2021年12月20日に可決された令和3年度補正予算において、令和4年(2022年)に行われるさまざまな補助金事業の概要が明記されました。
そして、こういった補助金事業を適切に活用するために定められている法律が、今回ご紹介する「補助金適正化法」です。
この記事では、「補助金適正化法」のポイントや財産処分の制限、違反時の罰則まで解説します。
「補助金適正化法のポイントを掴みたい」という経営者の方は、ぜひご覧ください。
補助金適正化法とは?基本情報を解説
まずは、補助金適正化法とはどのような法律なのか、基本情報を解説します。
補助金適正化法とは?
補助金適正化法とは、「補助金などの不正申請や不正使用の防止」を目的とした法律です。
正式名称は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」。
1955年(昭和30年)に施行され、時代に合わせて改正をくり返してきました。
・e-gov法令検索:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
・e-gov法令検索:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令
補助金の財源は、貴重な「国民の税金」など。
ですが補助金の使い方までは、国民一人ひとりが確認することができません。
そこで、補助金等が公平公正に使われるよう、補助金適正化法が制定されました。
補助金とは?法律上の定義はナシ
「補助金」に、法律上の定義はありません。
ただし一般的に言うと、補助金とは、「特定産業の育成」や「特定施策の奨励」などの国の政策目標を達成するために、その事業を実施する事業者にお金を支給する制度です。
多くの補助金制度では、次のような特徴があります。
- 支給されるお金は原則、返済不要
- 支給される時期は「後払い」
- 審査を通過した事業者が支給対象 (支給要件を満たした事業者が、全員交付される訳ではない)
補助金適正化法のポイントを解説
次に、補助金適正化法のポイントを解説します。
補助金適正化法の目的(第1条)
補助金適正化法の「目的」は、第1条で以下のように決められています。
- 第1条(この法律の目的)
この法律は、補助金等の交付の申請、決定等に関する事項その他補助金等に係る予算の執行に関する基本的事項を規定することにより、補助金等の交付の不正な申請及び補助金等の不正な使用の防止その他補助金等に係る予算の執行並びに補助金等の交付の決定の適正化を図ることを目的とする。
つまり、次の2項を実現するための法律が「補助金適正化法」です。
- 補助金等の交付の不正な申請及び補助金等の不正な使用の防止
- 補助金等に係る予算の執行並びに補助金等の交付の決定の適正化
補助金適正化法の対象となる「補助金等」(第2条)
補助金適正化法の対象となる「補助金等」は、第2条で次のように定義されています。
- 第2条(定義)
この法律において「補助金等」とは、国が国以外の者に対して交付する次に掲げるものをいう。
一 補助金
二 負担金(国際条約に基く分担金を除く。)
三 利子補給金
四 その他相当の反対給付を受けない給付金であつて政令で定めるもの
なお「相当の反対給付」とは、「補助金の給付に対し、交付した補助金相当額の財やサービスが還元されること」です。
補助金適正化法における「交付の申請」(第5条)
補助金適正化法において、「交付の申請」は第5条で次のように規定されています。
- 第5条(補助金等の交付の申請)
補助金等の交付の申請(契約の申込を含む。以下同じ。)をしようとする者は、政令で定めるところにより、補助事業等の目的及び内容、補助事業等に要する経費その他必要な事項を記載した申請書に各省各庁の長が定める書類を添え、各省各庁の長に対しその定める時期までに提出しなければならない。
「申請書を提出する」ことが補助金等交付の条件です。
そのため、たとえ補助金の支給条件に該当するケースであっても、申請書の提出を行われなければ、交付されません。
補助金適正化法における「交付の決定」(第6条)
補助金適正化法において、補助金等の「交付の決定」は第6条で次のように決められています。
- 第6条(補助金等の交付の決定)
各省各庁の長は、補助金等の交付の申請があつたときは、当該申請に係る書類等の審査及び必要に応じて行う現地調査等により、当該申請に係る補助金等の交付が法令及び予算で定めるところに違反しないかどうか、補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか、金額の算定に誤がないかどうか等を調査し、補助金等を交付すべきものと認めたときは、すみやかに補助金等の交付の決定(契約の承諾の決定を含む。以下同じ。)をしなければならない。
つまり、交付決定の審査基準として3項目が例示されています。
- 法令及び予算で定めるところに違反しないかどうか
- 補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか
- 金額の算定に誤がないかどうか
補助金適正化法における「交付の条件」(第7条)
補助金適正化法では、「補助金等の交付決定をする場合に、附すべき条件」を第7条で規定しています。
この規定を受け、それぞれの補助金制度では、交付要綱などで「交付の条件」を定めています。
また第7条第2項では「収益納付」に関する条件が規定されています。
「収益納付」についてくわしくは、こちらの記事をご覧ください。
ものづくり補助金の「収益納付」とは?定義や役割、計算方法など紹介します
補助金適正化法における「補助金等の取消」(第10・17条)
補助金適正化法において「補助金等の交付決定の取消」となるケースには、第10条、17条の2つがあります。
ケース1:事情変更による交付決定の取消等(第10条)
第10条では、「交付決定後、天災地変などで補助事業等の全部又は一部を継続する必要がなくなった場合」に、事情変更による交付決定の取消等が行えるとしています。
ただし、補助金等の交付の決定の取消によって、「特別に必要となつた事務・事業」に対しては、補助金等が交付されます。
ケース2:義務違反による交付決定の取消(第17条)
第17条では、補助事業者が次のような「義務違反」を行った場合には、補助金等の交付の決定の全部または一部を取り消せるとしています。
- 補助金等を他の用途へ使用したとき
- 補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容またはこれに附した条件に違反した
- 法令またはこれに基く各省各庁の長の処分に違反した
なお、補助金の返還には「加算金」が付加され(第19条)、さらに罰則規定が適用されることもあります。
補助金適正化法における「補助金等の返還」(第18条)
補助金適正化法では、次のような場合に「各省各庁の長は、期限を定めて返還を命じなければならない」と定めています(第18条)。
- 補助金等の交付決定を取り消した場合で、すでに補助金等が交付されているとき
- 交付すべき補助金等の額を確定した場合において、すでにその額をこえる補助金等が交付されているとき
補助金適正化法における財産処分の制限(第22条)
補助金適正化法では第22条において、次のように「補助事業等によって取得した財産処分の制限」を規定しています。
- 第22条(財産の処分の制限)
補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。
「財産処分の制限」について、くわしくは後述します。
補助金適正化法における罰則(第29~33条)
補助金適正化法では、第29~33条において「罰則」を規定しています。
「罰則」について、くわしくは後述します。
補助金適正化法の「財産処分の制限」を解説
次に、補助金適正化法の「財産処分の制限」を解説します。
「財産処分」とは?
「財産処分」とは、補助対象の財産を、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供することをいいます。
「財産処分の制限」とは?
補助金は「国民の税金」など貴重な財源から支出されるもの。
その補助金から直接収益が発生しては、公平な使い方とはいえません。
たとえば、補助事業のために購入した設備を売却すると、売却利益のほかに交付された補助金から利益が得ることができてしまいます。
そこで補助金適正化法では、第22条にて「財産処分の制限」を規定しました。
規定に違反して財産処分を行うことは、補助金適正化法第17条の「補助金等の交付決定の条件に違反した時等の場合」に該当し、交付決定の取り消し、補助金等の返還など厳しい処分があります。
なお、経済産業料における「財産の処分等の取扱い」と「財産の処分制限期間」は、こちらの資料でご確認ください。
・経済産業省:補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて
・経済産業省:補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分制限期間
「財産処分」に該当しないケース
経済産業省の資料によれば、次の場合には「補助金等の交付の目的に反しない使用」となるため財産処分には該当せず、「財産処分の承認手続き」を行う必要はありません。
① 業務時間外や休日等を利用して補助目的たる事業の遂行に支障を来さない範囲で一時的に転用する場合、又は処分制限財産(施設に限る。)の一部(施設延べ床面積の概ね10%を超えない範囲。ただし、150平方メートルを上限とする。)について付帯設備の設置を行う場合その他当該転用が極めて軽微であると認められる場合。
② 補助目的たる事業を遂行するために必要な、処分制限財産の機能の維持、回復又は強化を図るための改造を行う場合。
③ 技術開発補助金等における処分制限財産について、当該補助事業等の成果の全部又は一部を商品化するために必要な技術開発(試作品をもとに需要者の意見等を踏まえて商品化に向けた改良を行う等、本格的に商業ベースでの生産を行う段階に入る直前までの段階を含む。)、又は当該補助金等の交付決定の対象となった事業の目的を達成するために必要と認められる関連技術の開発(基礎研究、応用研究、実用化研究等のいかなる段階にあるかを問わない。)に使用する場合。
経済産業省 補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについてより
事業再構築補助金における「財産処分」の取り決め
「財産処分」が理解しやすいように、人気の補助金制度である「事業再構築補助金」での取り決めを確認しましょう。
まず「事業再構築補助金」の公募要領では以下のように、返還額や財産処分時の事務局の承認などを規定しています。
4.補助対象事業の要件
(略)
(10)その他
・財産処分や収益納付等も含め、補助金等の返還額の合計は補助金交付額を上限とします。
(略)9.補助事業者の義務 (交付決定後に遵守すべき事項)
事業再構築補助金 公募要領より
(略)
(5)取得財産のうち、単価50万円(税抜き)以上の機械等の財産又は効用の増加した財産(処分制限財産)は、処分制限期間内に取得財産を処分(①補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付け、②担保に供する処分、廃棄等)しようとするときは、事前に事務局の承認を受けなければなりません。
(6)財産処分する場合、残存簿価相当額又は時価(譲渡額)により、当該処分財産に係る補助金額を限度に納付しなければなりません。
また、交付申請以降の手続きが記載されている「補助事業の手引き」では、上記の義務について、よりくわしく解説しています。
たとえば、次のような手続きが必要です。
- 事前に「様式第12-1財産処分承認申請書」を事務局に提出し、「様式第12-2財産処分承認通知書」による事務局の承認を受けなければならない
さらに次のような記載もありますので、該当する事業者の方は、必ず手順に従うようにしましょう。
「財産処分承認申請書」の作成の前に、まずはコールセンターまでご連絡願います。事前の承認を得ずに処分した場合は交付決定が取り消される場合があります。
事業再構築補助金 補助事業の手引きより
補助金適正化法に違反したときの罰則は?
記事の最後に、補助金適正化法に違反したときの罰則を解説します。
補助金を不正受給した場合の罰則
補助金適正化法の違反では、「補助金を不正受給した場合(偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受け、又は間接補助金等の交付若しくは融通を受けた者)」の罰則が最も重く、次のように規定されています(第29条)。
- 5年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する
他の用途へ使用した場合の罰則
補助金適正化法11条の「補助金等の交付決定の内容・条件などに従い、善良な管理者の注意をもって補助事業等を行わなければならない」との規定に反して、「補助金等を他の用途へ使用した場合」は次のような罰則があります(第30条)。
- 3年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する
さらに次の罰則も合わせて科されます。
- 補助金等の交付決定の取消(第17条)
- 補助金等の返還(第18条)
- 加算金・延滞金の納付(第19条)
一時停止命令などの義務違反をした場合の罰則
次の違反行為を行った場合には、3万円以下の罰金が処せられます(第31条)。
- 補助事業等の遂行の一時停止命令に違反した
- 補助事業等の成果の報告をしなかった
- 各省庁の職員による立入検査等について、規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした
まとめ:補助金適正化法のポイントをつかみ、適切な申請を
この記事では、「補助金適正化法」のポイントや財産処分の制限、違反時の罰則まで解説しました。
ぜひ記事を参考に、補助金適正化法のポイントをつかみ、適切な補助金申請を行いましょう。
なお経営者コネクトでは、事業再構築補助金・ものづくり補助金の申請サポートを行っています。
ご関心のある方は、ぜひ下記サイトもご覧ください。