「上司と部下の面談」というと、人事評価のために業務命令で行う面談を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
ですが現在は、上司と部下のコミュニケーション手段として、多くの職場で面談が使われています。
ただし面談にも技術が必要。
なにも考えずただ行っても、面談の本来のメリットは発揮できません。
そこでこの記事では、面談を成功させるポイント5つをご紹介します。
部下との信頼関係を構築したいあなたは、ぜひご覧ください。
上司が部下との面談を行う目的
まずは、なぜ面談を行うのか?その目的を確認します。
【目的1】行動を起こすため
面談を行う最大の目的は、「行動を起こす」こと。
そして、行動を起こすのは上司と部下、どちらの場合もあり得ます。
よく「ムダな会議が多い」と言われますが、それはつまり「行動すること」を決めないから。
たくさんの資料を作り、白熱した議論をするけれど、何も決まらず次回に持ち越されるのでは意味がないですよね。
行動を起こすことで、はじめて物事は動き始めます。
行動を起こすための面談を行いましょう。
その方法は、後述しています。
面談が「何かを伝える」ための場合でも、行動することを決めます。
たとえば「残業申請方法の変更を伝える」であれば、「変更した残業申請を行う」など。
面談を行うからには、行動することを決める。
行動させずに何か伝えるだけならば、メールで済ませましょう。
【目的2】上司と部下の信頼関係を築くため
面談を重ねると、上司と部下の間に自然と信頼関係が築かれていきます。
それは何度も二人だけで顔を合わせて、プライベートなど様々な話をしていくためです。
お互い職場での顔しか知らないと、なかなか近づきがたいもの。
ですが仕事以外のことを知ると、自分との共通点が見つかるなどし、話がしやすくなります。
また上司が自分の弱みなどを打ち明ければ、より心の距離が縮まります。
面談の最初のうちは、上司が「業務や職場について、何か言っておきたいことはある?」と聞いても、部下からは「特にありません」という答えしか返ってこないことも多いでしょう。
たとえ不満や考えがあっても、「話しても馬鹿にされるのでは?何もしてくれないのでは?」など思うものです。
それが何度も面談し信頼関係が築かれると、「この人になら、相談しても良さそうだ」と思い、不満や考えを話してくれるようになります。
【目的3】部下が意見や提案をしやすくするため
部下が意見や提案をしやすくするには、前項の「信頼関係」も重要ですが、「面談という意見や提案にふさわしい場があること」も大事です。
たとえば廊下での立ち話で途中で、部下が「そういえば、〇〇の書式の欄はもっとこうしたほうがいいのでは…」と提案したとします。
部下は真剣に話をしていますが、上司は立ち話なので、あまり本気にしていません。
上司は「ああ、そうだね」といいつつ、そのまま忘れてしまう。
すると部下は「あの上司に提案しても、何も動いてくれない」と不信感をもち、深い溝ができてしまいます。
これは、上司の対応の問題でもありますが、提案する場所をまちがっているともいえます。
込み入った業務の話をするならば、それにふさわしい場所を作るべき。
その場所が「面談」です。もし面談の場で部下が同じ提案をしたならば、上司も改善する方向で行動するでしょう。面談は、意見や提案するための格好の場所なのです。
【目的4】より多くの気づきを得るため
面談の場で二人で考えると、一人のときよりも「多くの気づき」を得ることができます。
人間の脳は、2つのことを同時にはこなせません。
常にひとつの事柄しか、考えられないそうです。
複数作業を同時に行う「マルチタスク」も、じつは「シングルタスク(ひとつの作業)」を行き来しているだけなのだとか。
そして、一人で考えているときの脳内では「どうすれば?(質問)」と「こうしたらいい(思考)」の2つの作業が行われます。
頭の中で「質問」と「思考」を行き来するため、効率が悪いのです。
これが二人であれば、上司は「質問」する、部下は「思考」と、それぞれの作業に集中できます。
ただしそのためには、上司による「質問する技術」がある程度必要。面談の技術を磨きながら、質問の方法も学ぶといいですね。
部下との面談を成功させる5つのポイント
とても効果の高い「面談」ですが、それには技術が必要です。
ここでは、面談を成功させるための5つのポイントを解説します。
ポイント1. 事前の準備を行う
面談を成功させる秘訣は、事前準備をしっかり行うこと。
ほかの業務と同様、面談も「段取り八分」です。
特に、面談を行う前に「面談準備シート」を作り、どのようなことを話し合うのかを準備するのがおすすめです。
このシートは上司が自分用に使うもので、部下には見せなくとも構いません。
また、準備する際は「どうしたら相手が行動してくれるか」にそって考えていきます。
面談準備シートで、次のようなことを決めておくとよいでしょう。
- 面談を行う目的
- 進め方
- 確認すべきこと
- 行動してほしいこと(理想)
- 完了条件
「完了条件」とは、面談を完了する前に確認すべきことです。
たとえば、「伝えた情報についての質問」をして、理解していることがわかればOK。
理解度テストのようなものです。
ポイント2.面談の目的を設定し、伝える
面談する際は必ず目的を設定しておき、それをはじめに伝えましょう。
目的のない面談は、ただの雑談です。
よくある面談の失敗例として、目的を決めずにダラダラと話してしまうことがあります。
すると上司としては「部下といい話ができた」と満足でも、部下としては「いったい何の時間だったんだ」とムダに感じてしまうことも。
事前に目的を設定しておけば、面談の進み方もブレることがありません。
結果として、「大切なことを話しながらも短時間で済む」というメリットがあります。
ポイント3.「行動すべきこと」は紙で書き残す
上記のとおり、面談の目的のひとつが「行動を起こす」こと。
そこで、面談の最後には「行うべきこと」が何か確認して、実施する人が紙に 書き残しましょう。
そのため「面談準備シート」とは別に、次の項目を記載する「面談結果シート」を準備しておくといいでしょう。
- 面談実施日時
- 行動すべきこと(いつまで、誰が、何をするか)
- 次回面談日時
口頭では何となく合意したことでも、書いてみるとしっくりこないことがあります。
そのときは再度、「行動すべきこと」を検討します。
書くことでよく理解できますし、記憶にも残ります。
そして面談後に、面談結果シートのコピーをもらい、面談準備シートと一緒に保存しておくのもおすすめです。
ポイント4.短い時間の面談を何度も行う
面談の時間は、15分〜30分ほどが最適です。
これが5分では短すぎて、込み入った話ができません。
60分では長すぎてお互いに疲れますし、部下が面談に対してネガティブなイメージをもってしまうこともあります。
そのため、一度の面談に話を詰め込みすぎず、何度かにわけて話すようにしましょう。
面談は、一度だけやって終わらせてはいけません。
たとえば、すぐには解決策が思いつかない深い悩みを打ち明けられた場合。
一度の面談で終わらせようとすると「気にしないことが一番」などと答えざるを得ず、部下からの信頼は得られません。
それが、継続が前提なら「次回までに考えてみるよ」と答えられます。
すると部下も、裏切られた気持ちにはならないでしょう。
また、次回の面談では「行うべきこと」が、どの程度実行できたかを確認します。
人間は、約束したことは守ろうとします。「次の面談までやります」と約束することで、より行動しやすくなるものです。
ポイント5.話がしやすい環境で行う
面談を行う場所は、できるだけ次のような「話がしやすい環境」にしましょう。
- 近くに他の社員がおらず、プライバシーが確保されている
- 周囲がうるさすぎず、お互いの声がよく聞き取れる
- あまり広すぎず、狭すぎない場所
企業の規模によっては、なかなか理想的な場所が確保できないかもしれませんが、せめて上記①の「プライバシーが確保されている」だけでも実現してください。
「誰かに聞かれるかも」という場所で、込み入った会話はできません。
また上記②「お互いの声がよく聞き取れる」は声の調子から、部下の体調を判断することにもつながります。
普段より暗い、ペースが遅いようであれば、体調不良や悩みを心配すべきです。
上記③「広すぎず、狭すぎない」について、狭い場所では互いが「パーソナルスペース(他人に入られると不快な空間)」に侵入することになり、話に集中できません。
このように面談をする環境もとても重要で、話の内容にも影響しかねません。
面談の進め方
ここまで、面談の目的と成功させるポイントを確認しました。
面談には技術が必要と述べたことを、ご理解いただけたかと思います。
ここでは記事の最後に、具体的な面談の進め方をご紹介します。
1.事前に面談準備シートを作成する
前項でご紹介した「面談準備シート」を、面談前に作成しておきましょう。
ただし、必ずしも準備どおりに進まないこともあります。
本来決めたかったこととはまったく別の意見がでることも。
そんなときは、柔軟に進めて構いません。
目的と道筋を決めておけば、話が脱線しても「これはもとの話に戻るべきか、このまま進めるべきか」が判断できます。
時間が足りなければ、また次回に対応すればいいのです。
2.面談は近況報告などから始める
ここから面談に入っていきます。
ただし、いきなり本題に入らず、まずは近況報告などから始めます。
このとき自然に、プライベートな話ができると、お互いのことが知れるので信頼関係につながりやすくなります。
ただし、「最近はどう?」「あの件はどうなった?」など質問攻めにすると、部下も疲れてしまいます。
そこで上司が先に、「自分のプライベートなこと」を話すのがおすすめです。
「うちの子どもが家でこんなことやっててさ」、「趣味でやってる〇〇でこんなことがあったんだよ」など。
すると部下も、上司の思いがけない一面を知ることで、親近感を持つもの。そして部下からも、プライベートな話がしやすくなります。
3.面談の目的を伝える
軽く近況報告、雑談をしたところで、本題に入ります。
なぜこの面談を行うのか、その目的を伝えます。
また、会議時間や今後の継続有無についても伝えておくと、部下の方も心の準備ができます
上司が部下との面談を行う目的
面談の目的に沿った話し合いを行います。
このとき、上司が一方的に話してはいけません。
「何かを伝える」という目的の面談であっても、要点ごとに質問し、理解しているか確認することが必要です。
また、部下が話すときは、聞く姿勢を見せることも大切。
あいづちの言葉を発する、うなずくことで、相手も安心して話ができます。
このとき、相手が話しているのに遮ることはやめましょう。
そして、沈黙を怖がってもいけません。
会話の途中で部下が沈黙するのは、「考えている」からです。
そこで上司が沈黙を破って話しかけようとすると、せっかくの思考が邪魔されてしまいます。
再び話し始めるまで、待ちましょう。
5.目標を部下に決めさせる
面談のなかで、部下が行うべき行動が発生した場合、その目標は部下に決めさせましょう。
上司が一方的に決めた目標では、達成できなかったときに、部下は「私は無理だと思っていたんです」という言い訳が、たとえ心のなかだけでもできてしまいます。
ですが自分で決めたことであれば、「自分ごと」ですから、「なぜ達成できなかったのか、どうすればよかったのか」を自然に考えるもの。
部下の成長を促すことにもつながります。
もちろん、目標があまりにも「理想のゴール」とかけ離れていた場合、上司が修正を指示することは必要です。
ですが、上司が思う目標に部下を誘導してもいけません。
結局あとで「上司に言わされた」と思い、納得できなくなります。
慣れていないと多少時間はかかりますが、部下の成長のためには必要な時間です。
6.次回までに行うことを確認する
目的に沿った話をしたところで、「次回までに行うべきこと」として次の3点をお互いに確認します。
- いつまでに
- 誰が
- 何を行うか
そして実施する人が、面談結果シートに記入するといいでしょう。
ここでは、「〇〇を改善する」など漠然とした行動ではなく、できるだけ具体的なものにします。
あまり漠然としていると、「何をすればいいの?」となり、結局行動できません。
そのため「〇〇を改善するために、マニュアルの項目を修正する」など、目に見える行動に落とし込みましょう。
7.次回の面談日時を決め、締めくくる
「行動すべきこと」を決めたら、その振り返りを行うための次回面談の日時を決めましょう。
締め切りがあることで、人は行動しやすくなります。
「時間があるときにやっておいて」では、いつできるかわかりません。
そして、ここで「完了条件」を確認しましょう。
部下がよく理解していないようでしたら、不明な点を聞いて、再度説明します。
ただし半分以上を理解できていないようなら、次回まで持ち越すべきです。
そして「次回までに行うこと」は、「部下が理解できる資料を作る」になります。
最後に、「今後もサポートしていく」旨を伝えて、面談を締めくくります。
こうしたひと言があると、部下は信頼感や安心感を得るものです。
まとめ:ポイントをつかみ、適切な面談を
今回は、面談を成功させるポイント5つと目的、進め方を解説しました。面談は効果が大きいものですが、間違った方法では逆効果になることも理解いただけたかと思います。
くり返しになりますが、目的のない面談はただの雑談です。
ぜひ今回の記事を参考に、効果のある面談を行ってください。