【事業再構築補助金】事業再構築の類型④「業態転換」の定義・該当要件・事例を解説

二次公募の締め切りが2021年7月2日にある「事業再構築補助金」。

申請要件に「事業再構築に取り組むこと」が含まれているため、「事業再構築の類型」をよく理解することが重要です。

そこでこの記事では「事業再構築の類型」の4点めとして、「業態転換」の定義と該当要件、事例まで解説していきます。

事業再構築補助金の申請を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。

事業再構築補助金の「事業再構築の類型」とは?

事業再構築補助金の「事業再構築の類型」とは、補助金での支援対象となる「事業再構築」の種類を指しており、次の5つのことです。

  1. 新分野展開:新たな製品等で新たな市場に進出する
  2. 事業転換:主な「事業」を転換する
  3. 業種転換:主な「業種」を転換する
  4. 業態転換:製造方法等を転換する
  5. 事業再編:事業再編を通じて新分野展開、事業転換、 業種転換または業態転換のいずれかを行う

上記5つの違いをくわしく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

【事業再構築補助金】「事業再構築の類型」5つの違いを一覧表で解説!事例もご紹介

 

事業再構築補助金では、「事業再構築に取り組む」ことが申請要件になっています。
そのためには、上記の類型をよく理解することが大切。

この記事では、次項から類型④「業態転換」についてくわしく解説していきます。

また、「事業再構築補助金」と「事業再構築」の詳細は、以下の公式サイトで確認できます。

事業再構築補助金 公式ウェブサイト
中小企業庁:事業再構築指針
中小企業庁:事業再構築指針の手引き

なお、事業再構築の制度概要を知りたい方には、こちらの記事もおすすめです。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説

【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます

事業再構築補助金の「事業再構築の類型」とは?

ここからは、事業再構築の類型④「業態転換」についてくわしく解説していきます。
まず定義は次のとおりです。

  • 業態転換の定義
    「業態転換」とは、製品・商品・サービスの製造方法・提供方法を、相当程度変更することをいう

なお「業態転換」では、「主たる業種 ※1」や「主たる事業 ※2」を変更することは要件ではありませんが、変更しても問題はありません。

※1 主たる業種:直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、「日本標準産業分類」に基づく大分類の産業のこと

※2 主たる事業:直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、「日本標準産業分類」に基づく中分類、小分類または細分類の産業のこと

出典:事業再構築指針の手引き

事業再構築の類型④「業態転換」の該当要件

事業再構築の類型④「業態転換」に該当するためには、以下のそれぞれの場合で、満たすべき要件が異なります。

  • 製品の製造方法を変更する場合:下記①・②・④全てを満たす
  • 商品・サービスの提供方法を変更する場合:下記①・③・④全てを満たす

〈該当要件〉

  1. 製造方法等の新規性要件:事業を行う中小企業等にとって、事業による新製品の製造方法や新商品・サービスの提供方法が、新規性を有するものであること
  2. 製品の新規性要件:製品の製造方法を変更する場合は、事業で製造する製品が新規性を有するものであること
  3. 商品等の新規性要件 または 設備撤去等要件:商品・サービスの提供方法を変更する場合は、提供される商品・サービスが新規性を有するものであること。または既存の設備の撤去、既存の店舗の縮小等を伴うものであること
  4. 売上高10%要件:新たな製品の製造方法等による売上高が、総売上高の10%以上を占めること

ここで上記②の要件は、「製造業の分野で事業再構築を行う場合」のみ必要となります。

同様に、上記③の要件は、「製造業以外の分野で事業再構築を行う場合」のみ必要です。

また「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業にとっての新規性のこと。
「日本初・世界初」といった「世の中における新規性」のことではありません。

それでは各要件について、以下でくわしく解説していきます。

[業態転換の該当要件1]製造方法等の新規性要件

「製造方法等の新規性要件」を満たすには、次の3点を事業計画で示すことが必要です。

また「内製化」も、「製造方法等の新規性要件」に該当します(よくある質問より)。

〈製造方法等の新規性要件①〉過去に同じ方法で製造等していた実績がないこと

「過去に実績がない方法で、製品の製造などにチャレンジする」ことを、事業計画書で示す必要があります。

「過去に同じ方法で製造等していた実績がないこと」を満たさないケース

「過去に製造等していた方法で、改めて製造等するケース」では、要件を満たしません。

例として「衣料品販売店を経営する企業が、すでに営んでいるネット販売事業を拡大するケース」が該当します。

〈製造方法等の新規性要件②〉新たな製造方法等に用いる主要な設備を変更すること

新たな方法で製品を製造するために、「主要な設備を変更することが必要」であることを、事業計画書で示す必要があります。

「新たな製造方法等に用いる主要な設備を変更すること」を満たさないケース

新たな製造方法に必要な「主な設備」が、既存の製造方法に必要な「主な設備」と変わらないケースは、要件を満たしません。

例として「衣料品販売店が、従来の商品を単に既存のECサイトを用いて販売網を拡大する」など、新たな設備投資を伴わない場合が該当します。

〈製造方法等の新規性要件③〉定量的に性能又は効能が異なること(定量的に計測できる場合のみ)

製造方法などの性能や効能を「定量的に計測できる場合」は、「性能・効能の違いを定量的に説明し、新たな製造方法が有効であること」を、計画書で示す必要があります。

例えば、「既存の製造方法とくらべ、新たな製造方法では生産効率(燃費効率など)が◯%向上する」など記載してください。

また「定量的に計測できない場合」は、その旨を計画書で示すことが必要です。

「定量的に性能又は効能が異なること」を満たさないケース

性能・効能が定量的に計測できる場合で、既存の製品と新製品の性能・効能に有意な差が認められないケースでは、要件を満たしません。

例として「工場の無人化を目指してデジタル技術を導入する計画を立てたが、従来とくらべて生産性の向上が見込まれない場合」が該当します。

[業態転換の該当要件2]製品の新規性要件

製造業の分野で「業態転換」を行う場合は、「製品の新規性要件」を満たさなくてはなりません。

そして「製品の新規性要件」を満たすには、以下の3点すべてを計画書で示すことが必要です。

〈製品の新規性要件①〉過去に製造等した実績がないこと

「過去に製造した実績がないものにチャレンジする」ことを、事業計画書で示す必要があります。

また、過去に試作だけを行って、販売や売上実績がないケースで、追加の改善を行って事業再構築を図る場合は「過去に製造等した実績がない場合」に含まれます(よくあるお問合せより)。

「過去に製造等した実績がないこと」を満たさないケース

「以前製造していた製品を再び製造する場合」は、要件を満たしません。

例として「以前製造していた自動車部品と同じ部品を、再び製造する場合」が該当します。

〈製品の新規性要件②〉製造等に用いる主要な設備を変更すること

「新たな製品を製造するために、主要な設備の変更が必要」であると、計画書で示します。

また「設備」とは以下のものを指します。

  • 設備
  • 装置
  • プログラム(データを含む)
  • 施設 など

「製造等に用いる主要な設備を変更すること」を満たさないケース

「新製品を既存の設備でも製造できる」というケースでは、要件を満たしません。

例として「これまでパウンドケーキ製造に使用していたオーブン機器と同じ機械を、新商品である焼きプリンの製造に使用する場合」が該当します。

また新たな投資を行わず、ただ単に「商品のラインナップを増やす」ようなケースも、要件を満たしません。

〈製品の新規性要件③〉定量的に性能又は効能が異なること(定量的に計測できる場合のみ)

製品・商品などの性能や効能を「定量的に計測できる場合」は、「定量的な性能・効能が異なる」ことを、計画書で示す必要があります。

例えば、「既存製品と比べ、新製品の強度(耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量など)が◯%向上する」といったことを記載してください。

また「定量的に計測できない場合」は、その旨を計画書で示すことが必要です。

「定量的に性能又は効能が異なること」を満たさないケース

性能・効能が定量的に計測できる場合で、既存の製品と新製品の性能・効能に差が認められないケースは、要件を満たしません。

例として「以前から製造していた半導体と、性能に差のない半導体を新たに製造するために設備を導入する場合」が該当します。

[業態転換の該当要件3]商品等の新規性要件 または 設備撤去等要件

製造業以外の分野で「業態転換」を行う場合、「商品等の新規性要件」または「設備撤去等要件」のどちらかを満たさなくてはなりません。

「商品等の新規性要件」は、前項「製品の新規性要件」と同義です。
前項「製品の新規性要件」の「製品」を「商品・サービス」に、「製造」を「提供」に読み替えて参照ください。

「設備撤去等要件」を満たすためには、「既存の設備の撤去や既存の店舗の縮小等を伴うこと」を計画書で示す必要があります。

〈設備撤去等要件①〉既存の設備の撤去や既存の店舗の縮小等を伴うこと

「新たな方法で提供される商品・サービスが、既存の設備の撤去や既存の店舗の縮小等を伴う」ことを、事業計画書で示すことが必要です。

「既存の設備の撤去や既存の店舗の縮小等を伴うこと」を満たさないケース

「新たな方法で提供される商品・サービスが、既存設備の撤去や既存店舗の縮小等を伴うものではないケース」は、要件を満たしません。

例として「飲食店が設備の撤去を行うこともなく、単にテイクアウト販売を新たに始める場合」が該当します。

[業態転換の該当要件4]売上高10%要件

「売上高10%要件」を満たすためには、次の事業計画を策定することが必要です。

  • 3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品等の製造方法等による売上高が、総売上高の10%以上を占める

ただし上記の「10%」とは、申請するための最低条件。
新たな製品の売上高が、10%より大きな割合となる事業計画を策定すれば、審査で「より高い評価」を受ける可能性があります(事業再構築指針の手引きより)。

その他の「業態転換」の該当要件を満たさないケース

ここまでご紹介したほか、次のケースも「業態転換」の該当要件を満たしません。

  • 製品等の既存の製造方法等により、単に製造量等を増大させるケース
  • 事業者の事業実態に照らして容易に行うことが可能な新たな製造方法等で製品等を製造等するケース
  • 製品等の既存の製造方法等に容易な改変を加えた方法で、製品等を製造等するケース
  • 製品等の既存の製造方法等を単純に組み合わせただけの方法で、製品等を製造等するケース

事業再構築の類型④「業態転換」の事例と要件を満たす考え方

記事の最後に、「製造業」と「製造業以外」それぞれの、事業再構築の類型④「業態転換」の事例と、前項でご紹介した要件を満たす考え方をご紹介します。

事業再構築の類型④「業態転換」の製造業の事例紹介

事業再構築の類型④「業態転換」の要件を満たす、製造業における事例として、次のケースが挙げられています。

製造業の場合

健康器具を製造している製造業者が、コロナの感染リスクを抑えつつ、生産性を向上させることを目的として、AI・IoT技術などのデジタル技術を活用して、製造プロセスの省人化を進めるとともに、削減が見込まれるコストを投じてより付加価値の高い健康器具を製造し、新たな製造方法による売上高が、5年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%以上を占める計画を策定している場合

出典:事業再構築指針の手引き

製造業の「業態転換」の要件を満たす考え方

次に、前項の事例をもとに、該当要件1・2・4を満たす考え方をご紹介します。

該当要件1「製造方法等の新規性要件」を満たす考え方

①過去に同じ方法で製造等していた実績がないこと

過去に、今回導入するAI・IoT技術などの「デジタル技術を活用した省人化による方法」で製造を行った実績がない場合は、要件を満たします。

②新たな製造方法等に用いる主要な設備を変更すること

省人化のため、AI・IoT技術といったデジタル技術の専用設備が新たに必要で、その設備を導入する場合には、要件を満たします。

③定量的に性能または効能が異なること

新規導入する製造方法で、「1個当たりの製造コストなど生産効率がどの程度改善するか」を事業計画書で示すことで、要件を満たします。

該当要件2「製品の新規性要件」を満たす考え方

①過去に製造した実績がないこと

新製品の健康器具が、これまでに製造した健康器具と同じではなければ、要件を満たします。

②主要な設備を変更すること

新しい健康器具を製造するために、既存プロセスのコストを抑える目的で、省人化に関するAI・IoT技術の専用設備が新たに必要で、その設備を導入する場合は、要件を満たします。

③定量的に性能又は効能が異なること

新たに製造する健康器具と、既存の健康器具との「健康効果」といった性能の違いを事業計画書で示すことで、要件を満たします。

該当要件4「売上高10%要件」を満たす考え方

「3~5年間の事業計画期間終了時点において、新しい製造方法で製造した新しい健康器具が、総売上高の10%以上となる事業計画」を策定していれば、要件を満たします。

製造業以外の事例と要件を満たす考え方

次に「製造業以外」の事例と、要件を満たす考え方をご紹介します。
「サービス業」での事例は次の通りです。

サービス業の場合

ヨガ教室を経営していたところ、コロナの影響で顧客が激減し、売上げが低迷していることを受け、サービスの提供方法を変更すべく、店舗での営業を縮小し、オンラインサービスを新たに開始し、オンラインサービスの売上高が、3年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%以上を占める計画を策定している場合

出典:事業再構築指針の手引き

「業態転換」の要件を満たす考え方

該当要件1・4は製造業と同じですので、ここでは該当要件3「商品等の新規性要件 または 設備撤去等要件」の要件を満たす考え方を、前項の事例をもとにご紹介します。

該当要件3−1「商品等の新規性要件」を満たす考え方

ここでは「例えば、ヨガに加えて、新たにエアロビクスを始める場合」として考えてください。

①過去に製造した実績がないこと

過去にエアロビクスのサービスを提供したことがなければ、要件を満たします。

②主要な設備を変更すること

新しくエアロビクスのサービスを始めるにあたり、新たに大型ミラーの設置や防音設備などが必要で、その費用がかかる場合には、要件を満たします。

③定量的に性能又は効能が異なること

「ヨガとエアロビクスは異なるサービスであり、定量的に性能・効能をくらべるのが難しい」と、事業計画書で示すことで要件を満たします。

該当要件3−2「設備撤去等要件」を満たす考え方

店舗での営業を縮小するにあたり、既存設備を撤去する旨を事業計画書で示すことで、要件を満たします。

まとめ:事業再構築の類型④「業態転換」をよく理解して申請準備を

この記事では、「事業再構築の類型」の4点めとして「業態転換」の定義と該当要件、事例までくわしく解説してきました。

採択される応募書類を作るために、「業態転換」の定義や該当要件をよく把握したうえで、申請準備を進めましょう。

また、事業再構築補助金では、認定支援機関によるサポートを受けて応募する必要があります。

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