無料・登録不要で使える中小機構の「経営自己診断ツール」利用方法を解説!

経営者の方にとって「経営上の悩み」は尽きないと思いますが、そんな悩みを少しでも軽減してくれるツールが「無料」で提供されていることはご存知ですか?

今回ご紹介する中小機構の「経営自己診断ツール」もそんなツールのひとつ。

この記事では、無料・登録不要でカンタンに使える「経営自己診断ツール」について、基本情報や特徴、利用方法まで解説していきます。

「無料ツールを使って、経営上の悩みを減らしたい」という経営者の方は、ぜひご覧ください。

無料・登録不要で使える中小機構の「経営自己診断ツール」とは?その3つの特徴

まずは、「経営自己診断ツール」がどのようなものか、その基本情報と特徴をご紹介します。

「経営自己診断ツール」とは?

「経営自己診断ツール」とは、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)によって開発された、無料で使える経営支援ツールです。

ウェブサイト上で決算書の財務データを入力することで、業界内における各財務指標値の優劣の確認が可能に。
自社の特徴や課題を把握できるため、経営の意思決定に役立ちます。

なお今回ご紹介している「経営自己診断ツール」と、CRD協会が作成した「中小企業経営診断システム(McSS)」とは別システムですので、混同しないよう注意してください。

「経営自己診断ツール」の3つの特徴

「経営自己診断ツール」には、次の3つの特徴があります。

特徴1:登録不要で財務状況を即座に把握可能

「経営自己診断ツール」では、企業名や個人情報などの情報は登録不要です。

あとは財務データを入力するだけで、即座に財務状況と経営危険度を把握できます。
入力する財務データも保存しないため「データの流出」がありません。

ただし、定期的に使うことを想定しているため、「前回入力値を反映」ボタンによって入力画面での数値入力を省くことができるよう設計されています。
そのため「入力数値」だけは、Cookieとして使用者のパソコン内に保存されます。

特徴2:約200万社の財務データと比較可能

中小企業金融の円滑化を図る目的で、経済産業省・中小企業庁の主導により開発された「中小企業信用リスク情報データベース(CRD)」に蓄積されている、約200万社の財務データと比較が可能です。

同業他社の大量データとくらべることで、業界内における自社の「財務指標値の優劣」を点検できるほか、収益性・効率性・生産性・安全性・成長性の5項目における経営状態を点検できます。

特徴3:経営危険度をチェック可能

同業種の「デフォルト企業(倒産・借入金の延滞などで債務不履行となった企業の総称)」とくらべることで、自社の「経営の危険度」をチェックすることができます。

「経営自己診断ツール」の利用方法を解説

次に、「経営自己診断ツール」の利用方法を解説します。

[利用方法①]自社の財務データを入力する

まずはこちらの「経営自己診断ツール」ウェブサイトを訪れます。

中小機構:経営自己診断システム

次に「診断スタート」ボタンをクリック → 利用規約を確認 → 入力画面へ行き、自社の基本情報と財務データを入力しましょう。

出典:経営自己診断システム

「成長性指標」が不要なときは、「前期項目」欄の「□ 前期決算書項目を入力しない」にチェックを入れてください。
すべての項目を入力し終えたら、画面最下段の「診断」ボタンをクリックします

出典:経営自己診断システム

なお、入力されたデータは、下記の式にあてはまるかチェックされます。
この式が成り立っていないときは、不備として処理されますので、表示されるコメントに従い項目を修正してください。

  • 流動資産合計  ≦  資産合計
  • 土地  ≦  有形固定資産合計
  • 固定資産合計  ≦  資産合計
  • 短期借入金  ≦  流動負債合計
  • 純資産合計  ≦  資産合計
  • 売上総利益  ≧  営業利益
  • 有形固定資産合計  ≦  固定資産合計
  • 流動資産合計+固定資産合計  ≦  資産合計
  • 流動負債合計+長期借入金・社債+純資産合計  ≦  資産合計
  • 営業利益  ≦    売上高

[利用方法②]3つの診断結果を確認する

「診断」ボタンをクリックすると数秒で結果が表示されるので、内容を確認しましょう。

結果画面の右上にある「診断結果をPDFで確認する」をクリックすると、すべての結果がA4用紙6枚にまとまり、確認しやすくなるPDFが作成できるためオススメです。

そして「経営自己診断ツール」では、次の3つの分析結果が表示されます。

①総合分析結果

「総合分析結果」では、「収益性」・「効率性」・「生産性」・「安全性」・「成長性(前年指標を入力した場合のみ)」と、それを構成する27指標の総合結果が表示されます。
自社の「強み」と「課題」が一目でわかるほか、着目すべき個別指標まで確認可能です。

〈表示項目〉

  • 1:選択した「業種」と、その業種に属する「サンプル企業数」を表示
  • 2:5つの項目(収益性・効率性・生産性・安全性・成長性)ごとの平均点を表示
  • 3:診断の結果、最も得点が高い項目と低い項目を表示
  • 4:項目ごとの診断結果(27の指標の得点など)を表示
    ・晴れ = 業界中央値を上回っています
    ・晴れときどき曇り= 業界中央値と同等です
    ・曇り= 業界中央値を下回っています

なお各指標における「得点」は、下表のルールにもとづき決められています。

得点 指標値の範囲
10点 上位5%以上
9点 上位5%~上位15%
8点 上位15%~上位25%
7点 上位25%~上位35%
6点 上位35%~上位45%
5点 上位45%~上位55%
4点 上位55%~上位65%
3点 上位65%~上位75%
2点 上位75%~上位85%
1点 上位85%~上位95%
0点 上位95%未満(下位5%以下)

また、各項目における指標の意味や算出式を知りたいときは、こちらの資料で確認してください。

経営自己診断システム:個別指標解説一覧表

②個別指標分析結果

「個別指標分析結果」では、27の指標について、自社の値と同業他社の「業界値」で比較することができます。

〈表示項目〉

  • 1:「診断項目名」を表示
  • 2:27の指標について、自社の得点と評価を表示
    ・A = 業界中央値より優れている
    ・B = 業界中央値よりやや優れている
    ・C = 業界中央値
    ・D = 業界中央値よりやや劣っている
    ・E = 業界中央値より劣っている
  • 3:自社と業界の中央値、上位30%の指標値を表示
  • 4:業界内でのポジションを表示
  • 5:「特に改善が必要な指標」を表示

 

③倒産リスク分析結果

「倒産リスク分析結果」では、安全性項目の10指標に注目して、「業界標準」や「デフォルト(倒産)企業値」とくらべることで、自社の倒産リスクを知ることができます。

「デフォルト企業」の得点を下回る指標は、今後の資金繰りに悪影響を与える可能性があるため注視してください。

〈表示項目〉

  • 1:安全性についての得点を表示(業界水準は50点、満点は100点)
  • 2:安全性の評価と、安全性項目10指標の詳細をグラフで表示
    ・安全ゾーン = 業界標準以上
    ・警戒ゾーン = デフォルト企業以上、業界標準未満
    ・危険ゾーン = デフォルト企業未満
  • 3:安全性項目10指標について、自社・デフォルト企業・業界中央値の得点と指標値を表示

なお「デフォルト企業」とは、業績悪化によって金融機関からの借入金を返済できなくなった企業の総称です。
具体的には、次のいずれかに該当する企業をいいます。
・金融機関への借入金返済が3ヶ月以上滞っている
・法的・形式的に破綻している
・法的・形式的には破綻していないものの、実質的に破綻している
・信用保証協会による借入金の代位弁済(肩代り)を受けた

 

[利用方法③]結果から対策を検討する

最後に、分析結果から自社における今後の対策を検討します。

ただ、いきなり「対策を考えよう」としても、慣れていなければ何をしたらいいかわからないもの。
そんなときにオススメなのが、同じ中小機構が提供している経営相談チャットサービス「E-SODAN(イーソーダン)」です。

中小機構:E-SODAN(イーソーダン)

E-SODANでは、経営に関する悩みにAIチャットボットが答えてくれます。
AIですから、場所や時間を選ばずいつでも気軽に利用可能。

もしAIチャットボットで回答できない場合や、はじめから専門家に相談したいときは、専門家にもチャット相談ができます。

専門家の場合は、受付時間が平日9~17時となりますので、上手に利用しましょう。

 

その他、無料で使える便利な経営支援ツール

記事の最後に、上記でご紹介した「経営自己診断ツール」や「E-SODAN(イーソーダン)」の他にもある、無料で使える便利な経営ツールをご紹介します。

[経営支援ツール①]ローカルベンチマーク(ロカベン):経済産業省

ローカルベンチマーク(通称「ロカベン」)とは、経済産業省が作成し、公開している「健康診断ツール」です。

ツールに企業のデータを入力していくことで「財務分析シート」など3つのシートが完成し、経営状態や経営に活かせる「強み」などを把握できます。

ロカベンをくわしく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

ローカルベンチマークとは?使い方やミラサポplusの活動レポート、事例まで紹介

経済産業省:ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)

[経営支援ツール②]財務診断サービス:日本政策金融公庫

日本政策金融公庫が提供する「財務診断サービス」は、決算書の財務データを入力することで、財務指標の推移の確認や業界平均値との比較が行えるウェブサービスです。

こちらも社名などは入力不要ですので、気軽に利用できます。

日本政策金融公庫:財務診断サービス

[経営支援ツール③]経営計画つくるくん:中小機構

「経営計画つくるくん」は、中小機構が開発したアプリで、経営計画の基本知識からつくり方まで学べて、実際に計画書をつくることもできます。

現時点では、以下のパソコン・スマホ・タブレットにインストールして使用可能です。

  • Windows PC・タブレット(Windows 10およびWindows 8.1)
  • アンドロイド スマホ・タブレット(Android 4.0 以上)
  • iPad(iOS 9.0 以上)

中小機構:経営計画つくるくん

[経営支援ツール④]統計グラフ化ツール「グラレスタ」:ミラサポplus

中小企業向け補助金・総合支援サイトの「ミラサポplus」で公開されている、統計グラフ化ツールが「グラレスタ」です。

「グラレスタ」を使えば、経産省が毎月集計している約1,600品目の鉱産物・工業品について、誰でもカンタンに10年分の統計データをグラフ化できます。
その結果、市場動向が把握できるため、経営判断にも利用可能です。

統計グラフ化ツール「グラレスタ」については、こちらの記事でよりくわしくご紹介しています。

ミラサポplusの統計グラフ化ツール「グラレスタ」とは?特徴や利用方法も解説

ミラサポplus:統計グラフ化ツール(グラレスタ) | トップ

まとめ:「経営自己診断ツール」で適切な経営判断を

この記事では、「経営自己診断ツール」について、基本情報や特徴、利用方法まで解説してきました。

無料・登録不要でカンタンに使える、有益な経営支援ツールです。
ぜひ「経営自己診断ツール」を利用して、適切な経営判断につなげていきましょう。

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以下の記事でお勧めの13種類を纏めていますので、合わせてお読みください。