらにこれまでの付き合いも思い入れもない事業者について、あえて難しそうな審査を通そうとは思わないものです。

そこでこの記事では、融資審査をスムーズに進める方法としての「中小企業と金融機関とのベストな付き合い方」をご紹介します。

「いざというときに融資が受けやすいよう、金融機関との付き合い方を知りたい」という中小企業の経営者の方は、ぜひご覧ください。

中小企業と金融機関とのベストな付き合い方(融資審査をスムーズに進める方法)

まずは、中小企業と金融機関との「付き合い方の大原則」と、「ベストな付き合い方」をご紹介します。

なお、ご紹介する「金融機関との付き合い方」は、融資審査をスムーズに進める方法でもありますので、中小企業の経営者の方はぜひ実践してみてください。

付き合い方の大原則:複数の金融機関と付き合う

中小企業と金融機関との付き合いの大原則は、「複数の金融機関と付き合う」です。
「メインバンク1行としか取り引きしない」というのは、とてもリスクが高い状態と言えます。

もし1つの金融機関だけと付き合っていて、事業者が経営不振となった場合。
その金融機関が融資をストップすれば、途端に資金調達が難しくなってしまいます。

さらに、経営不振になった事業者を「新規取引先」として受け入れてくれる金融機関は、まずないでしょう。

リスクは常に分散する必要があります。
複数の金融機関と付き合い、次項からご紹介する「付き合い方」を実践して、関係を良好にしておく。

融資は「申し込んだ時点での業績」だけで決まるわけではなく、それまでの信頼の積み重ねも大事です。
こうして「融資の選択肢」を増やし、万が一のために備えましょう。

 

〈付き合い方①〉業績好調なときこそ借り入れ・返済実績をつくり、信頼関係を築く

一般的によく「金融機関は、事業者が困ったときには貸してくれず、困っていないときに借りてくれと言ってくる」といわれます。

また、数年のあいだ借り入れ実績がなかった取り引き先から、急に融資の申し込みがあると、金融機関側は「急激な業績悪化か?」と身構えてしまうもの。

そのため、業績好調なときこそ借り入れして返済実績をつくり、信頼関係を築いておくことが重要です。

大きい金額でなくとも、おつきあいで借り入れしておけば、金融機関は事業者の決算書などをチェックして気にかけるようになります。

金融機関員は「前例主義」という特徴ももつため、過去の実績は、融資審査時の説得材料の一つに。
すると将来、資金が必要になったときに、借り入れがスムーズに進む可能性が高まります。

〈付き合い方②〉「書類の提出依頼」には迅速に対応する

金融機関から「〇〇を出してもらえますか?」といった「書類の提出依頼」があった場合には、迅速に対応しましょう。

融資担当者も「依頼したらすぐに応えてくれる事業者」には、「思い入れ」を持ちやすくなるものです。

もちろん、金融機関も営利企業であり「融資担当者との”人のつながり”」さえあれば、事業者の経営状況が悪くても、融資をしてもらえるわけではありません。
ですが、融資審査の最重要ポイントである「稟議書」を作成するのは融資担当者。

「思い入れのある事業者」と「思い入れのない事業者」があれば、どちらに力が入るかは歴然としています。
担当者の熱意が込もった稟議書は、「上席の決裁が下りやすい稟議書」とも言えます。

融資担当者を味方にするため「依頼にはすぐに応える」、「質問にはすぐに回答する」といったていねいな対応を心がけましょう。

〈付き合い方③〉悪い情報ほど金融機関に早く伝える

赤字や減収、そのほかの「悪い情報」ほど、金融機関には早く伝えましょう

ギリギリまで問題を隠し、その後どうしようもなくなってから伝えてしまうと、金融機関は不信感を持ち、カンタンには資金繰り支援をしてくれない可能性が高まります。

ただ、正直に融資担当者に伝えても、内容によっては担当者が情報を握りつぶしてしまうことも考えられます。
そこで、経営者が金融機関側に出向き、担当者・担当課長・副支店長・支店長といった関係者がそろっている場で報告することが得策。

このとき、悪い情報をただ報告するだけではなく、「今後どのようにリカバリーするか」といった対策も伝えることで、金融機関側の支援を取り付けやすくなります。

なお、「銀行員の役職・職種」を知りたい方は、記事「銀行融資では誰とリレーションを築くべき?銀行員の役職や職種、関係構築の方法を解説!」をご覧ください。

〈付き合い方④〉借り入れ後も2~3ヶ月に一度は支店を訪れる

審査を経て融資を行ったとはいえ、金融機関側ではつねに「問題なく返済されるだろうか」という不安を抱えています。

そこで、借り入れ後も2~3ヶ月に一度は支店を訪れるようにしましょう。

訪問時には、融資申請時に作成・提出した資料と、その後の状況がどうなっているかを報告
たとえば提出した「資金繰り予定表(計画表)」を持ち、実際のお金の回り方を伝えてください。

こうした行動を積み重ねることで、金融機関側は「しっかりした経営者だ」と信用してくれるように。
すると次回の融資も受けやすくなりますので、資料作りに手間はかかりますが、ぜひ行ってみてください。

〈付き合い方⑤〉できる範囲で「融資以外の取引」も行う

金融機関は取り引き先事業者に対して、積み立てや振り込みなど「融資以外の取り引き」を総合的に求めてきます。
そして融資担当者には、さまざまなノルマが課せられています。

担当者から目標達成のお手伝いを頼まれた場合は、決算表の数字が悪くならない範囲で、「融資以外の取引」に応えてあげましょう。

人は助けてもらった相手には、恩を返したくなるものです。
ここで信頼関係を深めておけば、難しい条件の融資を申し込んだときに、「何とか審査を通そう」と努力してくれるはず。

また融資審査の稟議書には、事業者との「取り引き内容」が記載されます。
「現在、振込や〇〇取り引きを行っており、さらなる取り引きのため本件融資したい」といった具合で記載されるため、融資審査においてもプラスとなり得ます。

〈付き合い方⑥〉他金融機関への借り換えは慎重に行う

法人融資の「借り換え」とは、運転資金や設備投資に対する融資を、他の制度や他の金融機関融資へ借り換えることです。

ここで「同じ金融機関で、ほかの制度への借り換え」であれば問題はありませんが、「他金融機関への借り換え(”A銀行からB信用金庫へ”など)」であれば慎重に行う必要があります。

これは、金融機関にとって「他金融機関に借り換えられる」のは、大変屈辱的な行為であり、金融機関と取り引き先との関係が悪化する可能性が非常に高いため。
乗り換えられた金融機関は「もう融資に応じてくれることはない」と思ってください。

ですから借り換えは、「今後A銀行と付き合うつもりがない」というとき以外はおすすめしません。

とくにメインバンクとして付き合ってきた金融機関から借り換えを行う場合には、借り換え先の金融機関に「これからメインバンクとして付き合ってほしい」という意思を伝え、それを理解してもらうことが先決。

金利面だけではなく、将来的な金融機関との付き合いも考えたうえで、借り換えをするかどうかを考える必要があります。

「借り換えのメリット・デメリット」についてくわしくは、記事「銀行融資の借り換えメリットは?注意点や流れについても解説!」でご紹介しています。

金融機関の種類と特徴

次に、金融機関の種類と特徴をご紹介します。

なお「金融機関の種類とその選び方」は、記事「融資を申し込む金融機関の選び方を解説!機関の種類や付き合い方も紹介します」でくわしくご紹介しています。

〈金融機関の種類①〉信用金庫

「信用金庫」とは、地域の方々が利用者・会員となって互いに地域の繁栄を図る「相互扶助」を目的とした協同組織の金融機関で、信用金庫法に基づき運営されています。

取り扱う商品やサービスは銀行とほとんど変わりませんが、営業する地域や顧客が限定されます。
会員の出資による協同組織の非営利法人として運営されている点も、銀行との違いです。

おもな利用者は、信用金庫がある地域で活動を行う中小企業や個人で、利用者や会員の利益が優先されます。

 

〈金融機関の種類②〉信用組合

「信用組合」とは、前項の「信用金庫」と同じ協同組織の金融機関ですが、下表のような違いがあります。

  信用金庫 信用組合
1.設立の根拠となる法律 信用金庫法 中小企業等協同組合法 協同組合による金融事業に関する法律(協金法)
2.会員(組合員)資格 ・住所または居所を有する者
・事業所を有する者
・勤労に従事する者
・事業所を有する者の役員
【事業者の場合】
従業員300人以下または資本金9億円以下
・住所または居所を有する者
・事業を行う小規模の事業者
・勤労に従事する者
・事業を行う小規模の事業者の役員
【事業者の場合】
従業員300人以下または資本金3億円以下
3.融資の範囲 原則として会員を対象とするが、制限つきで会員外貸出もできる(卒業生金融あり) 原則として組合員を対象とするが、制限つきで組合員でないものに貸出ができる(卒業生金融なし)
4.営業地域 一定の地域に限定 一定の地域に限定

「信用金庫」よりも小規模な企業を顧客とし、地域性が強いのが「信用組合」といえます。
ちなみに「銀行」の場合は、上記2~3のすべてが「制限なし」です。

「信用金庫・信用組合」についてくわしく知りたい方は、記事「 信用金庫は中小企業の味方!融資は銀行よりも受けやすいって本当?」もご覧ください。

〈金融機関の種類③〉地方銀行(地銀)

「地方銀行」とは、各都道府県に本店を置き、商圏内の大手・中堅・中小企業との取引を中心に行う銀行のこと。
地方で盤石な基盤を持つことが特徴です。

また「地方銀行」と「第二地方銀行」があり、次のような違いがあります。

  概要 銀行名 銀行の数※1
地方銀行 「全国地方銀行協会」に加盟する銀行。「第一地方銀行(第一地銀)」と呼ばれることもある 北海道銀行、七十七銀行、きらぼし銀行、スルガ銀行、関西みらい銀行、鹿児島銀行 など 62行
第二地方銀行 「第二地方銀行協会」に加盟する銀行。相互銀行や信用金庫から、1989年以降に普通銀行へと転換した。地方銀行より規模が小さいものが多い 北洋銀行、仙台銀行、東京スター銀行、静岡中央銀行、みなと銀行、南日本銀行 など 37行

※1:金融庁の銀行免許一覧より

地銀の多くは県庁所在地に本店を置き、県の「指定金融機関」として、税金の振込の受け付け、自治体のお金の預かりなどを行い、県の中心的な銀行となっています。

銀行の特徴

銀行は民間企業ですが、ほかの企業には見られない次のような特徴をもちます。

  • 顧客よりも組織の事情を優先する
  • 営業エリアや窓口の営業時間などについて、法律により規制がある
  • リスク分散を重要とし、他行の優良顧客に営業する
  • 行員の不正を防止するため、2~3年ごとに人事異動がある

また、支店長や担当者が変われば「融資の姿勢」が変わるという性質も。

そのため、
・「これまでは積極的に資金繰りを助けてくれたのに、支店長が変わったら話を聞いてくれなくなった」
・「前に融資の相談をしたときは断られたのに、今度は前向きに検討してくれている」
こういったことはよくあるので、覚えておきましょう。

銀行員の職種

銀行員は、配属された場所によりさまざまな仕事をしており、おもに次のような職種があります。

  • 法人融資担当:法人が融資を受ける際、直接的にやり取りをする
  • 本部勤務の行員:銀行の本部に勤務して、金融商品の企画・開発や一定の情報・サービス提供を行う
  • 預金担当:口座開設や変更手続きなどを行うローテラーと、振り込みや両替など為替を担当するハイテラーがある
  • 渉外担当:個人の住宅ローンやカーローン、資産運用の相談(ファイナンシャルプラング)などの「渉外業務」を行う
  • 外国為替担当:キャッシュの交換や海外送金を行う

 

〈金融機関の種類④〉都市銀行(メガバンク)

「都市銀行」とは、全国的に支店を展開して業務を行う銀行で、一般的には次の4行を指します。

  1. みずほ銀行
  2. 三井住友銀行
  3. 三菱UFJ銀行
  4. りそな銀行

また、「みずほ銀行・三井住友銀行・三菱UFJ銀行」の3行は、その規模の大きさから「メガバンク」とも呼ばれます。

「都市銀行」の取引相手は、大手企業が中心です。

なお、銀行は「銀行法」に基づいて設置される株式会社で、設立目的は「国民経済の健全な発展に資すること」。
とはいえ「株式会社」ですので、基本的には利益を追求することを重視します。

金融機関の融資審査に通らない理由

記事の最後に、金融機関の融資審査に通らない理由をご紹介します。

なお、以下の内容を含めた「融資審査で不利になること」は、記事「金融機関の融資審査で不利になることとは?融資の疑問も解消」でくわしく解説しています。

〈理由①〉依頼された書類・資料を提出しない

融資の審査は、金融機関の融資担当者が「返済財源、返済方法、資金使途、融資金額、保全」などが記載した「稟議書」を作成するところから始まります。

そして 「稟議書」を作成するには、決算書などの書類・資料が必要。

書類を提出しなければ、融資担当者は「稟議書」は作成できません。
つまり融資審査のスタートにも立てないため、審査に通ることはできないのです。

融資担当者から「〇〇の提出をお願いします」と依頼されたときは、できるだけ早く提出しましょう。

なお「融資を受けたいが、資料をどのように作ればよいのかわからない」という場合は、融資コンサルを利用するという方法も。
「融資コンサルの選び方やメリット・デメリット」については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

・記事「失敗しない融資コンサルの選び方とは?メリット・デメリット、手数料の相場も解説します

〈理由②〉税金を滞納している

税金の支払いを滞納している事業者は、金融機関から融資を受けられる可能性が低くなります。

保証付き融資など「納税証明書」の提出が必須の融資では、滞納していることがすぐに分かってしまいます。
プロパー融資では「納税証明書」の提出を求めないこともありますが、資料提出や面談のなかで滞納がわかってしまうことも。

まずは親戚や知人から借りるなどして税金の支払いを終え、それから融資を申し込むようにしましょう。

〈理由③〉消費者金融などノンバンクから借り入れしている

消費者金融などノンバンクからの借り入れがある事業者も、金融機関から融資を受けられる可能性は低くなります。

これは、金融機関側が「ノンバンクから借り入れするということは、銀行や信用組合などから融資が受けられなかったからでは?」と考えるため。
リスクの高い取り引きへの融資は、金融機関はかなり慎重になります。

「審査時に、ノンバンクから借りていることを伝えなければいいのでは?」と思うかもしれませんが、借り入れた情報はCICなどの信用情報機関に登録されます。

そして金融機関は審査時に、信用情報機関にて「借入情報」を確認。
たとえ完済しても、「借り入れした」という情報は5年間は残りますので、この期間は融資が不利になる可能性が高いといえます。

 

まとめ:金融機関との付き合い方を確認し、融資審査をスムーズに

この記事では、融資審査をスムーズに進める方法としての「中小企業と金融機関とのベストな付き合い方」をご紹介しました。

ぜひ記事を参考に、金融機関との付き合い方を確認し、融資審査をスムーズに進めることを目指しましょう。

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