中小企業が利用しやすい「制度融資」とは?種類や申込方法を紹介

「事業を拡大したい」「資金繰りを安定させたい」という思いから資金調達を考える経営者も多いでしょう。

しかし、民間の金融機関に融資を依頼しても、中小企業が初めての融資をしようとしても「信用力が足りない」と判断されたり、担保提供ができなかったりで、思うように融資を受けられないことも多いのが現実です。

そんな時に、強い味方となってくれるのが政府系の融資制度である「制度融資」です。
この記事では制度融資の利用を検討する方のお役に立つよう、制度融資の仕組みや種類、利用の方法について紹介していきます!

制度融資とは?

制度融資とは?

制度融資は、中小企業や小規模事業者、個人事業主向けに、地方自治体・民間の金融機関・信用保証協会が連携して提供する融資制度のことです


よく「銀行は雨の日に傘を貸してくれない」といわれますが、銀行は業績に不安のある企業に対して新規の融資をすることはまずありません。
なぜなら、融資をしたのにもかかわらず債務不履行となり返済をしてもらえなくなったら、大きな損失を受けるからです。
そのため、基本的には将来性があり、融資した額を返済ができると確信を持つ場合にしか融資はできないのです。


中小企業や小規模事業者、個人事業主は、一時期の業績の落ち込見でも、すぐに会社の存続に影響を与えることがあります。
特に、業歴が短く資産の形成ができていなければ、業績が落ち込んだら資産の切り崩しもできないからです。
そのため、中小企業や小規模事業者、個人事業主への融資は、銀行にとって積極的に行いにくいのです。

 

しかし、日本は中小企業が99.7%を占めており、中小企業が日本経済において非常に重要な役割を担っています。
ですから、中小企業が活力を失えば景気は一気に悪化します。


そして中小企業が事業を拡大したり、業績を安定させるためには、自己資金意外に融資を取り入れることが不可欠です。
そのため、積極的に融資をしたいところですが、債務不履行が重なり金融機関の損失が膨らめば、その金融機関が経営の危機に陥ります。


この問題解消のために、制度融資があります。
信用保証協会が融資の保証人となったり、地方自治体が預託金を金融機関に提供したり、保証料や金利の一部を負担してくれる制度です。

金融機関としては貸し倒れのリスクを減らすことができ、プロパー融資(銀行からの直接融資)よりも、中小企業への貸出がしやすくなるのです。

保証協会が公的な保証人となってくれる

保証協会とは、「保証協会法」に基づき設置された公的な機関で、中小企業・小規模事業者の金融の円滑化を目的としています。

中小企業・小規模事業者は、保証協会に対して保証料を支払うことにより、民間の金融機関の融資に保証をつけることができるため、ぐっと融資がおりやすくなります

担保が準備できない中小企業でも大丈夫

民間の金融機関で中小企業がプロパーでの融資(保証協会を利用しない直接的な融資)を受けようとした場合には、不動産や定期預金などの担保の差し入れが必須となります。

しかし、業歴が短く、財務状況が盤石ではない場合には、担保の差し入れが難しいという場合も多くあるでしょう。

また、不動産は価格変動があるので、たとえば不動産価値の70%など掛け目をかけた分の範囲しか融資は受けられません。(各金融機関ごとに規定があります。)
そのため、既に担保の枠一杯に融資を利用している場合は新規の融資を受けられなくなってしまいます。

このような担保が準備できない場合でも、保証協会に公的な保証人となってもらうことにより、民間の金融機関からの融資が受けやすくなるのです。

返済不能時には保証協会が代わりに返済

万が一、融資を受けていた企業が返済不能となった場合には保証協会が金融機関に対して代位弁済をしてくれます。

かつては、100%保証協会が代位弁済をしていましたが、現在の制度では一部の融資を除き保証協会の負担は80%、金融機関の負担が20%と責任を共有しています。

金融機関としては、債務者が返済不能となった場合にも残債の80%が戻ることにより、プロパー融資に比べるとかなり負担が少なくなるのです。

 

以下の記事でも信用保証協会について詳しく紹介しています。

融資を受けやすくなる信用保証協会の保証とは?仕組みや保証の種類を紹介!

制度融資を受けられる企業規模は業種によって異なる

制度融資を利用するためには、以下のすべての条件を満たす必要があります。(東京都の場合)

  • 中小企業者または組合であること。
  • 都内に事業所(住居)があり、保証協会の保証対象となる業種を営んでいること。
  • 事業税または法人税(個人については所得税)を納付していること。
  • 許可、認可、登録、届出等が必要な業種にあっては、当該許認可等を受けていること。

中小企業者の定義として、資本金か従業員数の基準のどちらかを満たす必要があります。
また資本金や従業員の基準は、業種によって異なります。

たとえば、製造業等 (ソフトウェア業・情報処理業、建設業、不動産業、運搬業、出版業などを含む。)の場合は、資本金3億円以下か従業員数300人以下 のどちらかを満たす必要があります。

卸売業は資本金1億円以下か従業員数100人以下
小売業・飲食業は資本金5千万円以下か従業員数50人以下
サービス業は資本金5千万円以下か従業員数100人以下 (旅館業は200人以下)と、
資本金・従業員数の条件は、業種により異なります。

制度融資はいろいろな枠から選べる

制度融資にはさまざまな種類があり、企業のニーズに合わせた融資を受けることができます。

 

ここでは東京都の例を一部紹介します。
参考:東京都産業労働局

https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/kinyu/yuushi/yuushi/

自治体によっても異なる場合がありますので、詳細は各自治体のホームページで確認してみてください。

中小企業の資金調達の強い味方

制度融資の一般枠は東京都に限らず全国で利用できる融資制度で、幅広い用途で利用できます。

対象者は中小企業または組合となり、融資上限は担保なしで8,000万円、担保有りで2億円の計2億8,000万円です。

運転資金は7年以内、設備資金は10年以内の融資期間で、返済をしなくても良い据置期間はそれぞれ6か月以内となります。

金利は金融機関(銀行等)が定めるものになります。

機械購入など設備投資に利用できる融資

特に製造業などでは、製品を作るための機械導入などにお金がかかるケースもあるのではないでしょうか。

制度融資の中には、事業に必要な機械・装置、工具・器具、備品などの導入・増強・改良・補修など設備投資に利用できる制度融資もあります。

融資上限は担保なしで8,000万円、担保有りで2億円の計2億8,000万円です。

融資期間は15年以内で据置期間は2年以内です。

この融資では保証料の⅔を負担してもらえます。

金利は融資期間や責任共有により異なるので、自治体や保証協会へ問い合わせをお勧めします。

事業承継に必要な資金を調達

事業承継では、後継者が資産や株の取得をするなどお金がかかることが多いものです。
このような事業承継に必要な資金調達のための制度融資もあります。

利用できるのは、上述の条件に加えて次の(1)から(4)までのいずれかに該当する方です。

  1. 事業承継を 10 年以内に行う計画を策定し、計画の実行に取り組む方
  2. 事業を承継した日から 5 年未満であって、事業計画を策定し、承継後の経営の安定化等に取り組む方
  3. 事業承継に伴い、事業活動の継続に支障が生じているとして、都道府県知事の認定を受けた方
  4. 事業活動の継続に支障が生じている他の中小企業者の事業承継に伴い、都道府県知事の認定を受けた方

また、資金使途については、上記のの場合、運転資金・設備資金として利用できます。

の場合、他の中小企業者の経営の承継に不可欠な資産を取得に必要な資金です。
下記のいずれかが対象になります。

  •  
    事業用資産等の取得資金
  • 株式等の取得資金
    ※会社の株式等に限る
    ※株式等を取得することにより、他の中小企業者の総株主等議決権数の50%を超える議決権数を有することとなる場合に限る 

融資上限は担保なしで8,000万円、担保有りで2億円の計2億8,000万円となります。

融資期間は10年以内で据置期間は2年以内です。

こちらの制度では保証料の½を補助してもらうことができます。

金利は融資期間や責任共有により異なるので、自治体や保証協会へ問い合わせをお勧めします。

新たな事業展開資金としてのチャレンジ融資

新しい事業展開をしようとしている企業向けにチャレンジ融資という制度融資もあり、次のからのいずれかに該当する中小企業者又は組合が利用できます。

  1. 公的機関の認定・認証・登録等を受けて実施する事業を行うこと。
  2. 東京都等の助成金の交付決定を受けた事業を行うこと。 
  3. 令和2年度において東京都が重点的支援を行う事業等を行うこと。

融資限度額は1億円で、融資期間は運転資金・制度融資共に10年以内、据置期間は2年以内です。

金利は融資期間や責任共有、または全部保証により細かく異なるので、自治体や保証協会へ問い合わせをお勧めします。

創業時に必要になる資金も調達可能

新しく事業を始める前、事業を始めて5年以内などの条件を満たした場合に利用できる制度融資もあります。

詳しくは創業融資について説明した記事がございますのでこちらを参考にしてください。

売上減少や災害時に利用できる経営セーフ

売上減少や災害時に利用できる経営セーフというセーフティネット保証を付ける融資制度もあります。

このセーフティ保証は1号〜8号までの種類があり、利用するには各号の認定要件をクリアして、区市町村長の認定書(信用保険法第 2 条第 5 項に係る認定)が必要です。

融資上限は担保なしで8,000万円、担保有りで2億円の計2億8,000万円です。

融資期間は10年以内、据置期間は2年以内となります。

今回の新型コロナウイルス感染症による影響を受けた方にもセーフティネット4号と5号の保証を利用した融資が用意されています。
詳しくは新型コロナウイルス感染症向けの融資について説明した記事がございますので、こちらを参考にしてください。

働き方改革をしている企業向けの制度も

社会課題解決融資(社会課題)として、今注目されている「働き方改革」に取り組んでいる企業向けの融資もあります。

この制度を利用することができるのは、からのいずれかに該当する中小企業者又は組合です。

 
  1. 東京都の「ワークスタイル変革コンサルティング」の支援を受け、テレワークに取り組んでいること。  
  2. 東京都の「業界団体連携によるテレワーク導入促進事業」の支援を受け、テレワークに取り組んでいること。  
  3. 東京都の「テレワーク活用・働く女性応援助成金(テレワーク活用推進コース)テレワーク機器導入事業」の助成を受け、テレワークに取り組んでいること。  
  4. 東京都の「テレワーク活用・働く女性応援助成金(テレワーク活用推進コース)サテライトオフィス利用事業」の助成を受け、テレワークに取り組んでいること。
  5.  東京都の「TOKYO働き方改革宣言企業」の承認を受け、働き方改革に取り組んでいること(。平成 29 年度以降に承認を受けた企業に限る。
  6. 東京都の「家庭と仕事の両立支援推進企業」に登録し、家庭と仕事の両立支援に取り組んでいること。  
  7. 東京都の「時差 Biz」に参加し、時差出勤やテレワークなど働き方の転換に取り組んでいること。

融資上限は担保なしで8,000万円、担保有りで2億円の計2億8,000万円です。

融資期間は、運転資金・設備資金共に10年以内で据置期間は1年以内に設定されています。

金利は期間・責任共有または全部保証により細かく定められていますので、自治体・保証協会へ問い合わせてください。

この融資制度は、全事業者を対象に利子補給があり、保証料の2分の1を負担してもらうことができます。

テレワークの取組みを行う事業の場合、利子補給は保証料の3分の2です。

申し込みの方法を紹介

保証協会が公的な保証人となってくれる

既に民間の金融機関と取引があり、その金融機関が制度融資を実行できる「指定金融機関」の場合は、金融機関に制度融資を利用したい旨を伝えて申し込みの手続きができます。

民間の金融機関と取引がない場合は、信用保証協会に直接申し込んだり、商工会議所・産業労働局など経由で申し込むことができます
ただし、制度内容により申し込みを受け付けていない場合もあるので、事前に必ず融資申込受付機関について確認をしてください。

中小企業が制度融資を利用するにあたり、以下の書類を用意する必要があります。

  • 信用保証委託申込書(※) 1部
  • 信用保証委託契約書(※) 1部
  • 個人情報の取扱いに関する同意書(※) 2部
  • 印鑑証明書(申込人及び連帯保証人のもの)1部
  • 商業登記簿謄本 1部
  • 確定申告書(決算書)の写し(原則直近2期分)2部
  • 納税証明書(法人税<その1>又は事業税)1部
  • 見積書又は契約書の写し(設備資金の場合のみ必要)1部
  • 創業計画書(創業融資を利用する場合及び業歴1年未満の場合に必要)1部

※ 保証協会及びあっせん機関から申し込む場合は、融資あっせん用を使用のこと。

さらに、利用する制度融資により追加で資料提出を求められる場合もあります。

申込から実行までの時間が長いことに注意

制度融資を利用する場合は、信用保証協会の審査と金融機関の審査が必要になります。
そのため、指定金融機関との取引がないという場合は申込から実行までの期間が1か月ほどかかることもあるようです。

しかも、審査に時間がかかったのにも関わらず融資を断られるケースや、想定以下の融資額しか利用できないというケースもあります。
プロパー融資に比べると審査は甘くなりますが、きちんと事業を継続して返済ができるという企業にしか融資はできないからです。

このようなことを頭に入れて、資金調達が必要になったらなるべく早めに申し込みをしましょう

まとめ

制度融資を利用することにより、「信用力がなく担保提供ができない」という場合でも資金調達が受けやすくなります。

信用保証協会の保証をつけた上に、地方自治体が預託金を金融機関に提供したり、保証料や金利の一部を負担したりしてくれるので、金融機関としては融資に対するリスクが減るからです。

制度融資にはさまざまな種類があり、条件を満たすことにより大きな額が借りられたり、低金利で借りられたり、保証料の利子補給があったりします。

ぜひご自身の会社の状況やニーズに合うものを探してみてください。

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融資を受けるまでには、準備や審査の時間がかかります。
申請から入金までに1か月以上かかることもありますので、早めにアクションを開始しましょう。

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