【無料で何度でも相談可】公的機関「よろず支援拠点」の業務や利用方法、事例まで解説

売上の拡大やIT・SNSの活用、資金繰りなど、経営者の方の会社経営における悩みは尽きないかと思われます。
そんなとき、さまざまな経営相談に応じてくれる公的機関が「よろず支援拠点」です。

この記事では、無料で何度でも相談可能な公的機関「よろず支援拠点」の基本情報から業務、利用方法、事例まで解説していきます。

「経営上の悩みがあるけれど、どこに相談したらいいのかわからない」という経営者の方は、ぜひご覧ください。

よろず支援拠点の基本情報

まずは、よろず支援拠点の基本情報をご紹介します。

よろず支援拠点とは?

よろず支援拠点とは、中小企業・小規模事業者の経営上の悩みに対応するために、国が全国47都道府県に設置した無料の経営相談所です。

「中小企業・小規模事業者の活性化を図る」ことを目的に、平成26年(2014年)に事業開始。

中小企業診断士や社会保険労務士、ITコーディネーターといった専門家が、各拠点で相談者に対応します。
相談内容に応じ、地域の支援機関や専門家と連携を取っての支援も。

委託事業であり、たとえば「東京都よろず支援拠点」は、一般社団法人東京都信用金庫協会が国から委託され運営しています。

(参考)
よろず支援拠点 公式サイト

 

よろず支援拠点の令和3年度予算額

よろず支援拠点の令和3年度予算額は、「専門家派遣事業」と合わせて40.9億円となっています。

出典:経済産業省

「よろず支援拠点事業」は上記資料のとおり、「専門家派遣事業」とともに「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」に含まれており、中小企業や小規模事業者を支援するための事業として位置付けです。

「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」の「専門家派遣事業」、通称「中小企業119」については、こちらの記事で解説しています。

中小企業庁の専門家派遣事業「中小企業119」を解説!制度概要や事例も紹介【事業者向け】

 

よろず支援拠点の相談件数(活動実績)

よろず支援拠点の相談件数は年々増加しており、令和2年度(2020年度)には全国で432,640件の相談がありました。

また相談内容の内訳(令和2年度)は下グラフのとおりで、「売上拡大」と「経営改善・事業再生」が約9割を占めています。

相談者の業種は、「サービス業」がやや多いものの、さまざま。

満足度調査では、下グラフのとおり9割以上の相談者が「満足・やや満足」と回答しています。

 

よろず支援拠点全国本部のバックアップ体制

よろず支援拠点には全国本部があり、下図のようなバックアップ体制をとっています。

出典:中小企業庁

なお、よろず支援拠点全国本部を運営するのは、(独)中小企業基盤整備機構です。

専門家と中小機構の職員がよろず支援拠点を巡回し、地域の状況や課題を把握。
地域支援機関と連携した支援体制を構築するとともに、先駆的な支援モデルやノウハウを共有して、全国47拠点の支援能力の向上に取り組んでいます。

よろず支援拠点の具体的な業務

次に、よろず支援拠点の具体的な業務をご紹介します。

よろず支援拠点が対応する相談内容

よろず支援拠点が対応する相談内容は、中小企業事業者などのさまざまな経営課題で、たとえば次のようなものがあります。

  • 売上が伸びない
  • 新しい商品を作りたい
  • 使える補助金を知りたい
  • 子どもに事業を引き継ぎたい
  • 海外で商品を売りたい
  • 資金繰りに困っている

名前のとおり、中小企業などからの「どんな相談でも受け付ける」とされており、たとえば「埼玉県よろず支援拠点」では支援内容として、次の内容を挙げています。

  • 創業、生産性向上、広報戦略、施策活用、売上・販路拡大、新分野進出、商品開発、補助金活用、IT活用、デザイン、マーケティング、海外進出、地域資源活用、知的財産、事業計画策定、経営改善、事業承継、人手不足対応、現場改善、事業連携

 

よろず支援拠点の体制

各都道府県のよろず支援拠点の体制は、以下のメンバーで構成されています。

  • チーフコーディネーター(CCO):よろず支援拠点の指揮官。各拠点に1名配置
  • コーディネーター(CO):各分野のスペシャリスト。各拠点に数名
  • 人手不足対応アドバイザー:人手不足の相談に応じる相談員。2018年から配置

ちなみに、CCOやCOのおもな保有資格としては、次のようなものがあります。

  • 中小企業診断士、弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、司法書士、行政書士、社会福祉士、販売士、技術士、通関士、建築士、調理師、Web デザイン技能士、情報処理技術者、ファイナンシャルプランニング技能士など

よろず支援拠点のコーディネーターの報酬

よろず支援拠点のコーディネーターは、都道府県の拠点ごとに公募が行われます。

たとえば、埼玉県よろず支援拠点のコーディネーターの報酬などの契約条件は次のとおり。

  • 報酬:消費税込みで日額25,000円(年100日が上限)。業務が半日の場合は12,500円
  • 契約期間:令和3年4月1日以降の採用の日~令和4年3月31日
  • 応募資格
     ○原則として月2日以上、本事業に従事できる
     ○下記分野において知見を有し、熱意を持って中小企業の支援に取り組める
      ・IT、AI、IoT を使った生産性の向上や生産管理・社内効率化のためのシステム整備に係る支援
      ・製造工場における総合的な生産性向上に係る支援
      ・雇用、労務に関する改善策の実施、人材育成や配置計画に係る支援
      ・M&A や財務分析、事業承継に係る支援
      ・経営計画・事業計画等策定に係る支援
    埼玉県よろず支援拠点 コーディネーター公募要領より)

なお契約期間は1年単位で、「次年度以降、更新の可能性あり」というケースが多いようです。
コーディネーターの従事日を「月6日~8日程度」と記載している拠点もありました。

よろず支援拠点の具体的な業務

よろず支援拠点の具体的な業務として、以下のものが挙げられます。

①総合的・先進的アドバイス

商工会議所や商工会、認定支援機関などの支援機関や、単独機関では十分に解決できない経営相談にも応じます。

拠点には、企業経営の経験のあるコーディネーターも数多く在籍。
豊富な実務経験に裏付けられた知見とノウハウにより、地に足のついたアドバイスを提供可能です。

総合的・先進的アドバイスの具体例
①企業の強みを分析し、新たな顧客獲得等につなげるアドバイスをするなど、売上拡大に係る支援を行う
②他の機関が対応しない「再生・経営改善案件」への丁寧な対応を実施する
③企業経験などを活かした、現場改善や生産性向上につながるアドバイスを行う

②支援チーム等編成支援

中小企業や小規模事業者の課題に応じて、適切な支援チームの編成を支援し、フォローアップまで行います。

支援チーム編成のため、複数の支援機関、公的機関、企業OBなどの「支援専門家」や、大学、大企業等の事業連携の相手先等と調整を実施。

それぞれの強みを活かした総合的な支援体制で、課題解決に取り組みます。

支援チーム等編成支援の具体例
①中小企業が抱える複数の経営課題に対して、適切な支援ができる支援機関・専門家による支援チーム編成を主導する
②課題解決に具体的なリソースを提供する大企業、大学、病院等とのビジネスベースでの連携を支援する

③ワンストップサービス

相談先に悩んでいる中小企業や小規模事業者の相談窓口として、広く相談に応じ、上記①・②による支援を実施するほか、相談内容に応じて、支援機関・専門
家を紹介するなど、適切な支援が可能な機関などにつなぐことも。

的確な紹介を行うことで、「ワンストップ」での相談内容の解決を目指します。

また、課題解決後に新たな課題や目標が見えてくれば、引き続き、課題の解決や達成に向けて支援を行います。

相談から実行までフォローする「寄り添い支援」も特徴です。

 

よろず支援拠点の利用方法

次に、よろず支援拠点の利用方法をご紹介します。

よろず支援拠点を利用できる対象者

よろず支援拠点を利用できる対象者は、原則として次のとおりです。

  • 経営上の様々な悩みを抱えている中小企業・小規模事業者、NPO法人、一般社団法人、社会福祉法人などの中小企業・小規模事業者に類する人、創業予定の人

ただし、事業者の対象地域が限定されているケースもあるため、各拠点の公式サイトでよくご確認ください。

 

よろず支援拠点の利用方法

よろず支援拠点の利用するときはまず、自身が事業を行っている都道府県の「よろず支援拠点 公式サイト」をご覧ください。

よろず支援拠点 公式サイト:支援拠点一覧

サイトで「拠点の場所」と「利用の流れ」を確認。
多くの拠点では、まずは「電話で相談予約」となっています。

その後は、予約した日時に拠点を訪問して、専門家に相談を行います。

出典:東京都よろず支援拠点

また、現在は新型コロナ感染拡大防止のため、事務所での相談ではなく電話相談やZOOM相談のみとなっている拠点もあります。
相談方法もサイトでご確認ください。

何度でも無料で利用可能

よろず支援拠点は、何度でも無料で利用可能です。
これは国(中小企業庁)の事業として運営されており、利用回数の取り決めもないため。

せっかくの機会ですので、課題が解決するまで何度でも利用しましょう。

商工会・商工会議所とよろず支援拠点の違いは?

「中小企業経営者などの相談機関」としては、商工会・商工会議所がよく知られていますが、よろず支援拠点とはどのように違うのでしょうか?

中小企業庁の資料では、それぞれ次のように位置づけて、違いを明確にしています。

  • 商工会・商工会議所かかりつけ医(会員の身近な相談先として、常に寄り添った支援を実施。経営相談のほか、展示会や商談会なども開催するなど、密着型支援を行う)
  • よろず支援拠点専門医(各地域の中小企業支援機能を補完する。他の支援機関による対応が困難な経営課題に対し、自ら解決を図る)、総合医(支援機関などとの連携プレーで課題に対応し、つねに地域の支援機関をバックアップする)

ちなみに、商工会議所と商工会の違いや目的、役割については、こちらの記事でくわしくご紹介しています。

商工会議所と商工会の違いとは?共通する目的・役割、それぞれの特徴、支援制度まで解説

 

よろず支援拠点による支援事例を紹介

記事の最後に、よろず支援拠点による支援事例をご紹介します。

[事例①]人手不足対応(長野県よろず支援拠点)

長野県下伊那郡で、医療機器や食品製造機器など幅広い分野の機械の一貫生産を行う株式会社阿智精機。

「従業員全員の成長と挑戦を促し、現場の士気を上げ、求める人物像の採用にもつながるよう人事制度を整備したい」と、よろず支援拠点に相談に訪れましたた。

支援の流れは下図のとおり。
「育成制度」と「評価」で改善が必要と判断され、コーディネーターは行動分析学の考えなどを用いて支援を行いました。

支援の成果として、会社からの評価や期待が従業員へと伝わり、感謝の気持ちから「恩返ししたい」と行動する従業員が出てきます。
評価が昇給と連動するため、現場の士気も向上。

「従業員が従業員を連れてくる」という従業員紹介による採用がルーティン化し、基幹技術者を含む5名の新規採用も実現しました。
その結果、社内生産稼働率も300%向上。

相談者は「従業員の将来をいかに幸せにしていくかをもとに、個人に向き合い、分かりやすく真摯に説明する大切さに気づくことができた」と述べています。

[事例②]売上拡大(愛媛県よろず支援拠点)

スバル株式会社は、日本屈指の紙産業集積地である愛媛県四国中央市で、お茶パック・シートペーパーの製造・販売を行っています。

同社では、木材由来の「セルロースナノファイバー」に代わる新素材として、「ユーグレナ由来の新素材」に着目。

新素材活用による新事業を検討しましたが、未経験のためゆえ、立ち上げ時に何を準備・検討すべきかなど、課題が山積みでした。
そんななかで、えひめ東予産業創造センターからよろず支援拠点を紹介され、相談を行います。

コーディネーターは、「資金負担の軽減」と「地域への波及効果」などから、研究・開発資金の一部を公的資金で賄うことを対応方針に。
「愛媛県新成長ものづくり補助金」などの活用を提案し、事業計画書の作成支援を行いました。

その結果、補助金に採択され、開発資金を得たことで大型タンクの培養設備を導入。
産学官連携による体制も整い、用途開発を進めながら、本格的な事業化に向けて順調に推移しています。

相談者は「丁寧な対応と的確なアドバイスをいただき、円滑・安心な事業展開が進められた。今後も頼れる経営相談所として活用したい」と述べました。

上記のほかにも、公式サイトではさまざまな事例が紹介されています。
参考にご覧ください。
よろず支援拠点 公式サイト:全国の支援事例

まとめ:経営上の悩みはよろず支援拠点へ

この記事では、無料で何度も相談可能な公的機関「よろず支援拠点」の基本情報から業務、利用方法、事例まで解説してきました。

何度相談しても無料です。
経営上の悩みはぜひ、よろず支援拠点へ相談しましょう。

よろず支援拠点 公式サイト:支援拠点一覧