「会社が赤字状態だとM&Aできないだろう」と考える経営者は少なくありません。
会社を売却するということは、赤字を何らかのかたちで引き継いでしまうということ。
売却する側(赤字会社側)の感覚では「赤字の会社を誰が買うのだろうか」「好き好んでM&Aの相手になってくれる会社はいるのだろうか」の思うのではないでしょうか。
結論から言うと、赤字会社も「M&Aできます」。
赤字会社でも会社売却は可能です。諦める必要はありません。
- 赤字会社は売却できるって本当?
- 赤字会社がM&Aできる理由や買う側のメリット
- 赤字会社を売却するときのポイント
赤字会社の売却やM&Aできる理由など、赤字会社の売却を検討している経営者が知っておきたい基礎知識を解説します。
M&Aでは「赤字会社は売却できない」と誤解されている
M&Aを検討していても会社が赤字状態の場合、「赤字ではM&Aなどで会社売却するのは無理だろう」と諦めてしまう経営者がいます。
赤字だと会社の融資を考える上ではマイナスです。
融資などの同じように「M&Aも駄目だろう」と考えてしまうことは、仕方のないことかもしれません。
しかし、実際は異なります。
冒頭でもお話ししたように、赤字会社でもM&Aの各手法で会社売却などを進めることは可能です。
融資とM&Aでは会社の評価基準が違います。
赤字会社は売却ルートや相手こそ赤字ではないケースより少なくなりますが、M&Aは売り手と買い手が相対で行うもの。
そのため、一般的には買収メリットがない場合でも、買い手企業にとって魅力的であったり、買い手企業の戦略に一致する場合には売却できる可能性があります。
赤字会社がM&Aできる理由と買う側のメリットとは
そもそも、なぜ赤字会社が売却できるのでしょう。
赤字会社でも売却できる場合をパターン分けすると以下の6つになります。
- 赤字会社でも知識・技術・販路・商品・ノウハウを持っている場合
- 現在は赤字でも「将来性」がある場合
- 赤字会社との事業シナジーがある場合
- M&Aによって赤字会社から優良な人材を得られる場合
- 許認可を引き継げる場合
- 赤字会社を買うことによる節税効果がある場合
理由①赤字会社でも知識・技術・販路・商品・ノウハウを持っている場合
赤字会社は赤字の部分にだけ注目すると、買い控えの対象になるかもしれません。
しかし、会社は業績だけで評価できるものではありません。
会社は目に見えない技術や知識なども価値なのです。
M&Aで会社を買えば、買った会社が持っていた技術や知識、ノウハウ、商品製造や販売ルートなども手に入ります。
買い手側の会社には大きなメリットです。売り手にとっても会社売却という目的を果たせますから、上手く話しを進めることで赤字会社側と買い手会社側の双方にメリットのあるM&Aになる可能性があります。
M&Aでは「赤字会社は売却できない」と誤解されている
M&Aの各手法で会社を売却するときは、もちろん会社の経営状況も見ます。
会社の経営状況をまったく見ないでM&Aを進めてしまうと、思わぬマイナスを引き受けてしまうかもしれません。
よって、赤字会社の赤字はM&Aではやはりチェックされるポイントになります。
しかし、赤字はあくまで会社の現状です。
会社には「将来性」があります。
例えば、変動費が小さく、固定費が大きなビジネスを行っている場合には、売上が伸びればその分が利益となります。
ソフトウェアやITサービス等の開発をしている企業はそのようなケースにあたるでしょう。
このようなケースにおいて、その会社の将来性にかけて、M&Aが行われることがあります。
M&Aの企業価値評価を算定する場合、さまざまな方法がありますが、一般的に、時価総額は将来のEBITDAや純利益をもとに算定されるため、将来性があれば現在が赤字でも会社を売却できる可能性はあります。
赤字会社がM&Aできる理由と買う側のメリットとは
M&Aの目的のひとつに「シナジー効果」があります。
シナジー効果とは、ふたつ以上の企業を合わせたときの相乗効果のことです。
相乗効果が期待できれば、赤字会社を買うことがあります。
たとえば、A社は飲食店事業を展開する会社でした。
飲食店日は料理の材料の仕入れが不可欠です。
また、料理の材料の価格によってコストのアップダウンがあり、会社の業績にも影響をおよぼしていました。
A社は食材の販売と流通を事業にしているB社を購入しました。
B社をM&Aの手法により購入したA社は食材を安く仕入れることができるようになり、大幅な仕入れコストの削減に成功しました。
これがシナジー効果の一例です。
赤字会社でも会社を買って自社と合わせることでシナジー効果を生むことが可能であれば、M&Aの成約につながる可能性があります。
理由④M&Aによって赤字会社から優良な人材を得られる場合
現状が赤字の場合でも、経営者や社員が優秀な会社というのは多くあります。
たとえば、その会社を支える技術を持っている社員や、その業種でも指折りの技術や経験を持った社員がいたとします。
社員をひとりずつ引き抜くことは、時間と労力を要しますし、一般的に現実的ではありません。
M&Aで会社を買えば、優秀な人材を獲得することができます。
M&Aで買い手側になる会社が、赤字会社の人材を獲得することで特定の領域を強化したい場合に、M&Aは有効です。
赤字会社でも人材を目的にM&Aの契約につながることがあります。
理由⑤許認可を引き継げる場合
M&A時の許認可の扱いはおおむね3つのタイプにわかれます。
会社の許認可をM&A後に引き継げるかどうかは、許認可の種類によるのです。
また、M&Aの手法によっても変わってきます。
- 許認可が自動的に引き継がれるケース
- 許認可の承継に行政庁の承認などを要するケース
- 許認可を引き継ぐことはできず再取得しなければならないケース
会社の許認可をM&A後に引き継げるケースがあります。
許認可の引継ぎができるケースでは、引継ぎを目的のひとつにしてM&Aがおこなわれる場合があるのです。
例えば、金融業の許認可等では、取得までに1年以上がかかるようなものもあります。
そのようなケースにおいては、赤字会社であっても買い手にとっては魅力的です。
理由①赤字会社でも知識・技術・販路・商品・ノウハウを持っている場合
赤字会社を買うことによる節税効果に着目してM&Aをおこなうことがあります。
買い手側の会社にとっては、節税できればそれだけ負担が減るわけですからメリットがあるのです。
赤字会社の欠損繰越金は一定条件のもと、買い手側会社の欠損繰越金として引き継げます。
また、のれんの償却費を損金として計算するためにM&Aをすることがあるのです。
M&Aではこのように、買い手側に節税というメリットが生まれるケースがあります。
赤字会社をM&Aで売却する際のポイント
赤字会社をM&Aの各手法で売却したい場合、どのようなポイントに気をつけたらいいのでしょう。
赤字会社を売却するときのポイントは5つです。
ポイント①赤字会社を売却するときは経営改善をはかる
赤字会社を売却するときは、M&Aの買い手を見つける前に経営改善をはかることがポイントです。
経営改善の見込みがないほど赤字や債務超過になっている会社だと、買い手を見つけること自体が難しくなります。
仮に赤字会社が魅力的な取引先や従業員、技術、スキル、知識、ノウハウなどを持っていたとしても、それらのメリットを上回る赤字があれば、さすがに買い手候補も買い控えてしまいます。
しかし、経営改善の見込みがあれば話は変わってきます。
経営改善を図る場合、短期的にできることと中長期的視点が必要なものがあります。
近い将来、1~2年に赤字会社を売却したい場合には、なるべく短期間で対応可能なコスト削減策等を実施し、経営改善を図りましょう。
中長期的な売却を検討している場合には、改めて自社の状況を整理し、ひとつひとつ手を打ちながら、業績の回復を図りましょう。
赤字会社の売却を検討する場合には、並行して経営改善を図ることで、売却の可能性が高まるとともに、企業価値が向上するのでぜひ試しましょう。
ポイント②赤字会社売却の適切なアドバイザーを見つける
赤字会社の売却を進めるためには、適切なアドバイザーを見つけることが重要です。
会社関係のアドバイザーにもいろいろなタイプがいます。
特定の業種の会社売却に強いアドバイザーもいれば、赤字会社のM&Aに知見のあるアドバイザーもいるのです。
赤字会社の売却に強いアドバイザーを見つけ、M&Aを相談することをおすすめします。
相談の際は、M&Aに望むことなどをアドバイザーに伝えておくと、M&A前にしておきたい事などについてもアドバイスも受けられるはずです。
ポイント③赤字会社の強みを整理しておく
赤字会社にも強みはあります。
経営状況が赤字でも、培った会社の技術やノウハウは赤字だからという理由で評価されないわけではないのです。
すでにお話ししたように、M&Aで会社の買い手側は、技術や知識などを目的にして赤字会社を買うことがあります。
熟練の技術を持った社員がたくさんいれば、人材獲得を目的としたM&Aもあり得えます。
赤字会社を売却するときは、自社の強みを整理し、よく理解しておくことがポイントになります。
強みを整理し、アドバイザーに伝えることができれば、買い手探しにも役立ち売却の可能性が高まります。
また、自社の企業価値を高く評価してもらうためにも必要なポイントになります。
ポイント④赤字会社はM&Aの各手法をよく検討する
M&Aにはいろいろな手法があります。
手法ごとにメリットとデメリット、赤字会社がM&Aに求めるニーズに合致しているかなどが変わってきます。
赤字会社が納得できるM&Aを進めるためにも、M&Aに望むことはしっかりと整理し、まとめておきましょう。
その上でM&Aの各手法のどれが合っているか検討することも重要です。
組織再編の手法に興味がある方は、以下の記事もご覧ください。
組織再編とは?効果的な方法を選ぶため8つの種類の違いやメリットを知ろう
M&Aに通じたアドバイザーに方法選びについてのアドバイスを受け、よく考えてM&Aの方法を選ぶことをおすすめします。
まとめ
赤字会社は売却できないと思われがちですが、売却可能です。
M&Aは売り手と買い手の相対で行われるので、買い手側が納得してくれれば、M&Aできるのです。
M&Aでは売却企業の経営状況は確かに重要です。
しかし、業績だけで、売却可否が決まったり、企業価値が決まったりするわけではありません。
会社には数値ではかれない将来性や技術、社員、取引先、許認可等、経営資源がたくさんあります。
会社の数字にあらわれない価値や将来性などを評価してM&Aを進めることがあるのです。
そこで諦めず、M&Aアドバイザーに相談し、自社を評価してくれる買い手を探してみてください。
理由②現在は赤字でも「将来性」がある場合
『経営者コネクト』にご相談いただければ、M&Aや事業承継についての知識や経験が豊富な税理士、中小企業診断士や元外資系戦略コンサルタント等の専門家が親身にお話を伺います。
M&Aや事業承継の準備に必要な、将来的な事業計画や経営戦略の策定、マーケット調査、新規事業の検討のお手伝いもさせていただくことが可能です。
さらに、親族や役員・従業員で後継者が見つけられそうにない場合や、できるだけ時間をかけずに事業承継を完了させたい場合には、社外への引き継ぎ(M&A)も視野に入れていくことがポイントとなります。
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