M&Aの不安はなぜ起こる?不安が生じる原因とその解決方法について

誰でも、初めてやる事には不安を感じます。特に、大切なものや絶対に失敗できないものであればあるほど、不安は大きくなります。

自分の人生の大半を注ぎ込んで育てた会社を、M&Aで売却する場合はどうでしょうか?
不安が募ったとしても当然です。
なぜならM&Aの売り手にとって、ほとんどの場合、人生最初で最後の経験になるからです。

そこで本日は、M&Aで不安を感じた時に、どのように対処していけばよいのかをじっくりと解説していきます。

M&Aは不安を感じて当たり前

冒頭でお話ししたように、M&Aは不安を感じて当たり前です。実際にM&Aを行う過程で、多くの売り手側経営者が不安を感じています。

その中から、実際の具体例をいくつかご紹介します。

具体例① 仲介業者の担当から何の説明もないまま勝手に話を進められているような気がする

売り手側の経営者は、常に「本当に会社を売却してしまって良いのだろうか?」と悩んでいます。特に老舗企業の場合は、親や祖父の代からの会社を自分の代で手放してしまうわけですから、その苦悩や迷いは当事者でなければ理解できません。

昨日はM&Aにがっつり前向きだったとしても、今日起きたら「やっぱり止めようか」と思うことなど頻繁にあります。

このように、常に揺れる心境の中にいる経営者から見ると、当事者である自分だけが置き去りのままで勝手に話を進められているように感じてしまいます。

具体例② 自分では安値だと思うが仲介業者からは「御社の相場はそれくらいです」と言われた

上述のように、売り手側の経営者にとって、M&Aは人生で最初で最後の経験です。買い手側がプロだとすると、売り手側は完全な素人です。M&A成立までの流れも知らなければ、全工程が終了するまでの時間も分かりません。もちろん、相場についても同様です。

何をもって「相場」とするのかを売り手側経営者が十分に理解し、その上で「自社の売却価格はこれが適正」と感じることができなければ、不安に思って当然です。

具体例③ 買い手との間で話はどんどん進んでいるが提示された条件がいまいち釈然としない

仲介業者は、売り手側が素人であることを十分に理解しています。ですから、良くも悪くもある程度は「担当者にお任せ」の状態で進んでいきます。

特に、買い手候補が決まったら一気に畳みかけなければ成約できない場合もあるため、仕方がないといえば仕方がないのですが、これでは当事者である売り手側経営者だけが置き去りに感じてしまっても仕方ありません。

また、買い手側から提示された条件が本当に妥当なものなのかどうかを検証する手段を売り手側は持っていないため、肌感覚で違和感を感じたとしても、それを筋道を立てて仲介業者に伝えることは難しいでしょう。

このような小さな「ズレ」がいくつも重なることにより、多くの売り手側経営者はM&Aに不安を感じています。

M&Aにおける仲介業者の役割

M&Aで不安を感じる売り手側経営者の中には、仲介業者の役割を正しく理解していない方もいます。そこで、改めてM&Aにおける仲介業者の役割を考えてみます。

役割① M&Aのマッチングを行う

中小企業がM&Aを行う場合、仲介業者の存在がなければまず成立させることは不可能でしょう。なぜなら仲介業者は莫大数の顧客リストを持っており、その中から買い手候補に相応しい相手を探し出すことができるからです。

確かに高額な手数料を支払うことにはなりますが、売り手側の経営者が自分の力で買い手希望の企業を探すことはほとんど不可能でしょう。

役割② M&Aの全工程をワンストップサービスで行うことができる

M&Aによる会社の売買には、その過程で多くの専門家が関わることになります。契約書類の作成はもちろんのこと、買い手企業が売り手企業の法務処理に問題がないかどうかを調査する「法務デューデリジェンス」は弁護士が行います。

決算資料はもちろんのこと、売り手企業の潜在的な経営リスクなどを財務面から調査する「財務デューデリジェンス」は公認会計士が行います。

M&Aを成立させるためにはさまざまなスキームが用いられており、どのスキームを用いるかによって税額が大幅に変わります。このようなタックスプランニングや実際の申告業務などは税理士が行います。

それ以外にも、不動産の登記であれば司法書士が行い、労務関係の業務は社会保険労務士が行います。

仲介業者はこういった専門家と提携しているため、売り手側の経営者は仲介業者に任せていれば何もする必要がありません。

役割③ 売り手と買い手の調整役

M&Aはよく「結婚」にたとえられることがあります。売り手と買い手を男女に置き換えるなら、確かに結婚と言えなくもありません。

売り手も買い手も自分の要求を100%満たすことばかり考えていては、結婚と同じようにM&Aも成立させるのが困難になってしまいます。

売り手も買い手もお互い「WIN-WIN」となれるように、引いても大丈夫なところはお互い引くように調整し、M&Aを成立させるための調整を行うのも仲介業者の大切な役割です。

仲介業者の問題点

前章でお伝えしたように、中小企業のM&Aに仲介業者はなくなはならない存在です。にもかかわらず、どうして多くの経営者は不安に感じるのでしょうか?

そこで、仲介業者の問題点について考えてみます。

問題点① 仲介業者の報酬が「両手取り」であること

M&Aのマッチングやプロセス管理を取り仕切る事業者には、仲介業者以外にも「FA(ファイナンシャルアドバイザー)」がいます。FAは売り手(もしくは買い手)の代理人として依頼者の利益を最大限にすることだけを目的に業務を行います。FAの依頼者は売り手もしくは買い手のどちらか一方のみですから、報酬もどちらか一方からしか受け取りません。

しかし、仲介業者の場合は売り手からも買い手からも報酬を受け取る「両手取り」であるため、その立場は依頼者の代理人ではなく、中立の第三者となります。

多くの売り手側経営者が希望するのは、中立の第三者ではなく代理人としての立場だと思いますが、残念ながらそもそも仲介業者はその立場に立つことが出来ません。

では、FAに頼めばよいかというと、これも残念ながら難しいと言わざるを得ません。なぜならFAがその能力を発揮するためには、報酬から逆算すると最低でも10億円以上の規模のM&Aでなければ難しいからです。

問題点② どうしても買い手側に立ちがちであること

仲介業者から見ると、売り手企業は一度きりの付き合いにしかなりませんが、買い手企業はM&Aが上手くいけば再びお客さんになってもらえる可能性があります。実際にM&Aの買い手企業の多くは、何度もM&Aを行っている企業です。

もちろん、ほとんどの仲介業者はできるだけ公平中立に振舞おうと努力していますが、しかしこれでは買い手企業側に寄ってしまうのも無理はありません。

また、どれだけ公平中立であったとしても、売り手から見ると、これではどうしても買い手寄りに見えてしまいます。

問題点③ 仲介業者とM&Aの売り手側経営者との考え方の違い

上述のように、仲介業者の役割は売り手と買い手の間に立って中立な立場でM&Aの成立に向けて全力を尽くすことです。お互い折れる所は折れるようになだめ、妥協するところは妥協させ、M&Aを成立させるのが仲介業者の目標です。

いっぽう、売り手側経営者の目標は、M&Aの成立ではなく成功です。そもそも、売り手側の経営者がM&Aで何を達成したいのかは、経営者それぞれにことなります。売却価格を一番に考える経営者もいれば、従業員の雇用や社名の継続などを一番に考える経営者もいます。

「とにかく成立させたい仲介業者」と「成立でなく成功させたい経営者」とでは、そもそもはじめから考え方が同じになるはずがありません。

売り手側の問題点

ここまでは、おもに仲介業者の構造上の問題点についてお話ししてきましたが、M&Aで不安を感じる原因のいくつかは、売り手側にもあります。ここでは、その代表的なものをいくつかご紹介します。

売り手側の問題点① M&Aに対する理解が不足している

M&Aは極めて専門性の高いものではありますが、ざっくりとした内容だけでもある程度は理解しておかなければ、仲介業者に質問をすることすら出来ません。

この状態でM&Aが進行してしまうと、M&Aに関して漠然と不安に感じても仕方ありません。

売り手側の問題点② わからない時や不安を感じても仲介業者に伝えない

売り手側の経営者は仲介業者にとって依頼者なのですから、何かわからない事があった時や何となく違和感や不安を感じた時は、ためらうことなく仲介業者に伝えるべきです。

後回しにしたり変な遠慮をしていても、仲介業者に伝わることはありません。むしろ「社長から特に質問がないので問題なく進んでいる」と勘違いされてしまいます。

売り手側の問題点③ クロージングまでの長い工程に疲れ切ってしまう

M&Aは、完了するまでに短ければ半年程度で終わりますが、長ければ2~3年ほどかかる場合もあります。

単に長いだけでなく、トップ面談などの調整や仲介業者との打ち合わせも頻繁に行わなければならず、さらにデューデリジェンスともなれば買い手側の法務や財務の調査に対応しなければなりません。

こういった対応に疲れ切ってしまう場合もありますが、何とか乗り切るために気を持ち続けなければM&Aの成功を手にすることは出来ません。

M&Aのセカンドオピニオン

ここまでお伝えしたように、中小企業のM&Aには仲介業者が必要ですが、その立ち位置や報酬形態を考えると、必ずしも売り手側経営者の味方ばかりになってくれるわけではありません。

また、仲介業者とは関係なく、売り手側として努力すべきものや乗り越えなければならない壁もあります。

これらをスムーズに乗り切るためのサポートとして近年利用する方が増えているのが「M&Aのセカンドオピニオン」です。

M&Aのセカンドオピニオンとは

M&Aのセカンドオピニオンとは、M&Aの売り手や買い手そして仲介業者など、当事者ではない第三者の立場から、客観的な意見を専門的な見地から提供するサービスのことをいいます。

仲介業者からは「これが相場ですよ」と言われた金額が果たして本当にそうなのかを別の専門家から第三者の立場で聞くことができれば、安心することができます。

また、仲介業者の担当者には聞きにくいことでも、関係のない第三者であれば気楽に聞くことも出来ます。

アドバイザリー契約の「専任条項」との問題

仲介業者と締結したアドバイザリー契約には、必ず「専任条項」が盛り込まれています。これは、契約期間中は他の仲介業者と契約を結んだり助言を受けたりしないことを売り手側が仲介業者に対して誓約するものです。

ですから、別の仲介業者にセカンドオピニオンを求めるのは契約違反になるため出来ませんが、競合する仲介業者でも何でもない公認会計士や税理士などの専門家に相談することまでを制限しているわけではありません。

また、セカンドオピニオンのサービスを行っている事業者であれば、専任条項に抵触するかどうかには十分に注意を払っていますから、気になるようであれば最初に聞いてみると良いでしょう。

セカンドオピニオンで出来ること

セカンドオピニオンに依頼すると、以下のサービスを受けることができます。

  • 仲介業者の進め方が客観的に見てどうなのかがわかる
  • 提示された条件や売買価額が本当に相場なのかがわかる
  • 今後どうすれば良いのかがわかる

仲介業者の進め方が客観的に見てどうなのかがわかる

売り手側の経営者の多くは、仲介業者が買い手側の立場に立つことの方が多いと感じています。これが単なる気のせいなのか、本当にそうなのかを、第三者の立場から、率直な意見として聞くことが出来ます。

提示された条件や売買価額が本当に相場なのかがわかる

M&Aの業務に精通した専門家であれば、大まかな決算の数値や会社のざっくりとした特徴などから、ある程度の売買価額の相場をリサーチすることができます。

第三者から見た相場観が分かれば、仲介業者の相場観とどれくらい乖離があるのかが分かります。

今後どうすれば良いのかがわかる

第三者の意見として、今後どうした方が良いのかを客観的な立場からアドバイスを受けることが出来ます。

セカンドオピニオンサービスはこちらへ

経営者コネクトでは、M&Aで悩んでいる経営者に対して、セカンドオピニオンサービスを提供しています。

「仲介業者とは別の第三者の意見を聞いてみたい」と思われる方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

まとめ

売り手にとってM&Aは、人生最初で最後の一大イベントですから不安になって当たり前です。ですが放置したままで進めてしまうと不安ばかりが大きくなるだけで、何の解消にもなりません。

途中で少しでも不安を感じた場合は、遠慮なく仲介業者に問い合わせ、何度でも納得のいくまで話し合いましょう。

また、「第三者の意見を聞いてみたい」と思われた場合には、セカンドオピニオンサービスを利用することにより客観的な意見を聞くことが出来るでしょう。

 

経営者コネクト
経営者コネクトでは、M&A支援経験豊富な公認会計士や製造業の親族内承継を経験した中小企業診断士のチームによる「事業承継支援」・「後継者育成支援」・「M&A支援」プログラムをご用意している他、企業価値評価・デューデリジェンスのご依頼にも対応します。
事業承継の方法や後継者が決まっていなくても、まずは無料相談が可能です。
お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。