2021年3月12日に2次公募を開始した「サプライチェーン補助金」。
昨年実施した1次公募では、応募数が多すぎたため、追加の予算を投入するほどの人気となりました。
この記事では、サプライチェーン補助金2020年(1次)公募の採択結果を徹底分析していきます。2次公募への申請を進めている方も、参考にぜひご覧ください。
サプライチェーン補助金 2020年公募(1次公募)の採択結果
サプライチェーン補助金 2020年公募(1次公募)の採択結果
「サプライチェーン補助金」とは、新型コロナ感染症の感染拡大によりサプライチェーンの脆弱性が明らかになったことから、国内の生産拠点等の確保のため、国内での生産拠点を整備する事業者の設備導入等を支援する補助金制度です。
制度について、詳しくはこちらも参考にしてください。
【補助上限100億円!】サプライチェーン補助金とは?採択結果から2021年(2次)公募概要まで解説
このサプライチェーン補助金の2020年(1次)公募の採択結果は、下表の通りでした。
応募回 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
---|---|---|---|
6月5日先行審査分 | 90件 | 57件 | 63% |
7月22日応募締切分(本審査) | 1,670件 | 146件 | 8.7% |
合計 | 1,760件 | 203件 | 11% |
「先行審査」とは、「事業を早期に実施したい事業者」のために、2020年6月5日まで提出した分について、先に審査を行ったものです。
そして7月22日締切の本審査では、何と1,670件・約1兆7,640億円もの応募が。
これは、先行審査分を差し引いた残予算(2,200億円 − 約574億円=約1,626億円)の10倍以上という多さでした。
そのため10月、政府は急遽860億円の予算を追加し、本審査の採択率が8.7%に上昇しています。
これほど多数の応募があったのは「更新投資を対象から除外しない」など、「募集条件が甘かったため」といわれます。
そこで現在実施の2次公募では、「更新投資でないこと」という要件が追加されました。
サプライチェーン補助金 2020年公募(1次公募)の採択結果分析
ここでは、サプライチェーン補助金 2020年(1次)公募の採択結果を、項目ごとに分析していきます。
類型
サプライチェーン補助金 1次公募では、次の3つの応募類型がありました。
- 補助対象事業A :生産拠点の集中度が高い製品・部素材の供給途絶リスク解消のための生産拠点整備
- 補助対象事業B:国民が健康な生活を営む上で重要なものの生産拠点等の整備
- 補助対象事業C:補助対象事業Aに該当し、複数の中小企業等のグループによる共同事業
この類型ごとに、採択者数を見ていきましょう。
以下の表のとおり、新型コロナによる「マスク不足」などの影響のためか、採択者の64%がB類型となっています。
類型 | 先行審査分 採択者数 | 本審査 採択者数 | 合計 採択者数 |
---|---|---|---|
A類型 | 16 | 52 | 68 |
B類型 | 40 | 90 | 130 |
C類型 | 1 | 4 | 5 |
企業規模
次に、企業規模別の採択者数を見ていきましょう。
企業規模 | 採択者数 |
---|---|
大企業 | 77 |
中小企業等 | 126 |
上記の表のとおり、採択者の62%が中小企業等でした。
ちなみに「中小企業等」には、「中小企業基本法で定める中小企業者・一般社団法人・一般財団法人・特定非営利活動法人・事業協同組合・農業法人・大学」が含まれますが、実際に採択されたのは「中小企業基本法で定める中小企業者」のみです。
なお、中小企業が利用できる補助金・助成金についてより幅広く知りたい方は、以下の記事が参考になります。
また、中小企業の設備投資等を支援する「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」については、より詳細に紹介していますので、合わせてお読みください。
(最大1億円と大型の、新型コロナウィルス感染症による業績悪化に対する事業再構築を支援する「事業再構築補助金」についてはこちら)
【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説
(最大1000万円の、設備投資をを支援する「ものづくり補助金」についてはこちら)
【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】
また
パンフレットに事業再構築の15の事例が掲載
サプライチェーン補助金とは
「業種分類(小分類)」における採択者数ランキングは次の通りです。
- 「業種分類(小分類)」別・採択者数ランキング
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業種分類(小分類) 採択者数 医薬品製造業 25 その他の繊維製品製造業 23 医療用機械器具・医療用品製造業 20 外衣・シャツ製造業(和式を除く) 11 その他の化学工業 11 航空機・同附属品製造業 9 綱・網・レース・繊維粗製品製造業 9 無機化学工業製品製造業 8 倉庫業(冷蔵倉庫業を除く) 8 電子デバイス製造業 6 有機化学工業製品製造業 5 その他のゴム製品製造業 5 半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置製造業 4 工業用プラスチック製品製造業 4 化粧品・歯磨・その他の化粧用調整品製造業 4 製糸業,紡績業,化学繊維・ねん糸等製造業 3 金属素形材製品製造業 3 医薬品・化粧品等卸売業 3 その他のプラスチック製品製造業 3 非鉄金属第1次製錬・精製業 2 電池製造業 2 電子回路製造業 2 電気計測器製造業 2 自動車・同附属品製造業 2 基礎素材産業用機械製造業 2 一般貨物自動車運送業 2 プラスチック板・棒・管・継手・異形押出製品製造業 2 その他の電子部品・デバイス・電子回路製造業 2 非鉄金属第2次製錬・精製業(非鉄金属合金製造業を含む) 1 非鉄金属素形材製造業 1 発電用・送電用・配電用電気機械器具製造業 1 電子デバイス製造業&その他の化学工業 1 通信機械器具・同関連機械器具製造業 1 炭素・黒鉛製品製造業 1 他に分類されない製造業 1 繊維品卸売業(衣服,身の回り品を除く) 1 織物業 1 酒類製造業 1 事務用機械器具製造業 1 紙製造業 1 計量器・測定器・分析機器・試験機・測量機械器具・理化学機械器具製造業 1 記録メディア製造業 1 各種商品卸売業 1 化学肥料製造業 1 一般産業用機械・装置製造業 1 プラスチックフィルム・シート・床材・合成皮革製造業 1 その他の窯業・土石製品製造業 1 その他の生産用機械・同部分品製造業 1 その他のパルプ・紙・紙加工品製造業 1
上位はB類型の医薬・医療品関連ですが、A類型の第1位は「航空機・同附属品製造業」でした。
今年はじめに経産省で協議会が実施されたように、「新型コロナで大打撃をうけた航空機産業のサプライチェーンを支える」という方針が、ここにも表れています。
A類型における「業種分類(小分類)」の上位項目
業種分類(小分類) | 採択者数 |
---|---|
航空機・同附属品製造業 | 7 |
無機化学工業製品製造業 | 7 |
電子デバイス製造業 | 6 |
B類型における「業種分類(小分類)」の上位項目
業種分類(小分類) | 採択者数 |
---|---|
医薬品製造業 | 22 |
その他の繊維製品製造業 | 21 |
医療用機械器具・医療用品製造業 | 18 |
C類型における「業種分類(小分類)」の上位項目
業種分類(小分類) | 採択者数 |
---|---|
航空機・同附属品製造業 | 2 |
一般産業用機械・装置製造業 | 1 |
自動車・同附属品製造業 | 1 |
電子デバイス製造業&その他の化学工業 | 1 |
主な製品・部素材名等
「主な製品・部素材名等」における採択者数ランキングは次の通りです。
- 「主な製品・部素材名等」別・採択者数ランキング
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主な製品・部素材名等別 採択者数 消毒用アルコール 20 医療用ガウン関連 17 マスク用部素材 16 物流施設 14 不織布マスク 8 航空機エンジン部品 8 医薬品 7 半導体関連部素材 5 半導体 4 消毒用アルコール等 4 半導体製造装置関連部素材 3 シリンジ用部素材 3 サージカルマスク 3 PCR検査機器用消耗品 3 風力発電設備部品 2 半導体製造装置用部素材 2 二次電池用部素材 2 人工呼吸器用消耗品 2 自動車用金型 2 検体採取スワブ 2 医療用サージカルマスク 2 フッ化水素 2 ディスプレイ 2 ゴム手袋 2 アルミニウム関連部素材 2 硫酸ニッケル 1 輸液剤 1 防護服 1 布マスク 1 飛沫感染対策製品(アクリル仕切版等) 1 非接触体温計 1 半導体向け ICトレー 1 農薬原体 1 電子機器関連部素材 1 電子回路 1 電子ビームマスク描画装置 1 電気自動車関連部素材 1 窒素質・りん酸質肥料 1 生分解性ポリマー PHBH 1 人工呼吸器筐体部品 1 人工呼吸器用部材 1 人工血管 1 人工関節用樹脂ライナー 1 新型コロナウィルス診断薬 1 新型コロナウィルス検査試薬キット 1 新型コロナウィルス検査キット 1 新型コロナウィルス遺伝子検出試薬 1 情報通信機器 1 消毒用高濃度アルコール 1 集塵装置 1 車載用電池関連部素材 1 車載用リチウムイオン電池 1 射出成形機用部素材 1 自動車用プラスチック部品 1 磁性材料粉末 1 高機能電子材料 1 高機能マスク 1 鋼板製トランスミッション部品 1 航空機エンジン用タービンブレード 1 光デバイス 1 検査試薬 1 検査キット 1 金属プレス製品 1 感染予防関連製品 1 羽毛ふとん 1 医療用品 1 医療用注射針 1 医療用注射剤のゴム栓 1 医療用フェイスシールド 1 医療品測定機器(X線撮影装置等) 1 医療機器用部素材 1 医療機器、介護用品 1 医薬品原薬 1 ワクチン注射用シリンジ 1 ワクチン 1 レアメタルリサイクル 1 レアアース製品 1 リチウムイオンバッテリー 1 マスク用紐 1 マスク用フィルタ 1 ヘリウム 1 フッ化水素酸 1 パワー半導体 1 パワーデバイス用ウエハ 1 ハードディスク用基板 1 ニットマスク 1 ディスポーザブル手袋 1 ジルコニウム化合物 1 クリーンパーティション部品 1 アルコール消毒剤 1 PCR検査試薬 1
B類型の補助対象設備には「工場」と「物流」の2つがありますが、「物流施設」は14件のみ。
130件のB類型採択数のうち、ほかの116件はすべて「工場」関連でした。
A類型における「主な製品・部素材名等」の上位項目
主な製品・部素材名等 | 採択者数 |
---|---|
航空機エンジン部品 | 6 |
半導体関連部素材 | 5 |
半導体 | 4 |
B類型における「主な製品・部素材名等」の上位項目
主な製品・部素材名等 | 採択者数 |
---|---|
消毒用アルコール | 20 |
医療用ガウン関連 | 17 |
マスク用部素材 | 16 |
C類型における「主な製品・部素材名等」の上位項目
主な製品・部素材名等 | 採択者数 |
---|---|
航空機エンジン部品 | 2 |
パワー半導体 | 1 |
風力発電設備部品 | 1 |
電気自動車関連部素材 | 1 |
事業実施場所
「事業実施場所」における採択者数ランキングは次の通りです。
- 「事業実施場所(都道府県)」別・採択者数ランキング
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事業実施場所 採択者数 兵庫県 16 大阪府 12 愛知県 11 群馬県 10 三重県 10 石川県 10 茨城県 8 岐阜県 8 神奈川県 8 静岡県 8 愛媛県 7 山口県 7 滋賀県 6 栃木県 6 山梨県 5 秋田県 5 岡山県 4 岩手県 4 広島県 4 埼玉県 4 長野県 4 福井県 4 福島県 4 宮城県 3 千葉県 3 東京都 3 奈良県 3 福岡県 3 北海道 3 京都府 2 香川県 2 新潟県 2 長崎県 2 徳島県 2 富山県 2 和歌山県 2 沖縄県 1 熊本県 1 高知県 1 山形県 1 鳥取県 1 島根県 1
近畿・東海地方が多いことが特徴です。
また採択者数が突出して多い兵庫県は、A・B類型どちらかに片寄らず、両方同程度で採択されています。
A類型における「事業実施場所」の上位項目
事業実施場所 | 採択者数 |
---|---|
兵庫県 | 7 |
愛知県 | 7 |
神奈川県 | 5 |
B類型における「事業実施場所」の上位項目
事業実施場所 | 採択者数 |
---|---|
兵庫県 | 9 |
三重県 | 9 |
大阪府 | 8 |
C類型における「事業実施場所」の上位項目
事業実施場所 | 採択者数 |
---|---|
北海道 | 1 |
東京都 | 1 |
愛知県 | 1 |
京都府 | 1 |
福岡県 | 1 |
まとめ:1次公募の採択結果はB類型・医療品工場が多数
ご覧いただいたとおり、1次公募の採択結果はB類型が圧倒的に多く、その内訳として「消毒用アルコールや医療用ガウン製造などの工場」の採択が多数でした。
2次公募は、要件の見直しで申請数は減少すると思われますが、補助上限が引き下げられ、新たに「中小企業特例」が設けられたため、採択数は増えるはずです。
サプライチェーン補助金 2020年公募(1次公募)の採択結果分析