【令和3年度補正予算案】経済産業省の補助金事業を解説!特別枠の新設も【中小企業支援】

政府は令和3年(2021年)11月26日(金)に臨時閣議を開き、令和3年度補正予算案を閣議決定しました。
この予算案には、中小企業を支援する補助金などの施策も多く含まれました。

そこでこの記事では、令和3年度補正予算案の経済産業省の補助金事業について解説していきます。

「補助金の活用を検討している」という経営者の方は、ぜひご覧ください。

令和3年度補正予算案の概要

まずは、令和3年度補正予算案の概要について解説します。

令和3年度補正予算案は過去最大の35兆9895億円

令和3年度補正予算案は、令和3年(2021年)11月26日(金)に開催された臨時閣議において閣議決定されました。
その額は、補正予算としては過去最大の35兆9895億円

(参考)
財務省:令和3年度一般会計補正予算(第1号)フレーム

補正予算案の内容は次のとおりです。

  • 1.新型コロナウイルス感染症の拡大防止:18兆6059億円
  • 2.「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え:1兆7687億円
  • 3.未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動:8兆2532億円
  • 4.防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保:2兆9349億円
  • 5.その他の経費:2,135億円
  • 6.国債整理基金特別会計へ繰入:2兆2682億円
  • 7.地方交付税交付金:3兆5117億円
  • 8.既定経費の減額:▲ 1兆5665億円
  • 合 計:35兆9895億円

上記1~4が「経済対策関係費」で、合計31兆5627億円。
歳入の6割となる22兆580億円が、公債金によって賄われます。

岸田総理は11月26日の臨時閣議後、「国民の皆様に、スピード感を持って施策をお届けすべく、年内できるだけ早くの補正予算の成立を目指してまいります」と述べました。

なお令和3年度補正予算には、2021年11月19日に閣議決定となった「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が盛り込まれています。

「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」についてくわしくは、こちらの記事をご覧ください。

【過去最大55.7兆円】「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」閣議決定の内容を紹介

 

経済産業省の予算額は5兆4,290億円、うち中小企業関係に3兆8,594億円

令和3年度補正予算案35兆9895億円のうち、経済産業省の予算額は5兆4,290億円。
このなかで「中小企業関係」には3兆8,594億円が充てられました。

出典:中小企業庁

(参考)
経済産業省:経済産業省関係令和3年度補正予算案のポイント
経済産業省:令和3年度補正予算案の事業概要(PR資料)

 

経済産業省の補助金事業:特別枠の新設も

前項の中小企業庁資料にも記載のとおり、経済産業省の補助金制度では特別枠の新設が増えています。

特別枠の多くは、新型コロナの影響などで業況が厳しい中小企業などを支援することが目的。

次項からは、令和3年度補正予算案における各補助金制度の内容・変更点などについて、くわしくご紹介します。

なお以下の内容は、現時点で経済産業省や中小企業庁から発表されている資料に基づくものです。
今後予算が成立し、その補助金事業に申請する際には、各公募要領などでルールを改めてご確認ください。

【令和3年度補正予算案】事業復活支援金(2.8兆円):新規

次に、令和3年度補正予算案において新規事業である「事業復活支援金」について解説します。

事業復活支援金の概要

事業復活支援金とは、新型コロナで減収となった事業者に対して、地域・業種を限定せず事業規模に応じて給付金を支給する制度です。

令和3年度補正予算からの新規事業であり、予算額は2.8兆円
対象となるのは次の事業者です。

  • 新型コロナの影響で、2021年11月~2022年3月のいずれかの月の売上高が50%以上または30%~50%減少した事業者

給付される金額は、11月~3月までの「5ヶ月分の売上高減少額」を基準に算定し、上限は下表のとおり。

売上高減少率 個人 法人:年間売上高1億円以下 法人:年間売上高1億円超~5億円 法人:年間売上高5億円超
▲50%以上 50万円 100万円 150万円 250万円
▲30%~50% 30万円 60万円 90万円 150万円

開始時期は、「補正予算成立後、所要の準備を経て申請受付開始予定」と案内されています。

同様の事業者支援策である「持続化給付金」では、不正受給が相次ぎ問題となったため、事業復活支援金では商工団体や士業、金融機関などの「事前確認」が必要になる予定です。

事業復活支援金については、こちらの記事でも「速報」としてご紹介しています。

【速報】中小事業者に向けた最大250万円の給付金を解説【2021年11月10日発表】

【令和3年度補正予算案】事業再構築補助金(6,123億円):継続

次に、令和3年度補正予算案における事業再構築補助金を解説します。

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金とは、新型コロナの影響で2020年4月以降の売上高が10%以上減少した中小企業等に対して、「新分野展開」や「業態転換」などの事業再構築に係る設備投資を支援する補助金事業です。

正式な事業名は「中小企業等事業再構築促進事業」で、令和2年度(2021年度)に開始されました。

令和3年度補正予算での開始時期は、「令和4年以降」とされています。
記事作成時点では、令和2年度第3次補正第4回公募が実施中です。

【事業再構築補助金】第4回公募の変更点はコチラ!日程の確認も

令和3年度補正予算案での事業再構築補助金の変更点

令和3年度補正予算案での事業再構築補助金の変更点は、以下のとおりです。

[変更点①]必須申請要件が一部緩和

必須申請要件のひとつ「売上高減少要件」について、現在の制度では以下の(a)と(b)の両方を満たす必要がありますが、(b)の要件が撤廃されました。

  • (a)2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月間の合計売上高が、コロナ以前(2019年または、2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、
  • (b)2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月間の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少していること。2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高がコロナ以前と比較して5%以上減少していること

要件を一部緩和させたことで、補助金事業の使い勝手を向上させます。

[変更点②]特別枠「グリーン成長枠」を創設

変更点の2つめは、グリーン分野での取組を重点的に支援する特別枠「グリーン成長枠」を創設した点です。

「グリーン成長枠」は、研究開発・技術開発または人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う事業者への支援を行うもの。

売上高減少要件は撤廃し、補助金額などは以下のとおり。

  補助上限額 補助率
中小企業 1億円 1/2
中堅企業 1.5億円 1/3

[変更点③]特別枠「回復・再生応援枠」を創設

変更点の3つめは、業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者に対する特別枠「回復・再生応援枠」を創設した点です。

通常枠にくらべ補助率が引き上げられている点が特徴で、補助金額などは以下のとおり。

補助上限額 補助率
500万円、1,000万円、1,500万円 (※1) 中小企業3/4
中堅企業2/3

※1:従業員規模により異なる

なお、経営者コネクトでは、事業再構築補助金の応募を考える企業様向けに「無料相談サービス」を行っています。
ご関心のある方は、ぜひ下記サイトもご覧ください。

【令和3年度補正予算案】生産性革命推進事業(2,001億円):継続

次に、令和3年度補正予算案における生産性革命推進事業(生産性革命補助金)について解説します。

生産性革命推進事業(生産性革命補助金)とは?

生産性革命推進事業(生産性革命補助金)とは、次の3つの補助金制度をまとめて運用する体制で、令和元年度(2019年度)から一体化されました。

  1. ものづくり補助金
  2. IT導入補助金
  3. 持続化補助金

令和3年補正予算では、上記3つの補助金にさらに「事業承継・引継ぎ補助金」を加え、4つの補助金制度を一体としています。

生産性革命推進事業には、令和3年度補正予算案として2,001億円が充てられました。
以下では、各補助金制度をご紹介します。

ものづくり補助金:デジタル枠・グリーン枠を創設

ものづくり補助金とは、中小企業などが取り組む「革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資」を支援する補助金制度です。

正式な事業名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」

補助金制度のなかでも人気が高く、2020年3月の1次締切~7次締切までの応募者数は41,029者となっています。

令和3年度補正予算案でのものづくり補助金の変更点

令和3年度補正予算案でのものづくり補助金の変更点は以下のとおりです。

[変更点①]特別枠「回復型賃上げ・雇用拡大枠」を創設

変更点の1つめは、赤字など業況が厳しい中でも、賃上げ等に取り組む中小企業向けに特別枠「回復型賃上げ・雇用拡大枠」を創設した点です。

優先採択や補助率引上げを行うとされており、補助金額などは以下のとおり。

補助上限額 補助率
750万円、1,000万円、1,250万円 (※2) 1/2

※2:従業員規模により異なる

[変更点②]特別枠「デジタル枠 」・「グリーン枠」を創設

変更点の2つめは、「中小企業グリーン・デジタル投資加速化パッケージ」として特別枠「デジタル枠」・「グリーン枠」を創設した点です。

優先採択や補助率引上げを行うとされており、補助金額などは以下のとおり。

  補助上限額 補助率
デジタル枠 750万円、1,000万円、1,250万円 (※3) 2/3
グリーン枠 1,000万円、1,500万円、2,000万円(※3) 2/3

※3:従業員規模により異なる

なお、当サイト「経営者コネクト」では、ものづくり補助金に応募したい経営者・担当者の方を応援したいと考え、無料相談を受け付けています。

実際に2020年に採択されたものづくり補助金の事業計画をもとにアドバイスいたします。
ご希望の方は、フォームからお申し込みをお願いいたします。
(「企業名」「ご連絡先」と「ものづくり補助金・無料相談希望」の旨を明記ください)

持続化補助金:特別枠を創設

持続化補助金とは、小規模事業者が経営計画を策定して取り組む、販路開拓などの取組を支援する補助金制度です。

正式な事業名称は「小規模事業者持続的発展支援事業」となります。

令和3年度補正予算案での持続化補助金の変更点

令和3年度補正予算案での持続化補助金の変更点は以下のとおりです。

[変更点]「成長・分配強化枠」などの特別枠を創設

持続化補助金の変更点は、次の特別枠を創設した点です。

  • 成長・分配強化枠:赤字など業況が厳しいなかでも、賃上げなどに取り組む事業者や、事業規模の拡大に取り組む事業者向け
  • 新陳代謝枠:後継ぎ候補者が実施する新たな取組や創業を支援する
  • インボイス枠:インボイス発行事業者に転換する場合の環境変化への対応を支援する

通常枠にくらべ、上限額や補助率が下表のとおり引き上げられます 。

  補助上限額 補助率
通常枠 50万円 2/3
成長・分配強化枠 200万円 2/3(一部の類型において、赤字事業者は3/4)
新陳代謝枠 200万円 2/3
インボイス枠 100万円 2/3

 

IT導入補助金:複数社連携型IT導入枠を創設

IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者が自社の課題・ニーズに合った「ITツール」を導入する際、その経費の一部を補助する補助金制度です。

正式な事業名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」。

2021年度におけるIT導入補助金制度については、こちらの記事でくわしくご紹介しています。

【経営者向け】IT導入補助金とは?2021(令和3年度)概要・申請方法・事例も紹介

令和3年度補正予算案でのIT導入補助金の変更点

令和3年度補正予算案でのIT導入補助金の変更点は以下のとおりです。

[変更点①]特別枠「複数社連携型 IT 導入枠」を創設

IT導入補助金の変更点1つめは、商業集積地・サプライチェーンなどで密に連携した複数の中小・小規模事業者による ITツール・機器の導入を支援するため特別枠「複数社連携型IT導入枠」を創設した点です。

データ共有・活用などの取組も支援します。

[変更点②]インボイス制度への対応を見据えた補助に

変更点の2つめは、インボイス制度への対応も見据えたITツールの導入補助に加え、PCなどのハード購入補助を行うとした点です。

補助対象と、上限額などは下表のとおり。

補助対象 補助上限額 補助率
ITツール ・~ 50万円
・50~350万円
・3/4
・2/3
PC、タブレットなど 10万円 1/2
レジなど 20万円 1/2

 

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金とは、事業承継を契機として新しい取り組み等を行う中小企業等や、事業再編・事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業等を支援する補助金制度です。

正式な事業名称は「事業承継・引継ぎ支援事業」。
補助上限額は「150万円~600万円」、補助率は「1/2~2/3」です。

なお、事業承継・引継ぎ補助金については、現時点では変更点は明示されていません。

2021年度における制度についてくわしくは、こちらの記事でご紹介しています。

事業承継・引継ぎ補助金とは?要件や類型など制度概要も解説【二次公募受付開始】

【令和3年度補正予算案】その他の中小企業支援策

記事の最後に、令和3年度補正予算案のその他の中小企業支援策をご紹介します。

日本政策金融公庫を通じた資金繰り支援【1,403億円】

一時的に財務状況が悪化した中小企業などに、日本政策金融公庫が、民間金融機関が資本とみなせる「長期間元本返済のない資本性ローン」を供給します。

おもな貸付条件は下表のとおり。

融資限度額 1社あたり最大10億円(別枠)
融資期間 20年・15年・10年・7年・5年1ヵ月(期限一括償還)
貸付利率 融資後当初3年間は一律0.5%、4年目以降は直近決算の業績に応じた利率を適用
担保・保証人 無担保・無保証人
資本性の扱い 金融機関の債務者の評価において自己資本とみなすことが可能

また、中小企業の経営改善を支援する「伴走支援型特別保証」の上限を引き上げたうえで、来年度も実施します。
セーフティネット保証4号(100%保証)も期限が延長されました。

なお、「新型コロナ対策資本性劣後ローン」については、こちらの記事でくわしくご紹介しています。

新型コロナ対策資本性劣後ローンとは?特徴や制度概要、事業計画書についても解説します

 

中小企業向け事業再編・再生支援事業【757.4億円】

事業再編・再生支援事業として、事業再生支援ニーズの高まりに応じ、中小企業の私的整理等のガイドラインを年度内に策定し、併せて官民連携のファンドや中小企業再生支援協議会の支援体制を拡充します。

本事業には757.4億円が充てられます。

大きく分けて2つの事業が含まれ、それぞれのイメージは次のとおりです。

(1)中小企業経営力強化支援ファンド
新型コロナの影響で業況が悪化した、地域経済の中核となる中小企業等の経営力強化と成長をサポートする。
中小機構からの出資も呼び水に、官民連携の全国ファンド等を組成した上で、資本性資金の投入ときめ細やかなハンズオン支援により、経営力の強化と成長を図り、事業再構築や事業再編を促進する。

(2)中小企業再生ファンド等
過大な債務を抱えた中小企業の再生を図るために、官民連携のファンドを通じて、債権買取り・出資を⾏って経営改善を支援する。
また、全国の「中小企業再生支援協議会」とも連携し、再生計画の策定と事業再生を促進する。

 

令和3年度補正予算案の概要

コロナ下の環境変化に直面する中小・小規模事業者に対して、中小企業団体といった支援者が、経営者との対話により経営課題を抽出するなど、課題設定型の伴走支援を実施します。

130.4億円が充てられ、次の3つの事業が含まれます。

  • (1)研修プログラムの開発と伴走支援の実施
  • (2)各種相談窓口の体制強化
  • (3)デジタル化支援のための基盤整備

まとめ:令和3年度補正予算案の補助金活用を

この記事では、令和3年度補正予算案の経済産業省の補助金事業について解説してきました。

有意義に活用したい支援策ばかりです。
ぜひ記事を参考に、令和3年度補正予算案の補助金を活用していきましょう。