「働き方改革に取り組んで、有給取得促進のルールを設けた」
「新型コロナ感染症対策として、テレワークを新たに導入した」
こういった取組を行う、中小企業の経営者の方を応援する制度が「働き方改革推進支援助成金」です。
しかしコースがいくつもあり、支給ルールも異なるため、わかりにくくなっています。
そこで今回は、働き方改革推進支援助成金の全コースを紹介していきます。
わかりやすくまとめていますので、経営者の方はぜひご覧ください。
また、働き方改革支援助成金以外にも、中小企業が活用できる補助金・助成金はいくつもあります。
以下の記事でお勧めの16種類を纏めていますので、合わせてお読みください。
【最新】中小企業が利用できる補助金・助成金13選!目的・金額・条件を徹底解説
働き方改革推進支援助成金とは
「働き方改革推進支援助成金」とは、労働時間の縮減や有給休暇取得の促進に向けた環境整備を行う中小企業事業主などに対し、費用の一部を助成する制度です。
昨年度までは「時間外労働等改善助成金」という名称でしたが、令和2年度から変更され「働き方改革推進支援助成金」となりました。
コースも変更となり、令和2年度は次の6コースです。
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- テレワークコース
- 新型コロナウィルス感染症対策のためのテレワークコース
- 職場意識改善特例コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 団体推進コース
また上記3と4は、「新型コロナウィルス感染症対策」として新設されました。
「中小企業事業主」の定義
次項以降、対象事業主の項目で「中小企業事業主」が出てきますが、これは次のA・Bどちらかの条件を満たす中小企業です。
①労働時間短縮・年休促進支援コースについて
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)とは
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)とは、生産性の向上を図ることで、働きやすい職場づくりを目指す中小企業事業主ための助成金制度です。
対象事業主
「労働時間短縮・年休促進支援コース」の支給対象となるのは、以下のすべてにあてはまる中小企業事業主です。
- 労災保険の適用事業主である
- 申請時に、成果目標1〜4の設定に向けた条件を満たしている
- すべての事業場で、36協定が結ばれ届け出されている
- すべての事業場で、年5日の有給休暇取得に向けた規程などを整備している
支給される条件
「労働時間短縮・年休促進支援コース」の支給を受けるためには、次の「成果目標」のどれか1つ以上の達成に向けて、「取組」の1つ以上を「事業実施期間」内に実施します。
目標が達成できない場合は、支給されません。
成果目標
以下の成果目標のどれか1つ以上の達成をする必要があります。
- すべての事業場で、時間外労働時間数を縮減し、月60時間以下または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、労働基準監督署長に届け出を行う
- すべての事業場で、週休2日制の導入に向け所定休日を1日から4日以上増加させる
- すべての事業場で、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇)を新規導入する
- すべての事業場で、時間単位の年次有給休暇の規定を新規導入する
取組
上記で選択した1つ以上の「成果目標」の達成を目指して、以下の取り組みを1つ以上行う必要があります。
- 労務管理担当者への研修
- 労働者に対する研修や周知・啓発
- 外部専門家 によるコンサルティング
- 就業規則や労使協定などの作成や変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアの導入や更新
- 労務管理用機器の導入や更新
- デジタル式運行記録計の導入や更新
- テレワーク用通信機器の導入や更新
- 労働能率の増進に資する設備や機器の導入、更新
事業実施期間
取組は以下の実施期間中に行うことが必要です。
- 交付決定の日〜令和3年(2021年)1月29日(金)
「労働時間短縮・年休促進支援コース」の支給額
「取組」に必要となった経費の一部が、「成果目標」の達成状況に応じて支給されます。
支給額は次のどちらか低い方の額です。
- 成果目標①〜④の上限額(下記参照)および賃金加算額の合計額
- 対象経費の合計額 × 補助率3 / 4
また、成果目標ごとの上限額は次のとおりです。
成果目標 ①の上限額
成果目標①「すべての事業場で、時間外労働時間数を縮減し、月60時間以下または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、労働基準監督署長に届け出を行う」の上限額は以下の通りです。
- 月60時間以下に設定した場合: 100万円(取組前は月80時間超)、50万円(取組前は月60時間超)
- 月60時間超 80時間以下に設定した場合:50万円
成果目標 ②の上限額
成果目標②「すべての事業場で、週休2日制の導入に向け所定休日を1日から4日以上増加させる」の上限額は以下の通りです。
- 所定休日 3日以上増加:50万円
- 所定休日 1〜2日増加:25万円
成果目標 ③、④の上限額
成果目標③「すべての事業場で、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇)を新規導入する」、及び成果目標④「すべての事業場で、時間単位の年次有給休暇の規定を新規導入する」の上限額は以下の通りです。
- 50万円
申請方法
「労働時間短縮・年休促進支援コース」の申請の流れは次のとおりです。
- 「交付申請書」を最寄りの労働局雇用環境・均等部に提出する(11/30まで)
- 1ヶ月の審査期間を経て、「交付決定通知書」が届く
- 提出した計画にそって取組を実施する(1/29まで)
- 支給申請書を作成して提出する(2/12まで)
- 支給・不支給の決定通知が届く
- 支給決定の場合は助成金が支給される
各種申請書や書類の記入例は、厚生労働省のサイトで確認できます。
・厚生労働省:「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」
なお、申請窓口の各都道府県労働局の雇用環境・均等部はこちらで確認してください。
・厚生労働省:都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧
申請期限
前項のとおり、「労働時間短縮・年休促進支援コース」では3つの申請(実施)期限があります。それぞれの期日をよく理解しておきましょう。
- 交付申請の期限:令和2年(2020年)11月30日(月)必着(ただし申請状況により、この日付より前に締め切ることもあります)
- 事業実施期限:令和3年(2021年)1月29日(金)まで
- 支給申請の期限:令和3年(2021年)2月12日(金)必着
②テレワークコースについて【2020年度受付終了】
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)とは
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)とは、残業や労働時間の改善のためテレワークに取り組む中小事業主に、費用の一部を助成する制度です。
ただ、残念ながら「多数の申請があった」として、2020年度の新規受付は令和2年(2020年)8月12日で終了しました。
また、「新型コロナウィルス感染症対策のためのテレワークコース」とは別コースでのすので注意してください(こちらは次項で説明しています)。
「テレワークコース」について詳細を知りたい場合は、厚生労働省のサイトをご覧ください。
③新型コロナウィルス感染症対策のためのテレワークコースについて【2020年度2次募集受付終了】
働き方改革推進支援助成金(新型コロナウィルス感染症対策のためのテレワークコース)とは
働き方改革推進支援助成金(新型コロナウィルス感染症対策のためのテレワークコース)とは、コロナ対策の特例として設けられた、時限付きの助成金です。
こちらのコースは、前項でご説明した通常の「テレワークコース」とは別の制度です。
対象事業主
「新型コロナウィルス感染症対策のためのテレワークコース」の支給対象となるのは、「新型コロナウィルス感染症対策として、テレワークを新規導入した」中小企業事業主です。
支給条件
「新型コロナウィルス感染症対策のためのテレワークコース」の助成金を支給されるためには、「事業実施期間」中に以下の両方を実施することが必要です。
- 後述する「助成対象の取組」を行う
- テレワークを実施した労働者が1人以上いる
事業実施期間
2次募集:令和2年(2020年)4月7日〜交付決定の日から起算して1ヶ月を経過した日
助成対象の取組
- テレワーク用通信機器の導入や運用
- 就業規則や労使協定の作成・変更
支給額
「新型コロナウィルス感染症対策のためのテレワークコース」の支給額は、次のどちらか低い方の額です。
- 対象経費の合計額 × 補助率1 / 2
- 1企業あたりの上限額(100万円)
申請方法
「新型コロナウィルス感染症対策のためのテレワークコース」の申請の流れは次のとおりです。
- 「交付申請書」をテレワーク相談センターに提出する(9/18まで)
- 厚生労働省から、「交付決定通知書」が届く
- これから取組を行う場合は、計画にそって取組を実施する
- 事業実施期間終了後、テレワーク相談センターに「支給申請書」を提出する(12/4まで)
- 支給・不支給の決定通知が届く
- 支給決定の場合は助成金が支給される
各種申請書や書類の記入例は、厚生労働省のサイトで確認できます。
・厚生労働省:「働き方改革推進支援助成金((新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース))」
なお、書類の提出先や問い合わせ先はこちらのテレワーク相談センターです。
申請期限
「新型コロナウィルス感染症対策のためのテレワークコース」の2次募集分の申請期限は次のとおり終了しています。
次回の募集は未定です。
- 交付申請の期限:令和2年(2020年)9月18日 必着
- 支給申請の期限:令和2年(2020年)12月4日 必着
④職場意識改善特例コースについて
働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)とは
働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)とは、新型コロナウィルス感染症対策の一つとして設けられた助成金制度です。
「特別休暇」制度を普及させることを目的としており、他の助成金制度よりも申請手続きが緩和されています。
また、申請期限が2020年1月4日まで延長されました。
対象事業主
「職場意識改善特例コース」の対象になるのは、次の2点の両方を満たした中小企業事業主です。
- 労災保険の適用事業主
- 新型コロナウィルス感染症対策として、特別休暇の規定を新規整備した
支給条件
「職場意識改善特例コース」の支給を受けるには、事業実施期間(2020年2月17日〜2021年1月14日 )に、次の取組のどれか1つ以上を実施することが必要です。
支給対象となる取組
- 労務管理担当者への研修
- 労働者に対する研修や周知・啓発
- 外部専門家 によるコンサルティング
- 就業規則や労使協定などの作成や変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアの導入や更新
- 労務管理用機器の導入や更新
- デジタル式運行記録計の導入や更新
- テレワーク用通信機器の導入や更新
- 労働能率の増進に資する設備や機器の導入、更新
「職場意識改善特例コース」の支給額
「職場意識改善特例コース」の取組の実施に必要となった経費の一部が、支給されます。
支給額は、次のどちらか低い方の額です。
- 対象経費の合計額 × 補助率3 / 4
- 1企業あたりの上限額(50万円)
申請方法
「職場意識改善特例コース」の申請の流れは次のとおりです。
- 特別休暇の整備と「支給対象となる取組」を実施する(2021/1/14まで)
- 「交付申請書」を最寄りの労働局雇用環境・均等部に提出する(2021/1/14まで ※2)
- 交付・不交付の「決定通知書」が届く
- 交付決定の場合は「支給申請書」を提出する
- 支給・不支給の「決定通知書」が届く
- 支給決定の場合は助成金が支給される
各種申請書や書類の記入例は、厚生労働省のサイトで確認できます。
・厚生労働省:「働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)」
なお、申請窓口の各都道府県労働局の雇用環境・均等部はこちらで確認してください。
・厚生労働省:都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧
「職場意識改善特例コース」の申請期限
前項のとおり、「職場意識改善特例コース」は3つの申請(実施)期限があります。
また、それぞれの期日は当初の期日から延長されました。
- 事業実施期間:2020年2月17日〜2021年1月4日
- 交付申請書の申請期限:2021年1月4日必着
働き方改革推進支援助成金とは
「勤務間インターバル導入コース」とは
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)とは、「勤務間インターバル」の導入に取り組む中小企業事業主を支援する制度です。
そして「勤務間インターバル」とは、勤務終了後、次の勤務まで一定時間以上の「休息時間」を設けること。
2019年4月から、制度導入が努力義務化されています。
対象事業主
「勤務間インターバル導入コース」の支給対象となるのは、以下のすべてにあてはまる中小企業事業主です。
- 労災保険の適用事業主である
- 次のア〜ウのいずれかにあてはまる事業場を有する
ア:勤務間インターバルを導入していない事業場
イ:すでに休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入しており、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
ウ:すでに休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場 - すべての事業場で36協定を結び、届け出している
- すべての事業場で、年5日の有給休暇取得に向けた就業規則などの整備を行っている
支給条件
「勤務間インターバル導入コース」の支給を受けるためには、次の「成果目標」のどれか1つ以上の達成に向けて、「取組」の1つ以上を「事業実施期間」内に実施します。目標が達成できない場合は、支給されません。
成果目標
事業実施計画で指定した事業場で、休憩時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入すること。
具体的には、次のいずれかに取り組みます。
- ア.新規導入:勤務間インターバルを導入していない事業場で、休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルに関する規定を、就業規則などに定める
- イ.適用範囲の拡大:すでに休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場で、対象となる労働者の範囲を拡大することを就業規則などに定める
- ウ.時間延長:すでに休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場で、休息時間数を2時間以上延長して休息時間数を9時間以上とすることを就業規則などに定める
また上記に加え、「労働者の賃金額の引き上げを3%以上行うこと」を目標にすることも可能です。
支給対象となる取組
- 労務管理担当者への研修
- 労働者に対する研修や周知・啓発
- 外部専門家 によるコンサルティング
- 就業規則や労使協定などの作成や変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアの導入や更新
- 労務管理用機器の導入や更新
- デジタル式運行記録計の導入や更新
- テレワーク用通信機器の導入や更新
- 労働能率の増進に資する設備や機器の導入、更新
事業実施期間
- 交付決定の日〜令和3年(2021年)1月29日(金)
支給額
「取組」に必要となった経費の一部が、「成果目標」の達成状況に応じて支給されます。
支給額は次のどちらか低い方の額です。
- 対象経費の合計額 × 補助率3 / 4
- 支給の上限額
上限額
休息時間数 | 「新規導入」の場合 | 「適用範囲の拡大」または「時間延長」の場合 |
9時間以上 11時間未満 |
80万円 | 40万円 |
11時間以上 | 100万円 | 50万円 |
さらに「賃金額の引き上げ」を成果目標に加えた場合は、引き上げ数の合計に応じて、下表の額を上表に加算できます。ただし、引き上げ人数は30人まで。
引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11人~30人 |
3%以上引き上げ | 15万円 | 30万円 | 50万円 | 1人当たり5万円 (上限150万円) |
5%以上引き上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人当たり8万円 (上限240万円) |
申請方法
「勤務間インターバル導入コース」の申請の流れは次のとおりです。
- 「交付申請書」を最寄りの労働局雇用環境・均等部に提出(11/30まで)
- 交付・不交付の「交付決定通知書」が送付される
- 提出した計画に沿って取組を行う(1/29まで)
- 「支給申請書」を作成して提出する(2/12まで)
- 支給・不支給の「支給決定通知」が届く
- 支給決定の場合は助成金が支給される
各種申請書や書類の記入例は、厚生労働省のサイトで確認できます。
・厚生労働省:「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」
なお、申請窓口の各都道府県労働局の雇用環境・均等部はこちらで確認してください。
・厚生労働省:都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧
申請期限
前項のとおり、「勤務間インターバル導入コース」では3つの申請(実施)期限があります。それぞれの期日をよく理解しておきましょう。
- 交付申請の期限:令和2年(2020年)11月30日(月)必着(ただし申請状況により、この日付より前に締め切ることもあります)
- 事業実施の期限:令和3年(2021年)1月29日(金)まで
- 支給申請の期限:令和3年(2021年)2月12日(金)必着
⑥団体推進コースについて
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)とは、中小企業事業主の団体や連合団体に対して助成する制度です。
中小企業の経営者向けの助成金制度ではありませんので、今回はくわしく解説しません。
制度に興味のある方は、厚生労働省のサイトをご覧ください。
まとめ:働き方改革推進支援助成金の有効活用を
今回は、働き方改革推進支援助成金の全コースをご紹介しました。あなたの企業の取組を補助するコースは見つかったでしょうか。
ご紹介した助成金のなかでも、特に新型コロナ対策の助成金は、比較的申請しやすくなっています。ぜひ助成金を活用して、経営に役立ててください。
「中小企業事業主」の定義
また、働き方改革推進支援助成金以外にも中小企業が活用できる補助金・助成金はいくつもあります。
以下の記事でお勧めの13種類を纏めていますので、合わせてお読みください。
【最新】中小企業が利用できる補助金・助成金13選!目的・金額・条件を徹底解説