組織再編とは?効果的な方法を選ぶため8つの種類の違いやメリットを知ろう

組織再編とは?

組織再編とは、会社の組織形態を考え直して再編成することです。

会社経営をしていくうちに、いつの間にかベストではない組織形態になってしまっていることは珍しくありません。
そこで、定期的に会社の組織形態を見つめ直し、必要に応じて組織再編をしていくことが重要です。

適切に組織再編をすれば、新規事業のスピードアップ不必要なコストの削減など、会社経営におけるメリットが得られます。

「組織再編」と「組織変更」とはどう異なるの?

「組織再編」と似た言葉に「組織変更」がありますが、両者は全く違うものです。

組織変更は組織再編の1つで、法人格の変更を指します。
(以下の「⑧組織変更」の説明で詳しく紹介します)

一方で、組織再編は、組織の法人格自体を増減する様々な会社組織の変更を含みます。
この種類については、以下で全て説明していきます。

最適な組織再編方法を選ぶために

先ほどのように、新規事業のスピードアップ不必要なコストの削減などメリットの大きな組織再編ですが、いろいろな手法があり、また手法ごとにメリットやデメリットがあるので、適切に利用しなければ効果を得られない可能性もあります。

ここからは、具体的な、組織再編の種類と検討・実施するにあたって知っておくべきことについて説明します。

組織再編の代表的な8つの種類!特徴とメリットは?

会社経営の際に重要な組織再編は、やり方によって種類分けができます。
どの種類の組織再編を行うのかで、得られるメリットや必要な手続きが変わってくるので注意して選択することが必要です。

代表的な組織再編の方法には、以下があります。

  1. 新設合併(会社法第753条)
  2. 吸収合併(会社法第783条)
  3. 新設分割(会社法第810条)
  4. 吸収分割(会社法第782条)
  5. 事業譲渡(会社法第467条)
  6. 株式交換(会社法第767条)
  7. 株式移転(会社法第772条)
  8. 組織変更(会社法第743条)

関連する代表的な会社法も併せて表記しますが、他にも注意するべき法律は多く、専門家のもとで手続きを行うことをお勧めします。
とはいえ、経営者自身が組織再編の種類を知り、ある程度自分でも現在の自社にとって最適な手法を選べることは大切です。
ここからは、それぞれの特徴や得られるメリットを見ていきましょう。

組織再編の種類①新設合併

新設合併とは、合併を行うすべての当事者が消滅して、新しく作られた会社に権利義務を承継させることです。
このあとに紹介する吸収合併のほうが一般的にはよく使われています。

しかし、新設合併によって合併を行えば、すべての当事者の立場が揃うのがメリットです。
吸収された側(消滅する会社)の立場が弱くなり、一部の従業員の立場が弱くなるということがありません。

一方で、新しく会社を作る手続きが必要となるので、手間がかかることには気をつけておきましょう。

組織再編の種類②吸収合併

吸収合併とは、合併後に残す会社を決め、消滅する会社が存続する会社に権利義務を承継させることです。
吸収合併は、新設合併に比べると手続きが容易なので選ばれやすい手法だとされています。

また、吸収合併は合併によって増えた資本金の分にだけ税金がかかるので、新設合併よりも節税になるのがメリットの1つです。
そして、存続する会社の権利義務はもとのままなので、存続会社が持っていた許認可などを再申請しなくて済むのもメリットとなります。

吸収合併の際には、吸収された側の会社が消滅するため、その会社に対して思い入れを持った従業員のモチベーション低下等、目に見えにくいデメリットが発生する可能性があります。

また吸収合併は、存続する会社が消滅する会社の債務を引き継がなければならない点には注意が必要です。

組織再編の種類③新設分割

新設分割とは、会社のすべてか一部の事業を新しく作った会社に受け渡すことです。

多くの場合、グループ内の再編を狙って新設分割は行われます。

新設分割をすることによって、一部の事業を切り離して、新たに作った子会社で運営するにすることが可能です。
これにより、例えば、新規事業等の意思決定のスピードがあがり、事業の成長速度が早くなるなどの効果を狙うことができます。

近年注目を集めている、大きな成長が見込まれる事業を切り出す「カーブアウト」について、この新設分割が用いられることがあります。

後ほど出てくる事業譲渡との違いとして、契約の相手方、債権者、従業員からの個別同意が不要というメリットがあります。

ただし、新設分割は会社を新しく作らなければならないので、必要な手続きが多くなります。
就業規則や決裁権限規定等、社内の規定類の整備も必要となります。

組織再編の種類④吸収分割

吸収分割とは、会社のすべてか一部の事業を既にある他の企業に受け渡すことです。
吸収分割も新設分割と同様に、グループ内の再編のためによく利用されています。

また、経営統合の手段としても吸収分割は活用されることが珍しくありません。

持株会社制(ホールディングカンパニー制)に変更したい場合に、検討される手法です。
子会社同士が吸収分割を行えば、グループ内で経営資源を再分配することもできます。

ですが、計画的に吸収分割を行わなければ、何度も吸収分割を行うという無駄が生じやすい点にも気をつけましょう。

組織再編の種類⑤事業譲渡

事業譲渡とは、会社が事業を譲渡することです。
事業は会社のすべての事業でも、一部の事業でも構いません。

事業譲渡を行えば、経営戦略としての選択と集中を行うことができます。
経営戦略上、不要となる事業を譲渡し、売却した利益を今後の会社経営に活用することが可能です。

事業譲渡は、これまでに説明してきた組織再編とは区別して扱われることも多いです。
会社法においての組織再編行為ではありません。

事業譲渡も、会社分割同様にカーブアウトの際に使われることがあります。

組織再編行為ではないため、それに関わる手続が不要で、スピーディーに実行できるというメリットがあります。

一方で、契約の相手方、債権者、従業員に対して個別どういうが必要になるというデメリットがあります。

組織再編の種類⑥株式交換

株式交換とは、すでに存在している2つの会社を完全親子会社に再編することです。

子会社になる方の会社の株主が持っている自社の株式と、親会社の株式などを交換します。
そうすることで、親会社は子会社になる方の株式をすべて手に入れることができ、完全(100%)子会社を作ることができます。

株式交換は、親会社になる会社が既存の会社である点がポイントです。

会社の持株会社化や、他社の買収の際に活用されています。

組織再編の種類⑦株式移転

株式移転とは、株式会社が発行済の株式すべてを新しく作る株式会社に取得させることです。

もともとあった株式会社は、新しく作った会社の完全子会社になります。

株式交換と同様に持株会社化の際に活用されますが、親会社が新設の会社である点がポイントです。

また、株式交換は他社の買収の際に活用されることがあると説明しましたが、株式移転ではできない点も押さえておきましょう。

組織再編の種類⑧組織変更

会社法で定められている組織変更とは、株式会社が合同会社や合名会社、合資会社になることを意味します。
また、合同会社や合名会社、合資会社が株式会社になることも組織変更です。

組織変更をするには、総株主・総社員の同意債権者保護手続が必要となります。

合同会社などが組織変更で株式会社になるメリットは少なくありません。
例えば、代表的なメリットは社会的な信頼度の向上や株式の発行による資金調達の容易化です。

一方で、決算公告が必要になったり、役員に任期が発生したりと注意するべき点もあるので併せて確認しておきましょう。

 

以上、8つの種類の組織再編について解説しました。

組織再編のやり方はいろいろあるので、どの手法を選べば良いのかがわからないかもしれません。

ここで、目的別によく選ばれる組織再編の種類について確認しておきます。

目的別!組織再編の種類の選び方は?

組織再編を行う目的別に、選ぶべき組織再編の種類を確認していきましょう。

よくある組織再編の目的として、以下が挙げられます。

このうち①〜③は合併④〜⑤は株式交換⑥〜⑦は株式移転⑧〜⑨は会社分割は事業譲渡が選ばれるケースが多いと考えられます。

  1. 共通する部門や機能をまとめて経営効率を向上させて業績回復を狙いたい
  2. 提携関係をより強固にして競争力を高めたい
  3. 従業員や契約関係をすべて引き継いで会社をまとめたい
  4. 完全子会社化を果たしてグループを整理したい
  5. 複雑になった株主関係をシンプルにわかりやすくしたい
  6. 権利や義務をそのままの状態にして経営統合したい
  7. 会社経営に関することをできるだけ変えずに企業規模だけ拡大したい
  8. 採算の取れていない事業を独立させたい
  9. 新規事業のスピードアップを図りたい
  10. 経営戦略上、不要な事業を売却したい(その売却資金を得たい)

もちろん詳細な状況は企業によって異なりますが、手法を検討する際の参考にしてください。

なお組織再編を行う際には、要件を満たせば「適格組織再編」とされて税務においてメリットが得られることがあります。

税務上のメリットが得られる「適格組織再編」とは?

適格組織再編というのは、要件を満たしている組織再編のことです。

適格組織再編として認められれば、資産を受け渡したときの利益・損失を繰り延べることができます。
それによって、法人税が節税できます。

組織再編にかかるコストが減らせるので、再編を行う際には適格組織再編の要件を満たすかを検討しましょう。

ただし、適格組織再編の要件は複数あり、事前に手法や実行プロセスを慎重に考えなけれなりません。

適格組織再編を行うための要件とはどのようなものがある?

適格組織再編を行うための要件には多くの種類があり、組織再編を行う会社の状況によって異なります。

適格組織再編の要件とは、例えば以下のようなものです。

  • 金銭等不交付要件
  • 継続保有要件
  • 事業移転要件
  • 事業継続要件

以上の4つの要件は、支配関係のある会社が合併するケースで必要になるものです。
支配関係とは、発行済の株式の半数超えを保有することで、会社が支配されていることを意味します。

適格組織再編は、支配関係が強ければ強いほど、要件が少なくなることがポイントです。

もしも支配関係がない会社が合併するなら、4つの要件に加えて、「事業関連性要件」や「選択要件」も増えます

状況によって必要な要件は異なるので、自社の現状を再確認しながら手法を検討していきましょう。

仮に適格組織再編にするための要件を満たさない場合は、非適格組織再編になってしまって通常通りのコストがかかってしまいます。

もしも要件を満たせる可能性があるのに、非適格組織再編として再編を進めてしまうのはもったいないので詳しい専門家のもとで手法の検討をするのがおすすめです。

組織再編の活用状況:買収で関連企業を増やす中小企業が増加

中小企業において、会社を新設して子会社、関連企業にするケースよりも、他社を買収することで子会社、関連企業を増やした企業が増えています。

以下は、買収・新設別の子会社・関連会社が増えた企業数の推移です。

買収・新設別に見た、子会社・関連会社が増加した企業数の推移

出典:中小企業白書 2018 – 中小企業庁

このことから、中小企業も買収、いわゆるM&Aを積極的に行い、事業を拡大していることがわかります。

組織再編に加え、M&Aも視野に入れて幅広い選択肢から自社にとって、最も良い手法を選んでいきましょう。

組織再編についてお悩みならご相談ください!

会社経営において重要な判断となる組織再編は、信頼できる専門家に相談しながら適切に行っていくことが重要です。

効果的な組織再編を行うには、どの種類が自社にとって最適なのかを見極めなければならないからです。
また、適格組織再編の要件を満たし、最低限のコストだけで再編できれば無駄がありません。

経営者コネクトにご相談いただければ、経験豊富な専門家がアドバイスいたします。

組織再編の前に、経営戦略の見直しやマーケット調査を行うことで経営が今まで以上に上手くいくこともあります。

また、長期的な今後のスケジュール策定もサポートできますので、組織再編を検討の際にはぜひご相談ください。

気になる方は、お問い合わせフォームよりご連絡いただければ、無料でご相談をお受けいたします。

安心して相談できる専門家を見つけて組織再編を行い、より良い経営を行っていきましょう。