【事業再構築補助金】事業再構築の類型③「業種転換」の定義・該当要件・事例を解説

2021年7月2日に二次締め切りを迎える「事業再構築補助金」。

応募の要件に「事業再構築に取り組むこと」が含まれているため、「事業再構築の類型」をよく理解することが重要です。

そこでこの記事では「事業再構築の類型」の3つめとして、「業種転換」の定義と該当要件、事例まで解説していきます。

事業再構築補助金の申請を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。

事業再構築補助金の「事業再構築の類型」とは?

事業再構築補助金の「事業再構築の類型」とは、支援の対象となる「事業再構築」の種類を指しており、次の5つのことをいいます。

  1. 新分野展開:新たな製品等で新たな市場に進出する
  2. 事業転換:主な「事業」を転換する
  3. 業種転換:主な「業種」を転換する
  4. 業態転換:製造方法等を転換する
  5. 事業再編:事業再編を通じて新分野展開、事業転換、 業種転換または業態転換のいずれかを行う

上記5つの違いは、こちらの記事で詳しく解説しています。

【事業再構築補助金】「事業再構築の類型」5つの違いを一覧表で解説!事例もご紹介

 

事業再構築補助金の応募には、「事業再構築に取り組む」ことが要件になっています。
そのためには、上記の類型をよく理解することが必要です。

この記事では、次項から類型③「業種転換」についてくわしく解説していきます。

また、「事業再構築補助金」と「事業再構築」の詳細は、以下の公式サイトで確認できます。

事業再構築補助金 公式ウェブサイト
中小企業庁:事業再構築指針
中小企業庁:事業再構築指針の手引き

なお、事業再構築の制度概要を知りたい方は、以下の記事もお読みください。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説

【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます

事業再構築補助金の「事業再構築の類型」とは?

ここからは事業再構築の類型③「業種転換」について、わかりやすく解説していきます。
まず定義は次のとおりです。

  • 業種転換の定義
    「業種転換」とは、中小企業等が新たな製品を製造し、または新たな商品もしくはサービスを提供することにより、「主たる業種」を変更することをいう

ここで「主たる業種」とは、直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、「日本標準産業分類」に基づく大分類の産業のことをいいます。

ちなみに「主たる業種」が変わらず、「主たる事業 ※」を変更する場合は、事業再構築の類型「事業転換」に該当します。

※ 主たる事業:直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、「日本標準産業分類」に基づく中分類、小分類または細分類の産業を指します
(中分類・小分類・細分類のどれで判定しても、問題ありません)

日本標準産業分類とは

日本標準産業分類」とは、「事業所(モノやサービスを生産・提供するところ)」を経済活動別に分類するために、総務省が定めている統計基準のことをいいます。

分類は、次の4つのレベルにわかれます。

  1. 大分類:アルファベット
  2. 中分類:数字2桁
  3. 小分類:数字3桁
  4. 細分類:数字4桁
出典:事業再構築指針の手引き

そして「モノの生産」では、下記の内容で「分類項目」がわかれます。

  1. 何を作っているか
  2. どのような生産技術で作っているか

同じように「サービスの提供」は、下記の内容で「分類項目」がわかれます。

  1. 誰に対して
  2. どのようなサービスを提供しているのか

各項目の説明や内容例示を参照して、自社の産業分類をご確認ください。

また、自社の業種・事業をカンタンに知りたいときは、こちらでキーワード検索を行うこともできます。

e-Stat:統計分類・用語の検索

事業再構築の類型③「業種転換」の該当要件

事業再構築の類型③「業種転換」に該当するためには、次の3つの要件すべてを満たすことが必要です。

  1. 製品等の新規性要件
    事業で製造する製品や提供する商品・サービスが、新規性を有するものであること
  2. 市場の新規性要件
    事業で製造する製品や提供する商品・サービスの属する市場が、新規性を有するものであること
  3. 売上高構成比要件
    新たに製造する製品や新たに提供する商品・サービスを含む事業が、売上高構成比の最も高い事業となること

また、「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業にとっての新規性であり、「日本初・世界初」といった「世の中における新規性」のことではありません。

各要件について、以下でくわしく解説していきます。

[業種転換の該当要件1]製品等の新規性要件

「製品等の新規性要件」を満たすためには、以下の3点すべてを事業計画書で示す必要があります。

〈製品等の新規性要件①〉過去に製造等した実績がないこと

「過去に製造・提供した実績がないものにチャレンジする」ことを、計画書で示すことが必要です。

また過去に試作だけを行って、販売や売上実績がないケースで、追加の改善を行って事業再構築を図る場合は「過去に製造等した実績がない場合」に含まれます(よくあるお問合せより)。

「過去に製造等した実績がないこと」を満たさないケース

「以前製造していた製品を再び製造する場合」は、要件を満たしません。

例えば「以前製造していた自動車部品と同じ部品を、再び製造する場合」が該当します。

〈製品等の新規性要件②〉製造等に用いる主要な設備を変更すること

「新たな製品や商品・サービスを製造、提供するために、主要な設備の変更が必要」であると、計画書で示します。

また「設備」とは以下のものを指します。

  • 設備
  • 装置
  • プログラム(データを含む)
  • 施設 など

「製造等に用いる主要な設備を変更すること」を満たさないケース

「新製品を既存の設備でも製造できる」というケースでは、要件を満たしません。

例えば「これまでパウンドケーキ製造に使用していたオーブン機器と同じ機械を、新商品である焼きプリンの製造に使用する場合」が該当します。

また新たな投資を行わず、ただ単に「商品のラインナップを増やす」ようなケースも、要件を満たしません。

〈製品等の新規性要件③〉定量的に性能又は効能が異なること(定量的に計測できる場合のみ)

製品・商品などの性能や効能を「定量的に計測できる場合」は、「定量的な性能・効能が異なる」ことを、計画書で示す必要があります。

例えば、「既存製品と比べ、新製品の強度(耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量など)が◯%向上する」といったことを記載してください。

また「定量的に計測できない場合」は、その旨を計画書で示すことが必要です。

 

「定量的に性能又は効能が異なること」を満たさないケース

性能・効能が定量的に計測できる場合で、既存の製品と新製品の性能・効能に差が認められないケースは、要件を満たしません。

例えば「以前から製造していた半導体と、性能に差のない半導体を新たに製造するために設備を導入する場合」が該当します。

その他の「製品等の新規性要件」を満たさないケース

ここまでご紹介したほか、次のケースも「製品等の新規性要件」を満たしません。

  • 既存の製品等の製造量等を増やす
  • 事業者の事業実態に照らして、容易に製造等が可能な新製品等を製造等する
  • 既存の製品等に「容易な改変」を加えた新製品等を製造等する場合
  • 既存の製品等を「単純に組み合わせただけ」の新製品等を製造等する

[業種転換の該当要件2]市場の新規性要件

「市場の新規性要件」を満たすためには、「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」を計画書で示す必要があります。

〈市場の新規性要件①〉既存製品等と新製品等の代替性が低いこと

「代替性が低いこと」とは、次のようなことを表します。

  • 新製品を販売しても、既存の製品の需要が置き換わらない
  • そのため、既存の製品の販売数は大きく減少しない
  • むしろ相乗効果となって増大する

例えば、日本料理店が新たに「オンラインの料理教室を始める場合」なら、日本料理店の売上は変わらず、むしろ宣伝となって相乗効果になると考えられることから、「代替性は低い」と考えられます。

「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」を満たさないケース

「新製品が対象とする市場が同一のケース」は、要件を満たしません。
これは、需要が代替されることで、既存製品の売上が減少する可能性が高いためです。

例えば、アイスクリームを販売していた事業者が、新たにかき氷を販売する場合は、同一の市場のためアイスクリームの売上の減少が考えられます。

また「既存製品の市場の一部だけを対象とするケース」も、要件を満たしません。

例えば、アイスクリームを販売していた事業者が、バニラアイスクリームに特化して提供する場合が該当します。

[業種転換の該当要件3]売上高構成比要件

「売上高構成比要件」を満たすためには、次の事業計画を策定することが必要です。

  • 3~5年間の事業計画期間終了後、「新たな製品等の属する事業」が売上高構成比の最も高い事業となる

事業再構築の類型③「業種転換」の事例と要件を満たす考え方

記事の最後に、事業再構築の類型③「業種転換」の事例と、前項でご紹介した要件を満たす考え方をご紹介します。

事業再構築の類型③「業種転換」の事例紹介

事業再構築の類型③「業種転換」の要件を満たす事例として、次のものが挙げられています。

製造業の場合

コロナの影響も含め、今後ますますデータ通信量の増大が見込まれる中、生産用機械の製造業を営んでいる事業者が、工場を閉鎖し、跡地に新たにデータセンターを建設し、5年間の事業計画期間終了時点において、データセンター事業を含む業種の売上高構成比が最も高くなる計画を策定している場合

出典:事業再構築指針の手引き

「業種転換」の要件を満たす考え方

次に、前項の事例をもとに、要件1~3を満たす考え方をご紹介します。

まず「日本標準産業分類」に基づく産業を確認すると、次の通り。

  • 生産用機械の製造業:【大分類】E 製造業
  • データセンター事業:【大分類】G 情報通信業(データセンターは情報通信業)

「主たる業種」が転換されていることがわかります。

該当要件1「製品等の新規性要件」を満たす考え方

①過去に製造等した実績がないこと

過去に「データセンター事業」を営んだことがなければ、要件を満たします。

②製造等に用いる主要な設備を変更すること

データセンター事業を営むために、新たにデータサーバーなどの購入が必要で、その費用がかかる場合には、要件を満たします。

「生産用機械の製造でも使っていたサーバなどを流用する場合」では、要件を満たしません。

③定量的に性能または効能が異なること

「生産用機械とデータセンターは、異なる製品・サービスであり、定量的に性能・効能を比較するのが難しい」ことを事業計画で示せば、要件を満たします。

該当要件2「市場の新規性要件」を満たす考え方

「新しくデータセンター事業を始めても、生産用機械の需要が代替され、売上高が減少するといった影響が見込まれない」ことを説明すれば、要件を満たします。

該当要件3「売上高構成比要件」を満たす考え方

上記の通り、「生産性機械製造」(製造業)と「データセンター事業」(情報通信業)では、日本標準産業分類の大分類ベースで別分類です。

そのため「3~5年間の事業計画期間終了時に、データセンター事業を含む業種の売上構成比が最も高くなる事業計画」を策定していれば、要件を満たします。

まとめ:事業再構築の類型③「業種転換」を把握して申請準備を

この記事では、「事業再構築の類型」の3つめとして「業種転換」の定義と該当要件、事例までわかりやすく解説してきました。

事業再構築補助金で採択されるために、「業種転換」の定義や該当要件をよく把握したうえで、申請準備を進めましょう。

また、事業再構築補助金では、認定支援機関によるサポートを受けて応募する必要があります。

経営者コネクトでも、認定支援機関による申請サポートを行っています。
無料相談も行っていますので、ご関心ある方は以下のページもご覧ください。

また、数ある補助金・助成金について知りたい方は、以下の記事もお読みください。

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