2021年6月16・18日に、事業再構築補助金の第1回公募採択結果が公表されました。
新規補助金の初回公募ということで、「申請のポイント」のような情報もなく、手探り状態で苦労された方が多かったのではないでしょうか。
この記事では、事業再構築補助金の第1回公募の採択結果や採択率を確認し、さらに挙げられた3つの課題などもご紹介していきます。
「事業再構築補助金への申請を検討していて、制度や審査の傾向を知りたい」という経営者の方は、ぜひご覧ください。
また、採択結果をもとに独自分析を行った記事も公開していますので、こちらも併せてご覧ください。
【事業再構築補助金】審査結果から独自分析!採択事業の事業種類・投資内容・支援機関を読み解く
事業再構築補助金の第1回公募結果:8,016件・約2,200億円採択
事業再構築補助金の第1回公募は、次の日程で実施されました。
- 2021年3月26日~5月7日
そして6月16・18日に公募採択の結果が公表。
22,231件の応募があり、8,016件が採択されたことがわかっています。
また日刊工業新聞によれば、今回の採択金額は約2,200億円。
事業再構築補助金の総予算額が1兆1,485億円ですので、約1 / 5にあたる金額が採択されました。
次項からは下記資料をもとに、第1回公募の結果や課題などをご紹介します。
・事業再構築補助金事務局:事業再構築補助金 第1回公募の結果について
・厚生労働省:第1回公募終了 ~その傾向と参考事例~(You Tube動画)
【第1回公募結果 ①】応募数と各類型の採択率
「事業再構築補助金」第1回公募の応募数は22,231件でした。
そして各類型の採択率は下表のとおりです。
応募件数 | 採択件数 | 採択率 | |
---|---|---|---|
中小企業等 通常枠 | 16,897件 | 5,092件 | 30% |
中小企業等 特別枠 | 5,167件 | 2,859件 | 55% |
中小企業等 卒業枠 | 80件 | 45件 | 56% |
中堅企業等 通常枠 | 71件 | 12件 | 17% |
中堅企業等 特別枠 | 14件 | 7件 | 50% |
中堅企業等 V字回復枠 | 2件 | 1件 | 50% |
合計 | 22,231件 | 8,016件 | 36% |
全体の合計もそうですが、とくに「通常枠」では、中小企業等で30%、中堅企業等で17%ということで、かなり低い採択率となっています。
たとえば「ものづくり補助金(一般型)」であれば、1次から5次締切までの採択率は31%~62%となっており、合計では42.4%。
事業再構築補助金の「通常枠」だけを合計した採択率は30%ですので、かなりの低さだということがわかります。
また、「緊急事態宣言特別枠」は採択率が高いですが、残念ながら「第2回公募で終了予定」とアナウンスされています。
2021年5月31日に実施された経済産業省の行政事業レビュー「公開プロセス」では、「採択予定件数は約67,000社」と公表。
現状の採択率で、さらに特別枠が終了しては、予定されている全5回の公募で67,000社の採択は到達できません。
そういったこともあったためか経済産業省では、今後の申請に役立つ下記の資料や動画を作成・公表しました。
これから申請を行う方は、必ずチェックしておきましょう。
・事業再構築補助金:電子申請にあたってご注意いただくこと
・第1回公募を振り返って ~事業計画作成のアドバイス~(You Tube動画)
事業再構築補助金の行政事業レビュー「公開プロセス」について知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
事業再構築補助金の行政事業レビュー「公開プロセス」結果を確認!重要項目も解説します
応募の1割が要件満たさず
今回の公募結果資料で特徴的だったのは、下図のように「②申請件数(書類不備等がなく、申請要件を満たした件数)」が公表された点です。
一般的な補助金制度で公表されるのは、「①応募件数」と「③採択件数」のみ。
ですが今回は「②申請件数」が公表されたことで、「応募されたなかで、書類不備等で申請要件を満たさない件数(①−②)」が2,992件もあることがわかりました。
これは応募件数の13%です。
資料「電子申請にあたってご注意いただくこと」では、「要件を満たさなかった申請の事例」として、次の事項を紹介しています。
事例①:売上高減少要件に必要な月別売上高が証明する書類が添付されていない。
事業再構築補助金:電子申請にあたってご注意いただくことより
売上高減少として選択された年月とは異なる年月の書類が添付されている。
事例②:「認定経営革新等支援機関による確認書」 に記載された法人名等が申請者と異なる。
認定経営革新等支援機関ではなく、申請者名で確認書が作成されている。
事例③:経済産業省ミラサポplusからの「事業財務情報」が添付されていない。
事例④:添付された書類にパスワードがかかっている、ファイルが破損している。
「事業計画を作って良かった」という意見が多数
具体的な数字は不明ですが、申請者からの「事業計画を作ってみてよかった」という意見が多数とのことです(動画3分頃)。
当初は「事業再構築指針が難しい」という声が多かったが、実際に進めると「事業の経営戦略を、認定経営革新等支援機関と一緒に作ってみて良かった」という意見が増えたのだそう。
また、「成功しそうな事業計画ほどコンパクトにまとまっている」といいます。
これは「短くコンパクトにすることを意識して書く」ことで、さまざまな不安・問題のなかでも、とくに大事なポイントが見えるため。
わかりにくい再構築指針を読み解いて、新規事業のポイントを絞り、事業計画を作成するというプロセスは、たとえ審査で採択されなかった場合でも、会社の財産となるようです。
【第1回公募結果 ②】業種別の応募・採択割合
業種別の応募・採択数は、下グラフのようになりました。
そして業種別の割合を、上位のランキングでみると次のとおり。
順位 | 応募の割合 | 採択の割合 |
---|---|---|
1位 | E.製造業(23.2%) | E. 製造業(31.7%) |
2位 | M.宿泊業、飲食サービス業(18.0%) | M. 宿泊業、飲食サービス業(21.8%) |
3位 | I.卸売業、小売業(14.9%) | I. 卸売業,小売業(12.4%) |
4位 | D.建設業(8.6%) | D. 建設業(6.7%) |
5位 | N.生活関連サービス業、娯楽業(6.7%) | N. 生活関連サービス業、娯楽業(6.1%) |
応募・採択ともに業種は同じなのですが、割合が変化しています。
特に製造業では、応募割合にくらべ、採択割合が8.5ポイントも上昇しました。
事業計画の特徴
第1回公募の事業計画の特徴として、多かったのは次の内容でした(動画17分頃)。
- 製造業:設備投資
- 飲食業:デリバリー多数、セントラルキッチン導入案も多い
「採択された事業計画」について、まとめられた資料はまだありませんが、こちらの資料も参考になります。
・第1回公募 緊急事態宣言特別枠:事業計画書の概要
・第1回公募 通常枠・卒業枠・グローバルV字回復枠:事業計画書の概要
【第1回公募結果 ③】都道府県別の応募・採択状況
都道府県別の応募状況は、下表のようになりました。
表中の「割合」とは、平成26年経済センサスに基づく、「都道府県毎の中小企業数に占める応募者の比率を算出したもの」です。
応募件数と割合それぞれの、上位ランキングは次のとおり。
順位 | 応募件数 | 割合 |
---|---|---|
1位 | 東京(3,789件) | 香川(0.97%) |
2位 | 大阪(2,184件) | 滋賀(0.94%) |
3位 | 愛知(1,692件) | 東京(0.92%) |
4位 | 兵庫(1,031件) | 奈良(0.88%) |
5位 | 福岡(921件) | 大阪、愛知(0.81%) |
東京のほかは、関西周辺が多いことがわかります。
全国的な傾向としても、北海道・東北は件数・割合ともに少なく、関東や西日本では件数・割合ともに多くなっています。
次に都道府県別の「採択状況」は、下表のようになっています。
採択件数・採択率でもそれぞれの上位ランキングをみると、次のとおりです。
順位 | 採択件数 | 採択率 |
---|---|---|
1位 | 東京(1,205件) | 秋田(47.6%) |
2位 | 大阪(752件) | 岡山(47.5%) |
3位 | 愛知(642件) | 高知(47.4%) |
4位 | 兵庫(372件) | 佐賀(44.2%) |
5位 | 福岡(326件) | 岩手(43.9%) |
採択件数は応募件数と同様のランキングですが、採択率でみると、応募件数としてはワースト3位の秋田県がトップとなっています。
【第1回公募結果 ④】応募・採択金額の分布
応募金額・採択金額の分布は、下グラフのとおりです。
応募・採択金額それぞれの上位ランキングは、次のようになっています。
順位 | 応募金額の割合 | 採択金額の割合 |
---|---|---|
1位 | 4,501~6,000万円(23%) | 4,501~6,000万円(23%) |
2位 | 1,501~3,000万円(23%) | 100~500万円(19%) |
3位 | 100~500万円(18%) | 1,501~3,000万円(17%) |
4位 | 501~1,000万円(15%) | 501~1,000万円(15%) |
5位 | 1,001~1,500万円(11%) | 1,001~1,500万円(12%) |
「1,501~3,000万円」について、「採択金額の割合」が「応募金額の割合」よりも6ポイント下がりました。
また、応募金額別件数は下グラフのとおりです。
「500万円以下」と「6,000万円」の二極化となっていることが特徴的。
また、3,000万円を超えると「金融機関の確認」が必要となるためか、3,000万円をわずかに下回る申請も多いことがわかります。
【第1回公募結果 ⑤】認定支援機関別の応募・申請・採択状況
認定支援機関別の応募・申請・採択状況は、下グラフのとおりです。
応募・採択件数・採択率それぞれを上位のランキングでみると、次のようになっています。
順位 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 |
---|---|---|---|
1位 | 地銀(3,903件) | 地銀(1,604件) | 公益財団法人(56.0%) |
2位 | 信用金庫(3,295件) | 信用金庫(1,297件) | 中小企業診断士(43.1%) |
3位 | 税理士(3,163件) | 民間コンサルティング会社(875件) | 民間コンサルティング会社(42.1%) |
4位 | 税理士法人(2,508件) | 税理士(816件) | 地銀(41.1%) |
5位 | 商工会議所(2,088件) | 税理士法人(727件) | 信用金庫(39.4%) |
ちなみに、採択率が最も低かったのは「税理士」で25.8%。
採択率トップの「公益財団法人」(56.0%)とは、大きく差が開きました。
「成功報酬2割」という支援機関に苦言
動画では、「”採択金額の2割の成功報酬で受ける”という支援機関が結構あり、相当不謹慎だ」と、中小企業庁 経営支援部長の村上氏が苦言を呈しています(動画6分頃)。
せめて3~5年後の「事業再構築の最後」まで成功させたうえでの2割ならわかるが、「審査で採択されたら、採択金額の2割が報酬」ということを銀行の担当者が言って、かなり反発を招いたようです。
認定支援機関を選ぶときには、「どの段階まで支援してくれて、そのうえで報酬がいくらか」についてもよく確認しましょう。
【第1回公募結果 ⑥】事業計画策定で見えた3つの課題
動画では、「事業計画策定で見えた課題」として、次の3つを紹介しています(動画13分頃~)。
- 課題1:その後、取引先が納品した製品を、どのように加工し、どの市場に投入し、どんな戦略で、どのぐらい販売するのかを考える必要がなかった
- 課題2:マーケティングに必要な数字を調べることが困難なため、系列から外れた先の新しい市場での販売予測をすることが困難。
したがって、設備投資して製品を作り、販売してみなければ市場は分からないという判断になりがち - 課題3:銀行などの、認定経営革新等支援機関もできなかったということになる。
専門家も手がつけられなかったと事項となるが、個々の申請者の課題というより、マーケティングのための環境が整っていなかったといえる
この課題が表面化しているのが「第1回公募の事業計画の特徴」として挙げられた「この事業計画でなぜ顧客(売上)が増えるのか?という根拠の説明が弱いものが多かった」という点(動画11分頃)。
行政事業レビュー「公開プロセス」のなかでも挙げられており、「申請された事業計画の8割でこの傾向が見られた」とのことです。
たとえば、次のような事項があります。
- 例)製造業:植物エキスを抽出する設備を導入し、エキスの市場を作る
→「誰が、いくらで、どのくらい買うのか?」の説明がない
ここでは「なぜこのエキスは設備投資により売れるのか?」を貪欲に考える機会としてほしいと述べています。
申請時には、認定支援機関にもよく確認し、「なぜ売上が増えるのかという根拠」を明確に示していきましょう。
まとめ:事業再構築補助金の第1回公募採択結果を踏まえた申請を
この記事では、事業再構築補助金の第1回公募の採択結果や採択率を確認し、さらに挙げられた3つの課題などもご紹介してきました。
ぜひ記事を参考に、第1回公募採択結果を踏まえた申請を行ない、採択を目指しましょう。
なお、経営者コネクトでは、事業再構築補助金の応募を考える企業様向けに「無料相談サービス」を行っています。
ご関心のある方は、ぜひ下記サイトもご覧ください。
また事業再構築補助金以外にも中小企業が活用できる補助金はいくつもあります。
以下の記事でお勧めの13種類を纏めていますので、合わせてお読みください。
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