RESAS(地域経済分析システム)とは?機能や使い方、利活用事例も紹介

ビジネスシーンにおいては、限られたリソースを「より結果が期待できる分野」に投入することが重要ですが、そのためにはデータ分析が役立ちます。

しかしデータ分析を行うシステムには複雑なものが多いため、慣れていないと簡単には行えません。

そこでおすすめするシステムが、地域経済に関連するさまざまなビッグデータを「見える化」するRESAS(地域経済分析システム)です。

この記事では、RESASの制度概要や機能、使い方、利活用事例までご紹介します。

「経営にデータ分析を取り入れたい」と考えている方は、ぜひご覧ください。

RESAS(地域経済分析システム)の制度概要

まずは、RESAS(地域経済分析システム)の制度概要をご紹介します。

RESAS(地域経済分析システム)とは?

「RESAS(リーサス)」とは、産業構造や人口動態、人の流れなどのビッグデータを、マップやグラフでわかりやすく表示できるWebアプリケーションです。

RESAS 地域経済分析システム[一般メニュー]

正式な名称は「地域経済分析システム」で、経済産業省が開発し内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が運営。

英語表記(Regional Economy (and) Society Analyzing System)の頭文字から、通称「RESAS(リーサス)」と呼ばれます。

平成27年(2015年)4月に提供が開始され、一部の情報を除き誰でも無料で利用可能です。

 

RESASの特徴

RESASの特徴は、地方創生のデータ利用の「入口」として、地域経済に関する官民のさまざまなデータを、地図やグラフ等で分かりやすく「見える化」している点です。

データに慣れていない担当者が、数字の並んだ表を見てもよくわかりませんが、地図やグラフを使うため直感的に理解できます。

勘や経験や思い込み(KKO)ではなく、データに基づく政策立案 (EBPM:Evidence-Based Policy Making)が実施可能です。

なおRESASで使用するデータは、その多くが公的機関が作成したデータ(公的統計および公的統計以外の官庁作成データ)で、もちろん信頼できるデータばかり。

ただし「人口構成メニューの総人口データ」のデータ更新日は2020年8月など、最新データばかりではない点がRESASの短所と言えます。

(参考)
RESAS:MAP SOURCE マップ出典一覧
RESAS:UPDATE RESASデータ更新日

RESASを利用できる環境

RESASを利用するには、インターネットに接続されたパソコンやスマホなどの端末が必要です。

またFAQでは、以下の利用環境を推奨しています。

  • CPU:Intel core 2 Duo CPU E7500以上
  • OS:Windows 7(64bit)以降
  • ソフトウェア:Google Chrome 41.0 以降
             Internet Explorer 11 以降

RESASの関連サービス

RESASには、次の関連サービスがあります。

①RESAS API

RESAS APIとは、RESASに搭載された公的データについて、機械判読可能で、加工しやすい形式で取得できるAPI(Application Programming Interface)機能です。

API機能によって、地域の分析や魅力発見などに役立つアプリケーション開発につながることを期待して、2016年11月にリリースされました。

こちらのポータルサイトから利用登録を行えば、誰でも無料で利用できます。
RESAS API

②V-RESAS

V-RESASとは、新型コロナが地域経済に与える影響を可視化し、地方公共団体の政策立案や金融機関・商工団体の中小企業支援をサポートするWebアプリケーションです。

V-RESASの「V」は、「Vital Signs of Economy(経済のバイタルサイン)」の頭文字から名付けられました。

「刻々と変化する経済の状況を可視化する」という意味が込められており、経済の足下の状況を把握すべく、最速1週間おきにデータを更新

リアルタイムに近い形で、地域経済の健康状態を把握可能です。
V-RESAS

 

 

RESAS(地域経済分析システム)の機能

次に、RESAS(地域経済分析システム)の機能をご紹介します。

RESAS(地域経済分析システム)の機能

RESAS(地域経済分析システム)には以下のような機能があります。

トップページ 出典:RESAS

 

  • ①ロゴマーク:クリックするとトップ画面に移動
  • ②メインメニュー:マップやグラフを表示するためのメニュー。大項目→中項目1→中項目2→小項目とクリックしていき、目的のマップまたはグラフを選択する
  • ③ヘルプ:クリックするとヘルプ画面に移動
  • ④ダッシュボード:クリックするとダッシュボード画面に移動。ダッシュボードとは、マップやグラフの画面で地域や項目を設定した状態を登録しておくもの
  • ⑤サマリー:クリックするとサマリー機能画面に移動。表示する地域や合算地域・比較地域を選択することで、当該地域の実態をRESASのデータを用いて簡易に表示し、EXCEL 形式のファイルとしてダウンロードすることができる
  • ⑥問合せ:クリックすると問合せ用のチャットウィンドウが表示される
  • ⑦データ分析支援 :クリックするとデータ分析支援機能画面に移動。RESAS に搭載されている数多くのデータ・分析グラフの中から、第二次産業・第三次産業等、分析テーマに沿った代表的な分析画面を抽出して順に表示する
  • ⑧ニュース・イベント:クリックすると、画面下部のNEWS&EVENTエリアにジャンプする
  • ⑨関連サービス:クリックすると画面下部のSERVICEエリアにジャンプする
  • ⑩RESAS とは・関連情報 :クリックすると、画面下部のABOUT&RELATED INFORMATIONエリアにジャンプする

 

RESASのマップ一覧

RESASで確認できるマップは次のとおりです。

  1. 人口マップ:人口推計・推移、人口ピラミッド、転入転出などを、地域ごとに比較しながら把握可能
  2. 地域経済循環マップ:自治体の生産・分配・支出におけるお金の流入・流出が把握可能
  3. 産業構造マップ:地域の製造業、卸売・小売業、農林水産業の構造が把握可能
  4. 企業活動マップ:地域の創業比率や黒字赤字企業比率、特許情報等が把握可能
  5. 消費マップ:POSデータによる消費の傾向や外国人の消費構造が把握可能
  6. 観光マップ:国・地域別外国人の滞在状況等のインバウンド動向や、宿泊者の動向等が把握可能
  7. まちづくりマップ:人の流動や事業所立地動向、不動産取引状況など、まちづくり関係の情報が把握可能
  8. 医療・福祉マップ:地域の雇用や医療・介護について、需要面や供給面からの把握が可能
  9. 地方財政マップ:各自治体の財政状況が把握可能

各マップには、さらに下図のようなメニュー(中項目)があります。

 

 

RESAS(地域経済分析システム)の使い方

次に、RESAS(地域経済分析システム)の使い方をご紹介します。

マップの表示方法

各データのマップを表示させるには、まずRESASサイトを訪問し、画面左上にある「メインメニュー」をクリック。

マップ名(大項目)が表示されるので選択し、次に中項目1を選択します。
さらに「全産業の構造」・「稼ぐ力分析」などの中項目2を選択するとマップ画面が表示されます。

マップ・グラフ共通機能の使い方

トップ画面でマップを選択すると各マップ画面に切り替わり、以下のような機能を使うことができます。

出典:RESAS
  • ①メインメニュー:マップやグラフを表示するためのメニュー
  • ②指定地域(都道府県/市区町村):必要に応じて、ほかの地域(都道府県/市区町村)を選択することも可能
  • ③ヘルプ:クリックするとヘルプ画面に移動
  • ④右メニュー:マップやグラフで表示する地域の単位や年度を指定する。表示される項目はマップによって異なる
     ● 表示レベル:表示されるマップの縮尺が変わる
     ● グラフを表示:このボタンがある場合は、グラフを表示できる
     ● 他の自治体と一体的に見る(合算、比較) :「指定地域」で指定している地域に、他の自治体を合算できる
     ● ダウンロード:表示されているマップに関するデータをダウンロードできる
  • ⑤マップの説明 :マップに関するデータの出典、注記、その他の留意点が表示される
  • ⑥ダッシュボード:マップやグラフの画面で地域や項目を設定した状態を登録するダッシュボードを使用できる
  • ⑦追加する(ダッシュボード):クリックすると、現在表示されているマップやグラフが、ダッシュボードへ追加される
  • ⑧Facebook:クリックすると、自分のFacebookアカウントにコメントをつけて、表示されているマップやグラフ画面をシェアできる
  • ⑨Twitter:クリックすると、自分のTwitterアカウントにコメントをつけて、表示されているマップやグラフ画面をシェアできる
  • ⑩画面キャプチャ:クリックすると、画面キャプチャーに名前をつけて保存できる
  • ⑪マップ検索機能:検索ワードを指定して、表示中のマップから施設名・住所・データソース・緯度経度情報を検索できる

マップ検索機能の使い方

上記「⑪マップ検索機能」の検索対象は、RESAS上の自治体や表彰・補助金採択、特許分布図、施設周辺人口、YOLP(Yahoo! Open Local Platform)の各ポイント情報です。

検索機能を使うには、画面左上の検索ワード入力フォームに、検索したい検索ワードを入力。

検索結果が入力フォームの下部に一覧表示されます。
結果のいずれかをクリックすると詳細情報が表示され、マップ上の該当箇所を中心にマップが移動し、該当箇所にピンが表示されます。

出典:RESAS

詳細情報の右に表示される「保存する」をクリックすると、マップ上のピンの位置を保存可能。

保存済みのピンは「ピン保存一覧」で確認できます。
一覧のピンをクリックすると、マップ上で該当するピンの色が変わり、そのピンを中心にマップが移動します。

グラフの使い方

マップ画面で「グラフを表示」ボタンをクリックするとグラフの画面に切り替わり、以下のような機能を使うことができます。

出典:RESAS
  • ①右メニュー:グラフで表示する地域の単位や年度を指定する。表示される項目はグラフによって異なる
     ● 他の自治体と一体的に見る(合算、比較):「指定地域」で指定している地域に他の自治体を合算できる
     ● ダウンロード:表示されているマップに関するデータをダウンロードできる
  • ②グラフの説明:グラフに関するデータの出典、注記、その他の留意点が表示される
  • ③閉じるボタン:グラフ画面を閉じてマップ画面に戻るときにクリック

「他の自治体と一体的に見る」方法

「指定地域」で指定している地域と他の自治体を一体とした形で、マップや各マップから表示されるグラフを見ることができます。
一体的に見る地域は、最大で30地域まで選択可能。

使い方は、まず都道府県の入力欄をクリックし、プルダウンから一体的に見たい都道府県を選択します。

同様に市区町村の入力欄をクリックし、一体的に見たい市区町村を選択。
「+追加」をクリックすると、「他の自治体と一体的に見る」に、追加した地域
が表示されます。

RESAS(地域経済分析システム)の利活用事例集

さまざまなデータを自由に確認できるRESAS(地域経済分析システム)ですが、自由だからこそ、使い方には「コツ」が必要。
そして「使い方のコツ」を知るには、活用事例を見るのが一番です。

そこで記事の最後に、RESAS(地域経済分析システム)の利活用事例をご紹介します。

[事例①]「豊岡鞄」のブランド力再構築と海外展開促進(兵庫県豊岡市)

まずは、兵庫県豊岡市での事例です。
利活用事例の全体像は下図のとおりで(クリックして拡大できます)、分析②~⑤でRESASを使用。

出典:RESAS

まず、庁内でSWOT分析を実施し、職員が日頃から感じているかばん製造業の強み・弱み・機会・脅威を整理ところ、以下の現状を認識(分析①)。

  • 市のかばん製造業は、OEM 生産で培った技術力等の強みがある一方で、自社ブランド構築が遅れているという弱みがある

次に、RESASの「産業構造マップ-全産業の構造、稼ぐ力分析」などで、市内産業の付加価値額や従業者数を確認します(分析②)。

その結果、下図の「稼ぐ力分析」では、「かばん製造業」の特化係数(付加価値額)は74.34、特化係数(従業者数)は51.40と、突出して高い水準に。
これによって「かばん製造業」が市内の基盤産業であることが裏付けられました。

出典:RESAS

「分析③」として、RESASで「産業構造マップ-従業者数(なめし革・同製品・毛皮製造業)」を見たところ、豊岡市では従業者数が増加しており、「これまでの施策が従業者数の増加という成果に結び付いている」ことの裏付けに。

次に、RESASの「地域経済循環マップ-地域経済循環図[2010年]」を確認することで、市の第2次産業における労働生産性は低調であることが分かりました(分析④)。

さらに「分析⑤」として、下図の「産業構造マップ-労働生産性(なめし革・同製品・毛皮製造業)[2012年]」から、市の労働生産性は284万円/人であり、全国平均の320.6万円/人および兵庫県平均の326.4万円/人を下回ることが判明します。

出典:RESAS

分析⑤までのデータにより、次のような点が判明。

  • 市のかばん製造業の労働生産性は高い水準ではなく、改善の余地がある
  • かばん製造業の労働生産性を改善することにより、第2次産業における労働生産性を改善することができる
  • 市のかばん製造業はOEM生産に依存していることが分かったが、そのことが労働生産性を低くしている一因であると推察される

これらを踏まえ、さらに独自分析を進めることで(分析⑥~⑧)、「豊岡鞄を海外へ広げる好機」と判断。
支援機関等と連携した個別企業の海外進出支援などを、今後検討していくこととなりました。

RESASを利活用した豊岡市エコバレー推進課の担当者は、「他自治体のデータは非公開となっているケースが多いなか、自治体間比較がRESASの強み」と述べています。

(参考)
RESAS:兵庫県豊岡市「豊岡鞄」のブランド力再構築と海外展開促進

[事例②]主力産業である家具関連産業に関する分析(福岡県大川市)

次に、福岡県大川市での事例です。
利活用事例の全体像は下図のとおりで(クリックして拡大できます)、分析①~④、⑥、⑧でRESASを使用。

出典:RESAS

まずは「産業構造マップ-全産業の構造」などを利用することで、「課題の見える化」を行いました(分析①~⑤)。

次に「分析⑥」として、下図のRESAS「産業構造マップ-労働生産性(企業単位)[2012年]」を使用したところ、大川市の労働生産性は比較5自治体のなかで3番目の水準であり、全国平均を下回っていることが分かります。

出典:RESAS

さらに家具産業を観光資源として活用するために、大川市の観光に関する分析を行います。

下図のRESAS「まちづくりマップ-滞在人口率[2015年]」を確認すると、日中の滞在人口は休日よりも平日の方が多いことが判明(分析⑧)。
これは、市内に教育機関や医療機関が立地している影響と推察されました。

出典:RESAS

ここまでRESASなどを利活用した分析によって、次の点がわかります。

  • 大川市の「家具・装備品製造業」は全国の有名家具産地に比べ、日本全国に広く販路を有している
  • BtoBの取引が中心となっているため、販路が多いにもかかわらず付加価値額の増加や認知度の向上につながっていない
  • 来訪者と大川家具の接点となる施設により、大川家具の認知度向上やBtoCビジネスの強化、家具産業を活かした観光地としての魅力向上につながる

これらを踏まえ、市は従来のBtoBに加えて、BtoCの強化を図るため「首都圏や海外における展示会の開催」などの施策を進めていく予定です。

なお、RESASを利活用した大川市インテリア課の担当者は、「これまではどうしても肌感覚的な部分に頼らざるを得なかった家具産業の現状が、RESASの分析によって客観的なデータに基づき可視化することができた」と述べています。

(参考)
RESAS:兵庫県豊岡市「豊岡鞄」のブランド力再構築と海外展開促進

まとめ:RESAS(地域経済分析システム)の活用を

この記事では、RESASの制度概要や機能、使い方、利活用事例までご紹介しました。

マップなどで直感的に理解でき、とても使いやすいシステムです。
ぜひ記事を参考に、あなたの企業の経営でもRESASを活用してみてください。